A 疫学・診断
1.疫学
2.診断
3.病期分類(ステージング)(AJCC第 7版、2009)
B 治療
1.切除可能な限局性腎細胞がん
2.転移性腎細胞がん
文献

1.疫学

1)罹患数・死亡数

「がんの統計 ’11」では、腎臓がんは、膀胱、前立腺を除くその他の尿路系臓器と含めて集計されており必ずしも純粋な腎がんだけの統計ではないが、2010年の腎がんの罹患数は 1万 4886人で悪性新生物全体の 2.1%であった。死亡数は 7560人で悪性新生物よる死亡全体の 2.1%であった [1]。

また、2002年腎癌研究会の調査による腎がんの年齢調整罹患率は、人口10万人に対して、男性 8.2、女性 3.7と男性に多い傾向にある。

2)リスク因子

腎がんのリスク因子として、喫煙、肥満、高血圧、透析(もしくはそれにかかわる後天性の多発嚢胞症)、アスベストやテトラクロロエチレン曝露などの職業性曝露などが報告されている。

また、基礎疾患として von Hippel-Lindau(VHL)病、結節性硬化症、常染色体優性遺伝性の多発性嚢胞腎が腎がん発症のリスクと考えられている。

3)予後

(1)腎細胞がんの予後分類

UCLAのグループは、TNM分類、病理組織分類、performance status(PS)を組み合わせ、5段階のグループに分けた UCLA integrated staging system(UISS)を提唱した [2](表1)。

(2)転移性腎がんに特化した予後分類

(1)Memorial Sloan-Kettering Cancer Center(MSKCC)予後分類Motzerらは、1975年から 1996年の間に MSKCCで行われた 24の臨床試験に登録された 670人の転移性腎がん症例における臨床所見と予後の関連を調査し、(i)KPS< 80%、(ii)血清 LDH>施設基準値上限の 1.5倍、(iii)補正カルシウム値> 10 mg/dL、(iv)ヘモグロビン値<施設基準値下限、(v)腎摘出術未施行の 5項目を予後不良因子とした。この結果、予後良好群(予後不良因子なし)、予後中等度群(予後不良因子 1-2個)、予後不良群(予後不良因子 3個以上)と分類し、それぞれの生存期間中央値は 20か月、10か月、4か月であった [3]。

しかしながら、この調査において、約 20%の症例は前治療としてサイトカイン療法や化学療法などを受けていた。このため、インターフェロン治療を初回治療として受けた 463人の患者に限定した、同グループにおけるフォローアップ研究が実施された。この結果、上記(i)〜( iv)の予後不良因子に、「診断からインターフェロン治療までの期間が 1年未満」という因子を加えた 5項目が予後不良因子とされた。予後良好群(予後不良因子なし)、中等度群(予後不良因子 1-2個)、不良群(予後不良因子 3個以上)の生存期間中央値は、それぞれ 30か月、14か月、5か月であった [4](図1)。

Cleveland Clinicのグループは、353人の未治療転移性腎がん症例に対して、MSKCCリスク分類の検証を行った。この研究の多変量解析では、MSKCCリスク分類であげられた 5項目の予後不良因子の他に、「放射線の前治療歴あり」、「転移臓器(肝、肺、後腹膜リンパ節)の数が 2もしくは 3個」の 2項目が追加された [5]。

(2)Hengの予後分類

Hengらは、スニチニブ、ソラフェニブ、ベバシズマブの 3つの vascular endothelial growth factor(VEGF)経路を標的とした薬剤で治療を受けた645人における臨床所見と予後の関連を調査した。多変量解析の結果、(i)KPS< 80%、(ii)診断から治療開始まで 1年未満、(iii)ヘモグロビン値<施設基準値下限、(iv)補正カルシウム値>施設基準値上限、(v)好中球数>施設基準値上限、(vi)血小板数>施設基準値上限の 6項目を予後不良因子とした。予後良好群(予後不良因子なし)、中等度群(予後不良因子 1-2個)、不良群(予後不良因子 3-6個)の生存期間中央値は、追跡期間中央値 24.5か月の時点でそれぞれ、到達せず、27か月、8.8か月であった [6](図2)。

2.診断

1)検診

腹部超音波検査や CTの技術的な進歩、その普及により、偶然に腎腫瘤が発見されるということも増えているが、これまで行われたスクリーニングに関する数々の試験の結果、スクリーニング検査における腎がんの偶然の発見率は 0.07-0.2%と少なく [7, 8]、腎がんの早期発見を目的としたルーチンの腹部超音波検査は推奨できない [9]。ただし、VHL病、多発性硬化症、長期間の透析などの腎がん発症の高リスク患者においては、ルーチンの腹部超音波検査は推奨される。

