A 疫学・診断
1.疫学
2.病理
3.臨床症状
4.診断・ステージング
B 治療
1.PSA 監視療法(active surveillance)
2.手術療法(根治的前立腺全摘除術)
3.放射線療法
4.ホルモン療法
5.内分泌放射線療法
6.SA 監視療法、手術療法、放射線療法、ホルモン療法、内分泌放射線療法の適応
7.化学療法
8.日本未承認の薬物療法
文献

1.疫学

1)罹患数・死亡数

世界における前立腺がんの罹患数は約90万人、死亡数は約25万8000人(2008年)であり、男性で2番目に多いがんとされる[1]。わが国における罹患数は約4万2000人(2006年)、死亡数は1万36人(2009年)であり、全がん死亡の2.9%を占める。年齢階級別罹患率・死亡率は50歳代後半から高齢になるにつれて増加する。全がん死亡に占める割合、罹患率、死亡率のいずれも、85歳以上の高齢者でピークに達する。

世界における罹患率は国や地域により50倍以上もの差がついているが、これはprostate specific antigen(PSA)スクリーニングの普及による差異が大きい。アメリカでは1990年代よりPSAスクリーニングが普及し、その結果前立腺がんの発見が多くなったという事実がある。ただし、それによって前立腺がんによる死亡率が減少したか否かに関してはいまだに見解が分かれている。

2)スクリーニング

アメリカではPSAスクリーニングの普及により早期の前立腺がんの発見が増え、早期症例に対する前立腺全摘術や放射線療法が多く行われるようになった。しかしながら、それによる過剰な治療や生検による合併症などが問題視され、かつスクリーニングによる生存期間延長効果が不明瞭であった。

そこで、PSAスクリーニングの有用性を検証した2つの大規模ランダム化比較試験が欧州とアメリカで行われた。

European Randomized Study of Screening for Prostate Cancer(ERSPC)によるtrial:50歳から74歳までの男性18万2160人が、平均4年に一度のPSAスクリーニング施行群とスクリーニングを規定しないコントロール群に割り付けされた。追跡期間中央値が11年に達した時点で、前立腺がん特異的死亡数は1000人/年あたり0.39 vs. 0.50と有意にスクリーニング群で低下していた。全死亡率には有意差がなかった[2]。

The United States Prostate, Lung, Colorectal and Ovarian Cancer(PLCO)Screening Trial:55歳から74歳までの男性7万6693人が、年に一度のPSA測定・直腸診によるスクリーニング群と通常のフォロー群に割り付けされた。ERSPCの結果と異なり、追跡期間が7年に達した時点でのスクリーニングによる有意な前立腺がん特異的死亡数低下は認めなかった(死亡数:スクリーニング群50人、コントロール群44人、rate ratio=1.13)[3]。この試験ではコントロール群でもPSA検査が比較的多く行われていることが判明し、PSAスクリーニングの効果が正確には検証できていないとする見方もあるが、それは臨床試験のデザインの問題であり、そのことで逆にPSAスクリーニングが有用である可能性を論じるのは意味がない。

これらのランダム化比較試験を含んだいくつかのメタアナリシスにおいては、いずれもPSAスクリーニングにより前立腺がんの診断率は上昇するが、前立腺がん特異的死亡率は低下しないという結果であった[4, 5]。

以上より、PSAスクリーニングの有用性については現時点では議論の余地がある。わが国ではPSA検診が推奨されているが、現時点では確固たるエビデンスに基づくものではない。人種的や家系的に前立腺がんの頻度が高い対象などに絞ってPSAスクリーニングを行う意義はあるかもしれない。

3)リスク因子

前立腺がんの確立したリスク因子は、年齢(高齢者)、人種(黒人)、家族歴のみである。年齢については、39歳以下の臨床的に問題となる前立腺がんはきわめてまれで、40歳から増加してくる。さらに、PSAスクリーニングの普及により無症状の前立腺がんの罹患率が判明しつつある。報告にもよるが、20-30歳では2-8%、31-40歳では9-31%、41-50歳では3-43%、51-60歳では5-46%、61-70歳では14-70%、71-80歳では31-83%、81-90歳では40-73%とされ[6]、寿命に関係のない前立腺がんも多く、しばしば「天寿がん」ともいわれるゆえんである。食事や栄養素に関して現状では確立された要因はないが、動物性脂肪やマルチビタミン、葉酸、亜鉛、カルシウム、ビタミンDの摂取は前立腺がんのリスクを高め、野菜や大豆、コーヒー、セレン、ビタミンEの摂取はリスクを低めることが示唆されている。

4)予後

前立腺がんの予後を一般的に論じるのは困難である。低リスク群(後述)の患者では予後は健常人とほぼ同様とされている。一方、転移性の場合はいったん内分泌療法が効果を示しても最終的には耐性となるため、5年生存率は20-30%と不良である。

PartinらはPSA値とGleason score、臨床病期(T分類)を組み合わせることで正確な病期を予測でき得るとして1993年にノモグラムを提唱した[7]。ノモグラムはその後のPSA検診の普及などに伴い数回更新されている。リスク分類や他の予後予測法と比して、ノモグラムはより正確に経過を予測できるとされている[8]。

