A 定義・アセスメント
1.定義
2.疼痛の分類
3.痛みの評価
B マネジメント
1.薬物療法
2.非薬物療法
文献

1.定義

国際疼痛学会は、「痛み」を「組織の実質的あるいは潜在的な傷害に結びつくか、このような傷害を表す言葉を使って述べられる不快な感覚、情動体験(an unpleasant sensory and emotional experience associated with actual or potential tissue damage, or described in terms of such damage)」と定義づけている。痛みは主観的な症状であり、その強さは傷害・病気の進行度合い、そして心理的状態により変化しうる。

2.疼痛の分類

1)疼痛の性質による分類

痛みの種類は、侵害受容性疼痛(内臓痛、体性痛)と神経障害性疼痛に分類される。それぞれの特徴を表1に示す。

2)疼痛のパターンによる分類

痛みは、日を通して続く持続痛と、一過性の痛みの増悪(突出痛 breakthrough pain)とで構成される[1](図1)。

3.痛みの評価

1)問診

痛みに関して問診を行う際には、以下の項目を念頭におくと大事な情報をもらすことがない。

(1)痛みの部位

身体所見や画像検査所見をみながら、痛みの原因となる病変の有無を確認する。

(2)痛みの強さ

痛みの強さは、治療効果判定の意味からも初診時に評価しておくことが重要である。評価法としては様々なツールが開発されており、信頼性、妥当性ともに検証され、臨床の場で用いられているのはNumerical Rating Scale(NRS)、Visual Analogue Scale(VAS)、Verbal Rating Scale(VRS)である[2, 3](図2)。

(3)痛みの性状

痛みの性状は、痛みが体性痛、内臓痛、神経障害性疼痛のどれであるのかを判断するための参考となる。内臓痛は局在があいまいな鈍い痛みのことが多く、神経障害性疼痛は「びりびり電気が走るような」、「しびれるような」痛みが混ざることが多い。

(4)痛みの経過

いつから痛みが存在するようになったか、以前からある痛みが時間とともにどう経過しているかを確認する。どのような契機で痛みが増悪、軽減するのか(例:体動や加重で増悪など)を確認する。

(5)痛みの放散

がんの腕神経叢浸潤による上肢への痛みの放散や、がんの腰椎転移による神経根症状;下肢への痛みの放散がその例である。

(6)痛みの軽快因子

安静、免荷、保温、冷却など。

(7)痛みの増悪因子

体動、不安、夜間、腹水貯留など。

(8)痛みに伴う他の症状

消化管閉塞における嘔気・嘔吐、馬尾症候群における下肢知覚低下や筋力低下がその例であり、痛みの原因や病態を知る手がかりとなる。

(9)日常生活への影響

痛みの総合的評価の一環として、痛みが日常生活にどの程度支障をきたしているのかを確認する。痛みはあるが、患者にとって許容できるものなのか、それとも対応をしたほうがよいのかを確認することで痛みの治療目標の設定にも役立つ。

(10)現在行っている治療への反応

現在どの鎮痛薬をどのように使用しているのか、また現在行っている治療の効果はどうなのかを確認するとともに、疼痛治療の副作用としての便秘、嘔気、眠気、程度を確認する。

2)身体所見

痛みの原因となる病変を念頭におきながら診察を進める。

特に、皮膚転移や帯状疱疹などの皮膚所見、痛みのある部分の皮膚の知覚異常、筋力低下や筋萎縮などの神経学的所見をとることは重要である。また、関節の位置を確認することは、骨折や腸腰筋症候群を診断、評価するうえで役立つ。

3)画像所見

想定される病変によって適切な画像検査方法を選択するとともに、患者の状態に応じ、検査を行うことのメリット・デメリットを考慮したうえで検査計画を立てることが重要である。たとえば、イレウスの評価をしたい時に、腹部単純X線写真は消化管ガス像の分布や液面形成像の有無を評価するのに有用で、CTやMRIは腫瘍の位置や大きさ、周辺臓器との関連性などを評価するのに有用である。

