A 終末期がん患者の予後予測
1.医師の予測
2.Palliative Performance Scale(PPS)
3.Palliative Prognostic Index(PPI)
4.Palliative Prognostic Score(PaP score)
5.終末期がん患者の一般的な経過
6.予後告知
7.臨死期の診断
B 事前計画(advance care planning)
1.患者の希望
2.いつ話し合うか
3.どんなことを話し合うか
4.心肺蘇生拒否の意思表示(do not attempt cardiopulmonary resuscitation: DNAR)
5.希望する療養場所(preferred place of care)、希望する死亡場所(preferred place of death)
6.在宅ホスピス、緩和ケア
C 臨死期の症状と対応
1.痛み
2.呼吸困難
3.終末期せん妄
4.死前喘鳴
D 終末期の輸液
1.適応
2.輸液治療による治療目標の評価
3.治療の実施
E 鎮静
1.鎮静の定義、施行率
2.鎮静を行う要件
3.鎮静の実際
4.鎮静時の家族のケア
F 終末期の包括的なケア
1.Liverpool Care Pathway(LCP)について
2.使用基準
3.患者の希望
4.身体的なニーズ
5.医療・ケアの見直し
6.家族の病状理解や希望
G 臨死期、看取りの対応
1.臨死期の対応
2.看取りの対応
文献

終末期の定義はないが、一般的に、治療不可の病態で予後 1-2か月以内を指すものとする。本稿では、特に看取り期(予後 1週以内)を中心に述べる。

がん種ごとの 5年生存率などの平均予後は、病期、分子生物学的特徴などに応じて調べられており、本書の該当項目を参照するとよい。一方、終末期〜臨死期の予後予測方法は、がん種にかかわらず共通の方法が開発されている。

1.医師の予測

終末期がん患者の系統的レビュー [1]では、担当医師の予測予後はしばしば実際の予後より長くなることが示されている。また医師 ─患者関係が長いほど、予後予測ははずれやすいとの報告 [2]もある。したがって、より客観的な予後予測方法が必要である。

2.Palliative Performance Scale(PPS)

終末期患者を対象に performance statusをスコア化する [3](表1)。

各スコアの平均予後(95%信頼区間)は、PPS 10%で 2日(2-2日)、20%で 4日(3-5日)、30%で 13日(12-14日)、40%で 24日(21-27日)、50%で 37日(32-42日)、60%で 48日(17-79日)、70%で 78日(25-131日)であった [4]。

3.Palliative Prognostic Index(PPI)

採血など特殊な検査を必要とせず、客観的な指標のみを用い、短期的な終末期がん患者の予後予測を行う。

表2において、合計点が6.5点以上の時、予後3週間未満である確率は感度83%、特異度85%であった。合計点が4点以上の時、予後6週間未満である確率は感度79%、特異度77%であった [5]。

4.Palliative Prognostic Score(PaP score)

主治医の予後予測を、客観的因子で補正する。終末期がん患者の中期的な生命予後予測を行う。

表3において、0-5.5点の場合、30日生存確率は> 70%、生存期間の 95%信頼区間は 67-87日であった。同様に 5.6-11点の場合、30日生存確率は 3070%、生存期間の 95%信頼区間は 28-39日であった。11.1-17.5点の場合、30日生存確率は< 30%、生存期間の 95%信頼区間は 11-18日であった [6]。

また最近の文献 [7]では、9点以上の場合、予後 21日以内の感度 69.9%、特異度 83.7%であった。5点以上の場合、予後 30日以内の感度 91.5%、特異度 57.7%であった。

5.終末期がん患者の一般的な経過

一般的な終末期の経過として、突然死(虚血性疾患など)、徐々に衰弱し変化が早まり死を迎える、徐々に衰弱し急変する(慢性心不全、COPDなど)、長期間ゆっくりと衰弱する(認知症、老衰など)、の 4パターンがある。がん患者においては 2番目のパターン、すなわち月〜年単位で徐々に衰弱し、月〜週単位で変化が速くなることが典型的である [8]。

外来がん患者の死亡前 6か月間において、PPSと Edmonton Symptom Assessment Scale(ESAS:症状の評価)の推移を調べたところ、PPSは徐々に悪化し、最後の 1か月で急速に悪化した。ESASでは、呼吸困難、眠気、 well-being、食思不振、倦怠感が次第に悪化し、最後の 1か月で顕著になった(図1)[9]。

6.予後告知

日本の外来がん患者が医師に求める説明内容を調べた研究 [10]では、予後告知を望む率は 50%、望まない率は 30%だった。また自分だけに悪い情報を伝えることを望む率は 13%、望まない率は 64%だったが、悪い情報をまず家族に伝えることを望む率は 7.5%、望まない率は 70%だった。以上より患者によって予後告知希望は異なり、悪い情報を伝えられる時は家族と共に聞きたい、と希望する患者が多い。

