A 疫学・診断
1.疫学
2.診断
3.ステージング
4.予後因子
B 治療
1.手術
2.化学療法
3.経過観察
文献

1.疫学

全悪性卵巣腫瘍の約5%を占める。好発年齢は10-20歳代で(海外の報告では中央値は23歳)、ほとんどが片側発生のため妊孕能温存が可能である。日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会の患者年報(2003-2007年)によると、日本での症例数は5年間で625例、年125例である。組織型の頻度としては悪性転化を伴う成熟嚢胞性奇形腫が36%(226/625)と最も多い(ただし、成熟嚢胞性奇形腫は大部分[99%]が良性であり、悪性転化自体はきわめてまれな事象である)。次いで卵黄嚢腫の26%(159/625)、男性のセミノーマに相当するディスジャーミノーマの18%(114/625)、未熟奇形腫Grade 3の9%(58/625)、混合型胚細胞腫の7%(44/625)、その他と続く。胚細胞腫瘍としての絨毛がんの頻度は非常に低い。

2.診断

初発症状は、腫瘤触知や、疼痛であることが多い。腫瘍マーカーは、卵黄嚢腫ではAFPが上昇する。未熟奇形腫や胎芽性がんでも上昇することがある。ディスジャーミノーマではAFPは上昇せず、LDHが上昇することがある。絨毛がんでは特異的にβ hCGが上昇する。ほとんどのケースで診断目的の片側付属器切除が行われ、組織型とステージを確定する。

3.ステージング

ステージングは悪性上皮性卵巣腫瘍のそれに準じる。

4.予後因子

初回治療として手術と化学療法を受けた113人の多変量解析によると、ステージと腫瘍マーカー(AFPまたはβ hCG)の高値が予後不良因子である[31]

1.手術

片側付属器切除にて診断がついた後、患者が妊孕能温存を希望していなければ、卵巣がんに準じた腫瘍減量手術を行うこととされているが、この推奨の根拠は上皮性卵巣腫瘍よりもさらに弱いものである。たとえばディスジャーミノーマの場合、進行例で手術後に腫瘍が残存している状況(卵巣がんのsuboptimal[注]に相当する状況)でも適切なシスプラチン併用化学療法で80%以上を完治に導けるとされている。

[注]残存腫瘍径1 cm以上。

2.化学療法

精巣原発に準じてBEP療法が行われる。古いVAC療法では長期生存が50%以下、PVB療法でも70%とされるが、I-III期の患者を対象としたGOGの試験では93人中再発が2人、フォロー中に白血病を発症した患者が2人おり、残り89人(96%)が長期無病生存している[32]。BEP療法のサイクル数については、まれな疾患ということもありほとんどエビデンスがない。

National Comprehensive Cancer Network(NCCN)のガイドラインには3-4サイクルと記載があり、Chalasら[33]はディスジャーミノーマの場合、I期3サイクル、II期以上4サイクル、ディスジャーミノーマ以外の場合、I期3サイクル、II期およびIII期の残存病変がない場合4サイクル、III期の残存病変ありまたはIV期の場合6サイクル、をすすめている。

3.経過観察

IA期のディスジャーミノーマ、IA期でGrade 1の未熟奇形腫は、術後に化学療法を省略して経過観察のみ、という治療戦略の対象になり得る。

31. Murugaesu N, et al. Malignant ovarian germ cell tumors: identification of novel prognostic markers and long-term outcome after multimodality treatment. J Clin Oncol 2006; 24(30): 4862-6. [PubMed]

32. Williams S, et al. Adjuvant therapy of ovarian germ cell tumors with cisplatin, etoposide, and bleomycin: a trial of the Gynecologic Oncology Group. J Clin Oncol 1994; 12(4): 701-6. [PubMed]

33. Chalas E, et al. Treatment of malignant germ cell tumors of the ovary. [UpToDate]