A 疫学・診断
1.疫学・予後
2.リスク因子
3.診断
4.病期分類(ステージング)(AJCC 第7 版、2009)
B 治療
1.放射線治療
2.抗がん剤治療
3.今後の展望
文献

1.疫学・予後

皮膚の有棘細胞癌(扁平上皮癌)は、高齢者の顔面、手足などの日光曝露の多いところにみられるがんで、切除などの局所療法で90%以上の症例で治癒が得られるとされる。欧米の白色人種では、皮膚の基底細胞癌とともに最も頻度の高いがんである。顔面などにみられるものでは、耳下腺、リンパ節に浸潤、転移をきたし、顔面麻痺などの症状を伴うこともあり、ベル麻痺による顔面神経麻痺として治療されて扁平上皮癌の診断が遅れることもある。

臓器移植の発展により多くの生命が救われているが、皮膚の扁平上皮癌を含む二次発がんが新たな問題となっている[1, 2]。臓器移植を受けた患者は、同年齢の対照群に比べて皮膚扁平上皮癌の発症は65-250倍にもなると報告されている。

2.リスク因子

日光曝露が主なリスクであり、そのことからも顔面などの頭頸部、高齢者に多いことがわかる。その他、熱傷、瘢痕、放射線皮膚炎もリスクのひとつである。臓器移植後の免疫抑制状態も重要なリスク因子であり、これらの患者にみられる扁平上皮癌は、通常の局所治療ですむ扁平上皮癌と比べ、悪性度が高く再発また遠隔転移もみられることが多い。

扁平上皮癌を発症した患者は、他のがんに罹患するリスクが高いことが疫学調査で報告されている[3]。

3.診断

生検による病理診断が中心である。深達度2 mm以上、神経周囲浸潤、低分化、サイズの大きいもの(2 cm以上)は再発のリスクが高いとされる。耳下腺やリンパ節に浸潤あるいは転移がみられるものでは、頭蓋底や側頭骨と関係を調べるためのMRIやCTが必要とされる。免疫抑制患者にみられる皮膚の扁平上皮癌では、通常の皮膚扁平上皮癌に比べ転移をきたすことが多いので遠隔転移の検索が必要とされる。

4.病期分類(ステージング)(AJCC第7版、2009)

2009年に改訂された第7版のAJCC/UICC病期分類では、T分類に高リスク因子として、深達度2 mm以上、クラーク分類IV以上、神経周囲浸潤、耳あるいは口唇無毛部(non-hear-bearing lip)から発生したがん、低分化あるいは未分化の5つの因子が加えられた。2つ以上の高リスク因子をもつものは、サイズは2 cm以下と小さくても、T1ではなく2 cm以上のT2と同列に分類される[4]。

N分類は皮膚の扁平上皮癌が頭頸部によくみられることを反映して、第7版から頭頸部がんのN分類が導入されている。

1)TNM分類

原発腫瘍(T)

TX :原発腫瘍の評価不可能

T0 :原発腫瘍を認めない

Tis :上皮内癌(腫瘍細胞が表皮内、粘膜上皮内に限局)

T1 :腫瘍最大径が2 cm以下で高リスク因子が1つ以下である

T2 : 腫瘍最大径が2 cmより大きいか、あるいは腫瘍の大きさに関係なく高リスク因子を2つ以上もつ

T3 :原発腫瘍が、上顎骨、下顎骨、眼窩、側頭骨に浸潤するもの

T4 :原発腫瘍が、骨格あるいは頭蓋底の神経周囲に浸潤するもの

高リスク因子

深達度/浸潤:腫瘍深達度が2 mm以上である

クラークレベルIV以上

神経周囲浸潤

解剖学:耳原発

部 位:口唇無毛部(non-hear-bearing lip)原発

分化度:低分化あるいは未分化型

所属リンパ節(N)

NX : 所属リンパ節転移の評価が不可能

N0 : 所属リンパ節転移なし

N1 : 原発巣と同側の1つのリンパ節に転移があり、かつ最大径が3 cm以下

N2 : 1個のリンパ節に転移があり、最大径が3 cmを超えるが6 cm以下、または複数のリンパ節転移があるが、すべて最大径が6 cm以下

N2a : 原発巣と同側の1つのリンパ節転移で、最大径が3 cmより大きく6 cm以下

N2b : 同側に複数のリンパ節転移を認めるが、そのどれもが最大径が6 cm以下

N2c : 両側あるいは対側リンパ節転移を認めるが、そのどれもが最大径6 cm以下

N3 : 1つでもリンパ節転移の最大径が6 cmを超える

遠隔転移(M)