一方、予測予後を知ることが患者・家族にとって有用になりうる理由として、以下のことがあげられている [11]。

・患者、家族が治療の選択に参加できる。

・患者、家族が、余命を知ることによって生活上の問題を扱うことができる。

・患者が人生の実存的、スピリチュアルな問題を扱うことができる。患者が予後を知りたいと希望しているか、希望している場合に知ることでどのようなメリットがあるかを、医療チームで評価して判断することが必要である。

予後の告知方法として、Kielyらは、たとえば統計上中央値予後 12か月が予測される患者に対する方法として、以下を提案している [12]。

・患者の希望と求める情報を確認する。

・中央値 12か月ということは、50%以上は 12か月以上生存する意味である、と説明する。

・以下の 3例を示す。

典型例:半分が 6か月 -2年(平均の半分 -2倍)生存する。

最良の場合:10%が 3年以上(平均の 3-4倍)生存する。

最悪の場合:10%が 2-3か月以内(平均の 1/6)に亡くなる。

患者・家族の求める情報や想いに配慮しながら、予後の内容は幅をもって伝えることが重要である。

7.臨死期の診断

臨死期の目安として、採血や特殊な検査ではなく、日常生活動作の変化が参考になる。予後 2週間前後では、自力移動障害の頻度が高くなり始め、排泄や食事が自力では困難となる。予後が 1週間前後になると、内服困難となる。予後が数日になると、水分摂取、会話・応答が困難となる [13]。

死亡直前(数時間〜数日)になると、意識、呼吸、循環の特徴的な変化が出現する。緩和ケア病棟における亡くなる徴候の研究 [14]によると、死前喘鳴(後述「C-4.死前喘鳴」の項を参照)の出現率は 35%で平均予後 57時間、下顎呼吸の出現率は 95%で平均予後 7.6時間、四肢チアノーゼの出現率は80%で平均予後 5.1時間、橈骨動脈拍動不触の出現率は 100%で平均予後 2.6時間、と報告されている。アメリカなどの研究では、予後3日以内を示唆する徴候として、撓骨動脈拍動不触(陽性尤度比15.6)、下顎呼吸(同10)、尿量100mL/日以下(同15.2)、チェーンストークス呼吸(同12.4)、死前喘鳴(同12.4)が挙げられている[60]。また死亡 48時間前の徴候についての研究によると、血圧低下(収縮期血圧 20 mmHg以上の低下または拡張期血圧 10 mmHg以上の低下)と酸素飽和度低下(90%以下)を満たすと、陽性的中率 95.0%、陰性的中率 81.4%であった [15]。


1.患者の希望

米国の文献 [16]によると、望ましい死(good death)には以下の 6つの要素がある。

・痛みや症状のコントロール

・医療方針を医師と決める(clear decision making)

・死の準備をする(preparation for death)

・人生の完成(completion)

・他者に貢献する(contributing to others)

・医療者に人間性全体を肯定される(affirmation of the whole person)

欧米では、患者が病状を知り医療方針に積極的にかかわることが望ましい死のために不可欠である、と認識されている。

事前計画(advance care planning)とは、将来患者が判断能力を失った時にも患者の意向に沿った治療やケアが行われるよう、事前に話し合うことである。そのために shared decision making、すなわち医師・患者を含む複数(他の医療者、家族、友人など)で病状や選択肢の情報を共有し、望む治療について意見の一致を得る、方針決定の責任も共有する、というプロセス [17]を行う。事前に医師と終末期について話し合っていると、心肺蘇生やICU入院の率が低く、ホスピス入院時期が早まり、患者・家族の QOLが高まり、家族のうつ病率が低かった [18]。

日本で行われた、一般人や緩和ケア病棟で死亡したがん患者の遺族に聞いた望ましい死(good death)の研究 [19]によると、「望む場所で死にたい」を93-94%、「死の準備をしたい」を 86-89%に認めたが、「死を考えず普通のように過ごしたい」を 85-88%、「自分が死につつあることを知らずに死んでいきたい」を 53%、「悪い情報は伝えられたくない」を 42-44%、「お任せ(方針決定を医療者に任せる)の希望」を 59-63%に認めた。また韓国の終末期がん患者に聞いた研究 [20]では、21.5%は終末期であることを知らず、35.9%は他者に終末期の方針決定を任せた。病状の認識、方針決定に参加の有無は、QOLや Good Death Inventory(望ましい死に関する評価)で差がなかった。 一方、台湾の研究では、患者が病状を知らされ方針決定に参加した率が高いほうが Good Death Inventoryは高値であった [21]。

