A 分類・頻度・症状
1.過敏性反応
2.原因薬剤とその頻度
3.発症時期・リスク因子
4.症状
B 予防・治療・再投与
1.予防
2.治療
3.再投与
文献

薬剤を投与する際に生じる副作用として過敏性反応がある。抗がん剤などの投与によって生じる過敏性反応は「薬剤投与によって生じる反応のうち、薬剤の毒性プロファイルからは予想されない非特異的な有害事象」と一般的に定義される。

1.過敏性反応

過敏性反応は、その発生機序により、サイトカイン放出症候群(cytokine release syndrome)とアレルギー反応・アナフィラキシー(allergic reaction/anaphylaxis)に分類される。

1)サイトカイン放出症候群(cytokine release syndrome)

投与時反応は非アレルギー性に生じるもので、IgEを介したI型アレルギー反応とは異なり、投与薬剤が単球・マクロファージなどと結合しサイトカイン(インターロイキン、インターフェロン、TNFなど)を放出することによって生じる過敏性反応である。

2)アレルギー反応(allergic reaction)

アレルギー反応とは、IgEを介して肥満細胞や好塩基球が反応し、ヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランディンなどの化学伝達物質が放出されることで生じるI型アレルギー反応である。そのなかでも反応が激しく即時的なものをアナフィラキシー(anaphylaxis)と呼ぶ。

2.原因薬剤とその頻度

過敏性反応はすべての薬剤で生じうる反応であり、抗がん剤治療を行ううえでその可能性を常に留意する必要がある。

1)サイトカイン放出症候群

モノクローナル抗体(リツキシマブ、トラスツズマブ、ベバシズマブなど)がよく知られている。

(1)リツキシマブ(抗CD20モノクローナル抗体):約90%。

(2)トラスツズマブ(抗HER2ヒト化モノクローナル抗体):約40%。

(3)ベバシズマブ(抗VEGFヒト化モノクローナル抗体):3%。

2)アレルギー反応

比較的頻度の高いものを下記にあげる。

(1)プラチナ系:シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン。

(2)タキサン系:パクリタキセル、ドセタキセル。

(3)その他:L-アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、シタラビン、セツキシマブなど。

3.発症時期・リスク因子

1)発症時期

薬剤投与中(特に投与開始30分-2時間以内)、投与後24時間以内に発症することが多い。投与開始から24時間以降や2回目投与以降に発症することもある。

2)リスク因子

(1)静脈内投与>経口投与・腹腔内投与。

(2)反復投与時に出やすい薬剤(プラチナ系薬剤)。

(3)同系統の薬剤への過敏性反応の既往。

(4)薬剤の系統に限らず、複数の薬剤に対する過敏性反応の既往。

4.症状

投与時反応の臨床症状はアレルギー反応と類似し、重複している部分があり、臨床的に判別することは難しい。一般的には、投与時反応は通常軽〜中等度のことが多い。有害事象共通用語規準 v4.0 日本語訳JCOG版(CTCAE v4.0-JCOG)[1]も併記する(表1)。

1)軽症〜中等症(Grade 1、2)

皮膚紅潮、皮膚掻痒感、発疹、発熱、悪寒、嘔気・嘔吐・下痢など。

2)重症・アナフィラキシー(Grade 3以上)

(1)皮膚症状:蕁麻疹(頸部・体幹・腋窩)、血管浮腫(顔面・眼瞼・口唇)。

(2)呼吸器症状・所見:咳嗽、呼吸困難、喘鳴、鼻閉、嗄声、低酸素血症など。

(3)循環器症状・所見:胸痛、低血圧、頻脈、徐脈、ショック、不整脈など。

(4)神経症状:失神、めまい、けいれんなど。

1.予防

リツキシマブ、セツキシマブやパクリタキセルなど初期投与時、オキサリプラチン、カルボプラチンの6-7回目投与時に起こりやすい。前投薬(premedication)により投与時反応を予防する。

1)リツキシマブ

解熱鎮痛薬+抗ヒスタミン薬(開始30分前)。

ibuprofen 200mg + d-chlorpheniramine maleate 2mg ✚✚ [2]

acetaminophen 400mg + diphenhydramine 50mg ✚✚ [3]

