石巻赤十字病院の門前に3軒ある薬局の1つ、ファーマライズ薬局石巻店。被災後の数日間、外部との連絡が途絶える中で、同店を薬剤師1人で支え続けた管理薬剤師の瀬戸聡氏に、話を聞いた。【3月20日に電話インタビュー】


ファーマライズ薬局石巻店の瀬戸聡氏。3月24日に撮影。

 地震の当日、石巻赤十字病院の薬剤部スタッフが慌てて「薬を貸してほしい」と薬局に来られました。インスリン製剤や吸入剤、エンシュアリキッドなど、求められるままに貸しました。

 大きな地震だったので被害者が多いことは分かっていましたし、病院は忙しくなることが予想されました。薬を借りに来られた時に薬局が閉まっていたら困るだろうし、何か手伝えることがあるかもしれないと思い、翌日の土曜日も日曜日も薬局を開けて待機していました。停電していて、暖房がなくてすごく寒かったのですが。

 病院の状況はよく分からなかったのですが、頻繁にヘリコプターで患者さんが運ばれて来て、患者さんがたくさん集まっていることから、大変な忙しさであることは想像できました。そこで、門前にある他の2軒の薬局の薬局長と話をして、病院薬剤部に「何か手伝えないか。我々は外来の処方箋を受けることが可能だ」といった旨を伝えました。それがきっかけとなって、13日の日曜日に「院外処方箋を出すのでよろしく頼む」という連絡が病院薬剤部からあり、少しずつ処方箋が出始めました。

 初日こそ10枚ほどでしたが、翌月曜日からは毎日100枚近くの処方箋を応需するようになり、薬局は一気に多忙を極めました。

 来局する患者さんのほとんどが、赤十字病院の処方箋を持って来ることはいつも通りです。普段と違うのは、処方箋に書かれた薬が、しばしば当薬局に備蓄されていないこと。患者さんは、家が津波で流され、いつも飲んでいた薬がないため受診する方がほとんどですが、普段は別の医療機関を受診しているため、定期服用薬が石巻赤十字病院の採用品目とは限らないのです。

 医師は、患者さんからこれまで飲んでいた薬を聞き取り、処方箋に書きます。でも、門前の薬局では石巻赤十字病院の採用品目に合わせて備蓄していますから、当然、備蓄にないものが多くなるというわけです。

 特に困ったのは精神科の薬です。実は、石巻赤十字病院には精神科がありません。そのため、当院にも薬があまりないのです。私自身、精神科の疾患に馴染みが薄く、使い慣れていない薬ばかりです。

 ある患者さんが、「幻覚が見える」と訴えて、処方箋を携えて薬局に来られました。3日分の処方のところ、薬が2日分しかありません。仕方がないので2日分だけを渡し、「次に来るまでに薬をそろえておくから」と話しました。卸さんは、かなりがんばってくれていたので、この患者さんの薬も3日後にはそろえることができました。とにかく、その時点、その時点でできる、最善の方法を探りながら調剤した数日間だったように思います。

 15日になってようやく電話が通じて、宮城県薬剤師会から応援の薬剤師が来てくれました。19日からは会社から薬剤師が来てくれて、ずいぶん楽になりました。

 病院薬剤部とは密に連携をとるようにしていて、毎晩、私たち3薬局のスタッフが病院薬剤部に行き、合同カンファレンスを行っています。日々変化する状況を互いに確認し合い、問題点を挙げ、少しでもスムーズに医療活動ができるように話し合います。

 ここ数日、当初より少しだけ余裕ができたこともあり、薬剤部の薬剤師が医師の診察に付き添って、できるだけ石巻赤十字病院の採用品目で処方できるようにサポートしてくれています。

 精神科の薬のこともカンファレンスで話したところ、病院に備蓄があるものはできるだけ院内で出すようにしてくれています。薬剤部の人たちとは、これまでほとんど顔を合わせたことがなかったのですが、今ではチームとして一緒に働いている実感があります。

 病院長や薬剤部長も、「門前の薬局のスタッフは、病院のスタッフと同じだ」と言ってくださり、食事も病院職員の給食と同じものを、門前の3薬局のスタッフに提供してくださっています。

 現地ではまだまだ人手が不足しています。徐々に避難所を回るなどの活動も始まっています。今後も、病院スタッフと一緒になって貢献していきたいと思っています。(談)

【一部変更】2011.3.24に、以下のように内容を一部変更しました。
・ご本人の申し出により、内容を一部変更(削除)し、記事タイトルも変更しました。