以上より、日本や東アジアでは、病状を知りたい希望、終末期の方針決定に参加することの希望は個人により差があり、医療者が評価して個別に対応することが重要となる。

2.いつ話し合うか

英国の general practitioner(GP)の論文 [22]によると、以下の時が終末期の方針について話し合うべき時期として記されている。

・人生を変えるような出来事がある時(例:親しい人が亡くなった時)。

・新たに致死的な疾患の診断がなされる時。

・予後が限られていることが示唆される時。

・複数回入院をする時。

・介護施設に入所する時。

Quillは終末期のケアについて話し合う時期として、以下をあげている [23]。

・すべての重篤な疾患の患者(よくなる可能性があっても)。

・余命を話し合う時。

・成功する可能性が低い治療の選択肢について話し合う時。

・患者や家族と今後の希望や恐れていることについて話し合う時。

・6-12か月以内の予後の可能性がある時。

一方、急いで話し合わなければならない時期として、以下をあげている。

・患者が死に瀕している時。

・患者が死にたいという時。

・患者や家族がホスピスについて尋ねる時。

・患者が重篤な進行性疾患により最近あるいは繰り返し入院した時。

・予後が短いにもかかわらず積極的治療が行われ患者が苦しんでいる時。

米国のガイドラインでは以下のように述べられている。患者は予後や治療の選択について、よく知らされるべきである。それによって、治療や支持的なケアについての希望や懸念を表明することが保証される [24]。 なお事前ケア計画、特に事前指示書について話し合う時は、患者の意思決定能力を確認する [25]。実際にケアや治療を行う際に、患者の意思決定能力があれば、事前ケア計画書よりその場の意思が優先される。

以上より、予後の限られた患者と治療方針や今後について話し合う時期は、なるべくなら重篤になる前や外来通院の時点がよい。患者は終末期に自分が何を望むかを事前に予想することは難しく、健康状態の変化や終末期になると希望する治療やケア内容が変わっていく [26]ため、病状が変化した時や入院時などに再度意向を確認するとよい。また患者や家族が終末期の話をするのを待つのではなく、医師が議論を始めるべきである [23]。

3.どんなことを話し合うか

英国 GPの論文 [22]によると、以下の内容について話し合うことがすすめられている。

・健康状態や将来のケアに関する懸念。

・病気と予後についての理解。

・重要な価値観やケアの目標(全体的に、延命に重点があるのか、QOLに重点があるのか)。

・将来希望するケアや治療のタイプ。

・希望する療養の場所(preference of care)、希望する死亡場所(preference of death)。

・代理意思決定者。

・特別な治療(心肺蘇生、化学療法、透析など)を拒否する法的な事前指示書(英米などでは、法的拘束力のある文書がある)。

日本では事前指示書などへの法的拘束力はないが、話し合った内容、相手について、詳細にカルテに記載し、すぐに参照できることが望ましい。

4.心肺蘇生拒否の意思表示(do not attempt cardiopulmonary resuscitation: DNAR)

米国のがん専門病院で、院内で心肺停止をして心肺蘇生を受けたがん患者243人を後向きに調べた研究がある [27]。73人の突然で予期されていない心肺停止患者では、22%が生存して退院に至った(心肺停止の原因は不整脈、心筋梗塞、肺梗塞、胃腸出血、誤嚥、緊張性気胸、急性気管閉塞であった)。

一方 171人の予期された心肺停止では、一人も生存しなかった(p<0.001)。以上より、がんの自然経過で終末期に至った患者に対する心肺蘇生は、効果が乏しく、介入は侵襲的で、家族や大切な人との穏やかな看取りが得られないことを勘案すると、一般的に望ましくない。

英国医師会のガイドライン [28]において、心肺蘇生が成功する見込みがない場合、心肺蘇生の希望の有無を患者に尋ねるのは不適切である、とされている。患者が意思決定能力を欠いている場合、代理意思決定者に対して、心肺蘇生を行わない決定とその理由をよく説明し、セカンドオピニオン希望があれば尊重することがすすめられている。

一方日本において、DNARに焦点を絞った全国規模のガイドラインはないが、「救急医療における終末期医療に関する提言(ガイドライン)」[29]では、終末期の延命措置の対応について以下のように記されている。

主治医は家族や関係者に対して、病状が絶対的に予後不良であり、治療を続けても救命の見込みがまったくない状態であることを説明し、理解を得る。その後、本人のリビング・ウイルなど有効な advanced directives(事前指示)を確認する。

・家族らが積極的な対応を希望している場合:本人の事前指示を確認し尊重する。改めて「患者の状態がきわめて重篤で、現時点の医療水準にて行いうる最良の治療をもってしても救命が不可能である」旨を正確で平易な言葉で家族らに伝達し、その後に家族らの意思を再確認する。家族らの意思が、引き続き積極的な対応を希望している時には、その意思に従うのが妥当である。

・家族らが延命措置中止に対して「受容する意思」がある場合:患者にとって最善の対応をするという原則に則って家族らとの協議の結果により、延命措置を中止する方法について選択する。本人の事前指示が存在し家族がこれに同意している場合は、それに従う。本人の意思が不明であれば、家族らが本人の意思や希望を忖度し、家族らの容認する範囲内で延命措置を中止する。

・家族らの意思が明らかではない、あるいは家族らでは判断できない場合:主治医を含む医療チームの判断に委ねられる。本人の事前意思がある場合には、それを考慮して医療チームが対応を判断する。これらの判断は、医療チームとしての結論であることを家族らに説明する。この結果選択されて行われる対応は、患者にとって最善の対応であり、家族らが医療チームの行う対応を納得していることが前提となる。

