インフリキシマブの効果は多くの臨床医から高く評価されているが、一方で医療費の患者負担が問題視される。インフリキシマブを含む新旧4つの治療戦略を比較したBeSt試験のコスト解析の結果、同療法に要した「初期投資」は、疾病の改善に伴う人的資本の増加等により補償され、2年後にはコスト面でも他の治療戦略より低くなることを明らかにした。この解析の結果は、12日のポスターセッションにて発表された。

 BeSt試験は、DMARDsによる治療歴がない早期(罹病期間2年以内)かつ活動性の関節リウマチ患者508例を対象に、(1)DMARDs単剤の切り替え(DMARDs単独療法:第1群)、(2)DMARDsの上乗せ(step-up療法:第2群)、(3)治療初期から大量のステロイドを含むDMARDsの併用(step-down療法:第3群)、(4)当初からインフリキシマブ+MTXで治療を開始(インフリキシマブ療法:第4群)の4つの治療戦略群間の比較試験である。主解析の結果は昨年論文で報告され、当初から積極的な治療を行う第3・4群が、症状の改善および関節破壊の進行抑制効果に優れることが明らかにされている。

 オランダLUMCのVan Den Hout氏らは、同試験の参加者に対し、3カ月毎に3種類の質問票(EuroQol、SF-36、TTO)を用いてQOLを評価し、QALYs(Quality adjusted-life years:QOLで重み付けした生存年数)の算出を行うと共に、医療機関の利用状況や家庭や日常での健康管理状況、労働とその報酬などに関する患者日誌の記載に基づき、疾病の管理に要した費用を算出した。

 その結果、第3・4群では、第1・2群に比して早期よりQOLの改善が認められた。各群のQALYsは、EuroQol(※1)、SF-36、TTO(※2)のいずれの測定値に基づいて算出した場合も、第1〜3群に比べ第4群で最も高値であった(EuroQol:P<0.05、SF-36:P<0.05、TTO:P=0.519)。

 2年間における本試験での治療に要した費用は、第1群から各々5117ユーロ、1734ユーロ、3069ユーロ、1万9392ユーロであり、第4群で最も高額であった(P<0.001)。しかし、第4群では時間の経過と共にインフリキシマブの減量や離脱が進み、薬剤費は徐々に低下していく一方、他の3群では逆に増量やより高価な薬剤への変薬により、薬剤費が増加していく傾向にあった。

 さらに、Human Capital(HC)法により、仕事の能率低下や休業による逸失を算出すると、第1群および第2群の逸失はそれぞれ1万1267ユーロ、3227ユーロと計算される一方、第3群では435ユーロの増益、第4群では1万2111ユーロもの増益があったと計算された(P<0.001 第4群 vs 1〜3群)。他の算出法を用いて人的資本の変化を評価した場合でも、こうした労働能率面でのアドバンテージは同様の傾向が認められた。

 以上より、インフリキシマブ+MTXによる早期からの積極的治療は、QOLの改善に優れるのみならず、長期的にみれば経済面でも優れた治療であることが示唆された。Van Den Hout氏は、「今回の発表は2年間の追跡であったが、より長期に追跡していけば、インフリキシマブを早期から開始するアドバンテージはいっそう明確になるだろう」と結んだ。

※1 EuroQol
 欧州で開発された、医療従事者でなくとも簡易に測定できる健康関連 QOL(HRQOL)の尺度として幅広く用いられている調査表で、わが国では翻訳された日本語版EQ-5Dがある。調査票は 5項目(移動の程度、身の回りの管理、ふだんの生活、痛み・不快感、不安・ふさぎ込み)からなる3段階選択式解答法と VAS(Visual Analogue Scale)による患者の健康状態の自己評価により構成されている。回答の組み合わせがスコア化(効用値)され、1.0が最上の健康状態、0が死の状態を表す。

※2 TTO(time trade off:時間得失法)
 個人の好みによるQOLの算出方法で、現在の健康状態(罹患状態)での余命年と完全な健康状態で生きる何年と交換するかという、QOLと生存期間を比較する概念をスコア化するもの。例えば、末期癌で余命1年とされた場合に、もし完全に健康な状態で何カ月生きることができたら同じ価値があると考えるかを尋ねる。完全に健康な状態で3カ月生きることが、闘病生活の1年と同等であると考えた場合には、その健康を損ねた状態で生きることの期待効用は3/12(月)=0.25となる。