M0 : 遠隔転移を認めない

M1 : 遠隔転移を認める

2)臨床病期

Stage

T

N

M

0

Tis

N0

M0

I

T1

N0

M0

II

T2

N0

M0

III

T3

T1-2

T3

N0

N1

N1

M0

M0

M0

IV

T1-3

any T

T4

any T

N2

N3

any N

any N

M0

M0

M0

M1

基本的には、切除を含めた局所療法が中心である。液体窒素による凍結治療、放射線治療、フルオロウラシルの局所塗布なども用いられる。

耳下腺、あるいはリンパ節に浸潤、転移をきたすものでは、局所再発の可能性があるため頭頸部の扁平上皮癌と同様、切除後に術後放射線療法、術後化学放射線療法を行うこともある。

1.放射線治療

表面の深達度の浅いものでは、電子線を用いた治療、あるいは頭頸部の扁平上皮癌に準じて、γ線による治療が行われる。

2.抗がん剤治療

局所治療が中心で、抗がん剤治療を必要とすることが少ないため、皮膚の扁平上皮癌に対する標準治療というものはないが、局所進行のため切除不能例や、遠隔転移例では、頭頸部の扁平上皮癌に準じた化学療法が行われることが多い。

具体例としては、シスプラチンなどのプラチナ製剤にフルオロウラシルを組み合わせたり、パクリタキセルやドセタキセルといったタキサン類、カルボプラチンとパクリタキセルのように組み合わせることもあるが、明確なエビデンスに裏打ちされているわけではない[5]。最近では、頭頸部がんと同様にセツキシマブも単剤あるいは組み合わせて用いられ、症例数は少ないが複数の報告がみられる[6]。

cisplatin ✚

cisplatin 75-100 mg/m2 静注 day1 3週毎

cisplatin+fluorouracil ✚

cisplatin 75-100 mg/m2 静注 day1

fluorouracil 1000 mg/m2/日 持続静注 day1-4

3週毎

cisplatin+fluorouracil+cetuximab ✚

cisplatin 100 mg/m2 静注 day1

fluorouracil 1000 mg/m2/日 持続静注 day1-4

3週毎

cetuximab 400 mg/m2(1週目)、その後2週目から250 mg/m2
静注 day1 毎週

docetaxel ✚

docetaxel 75 mg/m2 静注 day1 3週毎

carboplatin+paclitaxel ✚

carboplatin AUC 5-6 静注 day1

paclitaxel 175-200 mg/m2 静注 day1

3週毎

fluorouracil+cetuximab ✚✚

fluorouracil 1000mg/m2/日 持続静注 day1-4 3週毎

cetuximab 400 mg/m2 (1週目)、その後2週目から 250 mg/m2
静注 day1 毎週

臓器移植後の免疫抑制状態にある患者にみられる扁平上皮癌では、シクロスポリンやタクロリムスといった免疫抑制剤をラパマイシンに変更することで扁平上皮癌の消退あるいは発症を減らす可能性も報告されている[7, 8]。

3.今後の展望

頭頸部にみられる扁平上皮癌と同様、セツキシマブなどの抗EGFR抗体とPI3キナーゼ阻害剤を組み合わせた臨床試験が行われている。

1. Euvrard S, et al. Skin cancers after organ transplantation. N Engl J Med 2003; 348(17): 1681-91. [PubMed]

2. Ulrich C, et al. Skin cancer in organ transplant recipients--where do we stand today? Am J Transplant 2008; 8(11): 2192-8. [PubMed]

3. Chen J, et al. Nonmelanoma skin cancer and risk for subsequent malignancy. J Natl Cancer Inst 2008; 100(17): 1215-22. [PubMed]

4. Farasat S, et al. A new American Joint Committee on Cancer staging system for cutaneous squamous cell carcinoma: creation and rationale for inclusion of tumor (T) characteristics. J Am Acad Dermatol 2011; 64(6): 1051-9. [PubMed]

5. Wells JL 3rd, Shirai K. Systemic therapy for squamous cell carcinoma of the skin in organ transplant recipients. Am J Clin Oncol 2012; 35(5): 498-503. [PubMed]

6. Maubec E, et al. Phase II study of cetuximab as first-line single-drug therapy in patients with unresectable squamous cell carcinoma of the skin. J Clin Oncol 2011; 29(25): 3419-26. [PubMed]

7. Campistol JM, et al. Sirolimus therapy after early cyclosporine withdrawal reduces the risk for cancer in adult renal transplantation. J Am Soc Nephrol 2006; 17(2): 581-9. [PubMed]

8. Mathew T, et al. Two-year incidence of malignancy in sirolimus-treated renal transplant recipients: results from five multicenter studies. Clin Transplant 2004; 18(4): 446-9. [PubMed]