A 疫学・診断
1.疫学
2.診断
3.病期分類(ステージング)(AJCC 第7 版、2009)
B 治療
1.初回治療
2.初回治療後
3.再発治療
文献

1.疫学

1)罹患数・死亡数

「がんの統計’11」では、精巣腫瘍の罹患数は公表されていない。人口動態統計のICD-10の部位分類別がん死亡では、2010年に「精巣(C62)」の死亡は65件報告されている。人口10万人に1-2人の発生頻度といわれている。

2)リスク因子

停留精巣、精巣がんの家族歴、胎児期のエストロゲン曝露、後天性免疫不全症候群、耳下腺睾丸炎、EBウイルス感染など。

3)病態別の頻度

性腺原発が全体の95%を占める。精巣腫瘍の90%、卵巣腫瘍の5%が胚細胞腫瘍とされる。性腺外の場合、頭蓋内(松果体内が3/4、他は視交叉など、10-20歳代に多い)、縦隔(大部分が前縦隔)、後腹膜および仙骨(小児に多い)などの体の正中線上に発生する。原発不明がんの代表的な予後良好群(favorable subset)のひとつである。

組織型別では、セミノーマが40%、非セミノーマが60%とされる。

胚細胞腫瘍全体の約半数は、I期のセミノーマといわれている。

進行胚細胞性腫瘍(IIC期以上、または性線外原発)のなかでは、予後良好群が56%、中等度予後群が28%、予後不良群が16%の発症頻度である。

2.診断

1)検診方法と意義

検診方法は確立しておらず、頻度も低いことから意義も未確立である。

2)症状

痛みや発熱を伴わない、陰嚢腫大で気づかれることが多い。

3)診断

画像検査としては超音波検査が用いられる。腫瘍マーカーのAFPやβ hCG、LDHが上昇することが多いが、セミノーマや奇形腫では上昇しないこともある。治療方針確定のために、まず患側の除睾術が行われることが多い。

4)病理組織分類

セミノーマと非セミノーマに大別される。非セミノーマはさらに、胎児性がん、卵黄嚢腫、絨毛がん、奇形腫などに細分される。

3.病期分類(ステージング)(AJCC第7版、2009)

以下に用いる腫瘍マーカーとして、hCGはαサブユニットとβサブユニットで構成されるが、αサブユニットはLH、FSH、TSHと同一で、擬陽性の原因になりうるため、βサブユニットを測定していた。アッセイ系が複数あるが、単位が“ng/mL”と表記されているものではなく、“IU/L”と表記されているものを用いること。

1)TNM分類

2)病期

3) International Germ Cell Cancer Collaborative Group(IGCCCG)のリスク分類

初診時の腫瘍マーカー、原発部位、転移部位で評価(表1)。

(*クリックすると拡大表示します)

1.初回治療

1)セミノーマ(Stage IA、IB)

・経過観察✚

・放射線療法 20 Gy ✚✚✚

・化学療法 ✚✚✚

経過観察を評価するランダム化試験は行われていないが、複数の前向き試験で5年の無再発生存割合が80-85%程度と報告されている。再発の大部分は骨盤または傍大動脈リンパ節であり、救済治療を行うことで5年全生存割合は99%とされ、National Comprehensive Cancer Network(NCCN)ガイドラインでもpT1またはpT2の患者に対する“preferred option(category 1)”と記載されている。

放射線療法に関して、欧州で行われたTE18試験で20 Gyと30 Gyが評価され、20 Gy/10回の非劣性が示されている[2]。

化学療法に関して、同じく欧州で行われたTE19試験でカルボプラチンのAUC 7での単回投与が放射線療法に対して非劣性であることが示されている[3]。

carboplatin単回投与✚✚✚

carboplatin AUC 7 静注 単回

2)非セミノーマ(Stage IA、IB)

・厳重な経過観察(対象はIAのみ)✚

・手術(後腹膜リンパ節郭清:RPLND)✚

・化学療法(BEP療法2サイクル)✚

BEP療法[4]

bleomycin 30 U/body day1, 8, 15

etoposide 100 mg/m2 day1-5

cisplatin 20 mg/m2 day1-5

21日毎(好中球数にかかわらず、21日間隔厳守)