1.薬物療法

1)WHO方式がん疼痛治療法

「WHO(世界保健機関)方式がん疼痛治療法」は、がん疼痛治療の成績向上を目指して1980年代に初版が作成された治療戦略であり、非オピオイド鎮痛薬、オピオイドの使用に加え、鎮痛補助薬、副作用対策、心理・社会的支援などを包括的に用いた鎮痛法である。「WHO方式三段階除痛ラダー」(図3)は、痛みの強さによる鎮痛薬の選択ならびに鎮痛薬の段階的な使用法を示すものである[4]。

2)非オピオイド鎮痛薬

(1)アセトアミノフェン

アセトアミノフェンは一般的によく用いられている鎮痛、解熱作用をもつ薬物であり、消化管、腎機能、血小板の機能に影響を与えにくいことから、副作用の懸念でNSAIDsが使いにくい場合にも用いることができる。アセトアミノフェンの最も重篤な副作用は、過剰投与による肝細胞壊死であり、成人においては150-250 mg/kg以上を摂取すると起こるとされている。アセトアミノフェンの使用量は肝機能障害に注意しながら4000 mg/日まで増量可能と考えられている[5, 6]。

acetaminophen ✚✚✚[1, 7]

・acetaminophen 3000 mg/日 分4(6時間毎)

・acetaminophen 1000 mg/回 疼痛時内服、頓用内服 あいだ
6時間あけて日に4回まで

(2)NSAIDs(nonsteroidal antiinflammatory drugs)[5]

NSAIDsはステロイド構造以外の抗炎症作用、解熱作用、鎮痛作用を有する薬物の総称である。副作用として胃腸障害、腎障害、血小板活性化障害などがあげられる。NSAIDsによる胃腸障害には、胃粘膜上皮細胞におけるシクロオキシゲナーゼ(COX)-1阻害による粘膜細胞保護効果を有するPGI2、PGE2などの減少が深く関与している。COXには、COX-1とCOX-2の2つのアイソザイムが存在し、選択的COX-2阻害薬であるセレコキシブは従来のNSAIDsよりも胃潰瘍発症の頻度が低いとされる[8, 9]。比較的COX-2阻害の選択性が高いものとしてはメロキシカム、エトドラクがある。なお、痛みでNSAIDsが投与されているがん患者において、プロスタグランジン製剤、プロトンポンプ阻害薬、高用量のH2受容体拮抗薬のいずれかを使用することが推奨されている[10]。

NSAIDs ✚✚✚[1, 7]

・loxoprofen(ロキソニン(R))60 mg/回 1日3回(毎食後)
定期内服

・loxoprofen(ロキソニン(R))60 mg/回 疼痛時内服、頓用内服 あいだ1時間あけて1日に3回まで

・etodolac(ハイペン(R)) 200 mg 2-4錠/日 分2(朝夕) 定期内服

・naproxen(ナイキサン(R)) 100 mg 4-6錠/日 分2(朝夕) 定期内服

3)オピオイド鎮痛薬

(1)コデイン[11]

コデイン自体のオピオイド受容体への親和性は低く、その鎮痛効果はコデインの一部が肝で代謝されたモルヒネによるものである。その力価はモルヒネの1/6─1/10とされる。コデインには鎮咳作用があり、これはコデインそのものの作用である。

codeine ✚✚✚[1, 7]

・コデイン錠(R) 20 mg/回 1日4回(6時間毎)定期内服

・コデイン錠(R) 20 mg/回 1錠 疼痛時・咳嗽時内服、頓用内服 あいだ1時間あけて1日6回まで

80-120 mg/日になったらモルヒネなどの強オピオイドへ移行。

(2)トラマドール[11, 12, 13]

トラマドールはコデイン類似の合成化合物であり、その鎮痛効果はμオピオイド受容体に対する弱い親和性とセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害(SNRI)作用の両方によると考えられている。便秘の発生頻度は他のオピオイドに比べると低い。力価は内服:注射=1:1-2である。

tramadol ✚✚✚[1, 3]

