A 疫学・診断
1.疫学・予後
2.リスク因子
3.診断
4.病期分類(ステージング)(AJCC 第7版、2009)
B 治療
1.放射線治療
2.抗がん剤治療
3.その他の治療法
文献

1.疫学・予後

他の皮膚がんと同様、高齢者の顔面、手足などの日光曝露の多いところにみられ、男性に多い。皮膚のメルケル(Merkel)細胞癌は、基底層に局在するメルケル細胞に由来する皮膚の神経内分泌腫瘍と考えられている。ただしその由来については、現在も議論の分かれるところである。肺の小細胞がんなどの他の神経内分泌腫瘍と同様、全身転移をきたすことが多く予後は不良である。メルケル細胞は1800年代のドイツの解剖学者であるFriedrich Sigmund Merkelに由来している。メルケル細胞癌は、1972年にTokerによって報告され、メルケル細胞癌の名前は1980年から使われ、現在に至っている。

まれな疾患であるが、米国では近年増加傾向(3.2人/100万人あたり)にあるとされる。ただし、これには高齢化、診断技術の向上の寄与もあると考えられている[1]。

2.リスク因子

2008年に、メルケル細胞癌ポリオーマウイルスが、メルケル細胞癌から同定された[2]。このウイルスにより、がん抑制遺伝子であるp53、pRbが抑制されることが報告されており、これがメルケル細胞癌の原因のひとつと考えられているが、詳細はまだ不明である。その後の報告ではメルケル細胞癌の約80%でこのウイルスがみつかるとされている。多くの研究がこのメルケル細胞癌ポリオーマウイルスを中心に行われているが、現時点ではこれに対する直接的な治療法はみつかっていない。

免疫抑制状態にある患者でリスク、悪性度が高いことが知られている[1]。

また腫瘍の組織標本で、CD8陽性T細胞の浸潤が多くみられるほど予後がよいことが報告されている[3]。

3.診断

形態上は肺の小細胞癌と非常に似ており、neuron-specific enolase(NSE)、synaptophysin、chromogranin Aなども陽性となる。これと区別するためにTTF-1陰性、CK20陽性であることを確認することが重要である[4]。

4.病期分類(ステージング)(AJCC第7版、2009)

1)TNM分類

原発腫瘍(T)

TX :原発腫瘍の評価不可能

T0 :原発腫瘍を認めない

Tis :上皮内癌(腫瘍細胞が表皮内、粘膜上皮内に限局)

T1 :腫瘍径が2 cm以下

T2 :腫瘍径が2 cmより大きいが5 cm以下

T3 :腫瘍径が5 cmよりも大きい

T4 :原発腫瘍が、骨、筋肉、筋膜、軟骨に浸潤するもの

所属リンパ節(N)

NX :所属リンパ節転移の評価が不可能

N0 :所属リンパ節転移なし

cN0:臨床診断でN0とされるもの(病理診断なし)

pN0:病理診断後もN0とされるもの

N1 :リンパ節転移あり

N1a:顕微鏡下の検査でわかる(micrometastasis)

N1b:臨床的に明らか(macrometastasis)

N2 :原発巣と所属リンパ節との間の皮膚転移、あるいは原発巣より遠位に病変(in-transit metastasis)を認めるもの

遠隔転移(M)

M0 :遠隔転移を認めない

M1 :遠隔転移を認める

M1a :皮膚、皮下組織、リンパ節への遠隔転移

M1b :肺転移

M1c :他の内臓転移

2)臨床病期

Stage

T

N

M

0

Tis

N0

M0

IA

T1

pN0

M0

IB

T1

cN0

M0

IIA

T2/3

pN0

M0

IIB

T2/3

cN0

M0

IIC

T4

N0

M0

IIIA

any T

N1a

M0

IIIB

any T

N1b/N2

M0

IV

any T

any N

M1

基本的には、可能であれば切除に続き、術後放射線療法がすすめられている。切除不能例では、放射線治療あるいは、小細胞癌治療に準ずるプラチナ+エトポシド、あるいはエトポシド単剤の治療が行われることが多い。

1.放射線治療

小細胞癌同様、放射線感受性は高いとされる。術後放射線療法で、再発を有意に遅らせることが知られているが、生存率の改善は確認されていない。

2.抗がん剤治療

メルケル細胞癌に対する標準的な抗がん剤治療というものはないが、局所進行のため切除不能例や、遠隔転移例では、肺の小細胞癌に準じた化学療法が行われる。

具体例としては、シスプラチンなどのプラチナ製剤とエトポシドを組み合わせたり、エトポシド単剤が用いられている[5, 6]。

cisplatin+etoposide ✚

cisplatin 80-100 mg/m2 静注 day1

etoposide 80-100 mg/m2 静注 day1,2,3

3週毎

etoposide ✚

etoposide 100 mg/日 経口 10日間 30日毎

3.その他の治療法

術後抗がん剤治療は、標準治療とされていないが、高リスク症例で考慮されることもある。

メルケル細胞癌ポリオーマウイルスを中心とした研究がここ数年盛んになってきているが、2013年の時点でこれを対象にした治療法はまだみつかっていない。

1. Agelli M, et al. The etiology and epidemiology of merkel cell carcinoma. Curr Probl Cancer 2010; 34(1): 14-37. [PubMed]

2. Feng H, et al. Clonal integration of a polyomavirus in human Merkel cell carcinoma. Science 2008; 319(5866): 1096-100. [PubMed]

3. Sihto H, et al. Tumor infiltrating immune cells and outcome of Merkel cell carcinoma: a population-based study. Clin Cancer Res 2012; 18(10): 2872-81. [PubMed]

4. Jaeger T, et al. Histological, immunohistological, and clinical features of merkel cell carcinoma in correlation to merkel cell polyomavirus status. J Skin Cancer 2012; 2012: 983421. [PubMed]

5. Allen PJ, et al. Merkel cell carcinoma: prognosis and treatment of patients from a single institution. J Clin Oncol 2005; 23(10): 2300-9. [PubMed]

6. Schlaak M, et al. Induction of durable responses by oral etoposide monochemotherapy in patients with metastatic Merkel cell carcinoma. Eur J Dermatol 2012; 22: 187-91. [PubMed]