全国に約85店舗を有するファーマライズは、東北地方にも多くの店舗がある。震災後、福島市内の店舗と、宮城県石巻市にある店舗で調剤業務に当たる、同社関東エリア長の山崎敏江氏に、被災地の様子を聞いた。【3月20日に電話インタビュー】


ファーマライズの山崎敏江氏。

 19日(土曜日)に石巻に到着し、今日(20日)から石巻赤十字病院の門前にあるファーマライズ薬局石巻店で調剤業務をしています。ここの薬局の普段の応需処方せん枚数は1日40〜50枚なので薬剤師1人なのですが、被災後は1日100枚以上を応需する状態が続いているため、私が応援に来たという状況です。

 震災後、会社の本部ではこの石巻店と連絡がとれず、スタッフの安否だけは確認できたのですが、状況がまったく分からない日々が続きました。やっと連絡がとれたのは15日。ずっと薬局を開けていたことを聞いて、みんな非常に驚きました。

 ここ(石巻店)に来る患者さんは、ほとんどが津波の被害に遭った人たちです。基本的には、日赤で診療を受けて処方箋を持って来られています。

 この薬局に来る前は、私は福島の薬局にいましたが、石巻で人手がいると聞き、希望して来ました。家族には「あなたが行く必要があるのか」と止められましたが、「誰かが行かないと」という思いがありました。

 福島からは、車で入りました。警察署に緊急車両の申請を行い、緊急車両証を発行してもらいました。これがあれば、高速道路が通れます。警察署の対応にもよると思いますが、私の場合は「どうしても石巻まで人と薬を運ばなくてはならない」と伝えたところ、比較的簡単に発行してくれました。これがあれば、ガソリンも入れてもらいやすくなります。

 余談になりますが、ガソリンは、緊急車両が優先と言われていますが、実はガソリンスタンドの裁量なのです。ガソリンが足りなくて患者宅を訪問できないといった話を聞きますが、緊急車両の指定を受けていなくても、ガソリンスタンドで「どうしても薬を運ばなくてはならない」と事情を話せば、入れてくれるスタンドもあるかもしれません。

 一口に被災地と言っても、場所によって状況がかなり違います。福島では、南相馬市など津波被害のあった地域から避難してきた患者さんはおられましたが、ご自宅がある患者さんが大半でした。ですから、保険証のない患者さんには、いったん自費でご負担いただいていました。しかし、石巻では、保険証を持ってくる人はほとんどいません。家が全壊しているケースも多いので、今はすべてを未収で処理をしています。

 患者さんの雰囲気もずいぶん違います。福島では、原発のことがあり、患者さんはピリピリした雰囲気がありました。患者さんだけに限らず、スタッフも含め街中の人が、いつどのタイミングで避難したらいいかと不安でいっぱいの様子でした。

 それに比べて石巻では、皆さん疲れた様子ですが、「みんなで助け合ってがんばろう」という雰囲気があり、比較的穏やかです。「ありがとう」と言う言葉を聞くことも多いように思います。

 そんな風に状況は違いますが、どこの薬局も患者さんが溢れているのは一緒です。着の身着のままで逃げてきて定期薬がなくて受診する患者さん、薬がなくなるかもしれないという不安からの受診、いつどうなるかわからないので早めに受診したという患者さんなど、薬局によりますが、どこもいつもの倍ぐらいの患者さんが来られているのではないでしょうか。

 そのうえ、「手帳だけで薬をもらえると聞いたが」「手帳がないけど、どうすればいいのか」「病院と連絡がつかない」などの相談が多く、その対応に時間がかかっており、薬局は混雑を極めています。

 薬は、卸さんががんばってくれているので、私が知っている限りではどこの薬局も本当に困った状況にはなっていませんでした。もちろん欠品はありますが、代替薬で何とかなるケースがほとんどです。特に、先発品はほとんど問題なく入ってきています。ただ、ジェネリックはあまり入ってきていません。なので、ジェネリックを飲んでいた人の薬を先発品に変えざるを得ないことが少なくありません。

 今は緊急時ですので、薬を必要としている人に必要な薬を出すことが第一ですが、この状況がひと段落したときに未収の患者さんの請求をどうするのかを考えると、とても頭が痛いです。保険証のない患者さんには、名前や住所、連絡先を聞いていますが、代理で薬を取りに来る人も多く、とても正確とは思えないものが多いのも事実です。石巻では、避難所にいる複数人の薬を、一人が代表して取りに来ているケースが多く、先日も20人分を取りに来た方がおられたそうです。それら全員分の住所をきちんと把握するには無理があります。

 この店舗の場合、今は被災して家が全壊している患者さんで、いつもは日赤以外の病院に通っている人がほとんどですが、来週あたりから普段、ここに通院していて家屋の被害を受けていない患者さんが来局するようになるでしょう。自己負担なしの患者さんとそうじゃない患者さんが混在するとまた管理が大変です。今はそんなことを考えても仕方ないし、やれることをやるしかないのですが。

 そうした問題はさておき、石巻では薬局が本当にがんばっています。うちの薬局も含め、門前の3薬局が日赤病院としっかり連携して、薬剤師としての仕事をきちんとやってくれたようです。特に震災直後は想像を絶する大変さだったと思いますが、それを全力で乗り切ってくれたことを、同じ薬剤師として今、誇りに感じています。(談)