2.病理

前立腺に発生する悪性腫瘍はその大部分が腺癌である。そのほとんどは前立腺固有の腺細胞由来であり、英語ではacinar adenocarcinomaと表記される。

高分化・中分化・低分化の分類もあるが、実際はGleason分類に基づく評価がなされる[9, 10]。Gleason分類では腫瘍細胞の分化度や細胞異型を考慮せず、浸潤のパターンや構造の異型のみに着目してがんの形態を階層化する。最も高分化をグレード1、最も未分化をグレード5とする。病理組織において、最も面積の大きいスコアと次に大きいスコアの和をGleason scoreとする。Gleason scoreは特に限局性前立腺がんの治療選択時に有用である(後述)。

3.臨床症状

PSAスクリーニングが普及したことで、前立腺がんは無症状で発見されることが多くなった。しかしながら、いわゆるPSA検診については、発見される前立腺がんが臨床的に意義のあるものとは限らないためその有害性を指摘する声も多く、有用性に関しては異議のあるところである。

PSA検診によらない前立腺がんは、直腸診もしくは泌尿生殖器系の症状を契機に発見される。前立腺がんの多くは、直腸診で非対称性の限局性の硬結として触知される。一方、対称性の腫大や均一な硬さの場合は前立腺肥大症がより疑われる。泌尿生殖器系の症状には尿意切迫、頻尿、残尿感などがあるが、比較的進行例で生じる症状である。一方、血尿は前立腺がんの場合、比較的まれな症状である。また、転移がんの場合には転移部位に応じた症状(骨転移による骨痛など)が生じる。

4.診断・ステージング

前立腺がんの初期診断手法として頻用されるのは、直腸診と血清PSA測定である。最終的には前立腺生検による組織診で確定され、全身造影CTや骨盤部MRI、骨シンチグラフィなどによる遠隔転移検索、ステージングへと進められる。

1)直腸診

血清PSA値が正常であっても、直腸診(digital rectal examination: DRE)でがんの存在を疑えば前立腺生検を施行すべきである。DREによって前立腺に硬結や非対称性、結節の触知などを認めた場合、45歳以上の男性もしくはその他のリスク因子をもつ男性であれば前立腺がんを除外する必要がある。

DREによる異常所見は全前立腺がん症例の15-40%に認められる[11]。一方、無症状の男性に対して直腸診を行った場合、がんの発見率は0.1-4%とされる[12]。

DREで発見できる腫瘍は前立腺の後壁・側壁の腫瘍である。DREで発見できない腫瘍の25-35%は後壁・側壁以外の腫瘍であるか、触知できないT1の腫瘍である。

DREで異常所見を認めた場合、血清PSA値を測定する。

2)血清PSA値

PSAは前立腺悪性腫瘍、良性の前立腺肥大症、いずれの場合も上昇する。ただし悪性腫瘍によるPSAの著明な上昇は、がんによる細胞質の増大や血管バリアの破壊などにより生じると考えられる。したがってPSAの上昇の程度により前立腺がんの発見率が異なる。一般に、PSAが4-10 ng/mLおよび10 ng/mL以上の場合の前立腺がんの陽性反応的中率はそれぞれ21-22%、42-64%とされる[13]。しかしながらPSA低値が必ずしもがんの存在を否定し得ないことも判明しつつある[14]。すなわち、PSA単独で前立腺がんを診断することはあり得ず、どの程度積極的に前立腺生検に向かうのかを判断する基準である、ととらえるべきである。以下に基準を示す。

PSA >10 ng/mLの場合:生検による前立腺がんの発見率は50%以上ときわめて高く、生検が強く推奨される[15]。

PSA 4-10 ng/mLの場合:通常は生検が推奨される。

PSA <4 ng/mLの場合:1万8000人以上の無症状男性の生検を行ったProstate Cancer Prevention Studyの結果では、PSA上昇以外を契機として前立腺がんと診断された患者のうち21%はPSAの値が2.6-3.9 ng/mLであった[16]。別の報告では、同様の対象で22%にがんが発見されたという。これらをもとに、National Comprehensive Cancer Network(NCCN)のガイドラインでは、PSAが2.6-4 ng/mLの場合や2.5 ng/mL以下であっても年間の増加量が0.35 ng/mL以上であれば、状況によっては前立腺生検を考慮してもよい、とされている。

3)生検

前立腺がんの68%は辺縁領域(PZ)、24%は移行領域(TZ)、8%は中心領域(CZ)から発生すると報告されている[17]。しかしそれぞれの領域における詳細ながんの発生頻度についての報告はない。したがって、がんの検出頻度の経験に基づき、1989年にHodgeらが提唱した経直腸的系統的6か所生検が標準的生検法となった[18]。だが、PSA検診の普及により早期がんや直腸診陰性症例の発見率が増加し、標準的6か所生検では臨床的に意義のある前立腺がんが30%程度見逃されている可能性が示唆された。Eichlerらは87研究2万698例からメタアナリシスを行い、生検部位を増やすことでがんの検出率が有意に上昇することを見出した。検出率、有害事象の頻度を考慮し、標準的6か所生検にPZ外側6か所を加えることが推奨された[19]。また、PZ外側に加え、尖部腹側を標的とした生検も、がんの検出率を上げるのに重要といわれている。

