A 疫学・診断
1.疫学
2.診断
3.病理組織分類
4.病期分類(ステージング)(AJCC第7版、2009)
5.組織異型度(grade)
6.再発・進展リスク分類
B 治療
1.筋層非浸潤性膀胱がん
2.筋層浸潤膀胱がん(Stage II)、もしくは局所浸潤性膀胱がん(Stage III)
3.転移性膀胱がん
文献

1.疫学

1)罹患数・死亡数

尿路上皮癌は、腎盂がん、尿管がん、膀胱がんを含み、そのなかで膀胱がんの罹患数が最も多い。ただし、膀胱がんは、同じ尿路上皮をもつ他の尿路に同時性もしくは異時性に病変をもつ場合があり、注意が必要である。

「がんの統計’11」によると、わが国の2010年の膀胱がんの死亡数は6804人である。2006年の膀胱がんの罹患数は総数1万6510人であり、男性1万2478人、女性4032人と、男性において約3倍である。また、年齢調整罹患率は男女ともに60歳代から増加し、40歳未満の若年では低いのが特徴である[1]。

2)リスク因子

膀胱がんのリスク因子として、喫煙、職業性発がん物質への曝露、膀胱内の慢性炎症、抗がん剤や放射線治療による二次性がんなどがあげられる。

喫煙者は、非喫煙者に比べ4-7倍、膀胱がん発生リスクが高い。喫煙誘因膀胱がんに関連すると考えられる化学物質は、aminobiphenylとその代謝物がある。

様々な化学物質に曝露される職業において、尿路上皮癌の発生リスクが増加することが最初に知られたのは、1世紀以上前である。わが国では、4種類の芳香族アミン類(benzidine、2-naphthylamine、4-aminobiphenyl、4-nitrobiphenyl)の製造、使用、輸入が禁じられている。

膀胱内の慢性炎症としては、ビルハルツ住血吸虫症や慢性尿路感染症、膀胱留置カテーテルによる膀胱扁平上皮癌の発生リスク増加が知られている。

抗がん剤や、免疫抑制剤として使用されるシクロホスファミドの使用は、膀胱がんの発生リスクを増加させる[2, 3]。

3)予後

(1)筋層非浸潤性膀胱がん(pT1以下)

WHO/ISUP分類(2004年)によるTa膀胱がんの5年生存率は、papillary neoplasms of low malignant potential(PUNLMP)、low grade、high gradeでそれぞれ94%、93%、86%である[4]。また、G3T1膀胱がんにおけるがん特異的生存率は、transurethral resection(TUR)のみで77%(平均追跡期間71か月)、TUR+bacilli Calmette-Guerin(BCG)膀胱内注入で90%(平均追跡期間60か月)であった[5]。

(2)浸潤性膀胱がん

病理的病期診断で膀胱筋層にとどまる場合(pT2)は、根治的膀胱全摘除術後の5年全生存率は約75%である。また、膀胱筋層より深達度がさらに深い場合(pT3-4)では、根治的膀胱全摘除術後の5年全生存率は30-50%である[6]。

(3)転移性膀胱がん

転移性膀胱がんの予後はきわめて不良である。全身化学療法を行った場合の5年生存率は13-15%であり、生存期間中央値は14-15か月である[7]。

2.診断

1)検診(スクリーニング)

一般集団に対する単回血尿検査、反復血尿検査、排尿細胞診によるスクリーニングが、膀胱がんによる死亡を減らすというエビデンスはなく、感度、特異度の点からも推奨されない。

以前に治療された膀胱がん患者の監視と管理において、膀胱鏡検査および膀胱洗浄/尿細胞診検査の実施は有効であることが示されている[8]。現在まで、環境的もしくは工業的曝露コホートによる膀胱がんのスクリーニングに関するランダム化比較試験は存在しない。