・本人の意思が不明で、身元不詳などの理由により家族らと接触できない場合:延命措置中止の是非、時期や方法について、医療チームは慎重に判断する。なお、医療チームによる判断や対応は患者にとって最善の対応であることが前提である。

5.希望する療養場所(preferred place of care)、希望する死亡場所(preferred place of death)

通院ができなくなった場合、または通常の自宅での生活ができなくなった場合に「どこで生活するか」の概念を、希望する療養場所(preferred place of care)、希望する死亡場所(preferred place of death)と呼ぶ。ほとんどの日本人にとって望んだ場所で過ごすことは望ましい死(good death)に対する重要な要素である [19]。

厚生労働省「終末期医療の在り方に関する懇談会」報告書(平成 22年)によると、希望する療養場所として、「なるべく自宅で過ごして必要であれば病院やホスピス・緩和ケア病棟に入院をする」が 60%と最も多い。しかし療養場所の希望は経時的に変化することが多く、相談を繰り返すことが必要である。

日本の自宅で亡くなったがん患者の遺族に自身の希望について聞いたところ、88%が自宅を療養場所として希望し、68%が自宅を死亡場所として希望した。自宅を療養場所として希望するのは、男性で、介護者がおり、看取った患者がよい死を経験できたと感じ、患者のケアを経験して自分の人生に対処する自信ができた場合であった。自宅を死亡場所として希望するのは、男性で、介護者がおり、患者のケアを経験して自分の人生にとって重要なものを考え直し、在宅ホスピスサービスを 60日以上受けた場合であった [30]。

全国調査で病院から在宅ケアに移行する時期について在宅の終末期がん患者に聞いたところ、退院前の病院におけるケアサポート体制(例:退院から8日以上前の照会、病院スタッフから患者・家族に退院して在宅で死ぬことをはっきり説明されている)、在宅ケアに移行してからのサポート(例:在宅の緩和ケアチームとして主治医と看護師ネットワークに 24時間コンタクトできる保証、退院後の最初の 1週間で 3回以上プライマリ看護師が主治医にコンサルトすること)が、在宅を希望する死亡場所とすることに重要だった [31]。以上より、在宅での療養、死亡を希望する患者は多いが、患者や家族の思い、介護の経験、医療や介護環境によって、実現可能性が規定される。

6.在宅ホスピス、緩和ケア

在宅療養における症状緩和方法として、内服薬、貼付剤は入院と変わらず使用できるが、静脈注射は針の使用や静脈確保などで困難を伴うことが多く、またレスキュー薬として注射薬を使用することは難しい。点滴は皮下注射なら安全に施行できる。内服が困難な際のレスキュー薬としては、ポンプによる持続注射に PCAポンプ(patient controlled analgesia:患者がボタンを押すと自動的に定まった量の早送りをする)を付けたり、座薬で対応する。また医療者が常にはいないので、本人や家族に有症状時の対処方法(包括指示)を一覧にして示し、教育することが重要である。

一方、在宅医の 35%が経口オピオイドを使えず、50%が皮下オピオイドやハロペリドールを使用できない、という全国研究 [32]がある。対応する在宅医師がどこまで緩和ケアが可能かを確認することは重要であり、また67%の在宅医は地域の緩和ケアコンサルテーションサービス(基幹病院の緩和ケアチームや緩和ケア病棟のスタッフによる)を希望しており、病診連携が退院前〜退院後にスムーズに行われることが重要である。

臨死期には原発巣にかかわらず共通の症状が出現し、最期の数日には呼吸困難、痛み、せん妄、嘔吐などの強い症状が約半数の患者に出現する [33]。これらの症状に対して、他の項目で示した症状緩和治療を継続するが、鎮静も考慮される(後述の「E鎮静」を参照)。特に強い苦痛となりうるものについて、以下に述べる。

1.痛み

最期の 3日間で 40%の患者が人生最強の痛みを感じる、との報告がある [34]。また意識が混濁すると症状をはっきり訴えられないため、それ以前の苦痛を参考にしながら、家族・医療者チームで症状を評価する。 オピオイドを中心に症状緩和を行うが、長期作用型ではなく短期作用型(例:塩酸モルヒネ注)を用いて、早めに鎮痛緩和に対する適切な量を求める。これまでフェンタニル貼付剤を用いていた場合は、フェンタニル注や、モルヒネ注を併用するなどの対応をする。

2.呼吸困難

感染、貧血、胸水貯留、上大静脈症候群などに対し、機序に対応した治療(抗菌薬、輸血、胸水穿刺、ステロイドなど)で症状を緩和することは困難なことが多く、オピオイド中心の対応となる。 非薬物的対応としては、頭部〜上体を軽度ギャッチアップする、顔面近くで扇風機などによる冷たい気流を流す [35]、などが考慮される。酸素は症状緩和に寄与するが、酸素飽和度や呼吸数ではなく、症状に応じて量の調整を行う。マスクが圧迫感、不快感を強める場合があり、経鼻酸素での対応やマスク酸素の吹き流しなどの工夫を行う。