経直腸生検と経会陰生検に関しては、がん検出率・合併症に有意差はなく、状況に応じて選択可能である。

4)再生検

前立腺生検における組織採取量は小さいため、初回生検で陰性であってもがんの存在を完全に否定できない場合がある。1万400人の前立腺生検を行った患者におけるサーベイランス調査では、再生検を行った患者のうち、全体で32%にがんが検出された。それは年齢による増加傾向があり、再生検でがんが検出されたのは65-69歳で26%、70-74歳で31%、75-79歳で35%、80歳以上では41%であった[20]。

再生検における感度と特異度を向上させるのに有用なパラメーターについての検討がなされたが、単独の因子では再生検におけるがん検出予測精度は低いとされる。そのため、より正確な予測のために複数の因子を用いたノモグラムが提唱されている。PSAや% free PSA、病理組織学的な前がん病変もしくは微小病変の有無などを組み合わせることで、再生検の感度と特異度を最も向上することが可能である[21, 22]。

5)画像診断

前立腺がんの画像診断における目的は、(1)原発巣の評価、(2)リンパ節の評価、(3)遠隔転移の評価である。

(1)原発巣の評価

骨盤MRIと経肛門的超音波(transrectal ultrasonography: TRUS)が用いられる。CTは腫瘍の局所浸潤の評価には信頼性が十分とはいえない。

MRIは被膜外浸潤や精嚢浸潤など、局所進行病期の同定に有用性が報告されている[23, 24]。広く行われてはいないが、MRIを前立腺摘除の適応の判断に用いている施設もある。

TRUSは予期せぬ被膜外浸潤を明らかにするかもしれないが、ルーチンな病期診断においては腫瘍進展の把握の正確さに問題がありすすめられない。

(2)リンパ節の評価

予後の推定と適切な治療選択のためには必要となる評価である。最良の方法は外科的リンパ節郭清術である。最近のメタアナリシスによれば、リンパ節転移の診断はCTもMRIも感度、特異度ともに差はなく、それぞれ40%、80%程度であり必ずしも満足できるものではない[25]。

(3)遠隔転移の評価

前立腺がんは骨に転移することが多く、その他の臓器への転移は比較的少ない。骨転移が確認されれば根治的外科切除は不可能となるため、その検索は重要である。

骨シンチグラフィの有用性を検討した23試験のレビューでは、血清PSAが10 ng/mL以下、10.1-19.9 ng/mL、20-50 ng/mLにおける骨転移の発見率はそれぞれ2%、5%、16%であった[26]。Gleason scoreと組み合わせるとさらに正確な予測ができるとされる。たとえば、Gleason scoreが2-7かつ血清PSAが50 ng/mL以下で、臨床病期がT2b以下であった308人中、骨シンチグラフィ陽性であったのはわずか3人だったという[27]。ゆえに、前立腺がんの新規患者に一律に骨シンチグラフィを行うのではなく、症例を絞って行うべきである。

骨以外の転移部位については、胸部X線撮影、超音波検査、CT、MRIなどの手段が適応となり得る。

6)病期分類(ステージング)(AJCC第7版、2009)

[ポイント]
・ 2009年の改訂では、ステージングに診断時の血清PSA値が組み込まれた。
・T4、N1、M1のいずれかが該当すればStage IV。
・T3であればStage III。
・ Stage I、IIA、IIBでは血清PSA(10 ng/mL未満、10以上20 ng/mL未満、20 ng/mL以上)およびGleason score(6以下、7、8以上)で分類が変わるが、これは局所病変の場合の再発リスクを加味した分類である。

(1)TNM分類

(2)病期

7)リスク分類

実際の前立腺がんの治療の際には、T4もしくはN1もしくはM1以外の局所限局症例では、複数の因子を組み合わせたリスク分類を用いる場合が多い。有名なものとして、D’Amicoの分類やNational Comprehensive Cancer Network(NCCN)の分類がある[28](表1)。

前立腺がんに対する治療には、PSA監視療法(active surveillance)、手術療法、放射線療法、ホルモン療法、化学療法がある。

これらの治療をリスクや病期、患者の状態や使用できるモダリティなどを考慮して選択することになる。

1.PSA監視療法(active surveillance)

PSAスクリーニングの普及により早期に発見される低リスクの限局性前立腺がんが増加している。それに伴い、治療に伴う合併症による生活の質の低下が問題となることがある。一方、前立腺には生涯にわたり生命予後に悪影響を与えないがん(ラテント癌)が少なからず発生し、その発生率は加齢に伴い上昇する[29]。PSA監視療法はこのような患者に対して、病勢進行を認めた場合にただちに治療導入することで根治性を保ちつつ、治療を待機する方法である。ただし、そのような前立腺がんが診断時に真に緩慢(indolent)な腫瘍か否かを判断する明確な基準やPSAなどのマーカーは確立されていない。

PSA監視療法と「即時治療開始」を比較したランダム化比較試験の結果はないが、それに準ずるものとして根治的前立腺全摘除術(radical prostatectomy: RP)と待機手術(watchful waiting: WW)を比較したランダム化比較試験がある。この試験では、RP群347人とWW群348人が比較された。観察期間中央値は12.8年であった。65歳未満ではRP群において全死亡率および前立腺がん特異的死亡率の有意な減少(relative risk: RP群0.52、WW群0.49)を認めたが、65歳以上ではいずれも有意差を認めなかった[30]。その他の研究ではPSA監視療法と根治療法の予後を比較したコホート研究がいくつかあり、いずれもPSA監視療法で前立腺がん特異的死亡率は上昇していなかった。

