A 背景
B ベースラインにおける腫瘍の測定
1.測定可能病変
2.測定不能病変
3.注意点
C 具体的な測定の実際
1.測定方法
2.測定モダリティ
3.標的病変、非標的病変の設定
D 腫瘍縮小効果の判定
1.新病変の定義
2.評価不能
3.標的病変の評価
4.非標的病変の評価
5.新病変に対するPET の役割
6.分子標的薬使用時の効果判定
E 臨床試験の評価項目
文献

腫瘍量変化の測定は、実地臨床における化学療法の効果判定に加え、がん臨床試験の主要な評価項目(エンドポイント)である客観的腫瘍縮小効果(objective response)や原病増悪までの期間(無増悪生存期間 progression free survival: PFS)の導出に重要である。腫瘍量測定の必須条件として客観性、再現性、普遍性があげられる。

1981年に設定されたWHO基準に基づき、2000年に固形がんにおける効果判定基準としてResponse Evaluation Criteria in Solid Tumor(RECIST)1.0が公表された。RECIST 1.0の特徴としては、(1)測定可能病変サイズ最小値、(2)評価病変数に上限を設定(最大10個、各臓器につき最大5個)、(3)腫瘍量の1方向測定を定義したことにある。しかし、RECIST 1.0頒布後もFDG-PETをはじめとする画像モダリティの発展や、非細胞障害性分子標的治療薬の開発など医療技術の急速な進歩は継続し、複数の課題が浮上した。すなわち、

・測定可能病変を有しない患者におけるRECISTの適応
・MRIやFDG-PETなどの新規画像モダリティを用いた評価方法
・10以下の病変数で評価が可能か
・リンパ節病変の評価方法
・非細胞障害性の分子標的治療薬の効果判定におけるRECISTの適応
である。これらの問題点を受け、多職種によるRECISTワーキンググループが発足し6500例を超える大規模データベースを基軸として、2009年にRECIST 1.0の改訂がなされた。なお、RECIST ver.1.1の全文日本語訳
がJapan Clinical Oncology Group(JCOG)ウェブサイトから参照可能である[1, 2]。

(1)腫瘍病変なのかリンパ節病変なのか、(2)測定可能病変なのか測定不能病変なのかの2点を検討する。腫瘍病変は長径を測定し、リンパ節は短径を測定する。

1.測定可能病変

1)腫瘍病変

少なくとも1方向で測定が可能であること。

スライス厚5 mm以下のCTで最大径(長径)が10 mm以上の病変であること。

ただし皮膚の表在小結節などでは測径器(caliper)による測定で10 mm以上、または胸部X線写真で20 mm以上の病変が対象。

2)リンパ節病変

スライス厚5 mm以下のCTで最小径(短径)が15 mm以上のもの。

2.測定不能病変

上記測定可能病変に該当しない病変。

1)腫瘍性病変

スライス厚5 mm以下のCTで長径が10 mm未満。

2)リンパ節病変

スライス厚5 mm以下のCTで短径が10 mm以上15 mm未満。短径10 mm未満のリンパ節は病的腫大と扱わない。

3)その他

体腔液貯留や軟膜髄膜病変、腫瘤を形成しない皮膚病変やリンパ管症、画像検索では測定不能であるが身体診察上認識可能である腹部臓器の腫大なども測定不能病変として扱う。

3.注意点

(1)嚢胞性病変も定義を満たす場合は測定可能病変とみなすことができる。しかし、他に非嚢胞性病変が存在する場合は、後者を標的病変に設定することが望ましい。

(2)放射線治療照射範囲内などの局所療法の影響が予測される範囲に存在する病変は、通常、測定可能病変と設定しない。

1.測定方法

以下の3つの原則に注意する。

・同一の評価方法、同一の測定技術。
・治療開始前4週間以内の評価。
・客観性保持の観点から、臨床評価より画像診断を推薦。

2.測定モダリティ

1)CT

最も再現性と普遍性に優れた方法である。スライス厚は5 mm以下が望ましいが、5 mmを超える場合は、測定可能病変の最小サイズはスライス厚の2倍とする。標準的撮影範囲は胸部、腹部、骨盤を網羅する領域であるが、病変の分布によって範囲を変更する。造影CTでは造影剤注入後同一タイミングでの撮影が望ましい。(主に門脈相での撮影で評価される。)

2)MRI

MRIも測定モダリティとして許容されるが、撮影条件に多くの変数が設定されているため、同一の設定で経過を追跡することが望ましい。

3)FDG-PET、PET-CT

第II相試験における腫瘍縮小効果の形態評価などにPET検査は汎用されている。病変消退や新規出現などの定性的評価には有用なモダリティであるが、病変径の実測などにはCTなどの定量的評価による補完が推薦される。

4)その他の検査

胸部単純X線撮影は、正確な腫瘍測定が困難で原則推薦されない。また、超音波検査も動的検査であり、術者の技量や腸内ガス量によって描出が大きく左右されるため推薦されない。なお、例外的に病理学的完全奏効を確認する目的で内視鏡検査などによる生検や、体腔液細胞診などが用いられることがある。