・経口:トラマールカプセル(R) 25 mg/回 1日4回から開始(高齢者や肝腎機能低下者では25 mg 1日2回から) 100 mg/ずつ300 mg/日まで増量(25 mg×4→50 mg×4→75 mg×4) 疼痛時頓用は1回量分内服

・注射:トラマール注(R) 100 mg;70 mg- /日 24時間持続皮下注 疼痛時頓用は1-2時間分早送り

300 mg/日になったらモルヒネなどの強オピオイドへ移行。

(3)モルヒネ

モルヒネはμオピオイド受容体に対する選択性がδ、κオピオイド受容体に対する選択性よりも高いため、その作用のほとんどがμオピオイド受容体を介して発現する。モルヒネは主に肝臓でグルクロン酸抱合によって、その約40-50%がモルヒネ─3─グルクロニド(M3G)に、また、その約10%がモルヒネ─6─グルクロニド(M6G)に代謝され、約10%がモルヒネとして尿中から排泄される。M3GおよびM6Gも、そのほとんどが腎臓から排泄される。M6Gには強力な鎮痛作用があり、M3Gはオピオイド受容体にほとんど親和性がないため鎮痛作用は示さないが、がん疼痛患者にモルヒネを大量投与した際に認められる痛覚過敏(通常では痛みを感じない程度の痛み刺激で痛みを感じる、痛覚に対する感受性が亢進した状態)やアロディニア(通常では痛みを起こさない刺激[そっと触る、など]で痛みを感じる状態)の発現に関与している可能性が示唆されている。

モルヒネはその豊富な使用経験から第一選択オピオイドとして推奨されることが多い。

morphine ✚✚✚[1, 7]

(モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルを直接比較した治験はないが、モルヒネはWHOラダーステップIIIオピオイドとして中等度から重度のがん疼痛に用いることは世界的に標準的治療としてコンセンサスが得られている。)

・経口:8-12時間徐放剤 5 mg 1日2回→5 mg 1日3回→
10 mg 1日2回…

あるいは24時間徐放剤20 mg×1→40 mg×1→60 mg×1…

頓用速放剤(1日投与量の6分の1)1時間あけて反復可
1日4-6回まで

・座薬:10 mg 1日3回(8時間毎)30-50%ずつ増量

頓用(アンペック(R))10 mg 2時間あけて反復可 1日3回まで

・注射:0.5 mg/時 24時間持続静注(あるいは皮下注) 疼痛時頓用は1-2時間分早送り

(4)オキシコドン

オキシコドンの薬理作用は、主にμオピオイド受容体を介して発現する。オキシコドンは肝臓で代謝され、尿中に排泄される。

oxycodone✚✚✚[1, 7]

(モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルを直接比較した治験はないが、オキシコドンはWHOラダーステップIIIオピオイドとして中等度から重度のがん疼痛に用いることは世界的に標準的治療としてコンセンサスが得られている。)

・経口:8-12時間徐放剤 5 mg 1日2回→5 mg 1日3回→
10 mg 1日2回…

頓用速放剤(1日投与量の6分の1)1時間あけて反復可
1日4-6回まで

・注射:0.4 mg/時 24時間持続静注(あるいは皮下注) 疼痛時頓用は1-2時間分早送り

(5)フェンタニル

フェンタニルはμオピオイド受容体に対する選択性が非常に高く、完全作動型として作用する。脂溶性が高く比較的分子量が小さいため、皮膚吸収が良好であることから、貼付剤としても使用されている。フェンタニル貼付剤による便秘および眠気の発生頻度は他のオピオイドに比べると低いとされている[14, 15]。

fentanyl[1, 3]✚✚✚

(モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルを直接比較した治験はないが、フェンタニルはWHOラダーステップIIIオピオイドとして中等度から重度のがん疼痛に用いることは世界的に標準的治療としてコンセンサスが得られている。)