現在、根治療法とPSA監視療法を比較検証する2つの大規模臨床試験が進行中である(ProtecT trial、START trial)。

現時点ではPSA監視療法を行う患者の選択基準については明確な基準はないが、前立腺生検のGleason score、生検組織での陽性コア数、陽性コアにおける腫瘍占拠割合、診断時PSA、臨床病期などを参考にする報告が多い。

NCCNのガイドラインでは、「臨床病期T1c、Gleason score 6以下、PSA値10 ng/mL未満、生検陽性コア数が3未満、各コアにおけるがんの占拠率が50%以下、PSA濃度0.15 ng/mL/g未満」であれば再発リスクは超低リスクの群としており、PSA監視療法が適応となりうる。特に患者の期待余命が20年未満であれば過剰治療を懸念する観点からもPSA監視療法を推奨している。

PSA監視療法の前提である「根治療法」を行うためには、観察期間および観察項目の設定をどのようにするかは重要な問題である。いくつかの報告より、現状では、「(1)3-6か月毎のPSA・直腸診チェック、(2)1-3年毎の生検、(3)PSA倍加時間が3年未満のもの、もしくは生検でGleason scoreの上昇や陽性コアの増加など、腫瘍体積の増大を示唆する所見を認めるもの」については二次治療を検討する。

2.手術療法(根治的前立腺全摘除術)

限局性前立腺がんに対する根治療法として確立された治療法である。余命が10年以上見込める症例が対象となる。転移がなく、原発巣がT1-T2であれば手術による治癒率は高い。局所進行型のT3病変に対しても、適切な治療選択となり得る。また、初期治療で放射線療法を行った症例に対する局所再発時の有用なサルベージ治療にもなり得る。

切除後、病理学的にリンパ節転移が認められた場合には、全身性疾患(systemic disease)ととらえ術後即時に内分泌療法を開始すべきである。

問題となりやすい合併症として尿失禁、勃起不全、前立腺肥大症状などがある。

近年、腹腔鏡下前立腺全摘除術や、「ダ・ヴィンチ」(da Vinci(R) Surgical System)に代表されるロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術が実臨床において急速に普及している。開腹による前立腺全摘除術とそれらの「低侵襲とされる」術式を比較したランダム化比較試験はないため正確な評価は困難である。いくつかの比較研究で、両者の手術成績に差がないことや、後者が低侵襲であること、入院期間短縮効果のある可能性、などが示唆されている[31, 32]。

3.放射線療法

放射線療法と前立腺全摘除術の治療成績を直接比較したランダム化比較試験として、T2b-3 N0 M0の症例95例に対して行った小規模な報告がある。この試験では、46人が前立腺全摘除術、49人が放射線療法群に割り付けされた。無増悪生存期間や全生存期間などにおいて、いずれも前立腺全摘除群で良好な傾向があるものの有意差はないという結果であった[33]。

放射線の線量に関しては、7つのランダム化比較試験(n=2812)のメタアナリシスにおいて、64-70 Gyの低線量群と74-80 Gyの高線量群で全生存期間に有意な差を認めていない[34]。一方、照射法の差異による効果や有害事象の違いについて前向きに検証したデータはない。したがって治療の選択に際しては、患者の希望、担当医の判断、使用可能なリソースなどのファクターを検討する必要がある。

周囲の正常臓器への曝露を可能な限り最小限とし、腫瘍へ治療量の照射を行うことが深部臓器である前立腺への放射線療法の目標となる。照射法として、外照射療法(通常照射、三次元原体照射、強度変調放射線治療、粒子線治療)と組織内照射療法(密封小線源療法、高線量率組織内照射など)がある。

合併症としては直腸障害、排尿障害、性機能障害があげられる。

4.ホルモン療法

前立腺がんにおける薬物療法の主体はホルモン療法(内分泌療法)である。前立腺がんはアンドロゲン依存性を有しているため、ホルモン療法はアンドロゲン除去療法(androgen deprivation therapy:ADT)を根拠に広く施行されている。かつては外科的去勢術(精巣摘除術)が行われていたが、現在はLH-RHアゴニストやアンタゴニスト、抗アンドロゲン薬との併用による内科的去勢療法である。


初回治療におけるホルモン療法の対象は進行症例である。限局症例であればリスク分類に応じて、放射線療法単独、もしくは放射線療法+ホルモン療法(後述)が適応となる。

外科的去勢術については古くから行われており、確実かつ速やかに血中アンドロゲンを低下させる手段として行われてきた。利点としては1回の治療で済むため、コンプライアンスの悪い患者に向いていること、安価で副作用があまりないことなどがあげられ、症例次第では現在でも選択肢になり得る。

LH-RHアゴニストは、視床下部から分泌されるLH-RHのアナログであり、下垂体のLH-RH受容体を持続的に刺激することでダウンレギュレーションし、精巣におけるテストステロン合成を阻害し、精巣由来のアンドロゲンを抑制する。LH-RHアゴニストを使用する場合の最も注意すべき点は、投与直後に一過性のテストステロンサージによると考えられる転移巣の神経症状や骨痛あるいは尿路通過障害の増悪であり、フレアアップ現象と呼ばれる。それを抑制するために、抗アンドロゲン薬を最初のLH-RHアゴニストの投与1週間前から投与後2-4週間まで併用する。