2)症状

膀胱がんの主な臨床症状は、血尿(無症候性肉眼的血尿、顕微鏡的血尿)、膀胱刺激症状(頻尿、排尿時痛、残尿感等)である。

肉眼的血尿を有する患者の10-20%が膀胱がんと診断されたという報告がある。これに対して、顕微鏡的血尿の患者における膀胱がんの発生頻度は低く、2-3%と報告されている。

膀胱刺激症状は、膀胱がんの約3分の1に認められるとされており、carcinoma in situ(CIS)に伴うことが多いとされている。この理由として、膀胱容量の減少、排尿筋の過活動、膀胱三角部の浸潤、尿道や膀胱頸部の閉塞が考えられる。

3.病理組織分類

尿路上皮癌:頻度に地域差が存在する。欧米では90%以上が尿路上皮癌であるが、東欧、アフリカ、アジアではその頻度が比較的減少する。

扁平上皮癌:一般的に全膀胱がんの6-8%が扁平上皮癌といわれているが、東アフリカや中東地域などビルハルツ住血吸虫の感染率が高い地域では、全膀胱がんの75%が扁平上皮癌である。

腺癌:全膀胱がんの2%が腺癌といわれている。発症部位が膀胱頂上部である場合は、尿膜管がんとの鑑別が必要である。

4.病期分類(ステージング)(AJCC第7版、2009)

1)TNM分類

2)病期

5.組織異型度(grade)

1973年に作成されたWHO分類が2004年に改訂された。これにより、低悪性度乳頭状尿路上皮新生物(papillary urothelial neoplasm of low malignant potential: PUNLMP)と、low-grade papillary urothelial carcinoma、high-grade papillary urothelial carcinomaの3分類とされたが、1973年版の分類もいまだによく使用されている(表1)。

6.再発・進展リスク分類

European Organisation for Research and Treatment of Cancer(EORTC)は、2600人の患者情報、以下の6つのリスク因子をもとに、筋層非浸潤性膀胱がんの再発と進展リスク予想ツールを開発した。

・再発歴(初発、再発[1年以内の再発が1個/それ以上])
・腫瘍数(単発、多発[2-7個/8個以上])
・腫瘍サイズ(3 cm未満/以上)
・T分類(Ta/T1)
・CISの有無
・組織異型分類(WHO 1973[G1/G2/G3])

このツールはEORTCのサイトより無料でダウンロード可能であるため、活用されたい(http://www.eortc.be/tools/bladdercalculator/default.htm)。また、腫瘍の深達度、組織異型度毎の再発率、進展率を表2に示す。

1.筋層非浸潤性膀胱がん

筋層非浸潤性膀胱がん(Ta、T1、Tis)の初回治療は、経尿道膀胱腫瘍切除(transurethral resection of bladder tumor: TURBT)と電気凝固術が一般的である。TURBTは、腫瘍の診断、ステージング、治療としての意味がある。TURBT実施後も再発の率は高く、そのため、TURBTで得られた腫瘍の深達度、組織異型度、サイズ、単発か多発かなどの情報をもとに、再発リスク、進展リスクを決定したうえで、リスクごとの治療選択が必要である。

1)cTa、low-gradeに対する治療

・TURBT✚✚✚

・TURBT後の膀胱内抗がん剤即時(24時間以内)単回投与✚✚✚[10]

cTa、low-grade膀胱がんであっても、再発のリスクは依然高い。7つのランダム化比較試験を解析に含むメタアナリシスでは、Ta、T1膀胱がんに対するTURBT後の即時単回抗がん剤投与による、11%(48%から37%に)の再発リスク減少(オッズ比[OR]=0.61、p<0.0001)を報告した[10]。また、この試験では、腫瘍が単発であっても複数であってもその効果が示された。この試験では、抗がん剤としてマイトマイシンC、チオテパ、ピラルビシンが使用されており、薬剤間で効果に差はないとされている。この結果を受け、TURBT施行後24時間以内に抗がん剤(免疫療法は推奨されない)の膀胱内単回投与が推奨される。

