A 疫学・診断
1.概念・定義
2.疫学
3.症状
4.検査
B 治療
1.治療
2.予後
3.コンサルトのタイミング
文献

1.概念・定義

Lambert-Eaton筋無力症候群(Lambert-Eaton myasthenic syndrome: LEMS)では抗P/Q型VGCC抗体による免疫反応により、神経終末に存在するVGCCの数が減少し、結果として神経終末からのAch遊離が低下することにより筋無力症状が引き起こされる。悪性腫瘍、特に小細胞肺がんとの関連が深く、いわゆる腫瘍随伴神経症候群として知られている[1, 2]。

2.疫学

罹患率は0.48-0.75/10万人とされる、まれな疾患である[1, 3]。日本でのLEMS 110症例の臨床経過のまとめでは、男性:女性=3:1と男性に多く、発症年齢は平均62歳である。日本では悪性腫瘍合併例が7割近くあるが、そのほとんどが小細胞肺がんで、その他のがんとして、胃がん、白血病、悪性胸腺腫、結腸がんが多い。また、84%が悪性腫瘍発見前にLEMSを発症している[4]。

3.症状

臨床的3徴として、近位筋の筋力低下、自律神経症状、深部腱反射の消失があげられる[1, 5]。初発症状として下肢の筋力低下が最も多いが、上肢の近位筋の筋力低下をきたすこともある。筋力検査の際に、繰り返し運動させると最初は力が弱いが徐々に強くなるinverse myastheniaがある[6]。眼瞼下垂、複視などの眼症状と顔面筋、頸部の筋力低下をきたすこともあるが、重症筋無力症と異なり外眼筋単独の障害をきたすことはまれである。自律神経症状として、口腔内乾燥、陰萎、便秘、排尿障害などを合併することが多い。深部腱反射は減弱ないし消失する場合が多いが、運動後に反射が出現する現象がみられることがある。悪性腫瘍合併例では、非合併例と比較して、進行が速く、また早期に嚥下障害などの球症状や眼症状が出現することが報告されている[7]。

臨床所見の3徴がそろい、以下に示す反復刺激検査での漸増現象がみられ、かつ抗P/Q型電子依存性カルシウムチャネル(抗P/Q型VGCC)抗体が陽性、または2つの検査所見のうちいずれかの異常が認められた際に診断できる[1]。

4.検査

1)反復刺激検査

低頻度刺激(10-20 Hz)では不変あるいは活動電位の漸減がみられ、高頻度刺激の場合には著明な漸増現象がみられる。短時間の随意収縮や高頻度反復刺激ののち数秒間は著明なfacilitation(post-tetanic exhaustion)がみられる[1]。

2)抗P/Q型電子依存性カルシウムチャネル(抗P/Q型VGCC)抗体

Ach放出を抑制する抗P/Q型VGCC抗体は、LEMSの85-90%で陽性になり、小細胞肺がん合併LEMSにおいては100%陽性になるとの報告もある[1]。

1.治療

悪性腫瘍合併例では、がんに対する治療が最優先される。薬物療法としては、筋力改善を期待して3,4-diaminopyridineが用いられるが、症例が少なく明らかなエビデンスはない[8, 9]。がん非合併LEMSやがんのコントロールが十分行われている症例では副腎皮質ステロイド ✚、免疫抑制剤 ✚、血漿交換 ✚、大量γグロブリン静注療法 ✚[10]なども試みられているが、小規模試験での有用性が報告されているのみである[1]。

3,4-diaminopyridine 10-20 mg/日 分4 経口✚

3,4-diaminopyridineは電位依存性カリウムチャネル阻害剤で、Ach遊離促進作用をもつ[8, 9]。しかし、この薬剤は日本では試薬としてしか入手できず、その臨床使用には限界があるのが現状である。施設によっては倫理委員会の承認を得たうえで、患者から十分なインフォームドコンセントを得たうえで使用されている[11]。10 mgを分4で投与し、症状や副作用をみながら2週間に5 mgずつ増量するが、100 mg/日を超えないように使用する。副作用としては、口周囲や手掌の異常感覚や腸管蠕動運動亢進に伴う腹痛や下痢、けいれん、喘息発作などがある[8, 9]。

2.予後

日本での悪性腫瘍合併例の多くが、1年以内に死亡するとされる[4]。LEMSが悪性腫瘍に先行する場合、LEMSを発症した後最低5年は悪性腫瘍の発症の可能性があり追跡が必要であるが[12]、ほとんどは発症1年以内に悪性腫瘍が確認される[4]。

3.コンサルトのタイミング

担がん患者で、進行する四肢(特に下肢)の筋力低下、顔面筋力低下や嚥下困難に加えて、口渇、便秘などの自律神経症状がみられる際には、神経内科へのコンサルトが必要である。

(本節末に掲載)