LH-RHアンタゴニストであるデガレリクス(degarelix)は、下垂体のLH-RH受容体に結合するが、LHやFSHの放出を刺激せず、LH-RHアゴニストで発現するフレアアップ現象を防ぐことが大きな特徴である。


LH-RHアゴニストと外科的精巣摘除術の治療効果については多数のランダム化比較試験が行われており、10試験のメタアナリシスにより全生存期間(overall survival:OS)に関する同等性が証明されている[35]。

LH-RHアゴニスト療法 ✚✚✚[35]

(以下のいずれかを用いる)

leuprolide 3.75 mg 皮下注 day1 28日毎

または11.25 mg 皮下注 day1 84日毎

goserelin 3.6 mg 皮下注 day1 28日毎

または 10.8 mg 皮下注 day1 84日毎

LH-RHアンタゴニストであるデガレリクスの効果については、LH-RHアゴニストであるリュープロライドやゴセレリンを対照とした5つのランダム化比較第III相試験がある [43, 56, 57, 58, 59]。しかしながら、これらの試験の主要評価項目は、テストステロンの去勢レベルへの低下や前立腺容積の減少などの生物学的活性で規定されており、臨床的効果ではなかった。そのため、臨床的な効果と安全性を評価することを目的として、これら5つの試験より得られた1925人の個別患者情報(individual patient data)を用いたメタ・アナリシスが行われた [60]。

その結果、PSA無増悪生存期間では、HR=0.80(95%CI 0.54-0.94、p=0.017)、ベースラインのリスク因子で調整したOSでは、HR=0.47(95%CI 0.25-0.90、p=0.023)と、統計学的有意差をもってデガレリクス投与群が良好であった。しかしながら、OSに関する結果については、死亡発生がデガレリクス群で18例(1%)、LH-RHアゴニスト群で19例(3%)とわずかであり、この解析の限界と考えられる[60]。

安全性について、関節関連症状(主に関節痛)はHR=0.64(95%CI 0.42-0.98、p=0.041)、筋骨格系事象はHR=0.55(95%CI 0.40-0.76、p<0.001)、尿路系事象はHR=0.50(95%CI 0.39-0.66、p<0.001)と、統計学的有意差をもってデガレリクス群における発現が低かった。一方、注射部位反応(疼痛、発赤、腫脹、結節を含む)の発現については、デガレリクス群で380例(30%)に対して、LH-RHアゴニスト群で6例(<1%)と、デガレリクス群で統計学的有意に発現が多かった(p<0.001)[60]。

LH-RHアンタゴニスト療法 ✚✚✚

degarelix 初回240 mg 皮下注

 2回目以降80 mg 皮下注、4週間隔で投与


抗アンドロゲン薬は前立腺内でアンドロゲンレセプターに結合することで副腎由来のアンドロゲンもブロックする作用がある。抗アンドロゲン薬にはステロイド性と非ステロイド性の2種類があり、効果と副作用の観点から非ステロイド性抗アンドロゲン薬が多く使われている。抗アンドロゲン薬の単独療法は外科的または内科的去勢と比較して効果が劣るとされている[35]。しかし抗アンドロゲン薬は性関連の副作用が少なく、その単独療法も対象患者次第では選択し得る治療法である。

非ステロイド性抗アンドロゲン剤 ✚✚✚[35]

(以下のいずれかを用いる)

flutamide 375 mg 分3 連日

bicalutamide 80 mg 分1 連日

LH-RHアゴニストと抗アンドロゲン薬を併用するcombined androgen blockade(CAB)または maximum androgen blockade(MAB)の進行症例に対する治療効果に関しては、LH-RHアゴニスト単独療法との多数のランダム化比較試験が行われている。OSをわずかに延長するという報告が多い。メタアナリシスでは5年生存率で2-3%の延長効果を示しており、厳密にはCAB療法が標準治療である[36, 37, 38]。しかしながら、副作用や経済的な要因も考慮すると現時点では議論の余地があるとする意見もあり[39]、実臨床では個々の症例に応じてLH-RHアゴニスト単独療法も選択肢となり得る。

CAB施行中の症例で不応となった場合、抗アンドロゲン薬のみを中止することで一過性にPSAが低下する場合がある(antiandrogen withdrawal syndrome: AWS)。AWSに関しては、CAB不応となった前立腺がん症例で、AWSのみを期待する群とケトコナゾールを開始する群のランダム化比較試験があり、両群間で全生存期間に有意差はないという結果であった[40]。他の観察研究では抗アンドロゲン薬中止により15-21%の症例でPSAが反応するとされた[41, 42]。したがって、CAB不応症例に対して抗アンドロゲン薬中止は選択肢の一つであるが、AWSが発現するのは限られた症例であること、持続期間は数か月程度であることは留意しておくべきである。

副作用の軽減とそれによる予後の延長を期待して、ホルモン剤の間欠的投与(intermittent androgen deprivation: IAD)が検証され、当初は有効性を示唆する報告もあったが、2012年のAmerican Society of Clinical Oncology(ASCO)で発表されたIADとホルモン持続投与を比較したランダム化比較試験であるINT-0162試験の結果では、持続投与に対するIADの非劣性を証明できなかった。したがって現状ではIADは標準治療ではない。

