「ボツリヌス療法は変形性膝関節症の強い痛みを軽減し、身体機能も高めた」と話すMaren Mahowald氏

 ボツリヌス神経毒A型の関節内注射で、変形性膝関節症による難治性の疼痛が改善する可能性が見えてきた。無作為化プラセボ対照二重盲検試験で明らかになったのは初めて。米国ミネアポリス退役軍人医療センター(Minneapolis VA Medical Center)のMaren Mahowald氏らがLate-Breakingポスターセッションで発表した。今回は1カ月間の結果だが、2007年1月までに3カ月間の結果をまとめ、8月には試験を終了する予定だという。

 ボツリヌス神経毒A型(BoNT/A)は、ボツリヌス菌が産生する神経毒の1つで、神経ペプチドの放出を阻害し、運動神経終末の受容体の機能を妨げることによって、痛みや炎症の軽減に働くと考えられている。一般に変形性関節症の痛みには局所性鎮痛薬や非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)などが使われるが、副作用のため継続服用できない患者も少なくない。

 試験の対象は、中等度から重度の痛みのある変形性膝関節症の患者37人。無作為に2群に分け、一群にはボツリヌス神経毒A型(100ユニット)とリドカインを、一方のプラセボ群には生理食塩水とリドカインを関節内に注射した。プラセボ群の患者2人が1回目の治療の前に試験から外れたため、35人に対し1カ月、3カ月、6カ月で痛みの評価を行うこととした。

 さらに数値的評価スケール(NRS:0〜10)による痛みの強さで、2群に分けたところ、中等度(4.5以上7未満)群は17人、強度(7〜10)群は18人となった。1カ月後の痛みの評価は、変形性関節症の痛みや機能性の指標であるWOMACスコアを用いた。

 その結果、強度群では、治療後1カ月で治療群のWOMAC総合スコアは27%の改善(p=0.018)が見られたが、プラセボ群では14%(p=0.19)にとどまっていた。またWOMACのサブ項目である疼痛のスコアも有意に減少し(p=0.006)、身体機能スコアも有意に改善した(p=0.033)。一方、中等度群では有意な変化はなかった。

 また重度群で、NRSによる痛みの強さが30%改善した人は治療群では55%、50%以上改善した人は44%を占めたが、プラセボ群ではいずれも33%だった。有害事象は、治療群4人、プラセボ群5人に治療側に局部的な痛みや軽度の腫張が見られたが、重度の有害事象はなかった。

 このことから研究グループは、ボツリヌス療法は「臨床的にも統計的にも変形性膝関節症の強い痛みを軽減し、身体機能も高めた」と結論付けた。効果がどれほど継続するかは、今後行われる「6カ月間の試験で分かるだろう」としている。