もう一つ、生理周期が安定しないときによくみられるのは、以下の証です。

 六つ目は「腎虚(じんきょ)」証です。腎は五臓の一つで、生きるために必要なエネルギーや栄養の基本物質(精[せい])を貯蔵し、人の成長・発育・生殖をつかさどります。精は血の生成源として重要ですが、その精が少ないために血が不足し、生理周期が不安定になります。生活の不摂生、過労、慢性疾患による体力低下、加齢などにより、この証になります。漢方薬で腎の機能を補い、ホルモンバランスを調えて、自然な生理周期へと体調を安定させていきます。

■症例1


「生理が早く来たり遅れたりします。経血量も多かったり少なかったり、その時によってまちまちです」

 生理がきちんと28日で来ることもありますが、ストレスが強かったり、緊張したりする日が続くと、生理が乱れます。経血には血の固まりが混じります。もともといらいらしやすい性格ですが、生理前はいらいらがさらに激しくなり、乳房が強く張ります。舌は紅色で、その上に黄色い舌苔が薄く付着しています。

 この人の証は「肝鬱気滞(かんうつきたい)」です。からだの諸機能を調節(疏泄)する臓腑である五臓の肝の気(肝気)の流れが滞っています。ストレスや緊張により、この証になります。肝気の流れの悪化の影響がホルモンバランスの失調に及び、生理が乱れます。生理周期や経血量が不安定、経血中の血の固まり、生理前のいらいらや乳房の張り、紅色の舌、黄色く薄い舌苔などは、この証の特徴です。便秘と下痢を繰り返す、ため息が多い、などの症状を伴う場合もあります。

 この証の人に対しては、肝気の鬱結を和らげて肝気の流れをスムーズにしていく漢方薬で生理不順を治していきます。代表的な処方は四逆散(しぎゃくさん)です。服用を始めて5カ月目くらいから生理が安定して来るようになりました。その後もしばらく服用し続け、いらいらや生理前の不調も軽くなりました。

 肝鬱気滞でみられる症状の他に、怒りっぽい、ヒステリー、のぼせ、口渇、頭痛などの熱証がみられるようなら「肝火(かんか)」証です。その場合は加味逍遙散(かみしょうようさん)を使います。

 もう一つ、生理周期が不安定な場合によくみられる証は「腎虚(じんきょ)」です。生活の不摂生、ホルモン薬などの長期服用、過労、慢性疾患などにより、腎が蔵する精(腎精)が減って血が不足し、それが肝の疏泄作用を失調させ、生理周期が不安定になります。生理時に腰痛が生じ、めまい、耳鳴り、足腰のだるさなどの症候が表れます。腎精を補う六味地黄丸(ろくみじおうがん)や八味地黄丸(はちみじおうがん)を使って体調を立て直し、生理を安定させます。