前回および前々回で述べた市販薬の販売環境調査の際に、私たちは口頭による質問も併せて行いました。一種のSP(模擬患者)のように1つのストーリーを作り、薬剤師(専門家)がどのように指導してくれるかを採点してみたのです。

 対象薬は、H2ブロッカーのX薬(当時の指定医薬品)です。この薬の注意書きには、
・心臓の病気で医薬品の投与を受けている人は、服用しないこと。
・高齢者(85歳以上)は、服用前に医師・薬剤師に相談すること。
・3日間服用して症状の改善が見られない場合は、服用をやめて医師・薬剤師に相談すること。
・2週間以上続けて服用しないこと。
−−と書かれています。そこで、次のような患者背景を設定しました。

・患者:80歳代で狭心症のある高齢者。循環器科に通院している。1カ月ほど前から胃痛が続き、市販のX薬を飲んでいるが、症状が改善しない。胃痛での受診はしていない。
・質問内容:同居の義父(義母でも可)に頼まれて、X薬を買いに来た。2週間以上服用しているが、症状が良くならないようだ。まだX薬を続けるか? それとも薬を変えた方がいいか?

 現実には、上記のような患者背景を初めから過不足なく語る消費者は、ほとんどいません。私たちも「この薬飲んでても効かないんだけど、他のに変えた方がいい?」というような不足だらけの質問から始めて、薬剤師が背景を掘り下げて聞いてくれた時だけ、こちらの情報を提供するようにしました。原則として、「薬の相談がしたい」と薬剤師を呼び出してもらいましたが、薬剤師が不在で、他のスタッフが対応した場合でも、質問を行いました。

 ご承知のように、こうした質問への対応を客観的に評価することは非常に困難です。できる限り主観性を排除するために、以下のような採点方法を採ってみました。

 (1)受診状況を確認し、受診を勧めた場合、(2)長期服用のリスクを何らかの表現で説明した場合、(3)その他、消費者にとって有益な説明があった場合は、それぞれにつき「+5ポイント」とする。逆に、(4)誤解を招くような説明があった場合、(5)無理に薬を売りつけようとした場合は、それぞれにつき「−10ポイント」とする。それでもある程度主観が入るのは、免れませんが。

 相談に対応してくれた49店舗のうち、薬剤師が対応したのは32店舗、それ以外のスタッフによる対応が17店舗でした。この49人の一人ひとりの評価点を見ると、薬剤師でもそれ以外のスタッフでも、−20ポイント(最低点)から+15ポイント(最高点)までバラツキがあり、非常に個人差が大きいことがわかりました。

 ただ、平均すると、薬剤師の説明の方がそれ以外のスタッフに比べて、ポイントが高い傾向が見られました(そうでなくては困りますよね)。

 また、チェーンごとの平均点を比較すると、前述した「販売環境の優れているチェーン」では、口頭質問への対応も最もポイントが高い結果が得られました。これは社内研修の効果? それとも採用の問題なのでしょうか?

 この口頭質問の際、「その説明は患者の誤解を招くかも」と思われる事例にも、数々遭遇しました。その具体例については、次回にご紹介します。