2)Ta、high-gradeに対する治療

・TURBT✚✚✚

・再TURBT✚✚

・TURBT後の膀胱内BCG投与✚✚✚[11, 12]

このカテゴリーの膀胱がんは、再発やさらなる浸潤進展のリスクが高い。初回のTURBTにて筋層が含まれない場合、20-40%の患者で残存腫瘍もしくは未確認の筋層浸潤が存在する。このため、初回TURBTで不完全切除な場合や、筋層が含まれていない場合は、再TURBTを行うことが推奨される。

いくつかのメタアナリシスの結果、TaもしくはT1腫瘍に対するTURBT後のBCGもしくはマイトマイシンCの膀胱内投与は、再発を低下させることが示されている。585人の症例、6つのランダム化比較試験を含むメタアナリシスでは、TURBT+BCG膀胱内投与が、TURBT単独に比べ、有意に12か月後の再発率を低下させることを示している(OR=0.30; 95CI 0.21-0.43)[11]。またBCGとマイトマイシンCの効果を比較したメタアナリシスでは、再発率の低下において、BCGの優越性が有意に示された(OR=0.56; 95CI 0.38-0.84、p=0.005)[12]。NCCNガイドライン(version 2.2012)では、マイトマイシンCも選択肢としてあげられているが、BCGが好ましいと記載されている[9]。

3)T1に対する治療

・TURBT→再TURBT✚✚

・上記後の膀胱内BCGもしくは化学療法投与✚✚✚

初回TURBTでT1腫瘍と診断された136例に4-6週間後の再TURBTを行った場合、52%(71/136例)で再発を認めたという報告がある[13]。このように、T1腫瘍の再発率は高く、NCCNガイドライン(version 2.2012)では再TURBTが強く推奨されている。また、初回TURBTで不完全切除な場合や、筋層が含まれていない場合、リンパ脈管系への浸潤を認める場合も同様に、再TURBTが強く推奨されている[9]。

T1腫瘍で、組織異型度がhigh-gradeである場合、TURBTのみでは、非常に高い確率で再発もしくは腫瘍進展をきたす。このため、TURBT後の膀胱内BCG投与が推奨される。T1腫瘍に対するTURBT+膀胱内BCG投与の5年生存率は70%と報告されており、これは膀胱全摘除術の成績と同等である。このため、膀胱全摘除術の適応は、TURBT+膀胱内BCG投与後早期に再発した症例に限られている。

4)Tisに対する治療

・TURBT✚✚✚

・膀胱内BCG投与✚✚✚[14]

Tisはhigh-grade病変であり、筋層浸潤性膀胱がんの前病変と考えられており、TURBT後の膀胱内BCG投与が標準治療である。Tisの患者700人のメタアナリシスにおいて、BCGの膀胱内投与は、マイトマイシンCの膀胱内投与と比べ、完全奏効割合で68% vs. 51%(OR=0.53、p=0.0002)、中央値3.6年のフォローアップにおける無病割合が47% vs. 26%(OR=0.41、p<0.0001)と優れていた[14]。

2.筋層浸潤膀胱がん(Stage II)、もしくは局所浸潤性膀胱がん(Stage III)

1)根治的膀胱全摘除術

Stage II もしくはIIIの膀胱がんに対する標準治療は、根治的膀胱全摘除術である。根治的膀胱全摘除術は、男性では膀胱、前立腺、精嚢を、女性では膀胱、子宮、腟前壁、尿道を摘除する。男性の尿道切除は、尿道再発リスクの高い場合に行う。

2)骨盤内リンパ節郭清術

骨盤内リンパ節郭清術は、根治的膀胱全摘除術の一部として一般的に行われている。リンパ節郭清の範囲を広げることが生存率の向上にかかわるかについては、十分な根拠がない。リンパ節郭清の個数が生存率にかかわるという報告もあるが[15]、手術の質の差を表しているだけの可能性もある。このため、リンパ節郭清の範囲や摘出個数に関する標準化は行われていないのが現状である[16]。

