A 疫学・診断
1.疫学
2.診断
3.病期分類(ステージング)(UICC 第7 版、2009)
B 治療
1.外科切除
2.術後補助化学療法
3.切除不能・進行胆道がん
文献

1.疫学

1)罹患数・死亡数

日本の胆管・胆嚢がんの罹患数(2006年)は9740人で、死亡数(2010年)は8440人である。

2)リスク因子

胆管がんのリスク因子は、拡張型の膵・胆管合流異常と原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis: PSC)である。

胆嚢がんのリスク因子は、膵・胆管合流異常(特に胆管拡張を伴わないもの)、胆嚢結石症・陶器様胆嚢、胆嚢腺腫、胆嚢腺筋症である。

十二指腸乳頭部がんのリスク因子はエビデンスがない。

3)予後

地域がん登録における胆道がんの5年生存率(2000-2002年診断例)は21.8%である(がんの統計 ’11)。

全国胆道癌登録調査報告(1988-1997年)の切除例の術後遠隔成績を図1に示す。

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2.診断

1)検診

早期発見や予後改善に結びつく検診方法は確立していない。

2)症状

胆管がんの初発症状の90%は黄疸である。黄疸を伴わない場合、腹痛、発熱、食欲不振、全身倦怠感などを認める。

胆嚢がんの症状としては右上腹部痛が最も多く、その他、悪心・嘔吐、体重減少、黄疸、食欲不振、腹部膨満感、掻痒感、黒色便がある。乳頭部がんでは、黄疸、発熱、腹痛が多い。

3)診断

診断のファーストステップは、血液生化学検査と腹部超音波検査である。胆管閉塞をきたした場合、胆道系酵素の上昇を認め、腫瘍マーカーではCA19-9は50-79%、CEAは40-70%で上昇する。

セカンドステップの検査としては、造影CTやMRI(MRCPを含む)が局在や進展度診断に有用である。胆管がんでは、内視鏡的あるいは経皮的胆管造影(ERC/PTC)、胆嚢がんにおいては超音波内視鏡(EUS)が良性疾患との鑑別に有用であり、胆嚢内隆起性病変の診断能はCTより優れている。

4)病理分類

胆道には肝内胆管と肝外胆道系が含まれる。わが国の「外科・病理 胆道癌取扱い規約(第5版)」では、腺癌、腺扁平上皮癌、扁平上皮癌、小細胞癌、腺内分泌細胞癌、未分化癌、絨毛癌、癌肉腫、AFP産生腺癌、カルチノイド腫瘍、分類不能腫瘍に大別され、腺癌はさらに、乳頭腺癌、管状腺癌、充実腺癌、粘液癌、印環細胞癌に分類される。90%以上が腺癌であり、その他(腺扁平上皮癌、扁平上皮癌、小細胞癌など)は5%以下である。

3.病期分類(ステージング)(UICC第7版、2009)

1)TNM分類

2)病期

外科切除が可能であれば、必要に応じて術前処置(胆道ドレナージ、門脈塞栓術など)を行った後に切除を行う。切除不能例に対しては化学療法、放射線療法、緩和治療といった選択肢がある。

1.外科切除

外科切除は唯一の根治治療であるため、切除可能かどうかをまず検討する。治癒切除率は胆嚢がん37.7%、胆管がん30.4%、乳頭部がん78.5%と、胆嚢がん、胆管がんでは根治切除が難しい[1]。肝・肺・腹膜転移、遠隔リンパ節転移は切除不能であるが、切除不能な局所進展因子については明らかなコンセンサスがない。肝門部胆管がんおよび胆嚢がんの局所進展因子については胆管、門脈、肝動脈への進展を総合的に評価する必要がある。Jarnaginらは、肝門部胆管がんの切除不能の局所進展因子を次のように規定している(レベルIV:分析疫学的研究)[2]。

(1)両側胆管2次分岐までの浸潤。
(2)門脈本幹の狭窄または閉塞(門脈分岐部の近位部)。
(3)肝片葉の萎縮と対側門脈枝の狭窄または閉塞。
(4)肝片葉の萎縮と対側の胆管2次分岐までの浸潤。
(5)片側胆管2次分岐までの浸潤と対側門脈枝の狭窄または閉塞。

遠隔転移のあるStage IVBは切除不能であるが、大動脈周囲リンパ節転移に関しては、切除により予後の改善が期待できるため手術適応があるとする報告もある。切除不能と判断する局所進展因子についてのコンセンサスはなく、施設や外科医による差がみられる。

胆管炎や広範肝切除予定例には術前処置として減黄術を行う。膵頭十二指腸切除術までの侵襲の手術であれば術前減黄術を必要ないとする報告が多い(レベルIV、VI:患者データに基づかない、専門委員会や専門家個人の意見)。広範囲肝切除術における合併症による死亡率は10%前後であり、主な原因は肝不全であるため、高度黄疸例では術前に減黄処置を行うことが多い。

肝右葉切除以上または50-60%以上の肝切除症例(特に黄疸症例)には、術後合併症や手術関連死亡を減少させる可能性があるという理由で門脈塞栓術が行われることがある。