IA期の非セミノーマに対する経過観察は、20-30%の患者が再発して化学療法を必要とするため、特に厳重である必要があるとされている。IB期の非セミノーマは経過観察では約50%の患者が再発するため基本的には推奨されない。いずれの治療法でも5年生存割合は95%を超えるとされる。

3)セミノーマ(Stage IS)

放射線療法 20-30 Gy ✚

非セミノーマにおいてISはまれであるが、放射線療法が選択される。

4)非セミノーマ(Stage IS)

後腹膜リンパ節郭清後化学療法 BEP 療法3サイクル
またはEP療法4サイクル ✚

5)セミノーマ(Stage IIA、IIB)

放射線療法 骨盤および傍大動脈リンパ節転移への照射 ✚

6)非セミノーマ(Stage IIA、IIB)

・手術(後腹膜リンパ節郭清、対象は腫瘍マーカー正常化例のみ)✚

・化学療法(BEP療法3サイクルまたはEP療法4サイクル)✚✚✚

どちらの治療でも無再発生存割合は98%に達する。

7)セミノーマ、非セミノーマ(ともにStage IIC以上、または性腺外原発)

IGCCCGのリスク分類は表1を参照。

(1)予後良好群(good risk)

BEP療法3サイクル✚✚✚[5]またはEP療法4サイクル✚✚✚[6]

90%の患者が治癒する。

(2)中等度予後群(intermediate risk)

BEP療法4サイクル✚✚✚

BEP療法4サイクルで70%の患者が治癒する。

(3)予後不良群(poor risk)

BEP療法4サイクルまたはVIP療法4サイクル✚✚✚

BEP療法4サイクルで治癒するのは50%以下である。再発後の救済治療で治癒する患者もいる(再発治療で後述)が、全体の20-30%は治癒できないため、NCCNのガイドラインでは臨床試験への参加が“preferred option”とされている。

2.初回治療後

1)理想的な臨床経過

胚細胞腫瘍の理想的な臨床経過とは、治療により腫瘍マーカーがideal curve(マーカーの半減期、具体的にはAFPなら5-7日、β hCGなら1-3日)に沿って順調に低下していき、治療終了時に正常化し、かつ画像上も残存病変がない、というものである。

そうでない場合、具体的にはマーカーは正常化したが画像上残存病変がある場合、またはマーカーが正常化していない場合、について以下に対応を述べる。

2)マーカーは正常化したが画像上残存病変がある場合

・手術✚

・経過観察✚

残存病変に対する手術を検討する。経過観察を選択肢にあげうる状況として、セミノーマであり、次の(1)または(2)のどちらかを満たす場合があげられる。すなわち、(1)残存病変が3 cm以下、または(2)残存病変が3 cm以上あるが化学療法約6週以後のPETでアップテイク(uptake)が認められない場合、である。特徴的な病態として、growing teratoma syndromeという病態が知られている。相対的に化学療法抵抗性である奇形腫(teratoma)は治療が順調に経過していても画像上増大を示すことがある。その場合でも、手術が選択される。また、奇形腫に関しては悪性転化を伴う奇形腫(teratoma with malignant transformation)という病態が知られており、主に再発時に他の腫瘍(横紋筋肉腫、PNETなどの肉腫や、上皮性腫瘍など)に転化(transform)することがある。一般的に薬物療法に抵抗性の病態で切除が推奨されるが、単一の組織に転化している場合はその組織に対する化学療法を行うと奏効するというケースシリーズがある[7]。

3)腫瘍マーカー非正常化例

・追加化学療法✚

・手術✚

・経過観察✚

追加化学療法(詳細は次項「3. 再発治療」を参照)、切除、経過観察が選択肢となる。

(1)手術

腫瘍マーカーが正常化していなくとも変動がないプラトー状態になっている場合、切除後に切除病巣にがんが残存しておらず、かつ術後に腫瘍マーカーが正常化する病態が知られている。この事実を説明する仮説として、“slow leak phenomenon”という概念が提唱されており、化学療法後残存した奇形腫や嚢胞が腫瘍マーカーのリザーバーとなってAFPやβ hCGが血中に少量ずつ漏れ出ている、という仮説である。