2)症状

古典的な 3徴候として、側腹部痛、血尿、腹部腫瘤が知られているが、現在これらの徴候がみられる患者は全体の約 9%といわれている。現在は、超音波や CTで偶然に発見される腎がんが増加している。その他、体重減少、10.発熱、貧血を契機に発見されることもあるが、これらの場合、進行腎がんであることが多い。

3)診断

(1)血液検査

腎がんに頻度の高い腫瘍マーカーは存在しない。上記予後不良因子に示したような好中球数増加、血小板数増加、貧血、LDH上昇、高カルシウム血症、CRP上昇などを認めることがある。

(2)画像検査

腎がんの大多数を占める淡明細胞がんでは、造影 CTにて早期動脈相から皮質相で濃染し、実質相から排泄相で早期に造影効果が消失(wash out)することが多い。これに対して、乳頭状がんや嫌色素性がんではこのような造影効果を示さない場合があるので注意が必要である。

(3)生検

前述のように、画像診断にて腎がんの組織型についてある程度の判断はつくものの、病理組織検査における組織型の確定診断は、治療の反応性と予後にもかかわってくるため、非常に重要な検査となる。腎がんは血流が豊富なため、針生検では出血や腫瘍の散布のおそれがあり、標準的には外科的処置による切除が行われることが多い。

4)病理組織分類

(1)淡明細胞がん(clear cell carcinoma)

75-85%。近位尿細管由来。VHL遺伝子異常を約 60%に認める。

(2)乳頭状がん(papillary carcinoma)

10-15%。近位尿細管由来。

low-gradeで予後の良い type Iと、high-gradeで予後の悪い type IIに分類される。

(3)嫌色素性がん(chromophobe carcinoma)

5%。集合管の間在細胞由来。

(4)オンコサイトーマ(oncocytoma)

3-7%。集合管の間在細胞由来。良性腫瘍。

腎がんとの併存も 10-32%に認め [10]、急速な増大を示す場合など、注意が必要である。

(5)集合管がん(ductal cell carcinoma)

1%未満と非常にまれ。予後不良。

3.病期分類(ステージング)(AJCC第 7版、2009)

1)TNM分類

2)病期

1.切除可能な限局性腎細胞がん

1)根治的腎全摘除術 ✚✚✚

根治的腎全摘除術は、I期から III期までの腎細胞がんに対する標準治癒治療である。この手術では、腎、副腎、腎周囲脂肪およびジェロタ筋膜を摘出する。

術前にリンパ節腫脹を認めない場合にリンパ節郭清を行うか否かについて は、ランダム化第 III相試験が EORTCにより実施された。追跡期間中央値12年の結果、生存率に差はみられなかった [11]。この試験では、リンパ節郭清を行ったうち、リンパ節転移陽性であった症例は 4%に過ぎず、リンパ節腫脹を認めない場合、リンパ節転移を起こしている可能性が低いことが示された。これらの所見をふまえ、根治的腎摘除術にルーチンにリンパ節郭清は加えないことが多い。

2)腹腔鏡下腎摘除術✚✚

腫瘍径が 10 cm以内の T1、T2腎がんに対して、腹腔鏡下腎摘除術は、開腹腎摘除術と比べ、がん特異的生存率に差を認めず [12]、術後合併症、出血量、入院期間には差を認めないが、術後疼痛が少ない [13]。このため、腹腔鏡下腎摘除術は、開腹腎摘除術の代替となりうる。ただし、腫瘍径の大きい T2腫瘍に関しては、T1に比べ輸血を必要とするような出血をはじめ、手術合併症が多く、開腹術への移行も多い [14]。このため、T2腎がんに対する腹腔鏡下手術は、症例を選択して行うべきである。

3)腎部分切除✚✚

近年、画像診断の発展に伴い、超音波検査などにより偶然発見される小径腎がんが増加している。これに伴い、腎機能の温存を目的とした腎部分切除術の考えが普及している。いくつかの後向き研究の結果、4 cm以下(T1a)の腎がんに対する腎部分切除術は、根治的腎摘除術と比べ、がん制御性において同等であり、腎機能保護の面で有用であると考えられており、標準治療のひとつと考えられる [15]。