3)TURBT、膀胱部分切除

T2以上の膀胱がんは、根治的膀胱全摘出術が標準治療であり、TURBT単独や膀胱部分切除単独による姑息的手術は、患者の全身状態が不良など種々の理由で根治的膀胱全摘除術や集学的膀胱温存治療が適応にならない患者で適応となる。

4)術前化学療法

[抗がん剤レジメン例]

MVAC療法✚✚✚[17, 18]

methotorexate 30 mg/m2 静注 day1,15,22

vinblastine 3 mg/m2 静注 day2,15,22

doxorubicin 30 mg/m2 静注 day2

cisplatin 70 mg/m2 静注 day2

4週毎 3サイクル

尿路上皮癌は、シスプラチンを基盤とした抗がん剤治療の感受性が高く、周術期化学療法の開発が進められてきた。Medical Research CouncilとEuropean Organisation for Research and Treatment of Cancer(EORTC)の共同で実施されたランダム化比較試験では、T2-T4a N0-NX M0と診断された膀胱がんを対象に、術前化学療法CMV(シスプラチン+メトトレキサート+ビンブラスチン)3サイクル(491人)と、局所治療のみ(485人)が比較された。局所治療は、それぞれの施設で根治的膀胱全摘除術か放射線治療か選択することが可能であった。病理学的完全奏効割合は36%と高かったが、3年生存期間は55.5% vs. 50%(p=0.075)と統計学的に有意差を認めなかった[17]。しかしながら、その後の長期追跡調査の結果、10年生存率36% vs. 30%(HR=0.84; 95CI 0.72-0.99、p=0.037)と、統計学的に有意に術前のCMV療法が生存を改善させることが示された[18]。

INT0080試験では、T2-T4a N0 M0の膀胱がん317人を対象に、術前化学療法MVAC(メトトレキサート+ビンブラスチン+ドキソルビシン+シスプラチン)3サイクルと根治的膀胱全摘除術単独がランダム化比較された。主要評価項目である全生存期間中央値は77か月 vs. 46か月(p=0.06)、5年生存率は57% vs. 43%(p=0.06)と、統計学的に有意に近い値が得られた。術前化学療法は、死亡とも術後合併症とも関連を示さなかった[19]。

11のランダム化比較試験に登録された3005症例のメタアナリシスでは、局所治療単独に比べ、シスプラチンを基盤とした術前化学療法が、死亡リスクを14%低下させ、5年生存率を5%向上することが示された[20]。

これらの試験の結果、Stage II、IIIの膀胱がんに対するシスプラチンを基盤とした術前化学療法が標準治療と考えられている。また、最も広範に研究され、最大の有益性を示したレジメンはMVAC療法とCMV療法であり、GC療法(ゲムシタビン+シスプラチン)など最新のレジメンがこの設定でこれらのレジメンと同等であることを実証した臨床試験データはない。

5)術後化学療法

術前化学療法に対して術後化学療法の利点は、化学療法実施前に、病理学的に正確なステージングが行われているため、化学療法の利益があると思われる症例をより正確に選択できる可能性があることである。また、もし化学療法の感受性が低かった場合、根治的膀胱全摘除術の時期を逸するリスクを減少することも利点である。しかしながら、術前化学療法と術後化学療法を直接比較した臨床試験は存在しない。

術後化学療法と局所療法のみ比較したランダム化試験がいくつか存在する。しかしながら、どの試験も症例集積の遅延による早期終了など、統計的に検出力が不十分な試験となっており、術後化学療法の効果について結論は出ていない。

6)膀胱温存療法

T2、T3膀胱がんの限られた患者に対して、膀胱部分切除、化学放射線療法などの集学的治療にて、膀胱温存療法が行われることがある。ただし、ランダム化比較試験で根治的膀胱全摘除術との優劣を比較した研究はなく、あくまでもオプションである。