腫瘍マーカーがプラトーに達していない状況で残存腫瘍の切除を行うことをdesperation surgeryと呼び、この手術で腫瘍マーカーの正常化と根治が得られたという報告があるが、少数例である。

(2)経過観察

Beckらは、1977年から2000年にかけてインディアナ大学において化学療法後の後腹膜リンパ節郭清が行われた1280人から、初回化学療法あるいは二次化学療法後に腫瘍マーカーが正常化しない状態で後腹膜リンパ節郭清を行った114人の患者を同定し、後向きな研究を行っている[8]。術後、全体での5年生存率は53.9%であった。後腹膜リンパ節郭清時の病理所見では、54%の症例で活動性のある悪性細胞が残存していたが、残りは34%で奇形腫、12%では線維化のみの病理であった。このことより、腫瘍マーカーが正常化しない状況で手術を行っても46%と約半数には活動性のある腫瘍細胞は認められなかった。後腹膜リンパ節郭清時に悪性細胞が残存していないことを予測する因子として、腫瘍マーカーがプラトーあるいは減少傾向にあること、β hCGが100 IU/L以下であること、初回手術であること、初回化学療法後であることなどがあげられる。

欧州のガイドライン[9]においても、腫瘍マーカーが正常化しないが低値でのプラトーを維持している場合は4-12週間の経過観察を行い、経過観察中に腫瘍マーカーの上昇を認めなかった場合は残存腫瘍の切除を行うことがすすめられている。

3.再発治療

1)予後因子

(1)治癒可能性、プラチナ不応性再発、晩期再発

他の固形腫瘍と異なり、胚細胞腫瘍は再発時にも適切な治療で治癒のチャンスがある。通常、再発時にも再度シスプラチンを用いた化学療法を行うことが多い。例外が二つあり、一つはシスプラチンを用いた初回化学療法中、もしくは終了後4週以内の再発で、シスプラチン不応性再発という。もう一つはシスプラチンを用いた初回化学療法後2年以上経過した後の再発で、晩期再発と呼び、一般的に化学療法抵抗性で可能ならば切除などが考慮される。

(2)新しい予後因子分類

初回が精巣原発であること、初回治療で完全奏効(CR)が得られていること、腫瘍マーカー低値、画像上の病変が少ないこと、などが予後良好因子である。予後良好例は後述するシスプラチンを用いた併用化学療法で治癒の可能性がある程度期待できる。通常の化学療法以外に、大量化学療法(high dose chemotherapy: HDCT)も選択肢とされることがあり、治療関連死や晩期毒性などのリスク・ベネフィットバランスを考慮するうえで、再発後の予後因子を体系的に評価する試みも続けられてきた。2000人近い患者の解析を行い、International Prognositic Factor Study Group(IPFSG)から新たな予後因子が提案された[10](表2)。スコアにより5つの階層に分かれ(very low、low、intermediate、high、very high)、これをもとにHDCTなどの評価を行っていく動きがある。

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2)シスプラチンを用いた化学療法

(1)VIP療法/VeIP療法

VIP療法✚✚✚[11]

etoposide 75 mg/m2 静注 day1-5

ifosfamide 1200 mg/m2 静注 day1-5

cisplatin 20 mg/m2 静注 day1-5

3週毎 4サイクル

VeIP療法✚✚✚[11]