最近、LH-RHアンタゴニストであるデガレリクスが日本でも承認され使用可能となっている。LH-RHアンタゴニストはLH-RHアゴニストと異なりフレアアップ現象を起こすことなくテストステロン濃度を下げることができる。LH-RHアンタゴニストのLH-RHアゴニストに対する有用性は第III相臨床試験で示唆されている[43]が、3か月製剤がなく毎月投与であること、LH-RHアゴニストには蓄積されたエビデンスと経験があることから、現状ではLH-RHアゴニストが用いられることが多い。

去勢抵抗性となった前立腺がんに対するホルモン療法として、エストロゲン薬であるエストラムスチンの有用性が主にドセタキセルとの併用で示されている。その一つである770人規模で行われた第III相試験では、去勢抵抗性となった前立腺がん患者を、ドセタキセル+エストラムスチン群、ミトキサントロン+プレドニゾロン群に割り付けして比較された[44]。その結果、生存期間中央値は17.5か月 vs. 15.6か月(HR=0.80; 95CI 0.67-0.97、p=0.02)、病勢進行までの期間の中央値は6.3か月 vs. 3.2か月(p<0.01)とドセタキセル+エストラムスチン群で有意に効果を認めた。しかしながら、同群では有意に心血管系のイベントが多いため抗凝固薬の併用がすすめられる、など問題もある。現時点ではドセタキセル+プレドニゾロンとドセタキセル+エストラムスチンの直接の比較試験はないため、前者が好まれる傾向がある。

■去勢抵抗性前立腺がん(castration resistance prostate cancer:CRPC)に対するホルモン療法

(1)アビラテロン

アンドロゲン合成酵素であるCYP17を特異的に阻害する薬剤である。化学療法治療歴を有する症例を対象としたCOU-AA-301試験の結果をもって、FDAは2011年4月にドセタキセル治療後のCRPCに関してアビラテロンを承認した。さらに、化学療法治療前の症例を対象としたCOU-AA-302試験の結果をもって、2012年12月には化学療法前のCRPCに関しても追加承認した。本邦では2014年9月に、ドセタキセル治療歴の有無にかかわらず承認された。

COU-AA-301試験は、ドセタキセルによる前治療歴のある転移性CRPC症例1195人を対象に、アビラテロン+プレドニゾンとプラセボ+プレドニゾンを2:1に割り付けて比較したランダム化第III相試験である。主要評価項目のOSで14.8カ月 vs. 10.9カ月(HR=0.65、p<0.001)と、有意にアビラテロン群が良好であった。また、ベースラインで痛みを有した症例のpain palliation rate(BPI-SF〔Brief Pain Inventory-Short Form〕によるpain scoreで、30%以上減少した割合と定義)も、それぞれ44% vs. 27%(p=0.002)と、有意にアビラテロン群で良好であった[54]。

COU-AA-302試験は、化学療法投与前のCRPC症例1088人を対象に、アビラテロン+プレドニゾン群とプラセボ+プレドニゾン群を比較したランダム化第III相試験である。主要評価項目は、OSと画像的無増悪生存期間(radiographic PFS:rPFS)がco-primary end pointとされた。この試験では、2011年12月に2回目の中間解析(43% OS event)を行い、rPFS中央値がアビラテロン群 vs. プラセボ群で16.5カ月 vs. 8.3カ月(HR=0.53、95%CI 0.45-0.62、p<0.001)であった。この結果をもって、独立データ安全性評価委員(independent data and safety monitoring committee:IDMC)が盲検化の解除とクロスオーバーを推奨した[61]。その後、OSのupdateが報告されているが、クロスオーバーの影響もあるのか、この2群間でOSの有意差は証明されていない[62]。現在、化学療法前のセッティングに関してアビラテロンはFDAで承認されているが、OSの観点からは疑問が残るところである。

CYP17A阻害薬 ✚✚✚

abiraterone 1000 mg 分1+predonisone 10 mg 分2 連日

(2)エンザルタミド

エンザルタミドは、テストステロンやDHTがアンドロゲン受容体(androgen receptor:AR)へ結合するのを阻害する作用、ARの核内移行を阻害する作用、ARとDNAの結合を阻害する作用、ARトランス活性化を増強する補調節因子の誘導を阻害する作用などによりアンドロゲン-AR軸を阻害し、前立腺がんに対する抗腫瘍効果を発揮することが知られている。化学療法治療歴を有する症例におけるAFFIRM試験の結果をもって、CRPCに対する治療薬として2014年5月に本邦でも承認された。2014年8月現在、添付文書には「化学療法未治療の前立腺がんにおける有効性及び安全性は確立していない」との記載があり、実質的には化学療法後の症例にのみ適応されているが、後述するPREVAIL試験の結果をもって化学療法前の症例にも今後適応となると考えられる。

AFFIRM試験は、少なくとも1レジメンの前化学療法を受け、病勢増悪を示した1199症例のCRPCを対象に、エンザルタミド vs. プラセボを2:1に割り付けてランダム化比較した二重盲検化第III相試験である[63]。主要評価項目はOSであった。520死亡イベントが起きた時点で計画された中間解析では、OS中央値はエンザルタミド群で18.4カ月、プラセボ群で13.6カ月、HR=0.63(95%CI 0.53-0.75、p<0.001)と、エンザルタミド群でプラセボ群に比べて37%の死亡リスクの減少を認めた。これらのデータに基づいて、IDMCは試験の中断と盲検化の解除を推奨し、プラセボ群で適格の患者に対してエンザルタミドによる治療が提示された。