4)術後化学療法

これまでに、根治的腎摘除術を受け再発ハイリスクの腎がん患者に対してインターフェロンやインターロイキンによる術後化学療法を検証する、いくつかのランダム化比較試験が行われているが、どの試験においても生存に寄与しないという結果が出ている [16, 17, 18]。

2.転移性腎細胞がん

転移・再発腎細胞がんは予後不良であり、ほぼすべての転移性腎細胞がん患者は治癒不能である。治療の中心は全身化学療法になるが、限られた患者において原発切除や転移病変切除などに対する外科的局所治療との併用が有用である。

1)全身化学療法

近年、腎がんの分子生物学的病態の解明が進んだことにより、VEGFやmTORの経路を阻害する多くの薬剤が開発された。2005年〜2012年までに、転移性腎細胞がんに対して米国 Food and Drug Administration(FDA)が承認した分子標的薬は、ソラフェニブ(sorafenib)、スニチニブ(sunitinib)、ベバシズマブ(bevacizumab)、テムシロリムス(temsirolimus)、エベロリムス(everolimus)、パゾパニブ(pazopanib)、アキシチニブ(axitinib)の7剤にのぼる。わが国ではこのうち、ベバシズマブとパゾパニブを除く 5剤が腎がんに対して承認されている(2012年 6月にアキシチニブも承認された)。このように多くの薬剤が開発され、様々なセッティングで第 III相試験が実施されているが、すべての薬剤を一対一で比較することは不可能であり、さらに最適な薬剤の使用順序を決めるために、順列組み合わせで第 III相試験を計画した場合、天文学的な数の臨床試験が必要となり、現実的には実施不可能である。

本稿では 2012年の American Society of Clinical Oncology(ASCO)Annual Meeting Educational Bookで発表されたアルゴリズム(表2)をもとに、治療ラインごとに概説を行う。

(1)ファーストライン治療(表3)

ガイドラインでは、MSKCC予後分類別に治療法が決定されている。

(*クリックすると拡大表示します)

(1)MSKCC予後良好群+予後中間群に対する治療

(a)sunitinib 50 mg/日 day1-28 6週毎 ✚✚✚ [19]

(b)interferon alpha 900万単位 3回/週+ bevacizumab 10 mg/kg

2週毎 ✚✚✚ [20, 21]

2006年以降、ファーストライン治療のセッティングで様々な第 III相試験が行われてきたが、2012年の American Society of Clinical Oncology(ASCO; abstr. # 4501)で TIVO-1(ソラフェニブと tivozanibを比較した第 III相試験) の結果が発表されるまでの試験はすべて、インターフェロン(interferon: IFN)かプラセボを対照としたものであった。INFを対照とした試験において、IFNの無増悪生存期間中央値が 5.0-5.4か月だったのに対して、スニチニブは 11か月(HR= 0.42 ;95% CI 0.32-0.54、p< 0.001)[19]、ベバシズマブ+IFNは 10.2か月(HR= 0.63 ;95% CI 0.45-0.72、p= 0.0001)[20]、8.5か月(HR= 0.72 ;95% CI 0.61-0.83、p< 0.0001)[21]と有意に延長を認めた。

一方、ソラフェニブは、IFNを対照としたランダム化第 II相試験が実施された。この試験では、MSKCC予後分類における予後良好群が各群 50%以上と、他の試験より多く含まれていたにもかかわらず(表 3参照)、無増悪生存期間中央値が 5.7か月と IFNと同等の結果しか得られなかった [22]。

また、パゾパニブはプラセボを対照とした第 III相試験が実施され、無増悪生存期間中央値はプラセボ群 4.2か月に対してパゾパニブ群 9.2か月(HR= 0.46 ;95% CI 0.34-0.62、p< 0.0001)と有意な延長を認めた [23]。しかしながら、この試験では前治療にサイトカイン療法が含まれていない純粋なファーストラインの症例は全体の 50%程しか含まれておらず、サブグループ解析ではあるが、前治療歴のない症例における無増悪生存期間中央値は 11.1か月と、10.スニチニブやベバシズマブ+ IFNと遜色のない結果であった [23]。

これらの臨床試験の結果より、効果の面から考えると、現時点のファーストライン治療の候補はスニチニブもしくはベバシズマブ+ IFNといえるが、わが国ではベバシズマブが承認されておらず、実際はスニチニブが標準治療と考えられる。パゾパニブは、アルゴリズム上はファーストライン治療としてすすめられているが、前述したように、対照群がプラセボであることや、純粋な無治療症例のデータがサブグループ解析の結果しかないことから、結果は限定的なものと考える。現在、パゾパニブとスニチニブを比較したCOMPARZ試験(NCT00720941)が実施中であり、その結果が待たれる。

