■症例2


「年齢とともにトイレが近くなりました。特に夜、毎晩3回ほど尿意で目が覚め、質の良い睡眠が取れません」

 尿は毎回、まとまった量が出ます。薄い色をしています。昼間は逆にあまりトイレに行きません。歳とともに寒がりにもなりました。手足が冷えます。舌は赤みが少なく、白っぽい色をしており、湿っぽい舌苔が付いています。

 この人の証は「腎陽虚(じんようきょ)」です。成長・発育・生殖ならびに水液や骨をつかさどる五臓の腎の機能(腎気)が不足している体質です。老化や慢性疾患により、体の機能が衰えて冷えが生じると、この証になります。津液を全身に行き渡らせる機能が低下し、津液が停滞するため、昼間はむくみやすくなります。

 この体質の場合は、漢方薬で体を温めて腎陽を補い、頻尿を治します。代表的な処方は八味地黄丸(はちみじおうがん)です。この人は八味地黄丸を服用することにより夜間の頻尿が少しずつ改善され、1年後には夜トイレに起きるのが1回で済むまでになりました。

 むくみがひどい場合は、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)を使います。

 同じような腎気の不足による頻尿でも、尿の色が濃く、量が少ない場合もあります。その場合は「腎陰虚(じんいんきょ)」証です。六味地黄丸(ろくみじおうがん)で頻尿を改善していきます。

■症例3


「緊張すると、トイレが近くなります。トイレに行ったばかりなのに、またトイレに行きたくなります」

 毎回の尿量は、さほど多くはありません。昼間は頻尿なのに、夜寝ている間は一度もトイレに起きません。舌は赤い色をしています。

 この人の証は「肝鬱気滞(かんうつきたい)」です。体の諸機能を調節(疏泄:そせつ)する臓腑である五臓の肝の気(肝気)の流れが滞っている体質です。ストレスや緊張が持続すると、この証になります。肝気の流れの悪化の影響が膀胱に及び、膀胱内の尿量が少なくても尿意を感じやすくなっています。頻尿、尿意促迫、赤い舌などは、この証の特徴です。残尿感、便秘と下痢を繰り返す、などの症状を伴う場合もあります。

 この証の場合は、漢方薬で肝気の鬱結を和らげて肝気の流れをスムーズにし、頻尿を治していきます。代表的な処方は四逆散(しぎゃくさん)です。この人は四逆散を服用し、3カ月後には頻尿が気にならないくらいになりました。便の調子もよくなったと喜ばれました。

 いらいら、のぼせ、口渇などの熱証が強い場合は、加味逍遙散(かみしょうようさん)を使います。

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 腎が弱い人には、くるみや山芋など腎気を補う食品、緊張でトイレが近くなる人には、玉ねぎや香味野菜など気の流れをよくする食品を意識して食べるなど、日常生活のアドバイスも同時にいたしましょう。