2)パクリタキセル

抗ヒスタミン薬(H1+H2)+ステロイド(開始30分前)。

diphenhydramine 50 mg + ranitidine 50 mg + dexamethasone 20 mg✚✚[4]

3)セツキシマブ

抗ヒスタミン薬。

4)トラスツズマブ、ベバシズマブ

投与時反応は軽度または頻度が低いため前投薬は行わないことが多いが、初回投与は2回目以降よりも緩徐に投与することで投与時反応を予防する。

5)プラチナ系

特定の前投薬はないが、一般的には制吐剤としてステロイドが入っていることが多い。ただし、反復投与時(6-7回目)に起こりやすいため注意を要する。皮膚テストでアレルギー反応の評価を行う場合もある[5]。

2.治療

発症した場合、速やかな対応が必要である。また、いかなる薬剤でも過敏性反応をきたしうるという認識のもと、救急物品・救急薬品は常備しておく必要がある。

1)軽症〜中等症

投与を一時中断する。症状改善後、前投薬の追加を行ったり、緩徐に投与を再開したりすることで継続することが可能なことが多い。症状の改善がない場合は、抗ヒスタミン薬、ステロイド、消炎鎮痛薬を投与する。再投与について、前投薬を強力に行う方法と、脱感作を行う方法がある(後述)。

2)重症・アナフィラキシー

(1)被疑薬の投与を中止。

(2)臥位とし、両下肢挙上。

(3)速やかにエピネフリンを大腿外側に筋注(0.3-0.5 mg)。

(4)酸素投与。

(5)大量輸液(低血圧の場合、生理食塩水1-2 L)。

(6)抗ヒスタミン薬の静脈注射。

(1)H1抗ヒスタミン薬:ジフェンヒドラミン20-50 mg静注など。

(2)H2抗ヒスタミン薬:ラニチジン50 mg静注など。

(7)ステロイド:メチルプレドニゾロン125 mg静注など。

(8)気管支拡張薬(エピネフリンに反応不良な気管支攣縮):サルブタモールなど。

(9)原則、再投与は行わない。同薬剤の再投与によりさらなる効果が得られる場合、そして変更可能な他剤がない場合などについて、脱感作による再投与は考慮される。

3.再投与

投与時反応が起こった場合には、次の回より投与時反応を予防する目的で前投薬を強力にする方法と脱感作による方法の2つがある。特に、プラチナ系薬剤、タキサン系薬剤については、下記に示すような前投薬(表2)や脱感作法(表3)についての報告がある[6]。

1. 日本臨床腫瘍研究グループ(JOCG). 有害事象共通用語規準 v4.0 日本語訳 JOCG版: http://www.jcog.jp/doctor/tool/ctcaev4.html

2. Igarashi T, et al. Factors affecting toxicity, response and progression-free survival in relapsed patients with indolent B-cell lymphoma and mantle cell lymphoma treated with rituximab: a Japanese phase II study. Ann Oncol 2002; 13(6): 928-43. [PubMed]

3. Czuczman MS, et al. Treatment of patients with low-grade B-cell lymphoma with the combination of chimeric anti-CD20 monoclonal antibody and CHOP chemotherapy. J Clin Oncol 1999; 17(1): 268-76. [PubMed]

4. Bookman MA, et al. Short-course intravenous prophylaxis for paclitaxel-related hypersensitivity reactions. Ann Oncol 1997; 8(6): 611-4. [PubMed]

5. Zanotti KM, et al. Carboplatin skin testing: a skin-testing protocol for predicting hypersensitivity to carboplatin chemotherapy. J Clin Oncol 2001; 19(12): 3126-9. [PubMed]

6. Robinson JB, et al. Hypersensitivity reactions and the utility of oral and intravenous desensitization in patients with gynecologic malignancies. Gynecol Oncol 2001; 82(3): 550-8. [PubMed]

7. Castells MC, Matulonis UA. Infusion reactions to systemic chemotherapy. 2012. [UpToDate]

8. 国立がん研究センター内科レジデント編. がん診療レジデントマニュアル 第5版. 医学書院. 2010 pp.414-5.