この他に、治療選択には、それぞれの薬剤の副作用プロファイリングを考慮する必要がある。たとえば、mTOR阻害剤であるテムシロリムスは薬剤性肺障害や糖代謝異常を高頻度に起こすことが知られており、呼吸機能低下や糖尿病をもつ患者では使用が困難な場合がある。また、VEGFR阻害剤は高血圧の合併症が知られており、スニチニブでは 4999症例を含むメタアナリシスにおいて、すべてのグレードの高血圧は 21.6%(95% CI 18.7-24.8%)、高グレードの高血圧は 6.8%(95% CI 5.3-8.8%)発症するとされている [24]。また、ソラフェニブでは 4599症例を含むメタアナリシスにおいて、すべてのグレードの高血圧は 23.4%(95% CI 16.0-32.9%)、高グレードの高血圧は5.7%(95% CI 2.5-12.6%)発症するとされている [25]。スニチニブもしくはソラフェニブを使用した 10の臨床試験に登録された 1万 255症例を含むメタアナリシスの結果、動脈血栓塞栓症の発症頻度は 1.4%(95% CI 1.2-1.6%)、対照群に対する相対危険度は 3.03(95% CI 1.25-7.37、p= 0.015)であった [26]。これらの所見より、高度の高血圧や心血管障害をもつ患者では使用が困難である場合がある。このように、患者の合併症と副作用プロファイリングの観点から薬剤を選択することも必要である。

(2)MSKCC予後不良群に対する治療

temsirolimus 25 mg/body毎週 ✚✚✚ [27]


これまでに実施された第 III相試験の多くは、MSKCC予後分類で予後不良群に含まれる症例が 10%以内であった。一方、Hudesらは、74%の予後不良群を含む対象に、テムシロリムス、IFN、テムシロリムス+ IFNの 3群比較試験を実施した。この結果、テムシロリムス単剤が、主要評価項目である全生存期間を有意に延長した [27]。この結果をもって、このセッティングにおける標準治療はテムシロリムス単剤とされている。

(2)セカンドライン治療(表4)

セカンドライン治療は、前治療の種類によって、サイトカイン療法後、VEGF阻害剤後、mTOR阻害剤後の 3つに分けられる。サイトカイン療法後のセカンドライン治療のほうが他の 2つに比べ結果が良好になる傾向にあるが、これは、分子標的薬時代以前から長年サイトカイン療法を受けた後に病勢増悪をきたした症例が含まれていたり、初発時に予後良好群にサイトカイン療法が選ばれやすかったりなど、セレクションバイアスがかかることが原因と予想される。このため、サイトカイン療法後のセカンドライン治療とVEGF阻害剤や mTOR阻害剤などの分子標的薬後のセカンドライン治療の結果は、しっかりと分けて考える必要がある。

(*クリックすると拡大表示します)

(1)サイトカイン療法後の治療

(a)axitinib 5 mg/回 1日 2回(10 mg/回まで増量が許容) ✚✚✚ [30]

(b)pazopanib 800 mg/日 ✚✚✚ [23]

TARGET試験は、サイトカイン療法後の二次治療として、ソラフェニブとプラセボを比較したランダム化第 III相試験であり、主要評価項目は全生存率であった。しかしながら、無増悪生存期間に有意な差を認めたため(HR= 0.44 ;95% CI 0.35-0.55、p< 0.01)、その時点からプラセボ群のクロスオーバーが許容され、その影響を受け、全生存期間に有意な差を認めなかった(HR= 0.88 ;95% CI 0.74-1.05、p= 0.146)[31, 32]。この試験の結果を受け、ソラフェニブがこのセッティングにおける標準治療とされていた。