オピオイドは、早めに適切な苦痛緩和量を求める必要があるため、痛みと同様短期作用型(塩酸モルヒネ注を用いることが多い)を使用する。不安感があれば、ベンゾジアゼピン薬の併用(注射ならばミダゾラムなど)を行う。

臨死期の呼吸困難は、やや意識低下を伴わないと苦痛が緩和されないことが多く、鎮静療法も含めて家族と話し合う必要がある。

3.終末期せん妄

臨死期の患者の 80%以上にせん妄が生じ [36]、落ち着きのなさ、焦燥感、妄想などをきたしうる。せん妄状態の患者を経験した家族の半分以上はつらい体験と感じ [37]、非常に動揺し、苦しい最期であった、との印象を受けることが多い。

臨死期のせん妄は回復困難な終末期せん妄であり、抗精神病薬を中心に頓用または持続皮下注・静注で対応する。鎮静気味にする時には、ベンゾジアゼピンを抗精神病薬と併用する(後述の「E鎮静」を参照)。

終末期せん妄に対するケアについて、以下に留意する [37]。

・せん妄の原因、経過、治療方法などを適時・適切に説明する。痛みや薬(特 にオピオイド)のせいではなく身体状況悪化に伴う意識障害症状と説明する。

・今後の病状の変化を予測し、意識が混濁するまでに家族が患者との別れができるように調整する。

・患者の不穏を緩和する。その際、家族の「安らかでいてほしい半面、眠ってほしくない」というアンビバレントな気持ちに配慮する。

・患者のせん妄による言動には、否定や修正をせずに付き合う。また、おかしなことを言っていると患者自身に気づかせない。

4.死前喘鳴 [38, 3961]

下咽頭に液体が貯留することによって生じる、呼吸に伴って騒々しくゼイゼイ〜ゴロゴロと音がする症状である。唾液(最多)、気道の感染、肺水腫、胃内容物の逆流などが原因になる。死の直前となった患者の 35%に生じる。


意識が低下している場合、患者に苦痛が生じていないことも多いが[62]、家族は患者に苦痛があるように感じ、対応を求めることが多い[63]。窒息、苦痛、食べられないことなどへの家族の苦悩を理解し、症状の機序や苦痛が少ないことを説明しながら、対応を一緒に考えることが必要である。


患者が不快感をきたしていると判断した場合、下記の抗コリン薬と合わせて、呼吸苦に準じてオピオイド ±抗不安薬を使用する。しかし患者が半昏睡ないし意識が消失している場合は、喘鳴に不快さを感じていない旨を説明して家族の心配を和らげる。

ケアは、患者を半腹臥位にし、体位による分泌物の自然排出を促す。体位変換により気道分泌が増える場合は、体位変換を控えて気道水分を動かさない対応を行う。口腔内や咽頭の分泌物の吸引は多くの患者にとって不快なので、家族と相談したり意識混濁の程度をみながら、必要以上には行わない。

薬剤としては、唾液分泌抑制を目指して抗ムスカリン薬の皮下〜静注を使用する。

・scopolamine butylbromide 初回 20 mg(1A)20-120 mg/日 24時間

持続注 ✚✚

・scopolamine 初回 0.25 mg(0.5A)1-2.5 mg/日 24時間持続注 ✚✚

scopolamineは舌下投与(例: 0.3 A舌下)が可能だが、意識混濁患者では誤嚥の危険があり行わない。

ブチルスコポラミン、スコポラミン、アトロピンの効果は同等で、約40%の患者に有効とされている [40]。スコポラミンは血液脳関門を通過し、鎮静作用やせん妄の副作用があるため、意識混濁を避けたい患者にはブチルスコポラミンを使用する。

その他以下の治療が検討される。

・輸液量の減量 ✚[41](次項「D終末期の輸液」を参照)。

・気道感染による濃い膿性痰が原因の時:抗コリン薬の効果が乏しい。抗菌薬治療を検討する。

・肺水腫が原因の時:フロセミド 20-40 mg(1-2 A)の皮下注・静注 ✚を検討する。

以下は「終末期がん患者の輸液療法に関するガイドライン 2013年版」[42]に基づく。

1.適応

抗腫瘍治療を受けていない予後 1-2か月以内の終末期がん患者(頭頸部がん、食道がん、肝硬変を伴う肝臓がんを除く[注])で、経口で十分な水分・栄養を摂取できない患者を対象とする。 [注]嚥下障害や肝硬変のために経口摂取の低下をきたしやすく、他のがん種とは病態が異なる場合が多いため、除外されている。

2.輸液治療による治療目標の評価

輸液治療の施行は、患者・家族の価値観に基づいた全般的な目標を考慮して、個々に判断する。単に検査所見や栄養状態の改善は、治療効果を決める指標にはならない。また「食べられないから輸液をする」、「終末期だから輸液をしない」といった一律的な治療も行わない。

患者・家族の意向については、患者・家族の約 80%が輸液をしないと十分な栄養補給ができないと考え、患者の約 50%、家族の約80%が輸液の中止は死期を早めると考えている、という研究 [43]がある。