・貼付:24時間徐放剤あるいは72時間徐放剤 12.5μg- /時

・注射:5 μg- /時 24時間持続静注(あるいは皮下注) 疼痛時頓用は1-2時間分早送り

[腎機能障害時のオピオイド使用法]

前述のように(「(3)モルヒネ」の項参照)、モルヒネは主に肝臓でグルクロン酸抱合によって、その約40-50%がモルヒネ─3─グルクロニド(M3G)に、またその約10%がモルヒネ─6─グルクロニド(M6G)に変換されるが、M3GおよびM6Gはほとんど腎排泄なので、中等度から重度の腎機能障害時にモルヒネを用いるとM3GおよびM6Gが蓄積し、鎮静などの副作用が増強する。そのため、腎機能障害時にはモルヒネは回避すべきとされている。

コデインはその10%ほどが肝でモルヒネに変換されるが、さらにM3GおよびM6Gに変換されるため、腎機能障害時にはコデインを使用しないことが望ましい。

オキシコドンは同定されている中毒性代謝産物はないが、腎機能障害時には十分に注意し、慎重な評価観察を要する。

フェンタニルは臨床経験から比較的安全に腎機能障害時にも使用できるが、やはりできるだけ少量で開始し、慎重にタイトレーションを行うことが推奨されている。

具体的には、オキシコドンもフェンタニルも最小量で開始し、オピオイドタイトレーションは腎機能正常時よりも慎重に行う。オキシコドンに関しては、特に持続痛でなく突出痛である場合には、徐放剤で開始するのではなく、速放剤で開始するほうが安全であろう。

[肝機能障害時のオピオイド使用法]

モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、コデインは、ほとんどが肝臓で代謝されることから、肝機能障害時にはこれらの代謝能が低下することが示唆されている。したがって、中等度から重度の肝機能障害時にはオピオイドの投与量を肝機能正常時に比べ減ずる(具体的には、開始時には最小量から、肝機能正常時よりもオピオイドタイトレーションを慎重に行う、または特に持続痛でない場合には徐放剤で開始するのではなく速放剤で開始する、など)、あるいは投与間隔を長くする(肝機能正常時にオキシコドン徐放剤を8時間毎に投与することを考慮するところを12時間毎、あるいは24時間毎にとどめる、など)ことで、オピオイドの体内蓄積により副作用が増強することを最大限予防する。

4)オピオイドの変更

オピオイドの変更(オピオイドローテーションまたはオピオイドスイッチング)は、「オピオイドの副作用が強く鎮痛効果を得るだけのオピオイド量を投与できない場合や、鎮痛効果が不十分な場合に、投与中のオピオイドから他のオピオイドに変更すること」をいう。オピオイドの変更の有効性を検証した比較試験はなく、現時点ではその有用性をサポートするだけの根拠がない。

オピオイドの変更の薬理学的根拠としては、不完全な交差耐性(incomplete cross tolerance)である。すなわち、異なるオピオイド間では交差耐性が不完全であるため、使用していた1種類のオピオイドに対し耐性を獲得し、鎮痛効果が低下した(鎮痛効果を得るためには副作用を生じるまで増量せざるをえなくなった)場合でも、オピオイドの種類を変更することにより、鎮痛効果を回復できるということである。

変更する際の投与量の換算比は、安定した鎮痛の患者において等価となるオピオイドの量を求めた研究知見に基づいて作成されている。痛みが不安定な(オピオイドの副作用がみられる)患者を対象としたものではないため、オピオイドの変更を行う患者では、個々の患者の状態に応じて換算量を調整したうえでモニタリングを行い適宜修正することが必要である。鎮痛は得られていて副作用のためにオピオイドを変更する患者では、換算比より少ない投与量から開始することが推奨されている[16, 17](表2)。

5)オピオイドの副作用とその対策

(1)嘔気・嘔吐[18, 19]