5)腫瘍マーカー

原則単独での腫瘍縮小効果判定には用いない。すなわち腫瘍マーカーが正常範囲であっても腫瘍が縮小したと判断されない。ただし腫瘍マーカーの意義は疾患によって異なるため、プロトコールでは疾患に応じ測定方法に関して指示を明記する。また、一部の例外が存在し、卵巣がんではCA125と治療効果に有意な相関が立証されており、腫瘍マーカー値が代理エンドポイントとして使用されている[3]。

3.標的病変、非標的病変の設定

ベースライン評価において2個以上の測定可能病変を認める場合、

・合計最大5個(各臓器につき最大2病変)を標的病変と設定。
・腫瘍病変では長径10 mm以上、リンパ節では短径15 mm以上を要する。
・標的病変以外のすべての病変は非標的病変であり、サイズ測定の必要性はない。

原則最大病変を標的病変に設定することが望ましいが、たとえば胃壁病変などでは内腔液貯留量や蠕動により再現性が乏しい場合もあり、標的病変から意図的に除外することも検討される。

標的病変、非標的病変、新病変の3項目に関して検討する。

標的病変はベースライン評価時の径和を算出し、経過中の測定値と比較し効果判定を行う。一方で非標的病変は「あり」、「なし」、明らかな増悪の有無を評価し、新病変は「あり」、「なし」で評価される。

1.新病変の定義

経過中にベースライン評価にて観察されなかった病変が同定された場合は新病変の出現と判定する。同一画像モダリティの使用が前提だが、撮影範囲外の病変が経過中に判明した場合も、新病変の出現と判定する。

[注]新病変の同定に対するFDG-PETの有効性に関してはさらなる検証が必要である。現行ではCTを補完する位置づけにある。すなわち、ベースライン評価でFDG-PETを施行した場合、経過中の新たなFDG-uptake spotの出現は新病変と定義する。一方で、ベースライン評価でFDG-PETを施行しなかった場合、経過中に新たにFDG-uptake spotが出現した際には必ずCTで病変の有無を確認する。

2.評価不能

ある時点において、画像検査や測定が行われなかった場合、その時点での効果は評価不能(not evaluable: NE)となる。

3.標的病変の評価

・完全奏効(complete response: CR)
すべての標的病変の消失。リンパ節の場合は短径10 mm未満に縮小。
・部分奏効(partial response: PR)
ベースラインの総標的病変径和と比べて、30%以上の減少を認めること。
・進行(progressive disease: PD)
経過中の標的病変の最小径和と比較して、20%以上の増加かつ絶対値で5 mm以上の増加を認めること。
・安定(stable disease: SD)
PRに該当する縮小がなく、PDに該当する進行がないこと。

総合的判定は表1を参照。

[注]腫瘍病変ならびにリンパ節、すべての病変において、非常に縮小してしまった場合でも径和に加える。CTのスライス厚以下となった場合、微かに視認可能で病変が残存すると判断すればCTスライス厚値を、消失したと判断した場合は0 mmとして記録する。

腫瘍が断片化した場合は各断片の径を用いる。腫瘍が融合した場合、融合病変の境界が明瞭の場合は各々の径を用い、同定不能となった場合は融合病変の径を用いる。

4.非標的病変の評価

・完全奏効(complete response: CR)
すべての非標的病変の消失かつ腫瘍マーカーが基準値上限以下となっていること。すべてのリンパ節は短径10 mm未満に縮小していること。

・非CR/非PD(nonCR/nonPD)
1つ以上の非標的病変の残存かつ/または腫瘍マーカーが基準値上限を超えること。
原則として測定可能病変がない場合にSDを適用することは望ましくないため、非標的病変に関してはSDよりもnonCR/nonPDと表記したほうがよい。

・進行(progressive disease: PD)
既存の非標的病変の明らかな増悪。体腔液の著しい増加やリンパ管症の増悪など。

総合的判定は表2を参照。

5.新病変に対するPETの役割

FDG-PETやPET-CTにおける基準はいまだ明確ではないが、第II相試験における腫瘍縮小効果の形態評価などに汎用される。RECIST ver 1.1においてもFDG-PETに関して言及されている。FDG-PET陽性病変とは、周囲の正常組織よりも2倍以上のFDG uptakeが認められる場合である。

(1)ベースライン評価でFDG-PET陰性かつ経過中FDG-PET陽性となった場合、新病変として総合効果はPDである。

(2)ベースライン評価でFDG-PET未施行で経過中FDG-PET陽性となった場合、CTで再評価を施行し、新病変と対応する場合はPD、対応しない場合は経過観察目的でCTの再検を要する。

6.分子標的薬使用時の効果判定

分子標的薬使用時の効果判定には注意を要する。いくつかの分子標的薬は腫瘍の形態的変化を伴いながら効果を奏することがあり、サイズのみの測定ではなく形態的変化を加味した測定方法が検証されている[4]。

臨床試験では、種々の評価項目(エンドポイント)が設定され有効性が検証される。以下、代表的な評価項目を概説する。各評価項目は原則として臨床試験ごとに設定されているが、各々で若干の差異が存在することがあるため、詳細は原著を参考にされたい。