治療効果については、以下のエビデンスを参考にする。

・終末期がん患者において、輸液治療はオピオイドによるせん妄や急性の脱水症状を改善させることによって QOLの改善に寄与する場合がある [44]。

・performance statusが 0-2で、消化管閉塞のために経口摂取ができない終末期がん患者において、適切な輸液治療は QOLを改善させる場合がある [44]。

・performance statusが 3-4、または消化管閉塞以外の原因のために経口摂取ができない終末期がん患者において、輸液治療単独で QOLを改善させることは少ない [44]。

・終末期がん患者において、輸液治療は口渇を改善させないことが多い [45]。口渇に対しては看護ケアが最も重要である [46]。

・終末期がん患者において、輸液治療(特に 1 L/日以上)は腹水、胸水、浮腫、気道分泌による苦痛を悪化させる可能性がある [45]。

・ランダム化比較試験において予後 2-3週間のがん患者に 1 Lと 100 mLの輸液で比較したところ、脱水症状を含む全体の症状、予後に変化がない、とする報告がある [47]。

口渇に対するケア

これまで人工唾液、レモンとグリセリン混合液、ビタミン C、クエン酸、リンゴ酸、ガム、ピロカルピン、鍼灸などの研究がなされているが、効果が短時間であったり副作用などの問題点がある。口腔内の衛生状態を保つこと、天然酵素やビタミンなどが配合されたゲル製剤を塗布する、含嗽、少量の水分摂取、氷片・かき氷・シャーベットなどを口に含む、患者が好むものを噴霧する、ガーゼや綿棒などを用いて湿らせる、加湿器を設置する、ネブライザーを使用するなどのケアが行われる。

3.治療の実施

経口による水分、栄養摂取が難しくなれば、患者・家族と話し合いを行う。その際、(1)輸液についての患者・家族の希望や認識を理解すること、(2)輸液による利益・不利益に関する正確な情報提供を行うこと、(3)家族は不安を抱えているということを認識すること、に重点をおく [48]。輸液以外には、口から少しでも摂れるように工夫する、栄養以外に家族ができることを一緒に探す、栄養のこと以外の家族の心配に耳を傾ける対応が、遺族によって支持されている [49]。

輸液を行う場合には、performance statusが不良な患者には効果が乏しいこと、1 L/日を超える場合には副作用が出現しやすいことを考慮し、目標症状を明確にして開始する。重要なことは、治療によって生じる効果を定期的に評価し修正することである。静脈経路が確保できない、不快になる場合は、皮下輸液が望ましい輸液経路になる場合がある。

以下は「苦痛緩和のための鎮静に関するガイドライン 2010年版」[50]に基づく。

1.鎮静の定義、施行率

鎮静とは、苦痛緩和を目的として意識を低下させる薬剤を投与すること、あるいは、苦痛緩和のために投与した薬剤によって生じた意識の低下を意図的に維持することである。安楽死との違いは、意図(苦痛緩和 vs.患者の死亡)、方法(苦痛緩和に必要量の鎮痛薬 vs.致死性薬物の投与)の違いである。

鎮静には持続時間、深さによって以下の種類がある。

・間欠的鎮静:一定期間意識の低下をもたらした後に薬物を中止して、意識の低下しない時間を確保する鎮静。

・持続的鎮静:中止する時期をあらかじめ定めずに、意識の低下を継続して確保する鎮静。

・浅い鎮静:言語的・非言語的コミュニケーションができる程度の、軽度の意識の低下をもたらす鎮静。

・深い鎮静:言語的・非言語的コミュニケーションができないような、深い意識の低下をもたらす鎮静。

日本のがん治療病棟と緩和ケア病棟で深い持続鎮静を必要とした患者の割合は 31% [51]であり、世界的には 20-35%程度に施行されている。具体的には、以下の苦痛に対して用いられる。不穏 26%、疼痛 21%、混乱 14%、呼吸困難 12%、ミオクローヌス 11%、精神的苦痛 9%、嘔気・嘔吐 3% [52]。深い持続鎮静は身体的苦痛に用いられるのが一般的であり、心理・社会的苦痛のみに対して 1%で施行されたとの報告 [53]があるが、その場合には精神科医診察による評価、多職種カンファレンスや複数の臨床医の判断など、慎重な判断が求められる。

2.鎮静を行う要件

鎮静が考慮される段階で、以下を多職種にて確認する。

1)医療者の意図

(1)鎮静の意図が苦痛緩和である。

(2)鎮静に相応の薬剤、投与量、投与方法が選択されている。

2)患者・家族の意思((1)かつ(2))