ソラフェニブとアキシチニブ、2つの VEGF receptor(VEGFR)-tyrosine kinase inhibitors(TKI)同士を比較したランダム化第 III相試験(AXIS試験)では、主要評価項目である無増悪生存期間がアキシチニブ群で有意に延長した(HR= 0.665 ;95% CI 0.544-0.812、p< 0.0001)[30]。さらに、前治療がサイトカイン療法であった症例のサブグループ解析では、アキシチニブvs.ソラフェニブの無増悪生存期間中央値が 12.1か月 vs. 6.5か月(HR= 0.464;95% CI 0.318-0.676、p< 0.0001)と、その差がさらに顕著に表れた結果となった [30]。ただし、このサブグループにおける無増悪生存期間中央値が全体の結果に比べ 2倍近く延長している理由のひとつに、全体の患者背景に比べ、このサブグループの各群ともに MSKCC予後良好群の患者が約 10%多く含まれているというセレクションバイアスが考えられる(表4参照)。これらの結果を踏まえたうえでも、今まで実施されたサイトカイン療法後におけるVEGFR-TKI治療の無増悪生存期間中央値は、ソラフェニブ 5.5か月 [31]、パゾパニブ 7.4か月 [23]、スニチニブ(第 II相試験)8.7か月 [33]であり、アキシチニブの結果はこれらを大きく上回る。このため、サブグループ解析ではあるものの、サイトカイン療法後のセカンドライン治療のセッティングで、アキシチニブは標準治療のひとつと考えられている。

パゾパニブは、プラセボを対照としたランダム化比較第 III相試験で約50%にサイトカイン療法後の症例が含まれていた [23]。そのサブグループ解析では、パゾパニブはプラセボに対して有意差をもって無増悪生存期間を延長していた(HR= 0.54 ;95% CI 0.35-0.84、p< 0.001)。この結果もサブグループ解析であり、対照がプラセボではあるが、パゾパニブの無増悪生存期間中央値はサイトカイン療法後の他の薬剤のそれと比べても遜色なく、標準治療のひとつとして考えられている。

サイトカイン療法後のセカンドライン治療というセッティングでの臨床試験の結果を総合すると、パゾパニブはサブグループ解析の結果であり、エビデンスのレベルがやや下がる。また、ソラフェニブは AXIS試験の全体でも、サブグループ解析でもアキシチニブより劣った結果であった。このため、臨床効果という観点からは、このセッティングでの標準治療として最もすすめられるのはアキシチニブと考えられる。

(2)VEGF阻害剤後の治療

(a)everolimus 10 mg/日 ✚✚✚ [34]

(b)axitinib 5 mg/回 1日 2回(10 mg/回まで増量が許容) ✚✚✚ [30]

このセッティングでは、アキシチニブとエベロリムス、レベル 1(注)のエビデンスを有する選択肢が 2つ存在する。

[注]Oxford Centre for Evidence-based Medicine-Levels of Evidence(March 2009)参照。

RECORD-1試験は、スニチニブ、ソラフェニブのどちらかもしくは 2剤両方を使用後に、mTOR阻害剤であるエベロリムスの効果についてプラセボを対照として行われた二重盲検ランダム化比較第 III相試験である。この試験の主要評価項目である無増悪生存期間は、エベロリムス vs.プラセボで4.9か月 vs. 1.9か月(HR= 0.741; 95% CI 0.573-0.958、p< 0.0107)であった [34]。RECORD-1試験における前治療の内訳(表 5)をみると、エベロリムス群277人中、前治療にスニチニブとソラフェニブの両方が投与されている症例が 72人(26%)含まれていたり、サイトカイン療法などの後に VEGFRTKIが使用されている症例も含まれていたりと、実際はサードライン治療である症例が含まれていることがわかる [35]。また、前治療の VEGFR-TKIが 1剤であった 205例と、2剤であった 72例の無増悪生存期間中央値は 5.4か月と 4.0か月であり、治療ラインが少ないほうがエベロリムスの無増悪生存期間が長いことが示されている [35]。このような結果を踏まえると、RECORD-1試験の全体の治療効果は、VEGFR-TKI後のセカンドライン治療としては過小評価されている可能性がある。

AXIS試験において、前治療がスニチニブであった症例のサブグループ解析では、アキシチニブ vs.ソラフェニブの無増悪生存期間中央値がそれぞれ4.8か月 vs. 3.4か月(HR= 0.741; 95% CI 0.573-0.958, p< 0.0107)であった [30]。この試験では、RECORD-1のようにスニチニブ投与前にサイトカイン療法など他の治療が入ることを許容していないため、純粋なセカンドライン治療の効果を表していると考えられる。

これらの試験の結果から、VEGFR-TKIをファーストライン治療として使用した際、セカンドライン治療に同じく VEGFR-TKIを使うのか、mTOR阻害剤であるエベロリムスを使うのかという疑問が生じる。現時点では、この両者を直接比較した試験は行われておらず、この 2つの試験から間接的な比較を行うしかないが、RECORD-1試験でファーストライン治療がスニチニブであったエベロリムス群 43人の無増悪生存期間中央値は 4.6か月 [35]と、AXIS試験でファーストライン治療がスニチニブであったアキシチニブ群192人の無増悪生存期間中央値 4.8か月 [30]と遜色ない結果であり、この 2つの選択肢は現時点では同等と考えられる。このため臨床現場では、副作用プロファイルの違いなどにより使い分けることになる。