PREVAIL試験は、ADTが無効となり病勢増悪をきたし、無症候または軽度の症状を有する化学療法未治療のCRPC1717例を対象としたランダム化二重盲検プラセボ対照第III相試験である。主要評価項目はOSとrPFSであった。540例の死亡後にIDMCによる中間解析が行われ、主要評価項目についてエンザルタミド群で統計学的に有意な改善が認められたことから本試験は有効中止となり、盲検解除された。その後、プラセボ群の患者にはエンザルタミドによる治療が勧められることとなった。rPFS中央値は、プラセボ群で3.9カ月に対し、エンザルタミド群では未到達であり、HR=0.19(95%CI 0.15-0.23、p<0.001)と、エンザルタミド群で有意な延長が認められた。OS中央値はプラセボ群で30.2カ月に対してエンザルタミド群では32.4カ月であり、HR=0.71(95%CI 0.60-0.84、p<0.001)と、エンザルタミド群で有意な生存期間の延長が示された [64]。

enzalutamide療法 ✚✚✚

enzalutamide 160 mg 分1 連日


5.内分泌放射線療法

限局症例のうち、中間〜高リスク群については放射線単独療法よりも内分泌放射線療法が有意に生存率の改善をもたらすことが複数のランダム化比較試験やメタアナリシスで示されている。

放射線に対する内分泌療法の追加効果を最初に検証したのはアメリカのRadiation Therapy Oncology Groupで行われたRTOG86-10試験である。この試験ではT2からT4の限局性前立腺がん患者471人を、放射線単独療法と内分泌放射線療法にランダム割付けをしてその効果を検証した。ホルモン療法として、放射線療法前に2か月、放射線療法を開始して2か月のゴセレリンとフルタミドによるCAB療法を行った。最新の報告では、追跡期間中央値が12.5年の時点で前立腺がん特異的死亡率(23% vs. 36%)、遠隔転移率(35% vs. 47%)、無病生存率(11% vs. 3%)の有意な改善を認めた。10年生存率も43% vs. 34%と良好な傾向であったが有意差はなかった[45]。

また、同じグループで行われたRTOG92-02試験では併用するホルモン療法の期間とタイミングが検証された。この試験ではT2cからT4の限局性前立腺がん患者1554人を、放射線療法終了時にホルモン療法を中止する群とさらに2年間のホルモン療法を追加する群にランダム割付けした。この試験のサブグループ解析で、Gleason score 8-10の高リスク群に相当するグループでの、ホルモン療法継続による10年生存率の有意な改善(45% vs. 32%)を認めた[46]。さらにRTOG94-08試験では、中間リスク群における4か月間のホルモン療法併用の効果が示された[47]。

TROG96-01試験では、局所進行前立腺がんに対する外照射単独(66 Gy)と3か月または6か月のネオアジュバントCAB療法を比較している。このなかで、6か月のネオアジュバントCAB療法群が遠隔転移率、原病生存率、全生存率をいずれも有意に改善した[48]。

以上より、中間リスク群には(4-)6か月、高リスク群には2年間のホルモン療法併用が現在の標準治療である。

内分泌放射線療法 ✚✚✚[45, 46, 47]

LH-RHアゴニスト療法(前記)

非ステロイド性抗アンドロゲン製剤(前記)

これらをまず2-3か月行い、

放射線療法 2.0 Gy/fr×36 回 計 72 Gy

(ホルモン療法は中間リスク群6か月間、高リスク群2年間)

6.PSA監視療法、手術療法、放射線療法、ホルモン療法、内分泌放射線療法の適応

以上のPSA監視療法、手術療法、放射線療法、ホルモン療法、内分泌放射線療法の適応については、以下に述べる局所限局もしくは局所進行症例に対する適応において問題となる。

1)局所限局症例(T1-T3a)

前述のD’Amicoの再発リスク分類に基づき、治療方針を決定する。

(1)低リスク群

条件を満たせばPSA監視療法が適応となる。もしくは、手術療法、放射線療法いずれも選択可能である。各治療法の予後を比較したランダム化比較試験が存在しないため、患者の意思や希望も反映されるべきである。手術療法を選択する場合には、少なくとも10年以上の予後が見込める場合に限るべきである。

(2)中間・高リスク群

手術療法もしくは内分泌放射線療法が適応となる。

2)局所進行症例(T3b)

内分泌放射線療法が標準的とされるが、手術療法も適応となり得る。

3)遠隔転移症例

ホルモン療法が標準的治療である。ホルモン療法耐性となった場合、化学療法が適応となり得る。

7.化学療法

ホルモン療法耐性となった前立腺がんに対して、初めて有用性を示した抗がん剤はドセタキセルとミトキサントロンである。1990年に行われた3つのランダム化比較試験で、ミトキサントロン+ステロイド療法とステロイド単独療法が比較され、ミトキサントロンを併用することで症状緩和、無増悪生存期間が有意に改善することが示された[49, 50, 51]。しかしながら、いずれの試験においてもOSの延長効果は示されていない。ドセタキセルとミトキサントロンの効果を比較検証した代表的なものは国際共同第III相臨床試験であるTAX327試験である。これは1006人の去勢抵抗性前立腺がん患者を、ドセタキセル(75 mg/m2 3週毎)+プレドニゾン(D3P)群、ドセタキセル(30 mg/m2 毎週)+プレドニゾン(D1P)群、またはミトキサントロン+プレドニゾン(MP)群に割り付けして効果を検証した試験である。最新の追跡結果が2008年に報告され、D3P群、D1P群、MP群の生存期間中央値はそれぞれ19.2か月、17.8か月、16.3か月であり、D3P群のMP群に対する有意な生存期間延長効果が引き続き認められた[52]。この結果をもって去勢抵抗性前立腺がんの初回化学療法はドセタキセル+プレドニゾン療法が標準となった。

