“おなか”は、様々なことが引き金となって痛くなります。ここでは主に下腹部の消化器系の腹痛について見ていきます。なお、胃痛や尿路系、婦人科系の腹痛については、別項をご参照ください。

 分かりやすい腹痛の原因には、飲食の不摂生や、腹部の冷えがあります。脂っこい物や、甘くてこってりした物、辛い物、刺激物の取り過ぎや、新鮮でなく不潔な物、冷たい物の食べ過ぎや飲み過ぎにより、体内で湿邪、熱邪、寒邪などの病邪が生まれ、腹痛が生じます。

 また、食生活には問題がなくても、腹痛が起きることはよくあります。消化器系の機能が低下したり、ストレスが掛かったりして発生する腹痛です。

 胃腸の機能は五臓六腑の脾胃、ストレス感受性は五臓の肝(かん)と深い関係にあります。

 は六腑の一つであり、飲食物を受け入れ(受納)、消化し(腐熟)、食べた物を人体に有用な形(清:せい)に変化させます。そしてその清を脾に渡した後、残りのかす(濁)を下の小腸・大腸に降ろします(降濁)。

 は五臓の一つであり、清を吸収して気血を生成し、全身に輸送していきます(運化)。胃の降濁作用に対し、脾は清を肺に持ち上げ(昇清)、運化します。

 も五臓の一つであり、体の諸機能を調節(疏泄:そせつ)します。自律神経系や情緒の安定、気血の流れと深い関係があります。脾胃の消化吸収機能も、肝が調節しています。

 これら脾胃や肝の機能が失調すると、腹痛が生じます。

 腹痛の証(しょう)には、以下のようなものがあります。

 一つ目は「食滞(しょくたい)」証です。暴飲や暴食、消化が悪い物を取ることなどにより、脾胃に負担が掛かっている状態です。胃の降濁機能が失調し、腹痛が生じます。漢方薬で消化吸収機能を促進して停滞を緩和させ、腹痛を治します。

 二つ目は「寒邪内阻(かんじゃないそ)」証です。冷たい飲食物の摂取や寒い外界の刺激により、寒邪が体内に侵入した状態です。寒邪が脾胃の機能を停滞させるため、腹痛が生じます。おなかを温める力の強い漢方薬で腹痛を緩和させていきます。

 三つ目は「湿熱(しつねつ)」証です。湿熱は体内で過剰な湿邪と熱邪が結合したものをいいます。脂っこい物、刺激物、味の濃い物、なま物やアルコール類の日常的あるいは大量摂取、不潔な物の飲食などにより、この証になります。湿熱邪が腸に侵入し、腹痛が発生します。漢方薬で湿熱を除去し、腹痛を改善していきます。