3.転移性膀胱がん

1)ファーストライン抗がん剤

[抗がん剤レジメン例]

GC療法✚✚✚[21]

gemcitabine 1000 mg/m2 静注 day1, 8, 15

cisplatin 70 mg/m2 静注 day2

4週毎

carboplatin+gemcitabine療法(cisplatin不適格症例の代替レジメン)
✚✚✚[23]

gemcitabine 1000 mg/m2 静注 day1, 8

carboplatin AUC 4.5 静注 day1

3週毎

進行期または転移性膀胱がんに対する抗がん剤治療として、長年、MVAC療法が標準治療とされてきた。しかしながら、GC療法とMVAC療法を比べたランダム化第III相試験の結果、GC療法はMVAC療法と比較して同等の奏効割合(49% vs. 46%)、無進行期間(time to progression: TTP)(7.4か月 vs. 7.4か月、HR=1.05; 95CI 0.85-1.30、p=0.66)、全生存率(13.8か月 vs. 14.8か月、HR=1.04; 95CI 0.82-1.32、p=0.75)をもたらした。また、GC療法はMVAC療法と比較して、好中球減少や感染症の面で安全性に優れており、また忍容性にも優れていた[21]。この研究は、2レジメンの同等性を示すようにはデザインされていなかったものの、結果はMVAC療法の毒性に耐えられないような患者に対してGC療法がその代替として妥当であることを示している。この結果をもって、現在の標準治療はGC療法といえる。

GC療法の原法はゲムシタビン1000 mg/m2をday1,8,15に、シスプラチン70 mg/m2をday2に投与し、28日(4週)を1サイクルとしている。しかしながら、前述の試験においても、高度の血液毒性によるゲムシタビンの投与スケジュール変更が全サイクルの36%に認められ、そのうち最も多かった変更が、day15のゲムシタビンの投与中止であった[20]。後向き研究ではあるが、3週毎投与(ゲムシタビン1000 mg/m2をday1,8に、シスプラチン70 mg/m2をday2に投与)と原法である4週毎投与を比較した試験では、全生存期間に統計学的に有意な差を認めず(HR=1.15; 95CI 0.83-1.59、
p=0.40)、5年生存率、奏効割合も同様に有意な差を認めなかった。Grade 3-4の好中球減少、血小板減少の発症は、3週毎投与で有意に少なく、ゲムシタビンの相対的用量強度(relative dose intensity: RDI)は3週毎投与で高い傾向にあった(96% vs. 80.7%)[22]。これらの2つの投与方法をランダム化比較した試験はないが、実臨床において、day15のゲムシタビンが中止され、用量強度(dose intensity)が保たれなくなることは多く経験する。このような場合、3週毎投与への変更を代替案として検討する余地はあるといえる。

上記のように、転移性膀胱がんに対するファーストラインの標準治療は、GC療法である。しかしながら、膀胱全摘出後の影響による腎機能低下、performance status不良、高齢など、シスプラチンが使用できないもしくは使用しづらい状況が時折ある。EORTC30986試験は、このような症例を対象とした、MCAVI(カルボプラチン+メトトレキサート+ビンブラスチン)療法とカルボプラチン+ゲムシタビン療法のランダム化比較試験である。奏効割合30.3% vs. 41.2%(p=0.08)、全生存期間中央値 8.1か月vs. 9.3か月(p=0.64)と両群に統計学的有意な差はなく、重症の急性毒性は21.2% vs. 9.3%とMCAVI療法が多い傾向にあった[23]。この試験の全生存期間中央値は、GC療法(14か月)やMVAC療法(15.2か月)と比べ短く[7]、そもそもシスプラチン・レジメンとカルボプラチン・レジメンを比較したものではないため、カルボプラチンを安易にシスプラチンの代替とすることは厳に慎むべきである。ただし、シスプラチン不適格症例に限った場合、カルボプラチン+ゲムシタビンはGC療法の代替として考慮されるレジメンといえる。

