80歳以上の超高齢者に降圧治療を行って果たして効果は得られるのか−−。この問いに対して、「高血圧治療に年齢制限はない」という明快な答えが出された。大規模臨床試験HYVETによって、降圧薬治療の有意な脳卒中リスク低下が確認されたためだ。英国Imperial College LondonのNigel S. Beckett氏(写真)らが3月31日、第57回米国心臓学会のLate Breaking Clinical Trialで発表した。

 HYVETは、80歳以上の超高齢者を対象にした二重盲検プラセボ比較試験である。登録基準は、80歳以上、収縮期血圧が160-199mmHg内で、拡張期血圧110mmHg未満など。140mmHg未満、6カ月以内の脳卒中既往、認知症、あるいは日常的な看護の必要な症例は、除外された。主要評価項目は、全脳卒中だった。
 
 試験では2カ月間全例にプラセボ投与をした後に、プラセボ群(1912例)と積極的治療群(1933例)に無作為に割り付けた。積極的治療群では、150/80mmHgを下回ることを目標値に利尿薬indapamide SR1.5mgを投与し、2ないし4mgのACE阻害薬perindoprilを追加した。

 ベースラインでは年齢84±3歳、平均血圧173/91±9/8mmHg。積極的治療群の血圧は、試験開始後1年で150/80mmHgレベルに達し、その後も下がり続け、5年目には140/80mmHg未満となっていた。一方、プラセボ群も試験開始後1年で160/85mmHg、5年目で150/80mmHg近くまで下がっていた。追跡期間の中央値である1.8年時点で、積極的治療群とプラセボ群の血圧値の差は、収縮期血圧で15mmHg、拡張期血圧で6mmHgと積極的治療群で低くなっていた。

 主要評価項目である全脳卒中は、積極的治療群のプラセボ群に対するハザード比は、−34%(95%信頼区間、0.46−0.95、p=0.025)となり、積極的治療が有効であることが明らかになった。総死亡は同じく−28%(0.59−0.88、p=0.001)、致死性脳卒中は−45%(0.33−0.93、p=0.021)、心血管死は−27%(0.55−0.97、p=0.029)、心不全は−72%(0.17−0.48、p<0.001)、心血管イベントは−37%(0.51−0.71、p<0.001)だった。

 安全面では、重症な有害事象は、プラセボ群で448例だったのに対し、積極的治療群では358例と有意に少なかった(p=0.001)。

 Beckett氏らは、超高齢者に対する降圧薬治療のエビデンスが得られたとし、HYVETの結果は今後の治療ガイドラインに影響を与えるだろと考察した。

 なお、2007年7月12日に、データ安全監視委員会は、主要エンドポイントの設定有効性境界を超え、また、総死亡の有意な減少が認められたとし、治験の終了を勧告。これにより本試験の患者診察は、予定より早期の治験終了となった。