vinblastine 0.11 mg/kg 静注 day1, 2

ifosfamide 1200 mg/m2 静注 day1-5

cisplatin 20 mg/m2 静注 day1-5

3週毎 4サイクル

1980年代半ばに治療抵抗性胚細胞腫瘍に対するイホスファミドの有用性が示されてからシスプラチンとエトポシドと組み合わせるVIP療法や、シスプラチンとビンブラスチンとを組み合わせるVeIP療法が開発されてきた。まずはシスプラチンを含む前治療からの再発患者におけるセカンドライン、サードライン以降での開発が行われた。Pizzocaroらの報告では[12]、1985-89年の36人の患者が対象で、20人(56%)が化学療法および追加手術で完全奏効(CR)、その後2-7年の追跡でも15人(41.6%)が生存もしくは治癒(durable CR)となっている。その後、初回救援(salvage)化学療法として前向き試験も行われ、LoehrerらによるVeIP療法の結果[13]は、CR率49.6%、durable CRは23.7%、さらに2年、3年、7年の生存率も38%、35%、32%と救援化学療法としては良好あった。PicoらによるVIP/VeIP療法とHDCTとの比較試験の結果[11]でも、CR率42%(全摘除8%を含む)、3年無事象生存率は23.1%と良好であった。以降、初回救援化学療法としてのVIP/VeIP療法はコンセンサスを得ることとなった。

(2)TIP療法

TIP療法✚✚

paclitaxel 175 mg/m2 3時間点滴静注 day1

ifosfamide 1200 mg/m2 静注 day1-5

cisplatin 20 mg/m2 静注 day1-5

3週毎 4サイクル

他のがん種における経験から、パクリタキセル単剤による治療抵抗性再発(全体の76%はプラチナ不応性再発)に対する第II相試験が行われた[14]。31人中3人が完全奏効(CR)、5人が部分奏効(PR)でこれらの患者の無増悪生存期間は14か月であった。さらにパクリタキセルがシスプラチンと相乗効果があるとの見地からTIP療法が開発された。Motzerら、Kondaguntaらによる第II相試験の報告[15, 16]は、パクリタキセル250 mg/m2、イホスファミド6 g/m2、シスプラチン100 mg/m2でG-CSFによる支持療法を加えるものである。46人の患者において32人(70%)が完全奏効を達成し、29人(63%)が治癒(durable CR)を得ている。骨髄抑制が主な副作用であり、好中球減少にて22人(48%)に入院の必要が生じた。また4人にGrade 3の神経障害が出現し、2人が治療中断。2人(4%)がGrade 4の腎障害、1人がGrade 5の腎障害と敗血症を生じている。英国Medical Research Council(MRC)による第II相試験[17]では、パクリタキセル175 mg/m2、イホスファミド5 g/m2、シスプラチン100 mg/m2で予防的G-CSF投与なしのレジメンにて、毒性はMotzerらよりも軽減しているが、完全奏効率も31%と低下している。Motzerらの報告での好成績の要因は、投与量とスケジュールの他に、対象患者が予後良好因子を有する患者群であったことも大きな影響を与えている可能性がある。Cancer and Leukemia Group B (CALGB)によりTIP療法とVeIP療法の直接比較が試みられたが(NCT 00072215)、症例集積不良(poor accrual)にて終了となっており、標準治療とできるレジメンは未確立である。

(3)大量化学療法(high dose chemotherapy: HDCT)

通常用量化学療法(conventional dose chemotherapy: CDCT)では感受性が低下して治癒困難な患者を対象に、用量規定毒性(dose limiting toxicity)としての骨髄抑制を克服してより高用量の殺細胞性抗がん薬を投与して治癒を目指す目的で、自己造血幹細胞移植を併用した大量化学療法(HDCT)が開発されてきた。用量規定因子が骨髄抑制であるカルボプラチン、エトポシド、シクロホスファミドなどを組み合わせたレジメンが多い。カルボプラチン+エトポシドのCE療法や、それにイホスファミドを加えたCEI療法、シクロホスファミドを加えたCEC療法、thiotepaを加えたCET療法などがあり、どれが優れた前処置レジメンなのかははっきりとしない。