嘔気・嘔吐はオピオイド開始・増量初期にしばしばみられる副作用で、それまで嘔気・嘔吐がなかったがん患者の最大40%程度に起こるといわれている。その機序としては、(1)オピオイドが化学受容器引き金帯(chemoreceptor trigger zone: CTZ)に発現しているμ受容体を刺激→ドパミンが遊離→ドパミンD2受容体を介して嘔吐中枢が刺激される、(2)オピオイドが前庭器に発現しているμ受容体を刺激→ヒスタミンが遊離→ヒスタミンがCTZや嘔吐中枢を刺激、(3)オピオイドにより消化管の蠕動運動が抑制→消化管内容物の停滞→求心性にCTZや嘔吐中枢が刺激される、の3つの現象が複合的に起こることと考えられている。通常はオピオイド開始初期や増量後に出現することが多く、数日以内に耐性を生じ、自然に軽減あるいは消失することが多い。対処法としては、ハロペリドール、プロクロルペラジンなどの抗ドパミン薬、またはジフェンヒドラミン(トラベルミン(R))などの抗ヒスタミン薬や消化管運動亢進作用をもつメトクロプラミドやドンペリドン、さらには非定型抗精神病薬のリスペリドンやオランザピン投与があげられる。

オピオイドを初回に投与する時の制吐剤の予防投与については、効果と不利益を検討できる比較試験がないことから、現状では、個々の患者に応じて対応することがすすめられている。

・metoclopramide(プリンペラン(R)) 5 mg(1錠)1日3回 oxycodone(オキシコンチン(R))と一緒に定期内服 ✚[1, 7]

・prochlorperazine(ノバミン(R))5 mg(1錠) 嘔気時頓用内服 ✚[1, 7]

(2)眠気

オピオイド開始後や増量後に眠気が出現することがあるが(頻度:20-60%)[20]、速やかに耐性が生じるので数日以内に自然に軽減あるいは消失することが多い。オピオイド投与中に眠気が生じた場合は、肝腎機能障害、高カルシウム血症、中枢神経病変など他の原因がないことを除外する(腎機能障害患者にモルヒネを投与し眠気が生じた場合にはM3Gの蓄積も考慮)。オピオイドによる眠気の対処法としてはオピオイドの減量、オピオイドローテーション、精神刺激薬(メチルフェニデート)の使用があげられる。精神刺激薬は、ランダム化比較試験と前後比較研究で、オピオイドによる眠気に対する精神刺激薬の効果が示されているが[21, 22, 23]、日本では、メチルフェニデートはナルコレプシーと注意欠陥・多動性障害以外には使用が厳しく規制されているため使用しにくい。

(3)便秘

オピオイドを投与された患者に高頻度(72-87%)に起こる副作用である。嘔気・嘔吐や眠気と違い、耐性はほとんど形成されないため、下剤を継続的に投与するなどの対策が必要である。対策としては、患者の便の性状や排便回数を聞きながら下剤を処方するが、どの下剤が他のものよりも効果的であるかは、現時点ではよくデザインされた比較試験がないため明らかでない[24]。一般的によく用いられる方法としては、便を軟らかくする浸透圧性下剤(酸化マグネシウムやラクツロース)と、腸蠕動を亢進させる大腸刺激性下剤(センナ、ピコスルファートナトリウムなど)を組み合わせて使用する方法である。オピオイド初回投与時の予防的下剤使用に関しては、効果と不利益を検討できる比較試験がないことから、個々の患者に応じて対応することがすすめられている。

・酸化マグネシウム(マグラックス(R))250 mg(1錠)2錠/回 1日
3回(毎食後)定期内服 ✚[1, 7]

・sennoside(プルゼニド(R))12 mg(1錠)1-2錠 便秘時頓用内服 ✚[1, 7]

6)鎮痛補助薬[18, 25]

鎮痛補助薬とは、「主たる薬理作用は鎮痛ではないが、鎮痛薬と併用することで鎮痛効果を高める薬物」と定義され、多くの場合、神経障害性疼痛をはじめとするオピオイド抵抗性の痛みに対し使用される。

