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2009/1/20

標準治療アップデート 手術・放射線・抗がん剤を組み合わせ個人に合った治療法を選択

 
 肺がん監修:
京都大学医学部附属病院呼吸器外科教授 伊達 洋至
  
 
 ほかのがんと同様、肺がんの治療は、1)がんのある場所2)がんの組織型3)病期4)今までにかかった病気や現在かかっている病気5)ほかの臓器の機能6)健康状態――などに基づいて選択します。これらは個人差がありますから、同じ病期でも患者さんによって治療が異なることがあります。

 肺がんの治療では、1)外科療法2)放射線療法3)抗がん剤による化学療法――を組み合わせます。

 外科療法は、手術によってがんの部分を取り除く療法です。早期の肺がんに行われます。肺を切除することで、息切れや息苦しさを伴うことがあります。そのため手術後はライフスタイルを変える必要がある場合もまれにあります。

 放射線治療は、がんに狙いを絞って高エネルギーの放射線を照射し、がん細胞を死滅させる治療法です。早期の肺がんで、手術ができない患者さんに対して治癒を目的に行ったり、手術との併用、抗がん剤による化学療法と併用することもあります。

 放射線療法では、肺臓炎や食道炎、皮膚炎などが起こることが少なくありません。これは、放射線による一種の火傷と考えられます。肺臓炎では、咳や痰の増加、微熱、息切れが起こります。食道炎は、食べ物が通りにくくなり、症状が強い場合は痛みを伴います。これらの副作用が強く出た場合は、治療を延期したり中止することもあります。

 手術による外科療法や放射線療法が局所治療であるのに対して、抗がん剤による化学療法は「全身治療」と位置づけられています。投与された抗がん剤は、血液の中に入り血流に乗って全身をめぐり、肺の中のがんだけでなく肺の外に拡がったがん細胞に対しても効果が期待されるからです。

 がんには、抗がん剤が比較的効きやすいがんと効きにくいがんがありますが、非小細胞肺がんは抗がん剤が効きにくいがんです。現状では抗がん剤のみでがんを治すことは難しいとされており、従って早い病期の患者さんは外科手術でがんを取り切ることが重要となります。

 一方、小細胞肺がんは抗がん剤が比較的効きやすいがんとして知られています。抗がん剤による副作用は用いる抗がん剤の種類によって異なります。また患者さんによって発現頻度や程度に差があります。副作用は、自覚的な症状として吐き気や嘔吐、食欲不振、口内炎、下痢、便秘、全身倦怠感、末梢神経障害(手足のしびれ)、脱毛などがあります。検査などでわかる副作用として、白血球減少、貧血、血小板減少、肝機能障害、腎機能障害、心機能障害、肺障害などがあります。

 脱毛、末梢神経障害を除いた副作用は、一時的に起こるものがほとんどで、治療を開始して2〜4週間後には回復することが多いようです。副作用が強く発現した場合は、化学療法を中止することもありますが、副作用を予防するような薬を一緒に飲んで、できるだけ副作用を抑えながら治療を継続することもあります。

 肺癌診療ガイドラインに基づいて、非小細胞肺がんと小細胞肺がんに分けて、それぞれ病期ごとの治療法を紹介しましょう。

非小細胞肺がんの治療
 0期では、手術によってがんを切除する治療が主流です。気管支の内側に発生した肺門型の肺がんに対しては、内視鏡治療(レーザー治療)を行うこともあります。これは、気管支鏡で見える範囲のがんにレーザー光線を照射して治療するものです。副作用や後遺症が少ないのがメリットです。

 ほかに、「光線力学的療法」を行うこともあります。これは、がん組織に取り込まれやすく光に反応しやすい化学薬品を投与した後に、ある種のレーザー光線を照射してがんを治療する方法です。この治療も肺門部の早期肺がんが対象です。

 I期やII期の治療は、手術による切除が推奨されています。切除は、がんがある部分を含む肺葉を切除する「肺葉切除」か「片肺切除」が適当とされています。肺は、右肺は上葉、中葉、下葉に、左肺は上葉と下葉に分かれていますが、それらの一つか二つの葉を切除するのが「肺葉切除」です。片側の肺をすべて切除するのが「片肺切除」です。

 がんが微少であったり、肺機能が低い患者さんの場合、肺葉よりも小さい範囲で切除する手術を行うこともありますが、ガイドラインはできるだけ肺葉切除を行うように勧めています。

 手術は、切除する肺側のわきの下あたりを切り開いて、肋骨を切断して開胸するのが一般的です。切開や開胸の術式は医療機関によってさまざまですが、最近は胸腔鏡を併用するなどして、可能なかぎり小さく開胸する傾向にあります。また、リンパ節郭清も勧められています。ただし治療効果を高めるというより、リンパ節転移の有無を調べて、その後の治療計画に生かすという側面が強いようです。