エンドポイントの解釈で留意すべき点は、観察者による判定の相違やバイアスが入りやすいエンドポイントかどうかである。バイアスが入りやすいエンドポイントをソフトなエンドポイントと呼び、一方で誰が見ても同じ結果である場合はハードなエンドポイントと呼ぶ。一般に最もハードなエンドポイントは全生存期間であるが、全生存期間の測定には膨大な労力とコスト、時間が必要なことがあり、他の代替エンドポイントを設定して全生存期間測定の代わりにあてることがある。しかし、代替エンドポイントは、全生存期間よりもソフトであり様々なバイアスが入りやすいため、解釈には注意が必要である。

実際、様々な臨床試験で汎用されている無増悪生存期間でも、全生存期間の代替が明確に立証されているのは大腸がんのみである[5, 6, 7]。最近、手術可能または局所進行肺がんにおいて、無病生存期間が全生存期間の代替エンドポイントとして妥当であるという報告がされた[8]。

・全生存期間(overall survival: OS)
起算日(患者をいずれかの群にランダムに割り付けた時点)からあらゆるイベントによる死亡までの期間。

・無増悪生存期間(progression free survival: PFS)
起算日(患者をいずれかの群にランダムに割り付けた時点)または治療開始日からあらゆるイベントによる死亡または病変の増悪が客観的に確認されるまでの期間。

・無再発生存期間(relapse free survival: RFS)
起算日(患者をいずれかの群にランダムに割り付けた時点)または外科的手術時点からあらゆるイベントによる死亡または再発が客観的に確認されるまでの期間。病変が完全奏効(CR)を満たす患者に適用される。

・無病生存期間(disease free survival: DFS)
起算日(患者をいずれかの群にランダムに割り付けた時点)または外科的手術時点からあらゆるイベントによる死亡または再発と二次発がんが客観的に確認されるまでの期間。乳がん等の長期フォローアップにおいて二次がんの出現が問題となることがあり、無再発生存期間(RFS)と区別される。

・治療成功期間(time to treatment failure: TTF)
起算日(患者をいずれかの群にランダムに割り付けた時点)または治療開始日からあらゆるイベントによる死亡や客観的な病変の増悪、有害事象を含めたあらゆる原因による治療中止までの期間。

・奏効期間(response duration)
最初に完全奏効(CR)または部分奏効(PR)が得られた日を起点としてあらゆるイベントによる死亡または客観的な病変の増悪までの期間。完全奏効期間(complete response duration)とは、CRの基準が満たされた日を起点として、全死亡または客観的な病変増悪までの期間を指す。

・無事象生存期間(event free survival: EFS)
起算日(患者をいずれかの群にランダムに割り付けた時点)または治療開始日からあらゆるイベントによる死亡、客観的な病変の増悪や重篤な有害事象などが発症するまでの期間。

・無進行期間(time to progression: TTP)
起算日(患者をいずれかの群にランダムに割り付けた時点)または治療開始日から病変の増悪が客観的に確認される、または病変の増悪による死亡(現病死)までの期間。増悪が証明できない死亡の場合、つまり他病死はセンサードケース(打ち切り例)とする。あらゆるイベントによる死亡を勘案する無増悪生存期間との混同に注意。

1. Eisenhauer EA, et al. New response evaluation criteria in solid tumours: revised RECIST guideline (version 1.1). Eur J Cancer 2009; 45(2): 228-47. [PubMed]

2. Japan Clinical Oncology Group (JCOG). 固形がんの治療効果判定のための新ガイドライン(RECISTガイドライン)改訂版version 1.1―日本語訳JCOG版. http://www.jcog.jp/doctor/tool/recistv11.html

3. Rustin GJ, et al. Re: New guidelines to evaluate the response to treatment in solid tumors (ovarian cancer). J Natl Cancer Inst 2004; 96(6): 487-8. [PubMed]

4. Chun YS, et al. Association of computed tomography morphologic criteria with pathologic response and survival in patients treated with bevacizumab for colorectal liver metastases. JAMA 2009; 302(21): 2338-44. [PubMed]

5. Buyse M, et al. Progression-free survival is a surrogate for survival in advanced colorectal cancer. J Clin Oncol 2007; 25(33): 5218-24. [PubMed]

6. Tang PA, et al. Surrogate end points for median overall survival in metastatic colorectal cancer: literature-based analysis from 39 randomized controlled trials of first-line chemotherapy. J Clin Oncol 2007; 25(29): 4562-8. [PubMed]

7. Burzykowski T, et al. Evaluation of tumor response, disease control, progression-free survival, and time to progression as potential surrogate end points in metastatic breast cancer. J Clin Oncol 2008; 26(12): 1987-92. [PubMed]

8. Mauguen A, et al. Surrogate endpoints for overall survival in chemotherapy and radiotherapy trials in operable and locally advanced lung cancer: a re-analysis of meta-analyses of individual patients’ data. Lancet Oncol 2013; 14(7): 619-26. [PubMed]