(1)患者

《1》意思決定能力がある場合

利益と害について必要な情報を提供されたうえで、鎮静を希望する明確な意思表示がある。

意思決定能力の評価は、以下の項目で判断する [25]。

・自分の意思を伝えることができること。

・関連する情報を理解していること。

・鎮静によって生じる影響の意味を認識していること。

・選択した理由に合理性があること。

《2》意思決定能力がない場合

患者の価値観や以前の意思表示に照らして、患者が鎮静を希望することが推測できる。

家族に相談する際は、以下に留意する。

・家族に期待される役割は患者の意思を推測することであり、家族がすべての意思決定の責任を負うわけではない。

・鎮静の意思決定については医療チームが責任を共有することを明確にする。

(2)(家族がいる場合には)家族の同意がある。

3)相応性

苦痛緩和を目指す諸選択肢のなかで、鎮静が相対的に最善と判断される。

(1)耐え難い苦痛があると判断される。

(2)苦痛は、医療チームにより治療抵抗性(注)と判断される。

[注]治療抵抗性の苦痛とは、「すべての治療が無効である」、あるいは、「患者の希望と全身状態から考えて、予測される生命予後までに有効でかつ合併症の危険性と侵襲を許容できる治療手段がない苦痛のことである。

(3)原疾患の増悪のために、予後数日から 2-3週間以内と予測される。通常、深い持続的鎮静の対象は、予後数日以下である。

4)安全性

(1)上記の要件1)〜 3)について医療チームの合意がある。多職種のカンファレンスが望ましい。

(2)意思決定能力、苦痛の治療抵抗性、予測される予後について判断が困難な場合、適切な専門家(緩和医療専門家、精神腫瘍医、精神科医、心療内科医、ペインクリニック医、腫瘍専門医、専門看護師など)にコンサルテーションすることが望ましい。

(3)鎮静を行った医学的根拠、意思決定過程、鎮痛薬の投与量・投与方法などを診療記録に記載する。

3.鎮静の実際

間欠的鎮静、浅い持続鎮静の苦痛緩和効果が不十分な際に、深い持続鎮静を行うことが一般的である。また深い持続鎮静では、原則として少量で開始し漸増、必要時に追加投与を行う。しかし苦痛が強い場合には、十分な観察と調節のもと、苦痛緩和に十分な鎮静薬を投与し、苦痛が緩和された後に減量してもよい。

[間欠的鎮静に用いられる薬剤]

・midazolam 10-30 mg(1-3A)を生理食塩液 100 mLに溶解して静注

患者の状態を観察しながら投与量を調整する ✚✚ [50]

・flunitrazepam 0.5-2 mg(0.25-1A)を生理食塩液 100 mLに溶解して 0.5-1時間で緩徐に点滴静注 ✚[50]

・座薬: diazepam座薬 6 mg、bromazepam座薬 3 mg、phenobarbital座薬 100 mgを各 1/2-1個挿肛 ✚[54]

[持続的鎮静に用いられる薬剤]

・midazolam 0.2-1 mg/時間( 5-24 mg/日)持続皮下注・静注で開始し、 5 mg/時間( 120mg/日)まで増量可、 1.25-2.5 mgの追加投与可能 ✚✚ [50]

・上記で鎮静に至らない場合 levomepromazine 100-150 mg/日を midazolamに追加 haloperidolや clonazepamを使用することもある ✚[55, 56]

上記で鎮静に至らない場合、下記が考慮される。

・phenobarbital ✚[54]

10-20 mg/時( 240-480 mg/日)持続皮下注・静注で開始、 50 mg/時(1200 mg/日)まで増量可、 50-200 mgの追加投与可能座薬 100 mg 1日 2回挿肛で開始、 200-600 mg/日で調整

・propofol CVカテーテルより 10-20 mg/時で開始、 10分毎に 10-20 mg/時ずつ増量、 10-20 mgの追加投与可能 ✚[57]

深い持続鎮静に用いる第一選択薬はミダゾラムであり、先行研究 [52, 58]では、ミダゾラム 30-40 mg/日で 80-90%以上の患者に苦痛緩和が得られ、生命予後には影響はないが、呼吸抑制(呼吸数 8回/分以下)や循環抑制(収縮期血圧 60 mmHg以下または 50%以上の低下)は 20%の患者で認められ、まれに(3.9%)致命的な状態に陥った患者を認めた。

4.鎮静時の家族のケア

鎮静を施行前に、鎮静の目的と目指す状態、出現する不利益(コミュニケーションがとれなくなる)を説明し、つらい思いに対する傾聴を行う。

鎮静開始後は、症状が緩和されていることを確認し、心配や不安・希望を聞く。また「意識レベルが下がっても、最期まで聴覚・触覚は保たれており、家族がそばにいることはわかっている」と伝え、家族がそばに付き添う家族の存在の意味と価値を十分見出すことができるように援助する [59]。


1.Liverpool Care Pathway(LCP)について

Liverpool Care Pathway(LCP)は2003年に提唱された看取り時のクリティカルパスであり、包括的に臨死期の評価、ケア、治療を提示している[64]。イギリスでは国策として導入された。イタリアで行われた比較試験では、遺族が判断するケアの質においては有意な差を認めなかったが[65]、現場の臨床家からは非常に評価が高かった。

しかし、使用者の教育が不十分で、適応の誤りや家族の意向を確認していないなど不適切なLCP使用が認められたため、死を早めるケアになっているのではないかという懸念が生じた。そこで、独立した評価委員会によって、すべての患者に一律に使用するべきではない、との勧告が示された。

