宮城県薬剤師会からの応援要請を受け、北海道薬科大学のボランティアチームとして宮城県入りし、宮城県医療チーム薬剤師班として現地で医療活動に当たっている北海道薬科大学准教授の野呂瀬崇彦氏に、現地の様子を聞いた。【3月20日に電話インタビュー】


北海道薬科大学の野呂瀬崇彦氏。3月21日夜、現地で撮影。

 3月16日に宮城県入りして、17日から活動を始め、今は、宮城県石巻市にある石巻高校の避難所の仮設診療所でボランティア薬剤師として動いています。

 地震発生後、地元の医師や看護師らが、いくつかの避難所に仮設診療所を立ち上げ診療を始めました。しかし、薬やマンパワーが足りないことから、より効率よく医療を提供するために、複数の診療所を統合させ、今、私がいる石巻高校の仮設診療所に医療資源を集中させることになりました。私は、その立ち上げから携わりました。今は、医師が4人、薬剤師2人、看護師6人ほどで、この診療所を維持しています。

避難所になっている石巻高校の相談室を仮設診療所にしています。もともとあった間仕切りを利用して診察室と待合室兼薬局をわけています。津波の被害にあった石巻市立病院の医師、近隣の開業医の医師が入れ替わりで4〜5人が診察にあたっています。

 1日の患者数は300人にも上り、うち服薬者は8割以上です。患者さんの多くは、家が津波で流されています。いつも飲んでいる定期薬がなくなってしまって受診するケースが多く、慢性疾患の患者が圧倒的に多い。加えて、避難所では風邪が増えてきていますので風邪薬、さらには便秘薬や下痢薬など消化器系の薬が必要な人も増えてきています。今後、インフルエンザなどの感染症が増えてくるのではないかと危惧しています。

 という状況ですので、いわば診療所の薬剤師として仕事をしているわけですが、状況は普通の診療所とはまるで違います。いつも飲んでいる定期薬が欲しいといって来た患者さんには、どんな薬を飲んでいたかを聞くことから始めなければなりません。飲んでいた薬を特定できても、その薬がここにあるとは限りません。医師は、必ずしも内科医とは限りませんし、医師が普段使っている薬が、ここにそろっているわけではありません。

 そんな状況下では、薬剤師の知識やスキルがとても役に立つと強く感じています。患者さんが言う薬やヒートの色から、服用していた薬の見当を付けることができますし、同じ薬がない場合、同種同効薬を提案することもできます。即答できなくても、医師たちが「今日の治療薬」で調べながら診療をするよりも、私たちが調べた方が早いといえるでしょう。

待合室兼薬局です。卸さんからバケットをお借りして薬品棚にしています。

 結果的に、患者さんには普段飲んでいるものとは違った薬を渡すことが多いので、安心して服薬してもらうために、いつも以上にきちんと説明する必要があります。服用時点が異なる薬を投与することもありますので、飲み間違えないような説明も重要です。

 この仮設診療所は当初、薬袋がなくて、ヒートのまま患者さんに薬を渡していたのですが、今では高校から封筒を寄付してもらい、そこに用法・用量を書いて渡しています。避難してきている高校生たちが手伝ってくれて、あらかじめ「1日 回 錠」と書いてくれているので、数字だけを書き込んで渡せるようになり、ずいぶん手間が省けるようになりました。

 OTC薬の相談も受けています。支援物資にOTC薬がありますので、医師がいない時間帯に避難所の人たちから相談を受ければ、OTC薬で対応しています。地元の医師は、診療時間を終えれば自宅へ帰って行きますが、私はここの避難所に寝泊まりしていますので、24時間対応できます。

 昨日(19日)、やっと電話が通じるようになり、医薬品卸から薬を入れてもらえるようになりました。これまでは医師たちが診療所から持ち出した薬が頼りだったのですが、流通が改善しつつある今、薬についてはそれほど心配していません。問題はマンパワーです。私自身はボランティアで駆けつけた身ですから、明後日には北海道に戻らなくてはなりません。

 ここに来てから、何度も何度も「薬剤師さんがいてくれて本当によかった」と医師や看護師に言われました。それだけ必要とされているのに、3日後のここの薬剤師の手配はついていません。避難所に身を寄せる方は少しずつ減ってはいますが、まだまだたくさんおられます。この診療所を維持するためにマンパワーが必要です。

 地元の薬剤師たちはみんな被災者ですから、現場に出るのは難しい場合も多い。外からの支援が不可欠です。何度も繰り返しますが、今現場には薬剤師が絶対に必要です。医師と看護師、他のスタッフとの連携で、より適切な医療が可能になるのです。

 ぜひ、被災していない地域の薬剤師に立ちあがってほしい。宮城県薬剤師会のホームページでボランティアを募集していますので、ぜひ応募してください。

 日ごろ調剤業務にあたっていない薬剤師であっても、薬の仕分け作業はできます。衛生状態が悪くなってきていますので、役所などに勤める公衆衛生の知識を持つ薬剤師も活躍できます。現場では今、いろいろなフィールドの薬剤師が必要とされているのです。(談)