A 疫学・診断
1.疫学・予後
2.リスク因子
3.診断
4.病期分類(ステージング)(AJCC 第7 版、2009)
B 治療
1.放射線治療
2.抗がん剤治療
3.SMO 阻害剤
文献

1.疫学・予後

皮膚の基底細胞癌は、有棘細胞癌(扁平上皮癌)と同様、高齢者の顔面、手足などの日光曝露の多いところにみられる。日本での罹患率は正確には把握されていないが、10万人に3-4人とされる。男性に多い。

切除などの局所療法でほぼ治癒が得られる。眼瞼周囲、耳周囲など、局所浸潤が進むと切除が困難な症例もまれにみられる。転移はさらにまれで、欧米などの報告では0.1%前後とされているが、正確な数は把握されていない[1]。

2.リスク因子

日光曝露が主なリスクであり、そのことからも顔面などの頭頸部、また高齢者に多い。その他には過去の放射線治療歴、免疫抑制などがあげられる。

3.診断

顔面などの好発部位また光沢がある表面などの特徴から、臨床的に診断がつけられる。悪性黒色腫のように生検を行い診断をつけてから切除という段階を踏むのでなく、臨床診断をつけて、確認のために切除標本で診断をつけることが多い。欧米では、術中に顕微鏡下で病変が残存していないかを確認しながら細かく切除していくMohs手術がよく行われている。

4.病期分類(ステージング)(AJCC第7版、2009)

2009年に改訂された第7版のAJCC病期分類では、T分類に高リスク因子として、深達度2 mm以上、クラーク分類IV以上、神経周囲浸潤、耳あるいは口唇無毛部(non-hear-bearing lip)領域から発生したがん、低分化あるいは未分化の5つの因子が加えられた。2つ以上の高リスク因子をもつものは、サイズは2 cm以下と小さくても、T1ではなく2 cm以上のT2と同列に分類される。

N分類は皮膚の扁平上皮癌が頭頸部によくみられることを反映して、第7版から頭頸部がんのN分類が導入されている。

1)TNM分類

原発腫瘍(T)

TX :原発腫瘍の評価不可能

T0 :原発腫瘍を認めない

Tis :上皮内癌(腫瘍細胞が表皮内、粘膜上皮内に限局)

T1 :腫瘍最大径が2 cm以下で高リスク因子が1つ以下である

T2 : 腫瘍最大径が2 cmより大きいか、あるいは腫瘍の大きさに関係なく高リスク因子を2つ以上もつ

T3 :原発腫瘍が、上顎骨、下顎骨、眼窩、側頭骨に浸潤するもの

T4 :原発腫瘍が、骨格あるいは頭蓋底の神経周囲に浸潤するもの

高リスク因子

深達度/浸潤:腫瘍深達度が2 mm以上である

クラークレベルIV以上

神経周囲浸潤

解剖学:耳原発

部 位:口唇無毛部(non-hear-bearing lip)原発

分化度:低分化あるいは未分化型

所属リンパ節(N)

NX :所属リンパ節転移の評価が不可能

N0 :所属リンパ節転移なし

N1 : 原発巣と同側の1つのリンパ節に転移があり、かつ最大径が3 cm以下

N2 : 1個のリンパ節に転移があり、最大径が3 cmを超えるが6 cm以下、または複数のリンパ節転移があるが、すべて最大径が6 cm以下

N2a : 原発巣と同側の1つのリンパ節転移で、最大径が3 cmより大きく6 cm以下

N2b : 同側に複数のリンパ節転移を認めるが、そのどれもが最大径が6 cm以下

N2c : 両側あるいは対側リンパ節転移を認めるが、そのどれもが最大径6 cm以下

N3 :1つでもリンパ節転移の最大径が6 cmを超える

遠隔転移(M)

M0 :遠隔転移を認めない

M1 :遠隔転移を認める

2)臨床病期

Stage

T

N

M

0

Tis

N0

M0

I

T1

N0

M0

II

T2

N0

M0

III

T3

T1

T2

T3

N0

N1

N1

N1

M0

M0

M0

M0

IV

T1-3

any T

T4

any T

N2

N3

any N

any N

M0

M0

M0

M1

基本的には、切除を含めた局所療法が中心である。液体窒素による凍結治療、放射線治療、フルオロウラシルの局所塗布なども皮膚の扁平上皮癌と同様に用いられる。切除不能例では、メトトレキサートの局所注入などの報告もある。

耳下腺あるいはリンパ節に浸潤、転移をきたすものでは、切除した後、頭頸部の扁平上皮癌と同様、術後放射線療法、術後化学放射線療法を行うこともある。

1.放射線治療

表面の深達度の浅いものでは、電子線を用いた治療、あるいは頭頸部の扁平上皮癌に準じて、γ線による治療が行われる。

2.抗がん剤治療

局所治療が中心で、抗がん剤治療を必要とすることが少ないため、基底細胞癌に対する標準的な抗がん剤治療というものはないが、局所進行のため切除不能例や、遠隔転移例では、頭頸部の扁平上皮癌に準じた化学療法が行われる[2]。

具体例としては、シスプラチンなどのプラチナ製剤、パクリタキセルやドセタキセルといったタキサン類、カルボプラチンとパクリタキセルのように組み合わせることもある。シスプラチンとアドリアマイシンの組み合わせも用いられている。

3.SMO阻害剤

家族性基底細胞癌の研究から、9番染色体のpatch1癌抑制遺伝子の変異がsmoothened homolog(SMO)受容体の活性化、さらにはhedgehog経路の活性化を起こしていることがわかった。このhedgehog経路の活性化が基底細胞癌の発生に関与していることがわかった。patch1癌抑制遺伝子の変異だけでなく、SMO自体の変異も確認されている[3]。

米国では2012年に、経口SMO阻害剤vismodegibが切除不能あるいは転移性基底細胞癌に対する治療法として認可された。

奏効率は、転移性基底細胞癌で30%、局所進行例で43%(21%が完全奏効)と報告されている[4]。無増悪生存期間は9.5か月である。150mg 1日1回の経口投与で、効果があると腫瘍が目に見えて小さくなるので、患者の満足度は高い。主な副作用は筋攣縮や脱毛、味覚障害がある。重篤なものは少ないが、筋攣縮はQOLに大きく影響し、それが原因で治療を中止したり減量されることは少なくない。

1. Wadhera A, et al. Metastatic basal cell carcinoma: a case report and literature review. How accurate is our incidence data? Dermatol Online J 2006; 12(5): 7. [PubMed]

2. Guthrie TH Jr, et al. Cisplatin-based chemotherapy in advanced basal and squamous cell carcinomas of the skin: results in 28 patients including 13 patients receiving multimodality therapy. J Clin Oncol 1990; 8(2): 342-6. [PubMed]

3. Dlugosz A, et al. Vismodegib. Nat Rev Drug Discov 2012; 11(6): 437-8. [PubMed]

4. Sekulic A, et al. Efficacy and safety of vismodegib in advanced basal-cell carcinoma. N Engl J Med 2012; 366(23): 2171-9. [PubMed]