docetaxel+prednisolone療法 ✚✚✚[52]

docetaxel 75 mg/m2 静注 day1 3週毎

prednisolone 10 mg 分2 連日


カバジタキセルは、ドセタキセルと同じタキサン系の化学療法薬である。TROPIC試験において、755人のドセタキセル抵抗性前立腺がん患者がカバジタキセル+プレドニゾン群とミトキサントロン+プレドニゾン群にランダム割付けされた。その結果、生存期間中央値が15.1か月 vs. 12.7か月(HR=0.70; 95CI 0.59-0.83)、無増悪生存期間は2.8か月 vs. 1.4か月(HR=0.74; 95CI 0.64-0.86)といずれも有意に延長していた[53]。ただし、投与後30日以内の死亡率やGrade 3以上の好中球減少の発生頻度は有意に高かった。この臨床試験の結果をもって、米国Food and Drug Administration(FDA)は2010年に去勢抵抗性前立腺がんに対する治療薬としてカバジタキセルを認可した。本邦では、2014年5月に厚労省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会において承認を了承されており、近々使用可能となる予定である。


cabazitaxel+prednisolone療法 ✚✚✚

cabazitaxel 25 mg/m2 静注(1時間) day1 3週毎

prednisolone 10 mg 分2 連日


ミトキサントロンはドセタキセル抵抗性となった前立腺がんに対し、ある程度の効果を示すとされる。前述したカバジタキセルと最近行われたランダム化比較試験では、ドセタキセル抵抗性の前立腺がんに対するミトキサントロンとカバジタキセルの効果が比較されている。その結果、ミトキサントロン群では4%の奏効と18%のPSA反応率を示していた[53]。しかしながらドセタキセル抵抗性の前立腺がんに対するミトキサントロンとbest supportive careの直接の比較試験はないことから、ドセタキセル後のミトキサントロンの適応については明確なエビデンスはない。

8.日本未承認の薬物療法

1)sipuleucel-T

前立腺酸性ホスファターゼ(prostatic acid phosphate)に反応するT細胞を活性化させる自己の樹状細胞ワクチン製剤である。白血球アフェレーシスとして知られる工程により、患者の血液から末梢の免疫細胞を採取することで製造される。採取された細胞は体外でPA2024と呼ばれる特異的な組み換えタンパク免疫原性物質に曝露させる。PA2024は前立腺酸性ホスファターゼに顆粒球・マクロファージ増殖因子を結び付けたものである。それによって活性化された細胞は、採取後3日を経て患者の体内へと戻される。

sipuleucel-Tの有用性は、大規模ランダム化比較試験であるIMPACT試験で検証された。512人の去勢抵抗性前立腺がん患者を対象とし、2:1の割合でsipuleucel-T群とプラセボ群にランダム割付けされた。追跡期間の中央値が34か月の時点で、生存期間中央値が25.8か月 vs. 21.7か月と有意に改善していた。CTや骨シンチグラフィで評価された無増悪生存期間はsipuleucel-T群で14.6週(3.7カ月)に対して、プラセボ群で14.4週(3.6カ月)と有意差を認めなかった。また、PSAが50%以上減少した症例はsipuleucel-T群で2.6%、プラセボ群では1.3%であった。このように客観的な抗腫瘍効果に乏しいにもかかわらず生存期間が延長するという現象は、先行した第II相試験でも同様の結果であった[55]。毒性はワクチン投与時に起こる悪寒や倦怠感、発熱、吐き気、頭痛などが多く、いずれもGrade 2までの発現で、数日で軽快するものであった。


2)Radium-223

Radium-223はカルシウムに類似した物質であり、骨新生が盛んに行われる骨転移部位に取り込まれる。Radium-223はアルファ粒子を狭い範囲(2-10細胞)で放出するため、その効果は腫瘍細胞に限局し、周囲の正常細胞への損傷を最小限にとどめることが特徴である。

ALSYMPCA試験は、Radium-223(50kBq/kg)を4週間隔、6サイクル投与+best standard care群と、プラセボ+best standard care群に2:1で割り付けたランダム化比較第III相試験である。対象は有症状のホルモン不応性前立腺がんで、骨転移を2カ所以上有し、臓器転移を持たず、ドセタキセル治療歴を有するか、もしくはドセタキセルの適応外の症例であった。主要評価項目はOSであった。

2011年6月3日、ランダム化された809人から314イベントが発生した段階で規定された中間解析が行われ、OSにおける有意な改善が示され、IDMCから試験の早期中止が勧告された。主要評価項目であるOS中央値はRadium-223群とプラセボ群でそれぞれ14カ月と11.2カ月であり、HR=0.70、95%CI 0.55-0.88、p=0.002と、Radium-223群で有意な延長を認めた[65]。


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