2.術後補助化学療法

切除不能・再発胆道がんに対するゲムシタビン、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(tegafur・gimeracil・oteracil potassium: TS-1)、シスプラチンの有用性は後述のように示されているが、術後補助療法としてのエビデンスは現時点ではほとんど存在しない。胆道がんの症例が少なく症例集積が難しいことや、胆道がんは部位により生物学的特性が異なり手術方法も多岐にわたり、一律に臨床試験の対象としにくいことが理由としてあげられる。

2002年にTakadaらは、手術単独とマイトマイシンC+フルオロウラシルを比較した第III相試験(278例)の結果を報告しており、胆嚢がんでのみ5年生存率が化学療法群で26.0%、手術単独群で14.4%と前者で有効性が示されたが、治癒切除例に限定すると有意差がみられなかった[3]。

現在、術後補助療法に関して日本で複数の臨床試験が進行・計画中である。bile duct cancer adjuvant trial(BACT試験)は、肝外胆管がんのR0(治癒切除)またはR1(組織学的遺残)手術例を対象にゲムシタビン6か月間の投与の有無を比較するランダム化比較試験であり、結果が待たれる。JCOGでは、TS-1の術後補助療法のランダム化比較試験が計画中である。現時点で推奨すべき補助療法のレジメンがないため、臨床試験として行うか、実地臨床として行う場合は十分なインフォームドコンセントを行ったうえで投与すべきである。

3.切除不能・進行胆道がん

胆道がんに対する化学療法については、大規模な第III相試験がほとんど行われていない。これまでの臨床試験は胆道がん全体を対象に実施されてきたが、部位ごとに治療方針、化学療法の感受性、予後など大きく異なるため、胆道がんにおける化学療法の治療成績は、背景因子などを十分把握しながら判断する必要がある。

化学療法自体の有用性は、日本での後向き研究の報告があり、best supportive care(BSC)に対する化学療法の生存期間に関するハザード比は0.55(95%CI 0.42-0.72)であり、予後の改善は期待できる。

かつてはフルオロウラシルをベースに治療が行われてきたが、国内の進行胆道がん患者40人を対象に行われたゲムシタビン単剤の後期第II相試験において奏効割合17.5%、無増悪生存期間2.6か月、全生存期間7.6か月、1年生存割合25%という成績が得られ[4]、2006年より保険適用となっている。

また、進行胆道がん患者41人を対象に行われたTS-1単剤の後期第II相試験では、奏効割合35%、無増悪生存期間3.7か月、全生存期間9.4か月、1年生存割合32.5%と良好な成績が報告され[5]、2007年に承認されている。

ゲムシタビン単独とゲムシタビン+シスプラチン併用療法のランダム化第II相試験(ABC-01試験)において併用療法群で良好な結果が得られたため、症例数を追加し、ゲムシタビン+シスプラチン併用療法の生存期間における優越性を検証する第III相試験(ABC-02試験)が行われた。ゲムシタビン単独群と併用療法群の奏効割合は16.0% vs. 25.7%、無増悪生存期間は5か月 vs. 8か月、全生存期間は8.1か月 vs. 11.7か月と併用療法群で有意に良好な成績であった[6]。この結果をもとに、現時点ではゲムシタビン+シスプラチン併用療法が、切除不能・進行胆道がんの標準治療と位置づけられている。日本においても2012年2月にシスプラチンが胆道がんへ適応拡大された。

国内では、TS-1単独とゲムシタビン+TS-1(GS)療法のランダム化第II相試験がJCOGで行われ、1年生存率が40% vs. 52.9%と後者で良好な結果が得られ、試験治療としてGS療法が選択された。ゲムシタビン+シスプラチン療法とGS療法を比較する第III相試験としてJCOG1113が行われる予定である。

[初回化学療法]

gemcitabine療法 ✚✚✚[6]

gemcitabine 1000 mg/m2 静注 day1,8,15 4週毎

gemcitabine+cisplatin療法 ✚✚✚[6]

gemcitabine 1000 mg/m2 静注 day1,8

cisplatin 25 mg/m2 静注 day1,8

3週毎

1. Nagakawa T, et al. Biliary tract cancer treatment: results from the Biliary Tract Cancer Statistics Registry in Japan. J Hepatobiliary Pancreat Surg 2002; 9(5): 569-75. [PubMed]

2. Jarnagin WR, et al. Staging, resectability, and outcome in 225 patients with hilar cholangiocarcinoma. Ann Surg 2001; 234(4): 507-17. [PubMed]

3. Takada T, et al. Is postoperative adjuvant chemotherapy useful for gallbladder carcinoma? A phase III multicenter prospective randomized controlled trial in patients with resected pancreaticobiliary carcinoma. Cancer 2002; 95(8): 1685-95. [PubMed]

4. Okusaka T, et al. Phase II study of single-agent gemcitabine in patients with advanced biliary tract cancer. Cancer Chemother Pharmacol 2006; 57(5): 647-53. [PubMed]

5. Furuse J, et al. S-1 monotherapy as first-line treatment in patients with advanced biliary tract cancer: a multicenter phase II study. Cancer Chemother Pharmacol 2008; 62(5): 849-55. [PubMed]

6. Valle J, et al. Cisplatin plus gemcitabine versus gemcitabine for biliary tract cancer. N Engl J Med 2010; 362(14): 1273-81. [PubMed]