ONTARGET(The Ongoing Telmisartan Alone and in Combination with Ramipril Global Endpoint Trial)試験の最終結果が3月31日、第57回米国心臓学会のLate Breaking Clinical Trialで発表された。

 レニン・アンジオテンシン系(RAS)抑制薬であるACE阻害薬アンジオテンシンII拮抗薬ARB)については、脳、心、腎などの心血管系臓器に対し保護作用を示すことが既報の臨床成績から明らかになっている。しかし、ACE阻害薬とARBの心血管イベント抑制効果に違いがあるか否かは不明であり、両者を直接比較した大規模試験はまだない。ONTARGET試験はこの問題の解答を得るべく実施された史上最大規模の臨床研究である。

 今回ONTARGET試験の結果を報告したカナダ・マクマスター大のSalim Yusuf氏(写真)によれば、ARBの有効性がACE阻害薬と同等か否かという疑問は、2000年に発表されたHOPE(Heart Outcomes Prevention Evaluation)試験の成績から生じたものである。この試験では、心血管疾患のハイリスク患者約9000例を対象にACE阻害薬の心血管イベント抑制効果をプラセボと比較しているが、ACE阻害薬は心筋梗塞、脳卒中、心血管死などの発生率を有意に低下させたものの、咳、血管浮腫などの副作用が高率に認められ、治療の忍容性に問題があることも判明した。したがって、ARBの有効性が少なくともACE阻害薬と同等であり、かつ副作用が低減するならば、治療の有用性は大きく向上するであろう。また、RAS系抑制薬の評価が高まるなかで、ACE阻害薬とARBの併用により心血管イベント抑制効果がさらに改善するか否かにも関心が集まっているが、本試験ではこの問題も検証された。

 ONTARGET試験は世界40カ国から733施設が参加した多施設共同二重盲検試験である。被験者は年齢55歳以上、冠動脈疾患、脳卒中、末梢動脈疾患または臓器障害をともなう糖尿病に罹患しているハイリスク患者である(ただし、心不全患者は除外)。試験薬にはACE阻害薬ラミプリルとARBテルミサルタンが使用された。ACE阻害薬に対する忍容性があり、コンプライアンスも良好な2万5620例がラミプリル10mg単独(R群:8576例)、テルミサルタン80mg単独(T群:8542例)、ラミプリル10mg・テルミサルタン80mg併用(R・T群:8502例)の3群に無作為割付された。有効性評価のための主要評価項目は心血管死、心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全による入院からなる複合エンドポイントである。これらイベントの発生率を治療群間で比較するため、平均56カ月間、経過を観察した。

 治療前の3群の血圧は約142/82mmHgとほぼ同等であったが、治療にともなう降圧度はラミプリル群−6.0/−4.6mmHg、テルミサルタン群−6.9/−5.2mmHg、併用群−8.4/−6.0mmHgであり、テルミサルタン単独および2剤併用の降圧度がラミプリル単独に比べ若干低かった。

 主要評価項目についてはラミプリルとテルミサルタンの間で非劣性検定がおこなわれたが、イベント発生率はR群16.46%、T群16.66%であり、差はみられず、テルミサルタンのラミプリルに対する非劣性が証明された。先に触れたHOPE試験ではうっ血性心不全による入院を除く心血管死・心筋梗塞・脳卒中が主要評価項目と定められたが、同じエンドポイントで解析してもテルミサルタンのイベント抑制効果はラミプリルと同等だった。

 ラミプリル・テルミサルタン併用の効果はラミプリル単独のそれと比較されたが、主要評価項目の発生率に差はみられず、併用による有用性は認められなかった。なお主要評価項目の解析結果は、すべて収縮期血圧について補正しても同じであった。

 副作用による治療中止の頻度を比較した結果、T群ではR群に比べ軽度の低血圧は高頻度であったものの、咳と血管浮腫の発生率は著明に低く、テルミサルタンによる忍容性の改善が示唆された。R・T群はR群に比べ低血圧、失神、下痢、腎機能低下などの副作用が有意に高頻度であり、忍容性、安全性に問題のあることが判明した。

 以上の成績についてYusuf氏は、「心血管疾患リスクの高い患者の治療において、テルミサルタンはラミプリルに代る心血管保護薬として使用できること、その心血管イベント抑制効果はラミプリルと同等だが、忍容性、安全性からみて信頼性の高い薬剤であることが明らかになった」と述べ、心血管疾患リスクの高い患者の治療において、ARBがACE阻害薬と並ぶ有力な選択肢になったとの見解を示した。