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2009/3/17

子宮体がん 標準治療アップデート 治療と予後 がんの性質と広がりから手術法を決定 再発リスクが高い場合は抗がん剤治療を追加

 
 子宮体がん監修:京都大学婦人科学産科学講座教授 小西 郁生  
 
 子宮体がんの性質(組織型と分化度)およびがんの拡がりを正確に診断し、これらを総合評価して、患者さんにどのような治療を行うかを考えていきます。治療法には手術療法、放射線療法、化学療法、ホルモン療法がありますが、大多数の患者さんにはまず手術療法を行います。

 手術を行う場合、どのような手術を行うか、単純子宮全摘術か、広汎子宮全摘術か、また、リンパ節郭清が必要かどうか、などを決定していくことになります。2006年に日本婦人科腫瘍学会から「子宮体がん治療ガイドライン2006」が出版されましたので、多くの場合、これに沿った治療方針が提案されることと思います。

進行期別の治療法
 I期がんのうちで、組織型がタイプI(エストロゲン依存性)の高分化型がんであり、筋層浸潤がない(Ia期)と推測される場合は、通常、単純子宮全摘出術+両側付属器摘出術を行います。単純子宮全摘出術は子宮筋腫などの良性疾患にも行われる手術で後障害はほとんどありません。両側付属器摘出術とは左右の卵巣・卵管を摘出することです。

 子宮体がんは子宮頸がんと異なり、卵巣・卵管へ転移していることが比較的多いため、予防的に摘出するのが一般的です。また、この段階では、リンパ節転移の可能性は非常に低いのでリンパ節の生検や郭清を省略してもよいと考えられています。手術は開腹手術が多く行われていますが、施設によっては、腹腔鏡補助下の腟式手術も行われています。

 同じI期がんでも、組織型がタイプII(エストロゲン非依存性)あるいは低分化型のがんの場合、または画像診断にて筋層浸潤があると評価された場合には、単純子宮全摘出術+両側付属器摘出術に加えて、手術によりリンパ節の評価を行うことが重要となります。子宮体がんの場合、骨盤内のリンパ節に転移するだけでなく、卵巣を経て大動脈周囲のリンパ節に転移することもあるため、両方の郭清を行います。

 そのために、お腹の傷がどうしても大きくなり上腹部にまで達することになりますし、術後のリンパ嚢胞やリンパ浮腫などの合併症の頻度もやや増加してきます。なお、子宮摘出の方法も施設によっては、単純子宮全摘出術よりもやや拡大した準広汎子宮全摘出術を行う場合もあります。

 II期がんについてですが、同じII期であってもIIa期で頸部の内側の表面だけにがんが及んでいる場合はI期がんと同じように、単純子宮全摘出術+両側付属器摘出術+リンパ節郭清術を行います。しかし、IIb期の場合は子宮頸がんと同じような取り扱いが必要であり、広汎子宮全摘出術を行います。この手術は子宮頸部を両側から支えている子宮傍組織を子宮と一緒に摘出する手術であり、ここに膀胱神経などが含まれているため、術後の後障害として排尿障害などが残る場合があります。

 III期以上に進行したがんに対しては、個別的な対応を行いますが、手術が可能な場合にはまず手術を行って、すべてのがんを取り除くことを目指します。子宮の摘出も状況に応じて、単純、準広汎、あるいは広汎全摘出術を行いますし、骨盤内や腹腔内に広がったがんに対しても、卵巣がん手術と同じように、可能な限り腫瘍を減量する手術を行います。

 以上が、子宮体がんに対する標準的な初回治療ですが、例外的な場合を以下に説明いたします。

 一つは患者さんが若くて、妊娠機能の温存(妊孕能温存)を強く希望される場合です。この場合、I期がんで、しかも組織型がタイプIの高分化型がんであり、筋層浸潤がない(Ia期)と推測される場合だけに「ホルモン療法」の適応があります。

 ホルモン療法として、プロゲステロン製剤の酢酸メドロキシプロゲステロン(商品名「ヒスロンH」)を、高用量(600 mg/日)、約4カ月間服用します。服用しながら数回にわたって子宮内膜掻爬を行って病巣を除去します。その結果、約半数の患者さんで病巣がなくなって、妊娠・出産できる可能性がでてきます。大事なことは、がんがいったん消えたように見えても再び出てくる場合が多いことであり、そのような場合は妊孕能温存をあきらめてもらう必要があります。

 一方、がんが非常に進行している場合や内科的合併症のため手術ができないような場合は、まず放射線療法や抗がん剤による化学療法を行います。肺転移や脳転移などの遠隔転移がある場合であっても、化学療法、手術療法、放射線療法をうまく組み合わせることでがんが治る場合もありますので、頑張って治療を受けていただきたいと思います。

手術後の追加治療
 子宮体がんに対してまず手術療法を行い、摘出した子宮、付属器、リンパ節を顕微鏡で詳しく検討することで、最終的ながんの広がりが明らかとなります。そうしますと、術前の予想よりも実際はより進行していたことが判明することもありますし、その逆の場合もあります。いずれにしても、手術だけで十分な治療がなされたと判断されれば治療は終了となりますが、再発のリスクが高いと判断される場合や明らかにがんが残っている場合は追加の治療が必要です。

 術後治療法としては、国内の多くの施設において、抗がん剤を用いた化学療法が行われています。以前は放射線療法も用いられていましたが、日本や米国における多施設共同研究の結果、化学療法の成績は放射線療法に比べて同等あるいは優れるという結果が得られてきたことによります。

 化学療法としては、プラチナ製剤を使った多剤併用療法を6コース行うことが多いです。従来から子宮体がんには「アドリアマイシン(ドキソルビシン)」という薬剤が有効であることが知られ、AP療法(アドリアマイシン+シスプラチン)が標準的化学療法といえます。これに加えて、近年開発されたタキサン製剤も有効であることがわかってきました。そこで現在、AP療法か、TC療法(パクリタキセル+カルボプラチン)か、DP療法(ドセタキセル+シスプラチン)かの3つから選択する臨床試験が進行中です。

 患者さんには、3つの治療法のうちどの治療が最も有効かを決めるために必要なこの臨床試験に積極的に参加していただきたいと思います。

 子宮体がんには放射線療法も有効であることがよく知られており、術後に放射線を照射すると局所再発が少ないことがわかっています。再発の場合にもよく放射線療法を行っており、それだけで再発がうまくコントロールできる場合も多いのです。いずれにしても進行がんや再発がんでは治癒も目指しますが、患者さんのQOLもとても大事であり、それらをよく考慮しながら適切な治療・ケアを行って行きます。

予後
 子宮体がんは早期に見つかることが多く、ほかのがんに比べて比較的予後が良好な悪性腫瘍といわれています。I期で発見されれば治る可能性は9割以上です。不正出血など、子宮体がんの初期サインを見逃さないようにしてください。

(まとめ:坂井 恵)

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