2)セカンドライン抗がん剤

膀胱がんは、プラチナ製剤を基盤としたファーストライン抗がん剤治療に反応性を示すが、そのほとんどが腫瘍増悪をきたす。セカンドライン抗がん剤治療として、vinflunine、タキサン系薬剤、イホスファミド、ペメトレキセドなど様々な薬剤が試されているが、いまだ標準治療と呼べるものは存在しないのが現状である。このため、この設定の患者に対しては、可能であれば臨床試験がすすめられるべきである。

(1)vinflunine✚✚✚[24]

vinflunineは新規のビンカアルカロイド系薬剤であり、膀胱がんのセカンドライン治療において、best supportive care(BSC)に対して生存の改善を評価したランダム化第III相比較試験が実施された唯一の薬剤である。

この第III相比較試験では、プラチナ製剤による前治療歴(周術期抗がん剤治療のみの場合を除く)を有する膀胱がん370症例を対象に、vinflunine +BSC群(253人)vs. BSC群(117人)を比較した[24]。主要評価項目である生存期間中央値は、6.9か月vs. 4.6か月(HR=0.88; 95CI 0.69-1.12、p=0.287)と約2か月の延長を認めたが、統計学的に有意とはならなかった。しかしながら、ファーストライン抗がん剤治療時の予後因子で調整し、多変量解析を行った場合は、生存期間中央値6.9か月vs. 4.3か月(HR=0.77; 95CI 0.61-0.98、p=0.036)と統計学的に有意な生存率の延長を示した[24]。この結果を受け、vinflunineは欧州で膀胱がんに対するセカンドライン治療として適応承認されている。

(2)その他、第II相試験の実施されている薬剤

その他、単剤、併用を含め、多くの薬剤で第II相試験が実施されており、その奏効割合10-20%、 無増悪生存期間中央値2-3か月、全生存期間中央値6-9か月と報告されている(表3)。

(*クリックすると拡大表示します)

1. Matsuda T, et al. Cancer incidence and incidence rates in Japan in 2006: based on data from 15 population-based cancer registries in the monitoring of cancer incidence in Japan (MCIJ) project. Jpn J Clin Oncol 2012; 42(2): 139-47. [PubMed]

2. Travis LB, et al. Bladder and kidney cancer following cyclophosphamide therapy for non-Hodgkin’s lymphoma. J Natl Cancer Inst 1995; 87(7): 524-30. [PubMed]

3. O’Keane JC. Carcinoma of the urinary bladder after treatment with cyclophosphamide. N Engl J Med 1988; 319(13): 871. [PubMed]

4. Schned AR, et al. Survival following the diagnosis of noninvasive bladder cancer: WHO/International Society of Urological Pathology versus WHO classification systems. J Urol 2007; 178(4 Pt 1): 1196-200; discussion 1200. [PubMed]

5. Patard J, et al. Tumor progression and survival in patients with T1G3 bladder tumors: multicentric retrospective study comparing 94 patients treated during 17 years. Urology 2001; 58(4): 551-6. [PubMed]

6. Quek ML, et al. Prognostic significance of lymphovascular invasion of bladder cancer treated with radical cystectomy. J Urol 2005; 174(1): 103-6. [PubMed]

7. von der Maase H, et al. Long-term survival results of a randomized trial comparing gemcitabine plus cisplatin, with methotrexate, vinblastine, doxorubicin, plus cisplatin in patients with bladder cancer. J Clin Oncol 2005; 23(21): 4602-8. [PubMed]