後向き解析では、HDCTはCDCTを上回るとする結果が多い。前述3. 1)「(2)新しい予後因子分類」で示した予後因子の多変量解析では、「予後不良因子が多い群でHDCTがCDCTに勝る」結果が得られたが、現実に報告されているHDCTのケースシリーズは予後良好群を多く含むものが主体であり、良好な成績は選択バイアスなどのバイアスの産物である可能性を排除できない。比較試験の成績としては、CDCT(4回のPEI/VeIP)とHDCT(3回のPEI/ VeIPに1回のCarboPECで移植)を比較したランダム化第III相試験[11]において、完全奏効(CR)率は42% vs. 43%、治癒(durable CR)も26% vs. 35%で生存の改善にまったく寄与しなかった。欧州のガイドラインはこの試験を根拠に「予後良好な患者にHDCTを行うべきでない」としており、米国(のHDCT推進派)はHDCTは複数回行う必要があるとしている。その後、1回のHDCTと3回のHDCTのランダム化比較試験が行われたが、1回のHDCT群に治療関連死が多かったため中断となった[18]。初回化学療法での比較試験もネガティブであり、本稿執筆時点においては、HDCTがCDCTを上回る成績を示したランダム化試験の結果はない。

有望視されているレジメンのひとつとして、パクリタキセルを組み込んだTICEレジメンがあり、2サイクルのパクリタキセル200 mg/m2とイホスファミド2 g/m2で2回幹細胞採取を行い、3サイクルのHDCT(カルボプラチンAUC 24を3日間分割、濃厚な前治療歴のある患者はAUC 21へ減量。エトポシドは400 mg/m2を3日間)幹細胞輸注でレスキューするレジメンである。50%に完全奏効が得られ、5年の無病生存率は47%で、5年全生存率も52%と良好な結果であった[19, 20]。

いずれにせよ、現時点ではコンセンサスの得られた治療はなく、HDCTは臨床試験として考慮されるべき治療と考える。

3)シスプラチン不応性再発に対する化学療法

シスプラチン不応性再発とは、シスプラチン治療中または直後の再発と定義される。「直後」に関して厳密な定義はないが、最終投与から4週以内とすることが多い。治癒不能と同義語的に用いられることが多い。同様に、2種類のシスプラチンを含んだ化学療法で治癒しない患者、特に大量化学療法後の再発患者も、治癒不能と考えられている。NCCNガイドラインではオキサリプラチンまたはパクリタキセルが軸とされている。

再発胚細胞腫瘍の治療は長い間、経口エトポシドなどの単剤治療が行われ、奏効率は14%と報告されていた[21]。この10年でいくつかの新規抗がん剤を用いた治療が試みられており、パクリタキセル、オキサリプラチン、ゲムシタビンなどが検討されている。いずれも単剤で10-30%の奏効率が報告されている。国内でイリノテカンが用いられることもあるが、German Testicular Cancer Study Group(GTCSG)で行われた難治性胚細胞腫瘍を対象とした単剤の第II相試験[22]においては奏効がみられていない。単剤化学療法での長期無病生存がほとんど得られないことから多剤併用療法が試みられているが、多くの難治性再発胚細胞腫瘍の患者では、すでに多剤化学療法治療歴を有しており、薬剤耐性や毒性が問題になりやすい。再発胚細胞腫瘍の治療は経験豊富な施設において、理想的には臨床試験として行われることが望ましい。

(1)単剤治療

paclitaxel✚✚

paclitaxel 250 mg/m2 24時間持続静注 day1 3週毎
(G-CSF治療投与あり)[14]

paclitaxel 225 mg/m2 3時間点滴静注 day1 3週毎
(G-CSF投与なし)[23]

Motzerらはシスプラチン不応性を含む治療抵抗性胚細胞腫瘍に対してパクリタキセル単剤(250 mg/m2 3週毎)の第II相試験を行い26%の奏効率を示した。この試験では血小板減少期(nadir)中にG-CSFの投与が規定されており、現在のガイドラインでは否定されているG-CSFの治療的投与を行っている[14]。その後、GTCSGもパクリタキセル単剤(225 mg/m2 3週毎)での同様の試験を行い、24人中6人(25%)で部分奏効(PR)が得られた。この試験では少なめの投与量を3時間投与しており、減量が8人、G-CSFの投与が4人に必要であったが十分管理可能であった[23]。

シスプラチン不応難治性胚細胞腫瘍に対してパクリタキセル単剤を用いて行った5つの試験が報告されており、その結果では合計98人の症例に対してのパクリタキセルの奏効率の平均は21%(11-30%)であった。この結果を用いて、パクリタキセルとシスプラチンやイホスファミドを併用した初期治療も検証されることとなった。

gemcitabine ✚✚

gemcitabine 1200 mg/m2 静注 day1, 8, 15 4週毎[24]

gemcitabine 1000 mg/m2 静注 day1, 8, 15 4週毎[25]