(3)mTOR阻害剤後

ファーストライン治療で mTOR阻害剤を使用した場合のセカンドライン治療におけるレベル 1エビデンスは存在しない。このため、これまでに使用していない分子標的薬を逐次(sequential)に使用することが標準治療として行われることが多い。

2)逐次治療(sequential therapy)について

転移性腎がんに対して現在使用可能な薬剤は 7剤(わが国では 5剤)であり、これを患者の状態に合わせて逐次投与する sequential therapyが一般的に行われている。上述したように、ファーストライン治療、セカンドライン治療のセッティングそれぞれにおいて、無増悪生存期間を延長させることが証明された薬剤は存在するが、その最適な組み合わせや順序については現時点では不明である。現在、VEGF阻害剤と mTOR阻害剤の組み合わせや VEGFR-TKI同士の sequential therapyを検証する様々な臨床試験が実施中である(表6)。しかしながら、これらの試験における主要評価項目は無増悪生存期間であり、また、サードライン治療以降に使用できる薬剤が多く残されていることから、sequential therapyが患者にとって真のエンドポイントである全生存期間の延長に寄与するかについては今後も議論が続くと考えられる。

3)原発切除について

(1)サイトカイン時代

サイトカイン治療の時代に、転移巣を有する腎がんに対する腎摘除術の有用性を検証した 2つのランダム化比較試験(EORTC 30947試験 [36]とSWOG 8949試験 [37])が存在する。いずれも腎摘除術+ IFN投与群と IFN投与単独群を比較したものであり、腎摘除術が生存期間を延長することが示されている。 EORTC 30947試験は総登録症例数が 85人と少数例の試験ではあるが、平均生存期間中央値は、腎摘除術+ IFN群 vs. IFN単独群で 17か月 vs. 7か月(HR= 0.54 ;95% CI 0.34-0.94、p= 0.03)と、腎摘除術+ IFN群で有意に生存率の延長を認めた [36]。

SWOG 8949試験では、生存期間中央値が、腎摘除術+ IFN群(120人)vs.IFN単独群(121人)で 11.1か月 vs. 8.1か月(HR不明、p= 0.05)と、EORTC30947試験と同様に、腎摘除術+ IFN群で有意に生存率の延長を認めた [37]。

これらの試験の対象者はすべて performance status(PS)0-1であり、それぞれの試験で約半数が PS 0と比較的全身状態のよい患者が多く含まれている。また、年齢の中央値または平均値も 60歳前後であった。このように、サイトカイン治療を行う場合、腎摘除術に引き続いて IFNを投与することは標準治療と考えられるが、PS良好であること、比較的若年であることなど、患者選択には十分注意する必要がある。

(2)分子標的薬時代

分子標的薬治療を受ける患者に腎摘除術を行うことの有用性は、いまだ不明である。ただし、これまで行われてきた分子標的薬の臨床試験の多くでは、80-100%の症例に前治療として腎摘除術が実施されており(表 3、4参照)、現在我々が有する分子標的薬のデータは、腎摘除術の効果も込みでみている可能性がある。現在、前治療歴のない転移性腎がんに対して、腎摘除術に引き続くスニチニブ投与群とスニチニブ単独群を比較したランダム化試験(CARMENA試験[NCT00933033])が実施中であり、この結果が待たれる。

4)転移切除について

転移巣を有する腎がんに対する、転移巣の外科的切除の有用性を検討したランダム化比較試験は存在しない。MSKCCで 1980年から 1993年の間に再発した 278人の転移性腎がんに対する後向き研究では、根治的転移巣切除術が実施された 141人の 5年生存率は 44%、非根治的転移巣切除術を実施された 70人の 5年生存率は 14%、非外科的治療を受けた 67人の 5年生存率は 11%であった [38]。また、多変量解析の結果、予後良好因子は、初回の単独再発、初回再発の根治的切除、腎摘除術からの再発までが長期間であることがあげられた [38]。

転移巣の外科的切除の有用性については、限定的ではあるがいくつかの後向き研究より、PS良好で、根治的完全切除が可能、再発までの期間が長いなど緩徐な病勢が予想される、など慎重に選択された患者において治療のオプションとなりうる。

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