大動脈弁狭窄症AS)患者にACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬ARB)を投与すると、重症度にかかわらず予後が改善することが明らかになった。結果は、J Am Coll Cardiol誌8月2日号に掲載された。

 一般的にASでは、血管拡張薬の使用により重度の低血圧を起こす可能性があるため、ACE阻害薬およびARBは相対的禁忌となっている。しかし、これらの薬剤が左室肥大、有害な左室リモデリング、左室機能不全、アテローム動脈硬化に有効であることが臨床データから示されており、AS患者にも有益である可能性がある。

 そこで英国の研究者らは、ACE阻害薬またはARBの投与がAS患者の予後に及ぼす影響を調べるため、長期間の大規模後ろ向きコホート研究を実施した。

 対象は、1993年9月から2008年7月に英国スコットランドTayside(人口40万人超)の住人で新規にASと診断された患者。これらの患者は、ナインウェルズ病院循環器科の心エコーデータベースで特定した。得られた心エコーのデータに、英国ダンディー大学が構築している処方箋データベースから処方箋の内容を関連付けるとともに、検査データ、入院および死亡に関するデータ、プライマリケアのデータを、患者固有の番号(community health index number)に基づき関連付けた。

 ACE阻害薬またはARBを2回以上処方されたAS患者をACE阻害薬/ARB投与群、ACE阻害薬/ARBを処方されたことのないAS患者を対照群とした。

 総死亡および心血管イベント(心血管死または心血管疾患による入院)をエンドポイントとした。心血管疾患による入院は、心筋梗塞、狭心症、心不全、脳血管発作、アテローム動脈硬化、動脈瘤、末梢血管疾患による入院とした。主な死因が循環系疾患である場合に、心血管死と判断した。

 Cox回帰モデルおよび傾向スコアを用いて解析し、長期解析ではKaplan-Meier生存曲線を作成し、lob-rank検定を用いて両群の差を評価した。

 合計2117例のAS患者が特定された(平均年齢73±12歳、男性46%)。1585例(75%)が重度でない(軽度から中等度の)ASで、532例(25%)が重度のASだった。ACE阻害薬またはARB投与を受けていた患者は699例(33%)だった(ACE阻害薬:611例、ARB:88例)。