ゲムシタビン単剤の有用性について2つの試験が行われ、ゲムシタビン単剤での奏効率は19-20%と報告されている。インディアナ大学で行われた21人の再発および難治性胚細胞腫瘍に対するゲムシタビン単剤の第II相試験では評価可能な20人中3人(15%)に奏効がみられ、そのうち肝外、後腹膜原発腫瘍、AFP 16000 ng/mL以上であった1人には完全寛解がみられた[24]。

BokemeyerらGTCSGが行った胚細胞腫瘍の不応性再発に対するゲムシタビン単剤の第II相試験の奏効率は31人中6人(19%)であった。この試験では71%が大量化学療法後の症例であり、シスプラチン不応性症例が17人(55%)含まれていた。61%はパクリタキセルによる治療後であり、1例の縦隔原発症例が含まれていた[25]。この結果を踏まえて、ゲムシタビン+パクリタキセル併用療法が考案され検証された(ゲムシタビン+パクリタキセル療法については後述する)。

oxaliplatin✚✚[26]

oxaliplatin 130 mg/m2 静注 day1,15 4週毎

オキサリプラチン単剤での効果についてもKollmannsbergerら(GTCSG)によって検討された。32症例に対し、4例で奏効が認められた。この32症例にはシスプラチン不応性再発が84%、大量化学療法の再発が78%含まれていた[26]。60 mg/m2の毎週投与と130 mg/m2の隔週投与の2つのスケジュールが検討されているが、後者で奏効が3例(3/16=19%)みられたことから、以後の検討は後者のスケジュールでなされている。非セミノーマのシスプラチン耐性胚細胞腫瘍の細胞に対して、in vitroの実験でシスプラチンとオキサリプラチンの交差耐性は不完全であるとのデータが出ており、オキサリプラチン単剤はシスプラチン不応性症例にも効果が得られると考える。

(2)多剤併用療法

上記で紹介した薬剤を用いた併用化学療法の成績が多数報告されている。ゲムシタビン+パクリタキセル、ゲムシタビン+オキサリプラチン、ゲムシタビン+パクリタキセル、パクリタキセル+オキサリプラチン、ゲムシタビン+オキサリプラチン+パクリタキセル、など様々なレジメンの成績が検討されている。以下にいくつかの併用レジメンの成績を紹介する。

gemcitabine+paclitaxel(ECOG phase II)✚✚[27]

gemcitabine 1000 mg/m2 静注 day1, 8, 15

paclitaxel 110 mg/m2 静注 day1, 8, 15

4週毎

G-CSF予防投与なし(発熱性好中球減少症、好中球減少を伴う感染、5日以上続くGrade 4好中球減少で投与)

gemcitabine+paclitaxel(インディアナ大学cases series)✚[28]

paclitaxel 100 mg/m2 静注 day1, 8, 15

gemcitabine 1000 mg/m2 静注 day1, 8, 15

4週毎

G-CSF予防投与なし(好中球減少が遷延したときのみと記載あり)

Hintonらの報告したECOGの試験は、初回化学療法後の再発もしくはシスプラチン不応胚細胞腫瘍に対してゲムシタビン+パクリタキセルの有効性を検証した試験である。全体で28人、性腺原発症例が64%、後腹膜、縦隔原発を含むそれ以外の原発は36%で、大量化学療法後の症例10人(36%)やシスプラチン不応性症例10人(36%)も含まれており、75%の症例で2レジメン以上のプラチナ併用療法が施行されていた。ゲムシタビン+パクリタキセル療法により28人中6人(21.4%)で奏効が得られた。また、2人(7%)が完全奏効(CR)を得て、それぞれ15か月以上、25か月以上の無増悪生存期間を得た。副作用は血液毒性がみられ、1人(3.5%)に発熱性好中球減少症を認めたがいずれも許容範囲であった[27]。この治療によりプラチナ不応性例でも完全寛解の可能性があると考えられる。

