仙台市を中心に約50軒の調剤薬局を運営するオオノで業務推進課在宅担当主任を務める斎藤瑞枝氏に、被災地での薬局の様子と薬剤師の奮闘の様子を聞いた。【3月20日に電話インタビュー】


株式会社オオノの斎藤瑞枝氏。

 地震当日、私は東北大学病院前にあるひかり薬局大学病院前調剤センター薬局の上階にある事務所で仕事をしていました。大きな揺れに驚いて1階の薬局に降りて行き、不安がる患者さんに寄り添って揺れがおさまるのを待ちました。

 その後は、余震が続く中、スタッフの安否確認や店舗の被害状況の把握を行いました。翌日は土曜日でしたので、医療機関のドクターと話をして営業をした店もありました。14日の月曜日からは、複数店舗の薬局を開けています。

 「処方箋がなくてもお薬が受け取れます」という情報が、テレビなどで流れるようになってからは、患者さんがどんどん薬局を訪れるようになり、今はその対応に追われています。常用していた薬であることが確認できれば、処方箋がなくても薬を出してもいいことになっていますが、津波の被害に遭った人たちは、当然、保険証やお薬手帳もありません。かりつけ薬局があれば薬歴があるのでしょうが、津波被害があった地域の方は、かかりつけ薬局が機能していないことがほとんどです。薬の確認作業は困難を極めていますし、住所や氏名を聞き取るのにも非常に時間がかかります。

 私は、東北大学病院前の薬局に主にいますが、ここには津波の被害にあった方が多く来られていて、1日中混雑しています。通常は、土日は休みですが、この土日は薬局を開けることにしました。

 車で遠くから薬局に来られた患者さんは、次にはガソリンがなくて来られない可能性もあるわけですから、できるだけ薬を多く渡してあげたいと思うのですが、在庫のことを考えるとそれもできません。

 今は、1週間分の薬をお渡しするようにしています。ここは400人分×4日分の在庫で回している薬局で、1〜2週間の長期処方の方が多いので、1週間ずつお渡しすればしばらくは薬が持つと思っていましたが、でも1週間はあっという間に経ってしまいました。先週、取りにきた患者さんの薬がなくなり、また来局されることになります。チラージンSのように全国的に足りない薬もあると聞きます。物流もだいぶ戻ってきていると聞きますが、本当に大丈夫なのかという不安が常にあります。

 もちろんいろんな不便はありますが、仙台市中心部の場合、「今これがなくて非常に困っている」という具体的なことはありません。一番の問題は、先行きの見えない不安です。薬は入ってくるのか、ガソリンの供給は間に合うのか、いつまでがんばればいいのか……。仕方がないことなのですが、その不安でみんなが疲れているように思います。

 でも、本当にみんながんばってくれています。当社は、石巻市で唯一機能している石巻赤十字病院の門前にも薬局がありますが、ずっと開けて対応しています。当然、スタッフもみんな被災しています。家に帰れない状況が続き、見かねた日赤病院から宿直室に泊ってもいいといってくださったと聞きました。

 多賀城市にある2軒の薬局はどちらも津波に飲み込まれました。1軒は、1カ月前にオープンしたばかりの薬局。地震後、津波警報が出てすぐに、スタッフは全員、車で逃げたので無事でした。それが何よりの救いです。

 在宅患者さんのことも気になります。施設や在宅にも薬を届けなくてはならないのですが、そろそろガソリンがなくなってきています。ガソリンがなくなってしまったら、薬をお届けすることもままなりません。緊急車両は優先的にガソリンを補給できるようですが、薬局ではその指定を取れていません。

 今回のことで「在宅」は患者の近くの薬局が行うことが大切だとつくづく感じました。震災のことを考えると、自転車で行ける距離の薬局が担当すべきです。自転車ならすぐに駆けつけることができます。今、言っても仕方がないことなのですが。

 もう一つ、今回の震災で強く感じたのは、薬局は一般企業とは明らかに違うということです。当たり前の話なのですが、やはり私たちは医療提供施設なんだと改めて認識しました。病院が機能している限り、薬を患者さんに出す使命があるんだと。

 他の企業の人であれば、地震があればスタッフをいち早く自宅へ返したり、自宅待機させるのでしょうが、私たちはそうはいきません。家が被災しても被災地から通って、とにかく薬局を維持し続けなければなりません。当社のスタッフは全員無事でしたが、家族の状況までは把握しきれていません。スタッフのほとんどは被災しています。状況はそれぞれですが、避難所から薬局に通っている人もいます。

 避難所では、救援物資が届き始めOTC薬も届いている。仕事を終えて避難所に戻り、薬の仕分けを手伝っているスタッフまでいます。

 薬局は混雑していて、どこもいつも以上に患者さんが押し寄せています。車が使えない、交通機関がないといった理由で出勤できないスタッフもいて、薬局は忙しさを極めています。それでもみんながんばって薬の供給を守っています。(談)