8. Whelan P, et al. Three-year follow-up of bladder tumours found on screening. Br J Urol 1993; 72(6): 893-6. [PubMed]

9. National Comprehensive Cancer Network(NCCN)guidelines. Available at www.nccn.org

10. Sylvester RJ, et al. A single immediate postoperative instillation of chemotherapy decreases the risk of recurrence in patients with stage Ta T1 bladder cancer: a meta-analysis of published results of randomized clinical trials. J Urol 2004; 171(6 Pt 1): 2186-90, quiz 2435. [PubMed]

11. Shelley MD, et al. Intravesical Bacillus Calmette-Guerin in Ta and T1 Bladder Cancer. Cochrane Database Syst Rev 2000; (4): CD001986. [PubMed]

12. Bohle A, et al. Intravesical bacillus Calmette-Guerin versus mitomycin C for superficial bladder cancer: a formal meta-analysis of comparative studies on recurrence and toxicity. J Urol 2003; 169(1): 90-5. [PubMed]

13. Schwaibold HE, et al. The value of a second transurethral resection for T1 bladder cancer. BJU Int 2006; 97(6): 1199-201. [PubMed]

14. Sylvester RJ, et al. Bacillus calmette-guerin versus chemotherapy for the intravesical treatment of patients with carcinoma in situ of the bladder: a meta-analysis of the published results of randomized clinical trials. J Urol 2005; 174(1): 86-91; discussion 91-2. [PubMed]

15. Herr HW, et al. Surgical factors influence bladder cancer outcomes: a cooperative group report. J Clin Oncol 2004; 22(14): 2781-9. [PubMed]

16. Koppie TM, et al. Standardization of pelvic lymphadenectomy performed at radical cystectomy: can we establish a minimum number of lymph nodes that should be removed? Cancer 2006; 107(10): 2368-74. [PubMed]

17. Neoadjuvant cisplatin, methotrexate, and vinblastine chemotherapy for muscle-invasive bladder cancer: a randomised controlled trial. International collaboration of trialists. Lancet 1999; 354(9178): 533-40. [PubMed]

18. Griffiths G, et al. International phase III trial assessing neoadjuvant cisplatin, methotrexate, and vinblastine chemotherapy for muscle-invasive bladder cancer: long-term results of the BA06 30894 trial. J Clin Oncol 2011; 29(16): 2171-7. [PubMed]

19. Grossman HB, et al. Neoadjuvant chemotherapy plus cystectomy compared with cystectomy alone for locally advanced bladder cancer. N Engl J Med 2003; 349(9): 859-66. [PubMed]

20. Advanced Bladder Cancer (ABC) Meta-analysis Collaboration. Neoadjuvant chemotherapy in invasive bladder cancer: a systematic review and meta-analysis. Lancet 2003; 361(9373): 1927-34. [PubMed]

21. von der Maase H, et al. Gemcitabine and cisplatin versus methotrexate, vinblastine, doxorubicin, and cisplatin in advanced or metastatic bladder cancer: results of a large, randomized, multinational, multicenter, phase III study. J Clin Oncol 2000; 18(17): 3068-77. [PubMed]

22. Als AB, et al. Gemcitabine and cisplatin in locally advanced and metastatic bladder cancer; 3- or 4-week schedule? Acta Oncol 2008; 47(1): 110-9. [PubMed]

23. De Santis M, et al. Randomized phase II/III trial assessing gemcitabine/carboplatin and methotrexate/carboplatin/vinblastine in patients with advanced urothelial cancer who are unfit for cisplatin-based chemotherapy: EORTC study 30986. J Clin Oncol 2012; 30(2): 191-9. [PubMed]

24. Bellmunt J, et al. Phase III trial of vinflunine plus best supportive care compared with best supportive care alone after a platinum-containing regimen in patients with advanced transitional cell carcinoma of the urothelial tract. J Clin Oncol 2009; 27(27): 4454-61. [PubMed]

25. Sonpavde G, et al. Second-line systemic therapy and emerging drugs for metastatic transitional-cell carcinoma of the urothelium. Lancet Oncol 2010; 11(9): 861-70. [PubMed]