A 背景・定義
B 原則
1.nearest match
2.no modification at baseline
C 実臨床での応用
文献

Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)とは、有害事象共通用語規準といい、米国National Cancer Institute(NCI)が主導し世界共通で使用されることを意図して作成された有害事象に関しての評価規準である。本規準の設定意義は有害事象に関する「全世界的共通尺度」の策定にあり、異なる研究グループが実施する研究データに関して、有害事象の解釈や相互比較が可能となりえる。

現在のCTCAEの最新版はversion 4.0(第4版)[1, 2]であり、Japanese Clinical Oncology Group(JCOG)のサイトから日本語版の閲覧が可能であるため、詳細内容に関してはそちらを参照していただきたい。主な構成として、器官別大分類(system organ class: SOC)によってまず26のカテゴリーに分類され、有害事象(adverse event: AE)と重症度を示すグレード(Grade)にて構成される。

AEとは、治療や処置に際して観察される、あらゆる意図しないまたは好ましくない徴候や症状、疾患を指し、治療や処置との因果関係は求めないこととされる。すなわち治療と関連がないと考えられる有害事象もすべて包括して定義されるため副作用、合併症、毒性、手術合併症をすべて含むものと定義される。

Gradeは、正常を0、死亡を5と定義し、6段階に有害事象の重症度を分類する。一部の有害事象では、Grade 4や5などが設定されていないことがある。

1.nearest match

Grade評価において、観察される有害事象が複数のGradeの定義に該当する場合はnearest matchの原則を用いて総合的に判断する。そもそも患者に実際に生じている有害事象をクリアカットに分類することは不可能であり、CTCAE上の有害事象も抽象的な部位が散見され、各項目の記載には幅をもたせていることが多い。その場合、患者の全身状態を総合的に評価し、最も近いGradeはどこかという観点でGradeを決定する必要がある。たとえば「1回輸液したから食欲不振のGrade 3である」というような、少しでもあてはまる場合に重篤なGradeを記載するのは誤りである。

2.no modification at baseline

no modification at baselineとは、治療前の状況によりGrade調整をしないということである。たとえば、もともと自覚症状のほとんどないGrade 1の末梢神経障害がある患者が、化学療法施行によって洋服のボタンかけができないなどの日常動作がきわめて制限される状態(Grade 3)となった場合、本患者の有害事象としては末梢神経障害のGrade 3であり、Grade 3−Grade 1=Grade 2ではない。

Grade 2以下は一般的に軽度の毒性と判断され、該当する有害事象によって治療中断する必要はない。一方でGrade 3以上の有害事象は、高度の毒性と判断され有害事象が回復するまでの治療中断と、以後の化学療法において投与量の削減が求められる。原則入院の可否はGrade 3以上であるかどうかで判定することが多い。

しかしながら、Gradeのみで治療の継続や中断を判断してはならない。実臨床での治療方針の決定は、患者の状態、原疾患や併存疾患、治療の目標設定、治療効果、患者の苦痛や希望などの様々な因子からなる臨床的判断を総括して慎重に行うべきである。

たとえば、緩和ケア目的の化学療法の場合、患者のQOLを著しく阻害するような有害事象は、たとえGrade 2以下の通常は許容範囲内の有害事象と判断される事象であっても、治療中断の重要な根拠となる。また、血液腫瘍や胚細胞腫瘍など、化学療法によって根治を狙える疾患である場合は、Grade 3以上の高度の骨髄抑制が出現しても、顆粒球コロニー刺激因子や血液補充療法を併用しつつ化学療法を継続することも十分にあり得る。このような場合、患者の置かれた状況やレジメン、プロトコールごとに設定されている減量基準に則って行うべきである。

1. Cancer Therapy Evaluation Program (CTEP). Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE) v4.0. http://ctep.cancer.gov/protocolDevelopment/electronic_applications/ctc.htm#ctc_40

2. Japan Clinical Oncology Group (JCOG). Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE) version 4.0 有害事象共通用語基準 v4.0 日本語訳JCOG版. http://www.jcog.jp/doctor/tool/ctcaev4.html