■症例2


「典型的な下半身太りです。特に午後から足がむくみ、夕方には足がぱんぱんになり、ブーツを履くのがきつくなります」

 下半身は、むくみだけでなく冷えもあります。夏のクーラーも苦手です。のぼせはありません。トイレにはあまり行かない方です。白っぽい色の舌をしています。

 この人の証は「腎陽虚(じんようきょ)」です。水液をつかさどる五臓の腎の機能が低下し、さらに冷えを伴う体質です。腎虚のために水分の三焦気化(さんしょうきか)が滞り、内湿(ないしつ)が停滞し、むくみが生じています。三焦気化については前回のコラムを参照してください。

 この体質の場合は、体を温めて腎機能を強める漢方薬を使います。代表的な処方は八味地黄丸(はちみじおうがん)です。尿量の減少が著しい場合は牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)を用います。この症例の人は牛車腎気丸を服用し、1年近くかかりましたがむくみが解消し、それとともに冷えもかなり改善されました。

■症例3


「むくみが気になります。特に生理前にひどくなります」

 ストレスがあると、よく生理が乱れます。イライラしやすく、これも生理前にひどくなります。イライラの後に落ち込むこともあります。生理痛も重い方です。舌はやや赤い色をしています。舌苔は薄く、白い色です。

 この女性の証は「肝鬱気滞(かんうつきたい)」です。体の諸機能を調節する五臓の肝の気が滞りやすい体質です。そのため、三焦気化の調節がスムーズに行われず、内湿がたまり、むくみが発生します。イライラ、落ち込み、生理痛、生理不順などはこの証の特徴です。

 この証の人に対しては、肝気の流れをスムーズにする漢方薬を使います。代表的な処方は四逆散(しぎゃくさん)です。この女性は四逆散を飲んで半年くらいでむくみが軽くなりました。生理前のイライラや落ち込みも楽になったようです。

 もし、のぼせや口の渇きがあれば、熱証を和らげる効果がある加味逍遙散(かみしょうようさん)を使います。疲れやすい、むかむかするなどの症候もあるようなら、小柴胡湯(しょうさいことう)がいいでしょう。

 生理の量が少ない、顔色がくすんでいるなどの症状があれば「血虚(けっきょ)」証です。その場合は当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)を用います。

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 慢性的なむくみに関係が深い「内湿」の症例ばかりを挙げましたが、内湿ばかりがむくみの原因ではありません。湿気の多い環境や飲食物が、内湿がたまりやすい体調不良に相乗効果を及ぼしてむくみを悪化させる場合もあります。

 湿邪が体内に停滞しやすい体質を「湿滞(しったい)」証といいます。この場合、停滞する水分を正常に流れるようにする漢方薬でむくみを解消していきます。代表的な処方は五苓散(ごれいさん)です。腰から下の冷えが顕著な場合は「寒湿(かんしつ)」証として苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)を使います。

 これとは逆に、ほてりや口の渇きがある場合は熱証をともなう「湿熱(しつねつ)」証ですので、猪苓湯(ちょれいとう)や茵蔯五苓散(いんちんごれいさん)がいいでしょう。必要に応じて、今回紹介した症例のような内湿の根本的な体質改善の処方と併用するなどして、活用します。

 また、心疾患によるむくみに木防已湯(もくぼういとう)、肝・腎疾患に伴うむくみに分消湯(ぶんしょうとう)などを使う場合もあります。アレルギーなどで生じる突発的なむくみは「風水(ふうすい)」証と考えられ、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)や越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)を使います。