Einhornらもゲムシタビン+パクリタキセル療法を行った成績を報告している[28]。インディアナ大学で1996年2月から2004年12月の間に二次治療もしくはそれ以降に救援大量化学療法を行った184人の患者において後向き解析を行っている(論文タイトルには第II相試験とあるが実際はケースシリーズである)。大量化学療法後に再発した患者32人に対して、ゲムシタビン+パクリタキセル療法が施行された。32人中10人(31%)に客観的奏効を認め、そのうち6人(18.8%)に完全奏効(CR)、4人(12.5%)に部分奏効(PR)(無病再発期間2-6か月)が得られた。完全奏効を得た6人のうち4人は、ゲムシタビン+パクリタキセル療法だけで本治療療法の開始からそれぞれ20か月、40か月、44か月、57か月無病生存した。この治療後に残存腫瘍(carcinoma)の切除を行った2例では63か月以上の完全奏効を維持していた。平均奏効期間は8か月、平均の無進行期間は3か月、平均生存期間は6か月であった。

epirubicin+cisplatin ✚✚[29]

epirubicin 90 mg/m2 15-30分点滴静注 day1

cisplatin 20 mg/m2 静注 day 1-5

3週毎 4サイクルまで、G-CSF予防投与を全例に施行

Bedanoらは再発もしくは治療難治性胚細胞腫瘍患者に対するエピルビシンとシスプラチンとの併用療法の第II相試験を行った[29]。2001年3月から2005年8月までの期間にシスプラチン療法を受けた30人を対象にした。症例はすべて男性で平均年齢は36歳、21人(70%)が晩期再発であった。30人中19人(63%)が4サイクルの治療を受けた。17人(57%)に奏効を認め、うち9人(30%)が完全奏効(CR)を得て、そのうち7人(23%)に持続寛解を得られた。それぞれ、25+、27+、29+、44+、45+、46+、48+か月以上の寛解を維持した。そのうち1人は28か月の時に肺転移を切除し無病生存している。毒性は主に血液毒性がみられ、Grade 3、4の好中球減少を4人(13%)に認め、そのうち1人に発熱性好中球減少症がみられた。Grade 3の血小板減少が2人(6%)に認められ、Grade 3、4の貧血は5人(16%)にみられた。非血液毒性としては、2人(6%)にGrade 3の急性腎不全がみられ、2人にGrade 3の電解質異常、8人(26%)にGrade 3の嘔気・嘔吐がみられた。1人にGrade 3のアミノトランスフェラーゼの上昇と、1人にGrade 3の下痢を認めた。重症の粘膜炎、心毒性、治療関連死は認めなかった。この治療での毒性は管理可能であり、再発治療としての完全寛解を目指す治療のひとつとなる可能性が示唆された。

irinotecan+cisplatin(またはirinotecan+nedaplatin)[30]

irinotecan 100-150 mg/m2 静注 day1, 15または200-300 mg/m2 静注 day1

cisplatin 20 mg/m2 静注 day 1-5

または nedaplatin 100 mg/m2 静注 day1

4週毎 G-CSFは保険適用に従い投与

GTCSGが行ったイリノテカンの第II相試験はnegative studyであったが、Mikiらはイリノテカンとシスプラチンもしくはネダプラチン(nedaplatin: NDP)を併用した試験を行っている[30]。それによると、18人のシスプラチン治療後再発胚細胞腫瘍症例において50%の奏効率(完全奏効2人、部分奏効7人)が得られ、9人は無病生存(全体の追跡期間中央値は28か月)と報告している。しかし、セミノーマの患者が3人(通常予後良好なのでこの種の報告には含まれない)含まれていること、大量化学療法後の患者は4人、性腺外原発は2人のみで、シスプラチン不応性の患者や晩期再発の患者の割合が不明であるため、有効性の観点からシスプラチン不応性の患者への適応可能な選択肢かどうか現時点では不明である。安全性に関しては、Grade 3、4の好中球減少がすべての患者にみられ、Grade 3、4の血小板減少が94%にみられており、前治療歴の濃厚な患者への適応には注意が必要である。

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