抗うつ薬、抗けいれん薬、抗不整脈薬、N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体拮抗薬、コルチコステロイドが該当するが、がんによる神経障害性疼痛を対象とした比較試験は限られているのが現状で、現在のところ、オピオイド単独であった場合に比較してガバペンチン誘導体を併用することで中程度の鎮痛効果が得られたことが示唆されている程度にすぎない。この理由は、非がん患者の比較試験では鎮痛補助薬以外の鎮痛薬が投与されていないが、がん患者ではオピオイドが使用されるためオピオイドによる鎮痛効果を上まわらないためと考えられる。また、非がん患者と比べ、眠気、抗コリン性副作用などを生じやすく治療効果の幅が狭い。

経験的に、ガバペンチン誘導体または三環系抗うつ薬を第一選択とし、効果がない場合には他の薬剤を、その副作用を考慮しながら使用することがすすめられている。ケタミンは、オピオイドに対する耐性を減らす効果があることから特に高用量のオピオイドを使用している患者に使用される。コルチコステロイドは、神経圧迫など炎症による浮腫を病態とした痛みに対して使用される。また、日本では鎮痛補助薬として使用する薬剤の多くが保険適用外での使用となる。表3に代表的な鎮痛補助薬の処方例を示す。

2.非薬物療法

1)神経ブロック ✚✚[30, 31]

がん疼痛治療の基本はWHO方式がん疼痛による薬物療法であるが、WHO除痛ラダーのどの段階の薬剤を使用しているかを問わず、症例によっては神経ブロックにより良好な鎮痛効果が得られる場合がある。

神経ブロックは「脳脊髄神経や脳脊髄神経節または交感神経節およびそれらの形成する神経叢に向かってブロック針を刺入し、直接、またはその近傍に局所麻酔薬または神経破壊薬を注入して、神経の伝達機能を一時的または永久的に遮断する方法」と定義され、そのよい適応となる痛みとしては、上腹部の内臓痛、胸壁の疼痛、会陰部の疼痛などがあげられる。神経ブロックは特に、大量のオピオイド全身投与で鎮痛効果が得られない場合や、副作用のため鎮痛薬や鎮痛補助薬が使用しづらい場合に考慮する。

2)放射線

(1)放射線治療 ✚✚✚

有痛性骨転移、脳転移による頭痛、神経や軟部への腫瘍の浸潤に伴う痛みなど、多くのがんに伴う局所症状の改善に有効な手段である。放射線治療の治療範囲や線量、分割などの設定は、治療に対して期待される効果や患者の病状によって様々である。病状が進行して放射線治療の効果にかかわらず予後は短いと考えられる場合には、短期間で終了し、有害事象がなるべく起こりにくい治療法の選択が望ましい。有痛性骨転移に対する鎮痛目的の放射線治療としては1回から複数回まで数多くの線量分割法の報告があるが、鎮痛効果という点ではほぼ同等と考えられている。なお、骨転移に対する放射線治療による効果発現時間であるが、1か月以内に50%の疼痛軽減効果が得られる人が約半数、完全な鎮痛を得られる人が約2割といわれ、完全鎮痛を得るまでの期間の中央値は12週間ほどといわれている[32, 33, 34]。

(2)非密封小線源治療 ✚

有痛性骨転移巣が複数箇所で広範囲にわたる場合にはストロンチウム-89✚などの放射性同位元素を含む薬剤の投与(非密封小線源治療)も考慮されるが、白血球減少や血小板減少を引き起こすことと、現時点では臨床データの蓄積段階であることを留意しなければならない[35]。

3)固定、動き方

骨転移による体性痛の場合、加重や体勢により痛みが増強することが多い。特に長管骨の骨折があれば固定術適応の有無を確認するために整形外科にコンサルテーションすることを考慮し、骨折がなければ理学療法で痛くない動き方を指導してもらう。また、免荷や固定するための補助具や介護機器の使用を考慮する。

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