ST上昇心筋梗塞患者に対するPCI時に血栓吸入を併用すると、術後の再還流レベルと臨床転帰が向上することが分かった。臨床試験TAPASによって明らかになったもので、オランダGroningen大のTone Svilaas氏(写真)が3月30日、第57回米国心臓学会で発表した。

 プライマリPCIは、ST上昇心筋梗塞患者の血行再建において有効だが、アテロームプラークあるいは血栓の破片が梗塞責任動脈の下流で狭窄や閉塞を起こし、微小血管閉塞が生じることで心筋の再還流レベルが低下する危険がある。

 Svilaas氏らは、このリスクを減らすためには、血栓吸引の併用療法が有効と考え、血栓を手作業で吸引する療法を評価する前向き無作為化試験を行った。

 対象は、2005年1月から2006年12月までの間に、Groningen大学病院を受診したST上昇心筋梗塞可能性例の中から、急性心筋梗塞を示唆する症状が30分以上継続し、かつ発症から12時間未満で0.1mV超のST上昇を示す患者1071人を登録した。

 患者は、PCI中に血栓吸引を実施するグループ(血栓吸引群、535人)と通常のPCIを行うグループ(通常群、536人)に無作為に割り付けた。追跡期間は、割り付けから30日後まで。

 主要エンドポイントは、血管造影で確認される冠微小循環傷害(MBGが0または1)に設定した(MBGは3が正常)。また、2次エンドポイントは、ST上昇の完全な消失、ST波の異常の継続がないこと、標的血管の血行再建、再梗塞、死亡、主要な心イベントなどとした。

 血栓吸引は、病理組織学的にアテローム血栓の成分が検出された場合に「成功」と判断した。成功と判定された患者は72.9%に上った。

 最終的に、術後にMBGが評価できた症例は97.5%だった。このうち、MBGが0または1だったのは、血栓吸引群17.1%、通常群26.3%で、オッズ比は0.65(95%信頼区間、0.51-0.83、p<0.001)だった。

 また、術後の心電図検査は97.7%に行われたが、ST上昇の完全な消失は、血栓吸引群で56.6%、通常群で44.2%に、それぞれ確認された。オッズ比は1.28(95%信頼区間、1.13-1.45、p<0.001)。同様に、ST波の異常の継続なしは、血栓吸引群53.1%、通常群40.5%で、オッズ比1.31(95%信頼区間、1.14-1.50、p<0.001)だった。

 このほか、30日以内の大出血(血栓吸引群3.8%、通常群3.4%、p=0.11)、死亡(同2.1%と4.0%、p=0.07)、再梗塞(同0.8%と1.9%、p=0.11)で、標的血管の血行再建術や主要な心イベントにも有意差はなかった。

 これらの結果からSvilaas氏らは、「PCIと血栓吸引の併用療法は、再還流レベルと臨床転帰を向上させる」と結論した。