今後については、内容を改訂して安全性を高めるとともに、新たな使用方法が模索されている。その内容やコンセプトについて知っておくことは必要と思われるため、以下に概説する。以下の内容全体について、毎日評価をし直して検討することが求められる。

2.使用基準

予後が数日〜1週間程度と判断した際に、包括的に看取りを意識したケアを行っていく。予後の判断は前項(「A-7.臨死期の診断」)を参照して行うが、多職種チーム全体で判断することが重要である。

3.患者の希望

患者に意識がある場合、病状の認識を確かめながら、死に際して最も気になることを聴取する。死亡場所、葬式や墓の希望、経済的な問題、やりかけの仕事などが話題になりうる。また、家族や親しい者に感謝や別れを告げること、罪の意識に対して許し許されることは重要である。しかし、臨死期になって初めて苦悩や不安などを詳細に聴取することは困難で不適切であり、「今この瞬間」が快適になるような対応を心がける。患者の意識がない場合は、患者をよく知る家族などからの情報をもとに、患者の希望を推定する。

4.身体的なニーズ

症状(痛み、口腔症状、消化器症状、呼吸器症状、睡眠障害、せん妄・不穏、圧迫や拘縮による痛み)、日常生活(適切な排泄方法、安楽な体位、清潔など)を評価し、苦痛緩和を心がける。

医師がいないときも、患者の苦痛に速やかに対応できるよう、予想される症状(疼痛、不穏、気道分泌、嘔吐、呼吸困難など)に対する頓用薬物(静脈注射や皮下注射、座薬)の事前指示一覧(comfort care order set)を用意しておく。

5.医療・ケアの見直し

必須ではない薬剤や検査を減量・中止することを検討する。内服や筋肉注射を避け、静脈注射や皮下注射、座薬への変更を検討する。輸液についても適応を再検討し、減量・中止を考慮する。

ケアもなるべく患者に負担をかけないよう工夫する。バイタルサインの測定回数を減らす、ルーティンで行っていた体位変換から快適性のみを考慮して褥瘡予防のマットレス導入に代える、などが検討される。

6.家族の病状理解や希望

患者の状況や今後の変化についての家族の理解を確認し、適宜説明を行う。また、家族が患者にしてあげたい希望を評価し、達成できるように配慮する。看取りの体制に関する希望を聴取し、連絡先を確認する。

1.臨死期の対応

以下のことを心がける。

・患者を訪問し続け、同じ人間として死に向かう苦悩や想いに耳を傾ける。

・本人、家族の思いや心配を、オープンエンドクエスチョンで聞く。

・症状が緩和できていることを本人、家族に確認する。

・看取りに立ち会いたい重要な家族を確認し、立ち会えるように声かけをする。

その他、緩和ケア病棟死別のがん患者遺族への研究 [60]では、よかった臨死期のケアとして以下があげられている。

・苦痛を気にかけていた。

・意識がない時も、ある時のように接してくれた。

・家族が本人にどう接したらよいかを教えてくれる。

・これからの経緯について説明があった(「看取りのパンフレット」の使用 が考慮される [61])。

よくなかったケアとして以下があげられている。

・病室の外から医師や看護師の声(世間話や笑い声)が聞こえた。

・過度な警告(例:いつどうなるかわかりません、何があってもおかしくありません)。(より具体的な変化内容やそれへの対応について説明するとよい。)

・ベッド柵や座る所がなくて、傍に近寄れなかった。

以上より、病状や今後の見込みを家族に伝えつつ、本人の症状や家族の思いに常に気を配ることが大切である。

2.看取りの対応

Hallenbeckは、死亡宣告の仕方として以下をあげている [62]。

・部屋に入る時、まず自分自身を落ち着かせる。

・家族がいれば、家族の最初の反応を評価する(活発に悲しんでいる、または不安そうに医師を待っている)。

・家族が立ち去るように言ってはならない。

・家族のいる前で、脈、呼吸、心拍を診察する。

・患者は死亡しているとはっきり伝え、お悔やみを述べる。

・家族の急性の悲嘆反応を待つ。医師は静かにしているが、家族に対応できるように、しかし対応する時に話しすぎないようにする。

・すぐに生じる反応や質問に対して、簡潔に反応する。

・自分の感じるように慰めの言葉をかけることは、適切である。

・見送りの際、礼儀正しく死者に別れを述べる。

緩和ケア病棟死別のがん患者遺族への研究 [60]では、よかった看取りのケアとして以下があげられている。

・立ち会いたい家族が揃ってから死亡確認をした。

・死亡後も家族で悲しむ時間をもてた。

・「頑張られましたね」など家族のねぎらいの言葉がある。

また日本の緩和ケア病棟で亡くなった遺族に対する質問紙調査では、死亡確認が主治医であるかどうかは、死後のつらさに有意差はなかった。看取り時に心電図モニターを付けていたかどうかは、死後のつらさとも、看取り方法について改善の必要性とも有意差はなかった [63]。一般的に多臓器不全で回復の見込みがない患者の看取り時には、心電図モニターは不要である。

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