「忙しいながらも充実した『理想の仕事』に就けた」と語るリウマチ科クリニックを開業するDonald E.Thomas氏

 ワシントン近郊の都市Greenbeltでリウマチ科クリニックを開業するDonald E.Thomas氏は、若いリウマチ開業医としての日々の経験を語った。「毎日診療に忙しく、ビジネス面にも苦労はあるものの、充実した日常を過ごしている」という同氏の話からは、米国の平均的なリウマチ開業医の姿が見てとれる。

 リウマチ医が不足する中、リウマチ医療に携わる医師や研究者をいかに確保するかが本学会のテーマの一つだ。「あるリウマチ開業医の経験」と題したThomas氏の講演は、このような背景から、リウマチ専門家のキャリアの可能性を探る目的で企画されたスペシャル・レクチャー「Practice Opportunities in Rheumatology: How Do I Choose From the Various Career Pathways」の演題の一つ。

 Thomas氏は95年から3年間、ワシントンのWalter Reed Army Medical Centerでフェローシップ(研修奨励金)を得てリウマチ分野の研究に取り組んでいた。しかし施設の部門縮小のためキャリア変更を余儀なくされ、「軍医になるよりは」とリウマチ開業医としての道を選んだ。開業に当たっては、共同経営者となる個人投資家の資金援助を得た。ただし開業当初は、経営者から給料を支払われる被雇用者の形態だったという。

 大病院から開業医へのいきなりの環境変化には、当初かなりとまどった。特に保険会社による治療計画の事前承認の多さや、保険請求処理の煩雑さなどは予想以上だったという。患者の疾患も思ったより多様だった。

 現在、Thomas氏の開業医としての日課は以下の通り。午前8時15分から11時半までは午前の診療で、約13〜14人の患者を診る。11時30分から午後1時まではスタッフ全員との食事に加えて事務処理、電話処理など。午後1時から4時までが午後の診療だ。その後も事務処理や勉強などやることは多い。病院での時間外待機も数週間に1回、当番で担当している。近くの医科大学での講義や、地域の住民・医師に対する講演も年数回行う。

 1日の患者数は平均で約24人。関節リウマチが5人、変形性関節症、骨粗鬆症などの整形外科疾患が8人、全身性エリテマトーデスがやや多くて3人、不全型膠原病1人、結合組織病2人、線維筋痛症2人、他の関節炎疹3人という内訳だ。

 開業3年後には、出資者との契約内容を見直し、名実ともに共同経営者となった。現在はクリニックの収益の20〜30%を得ている(ただし、契約変更を依頼した弁護士の費用はかなり高額だった)。

 Thomas氏は、開業医になって良かったことの一つは、「患者と長い時間をかけて関係を築き、彼らの改善をずっと見守っていけることだ」と強調する。患者との交流を深める機会として、同氏はリウマチ財団のウォーキング会などにも積極的に参加している。

 「私は幸い、気心の知れた有能なスタッフにも恵まれ、忙しいながらも充実した『理想の仕事』に就けた」とThomas氏。米国のリウマチ医が置かれた環境は決して明るくはない。でも、リウマチ開業医も結構悪くないよ、というのが同氏の結論のようだ。ユーモアを交えて自らの経験を楽しげに語るThomas氏の講演は、聴衆の笑いを何度も誘っていた。