 ?B期やII期では、手術によってがんを切除した後に補助的に抗がん剤による化学療法を行うこともあります。全身状態や肺機能が低下しているなどの理由で手術ができない患者さんに対しては、根治的治療を目的に放射線療法を行います。

 IIIA期では、外科療法、放射線療法、化学療法のいずれかを組み合わせた治療が一般的です。治療前に、手術によって完全にがん病巣をとり除くことができ、患者さんの身体が手術に耐えられると判断した場合は、外科手術を選択します。その際、再発や転移の防止のために手術後に放射線療法や化学療法が行うこともあります。手術前に化学療法(放射線療法を組み合わせる場合もある)を行うこともあります。

 手術が行えない場合では、放射線療法と抗がん剤による化学療法の合併療法を行うのが主流です。化学療法と放射線療法を同時に行う方法と、化学療法を実施した後に放射線療法を行う方法があります。2つの治療法を同時に実施すると副作用が強く出ることがあるため、体力が十分でない患者さんでは、化学療法を先に行った後に放射線療法を追加する方法をとります。また、全身の状態が悪くて化学療法が行えないケースでは、放射線療法を単独で行います。

 IIIB期では、手術によってがんを取り除くことは難しく、手術による合併症頻度も高まるため、手術を行わないことがほとんどです。「胸膜播種」(胸膜にがんが種をまくように散らばっている状態)や、「胸水貯留」(胸水が溜まっている状態)がなければ、抗がん剤による化学療法と放射線療法の合併療法を行うのが一般的です。先に化学放射線療法を行った上で手術を行うこともまれにあります。

 胸膜播種や胸水貯留がある場合は、抗がん剤による化学療法を行います。非小細胞がんは抗がん剤が効きにくく、現状では抗がん剤のみでがんを治すことは難しいとされていますが、生存期間を延長しQOLの改善も得られると考えられています。

 抗がん剤による治療は、シスプラチンを含む併用療法を行うのが一般的です。ガイドラインでは、進行肺がんの初回治療ではシスプラチンを用いた2剤併用化学療法が推奨されています。併用される薬剤としてはドセタキセル・パクリタキセル・ゲムシタビン・ビノレルビン・イリノテカンのいずれかが推奨されています。副作用が強く出るなど何らかの理由でシスプラチンが使えない場合はカルボプラチンを使用します。

 初回治療が奏功しない場合または奏功後に増悪した場合、再度の化学療法が検討されます。この場合は、ドセタキセルもしくはゲフィチニブ(商品名:イレッサ)が推奨されています。

 ゲフィチニブは、「分子標的薬」と呼ばれるタイプの薬です。がん細胞で特に目立った働きをする分子を押さえ込み、がんとしての性質を抑える作用を持つ薬です。一時、重篤な副作用が社会的にも問題視されたことがありますが、この薬剤は、適切に利用されれば、一時期問題とされたほど多くの副作用は生じないことが明らかになっています。

 多量の胸水貯留がある場合、息切れや咳、動悸などの症状が起こるため、胸水を抜く治療を行います。具体的には、局所麻酔を行った後、肋骨の間から肺と胸壁の間の胸腔という空間に管を入れて胸水の排液を行います。胸水が再びたまらないように、肺と胸壁を癒着させる薬を使った「胸膜癒着療法」という治療を行うこともあります。

 骨転移や脳転移などの遠隔転移による症状が認められる場合には、それぞれの転移病巣部に対して放射線療法を行います。

 遠隔転移を認めるIV期では、通常手術は行いません。抗がん剤による治療が中心になります。また?期では、がんによる痛みや呼吸困難などの症状が現れることが多くあります。それらの症状を緩和するための治療も行います。

 痛みに対しては、ほかのがんと同様にモルヒネなどの痛み止めを使うことがほとんどです。呼吸困難については、酸素投与が中心で、自宅で酸素吸入のできる在宅酸素療法もあります。

小細胞肺がんの治療
 小細胞肺がんは進行が非常に早く、抗がん剤が比較的よく効くがんであることなどから、がんが初めてできた場所(原発巣)に限局していても、抗がん剤による全身的治療が中心になります。

 手術による治療は、I期などの極めて早期の場合のみで行います。ただしその場合も、手術後に抗がん剤による化学療法を行うのが一般的です。小細胞がんは、脳に転移することが多いため、脳への転移を防ぐ目的で脳放射線治療(予防的全脳照射)を行うこともあります。

 ?期を過ぎると、「限局型」「進展型」に大別して治療方針を選択します。限局型では、抗がん剤による化学療法か、化学療法と放射線療法の合併治療を行うのが主流です。また、脳転移を予防するために、予防的全脳照射を行うことがあります。進展型では、抗がん剤による化学療法が中心となります。化学療法を行いながら、予防的全脳照射を行うこともあります。

 小細胞がんに対しては、シスプラチンとイリノテカンの2剤を併用する治療が中心です。ほかにカルボプラチン、エトポシド、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、イフォマイド、アムルビシンなどのうち2〜3剤を併用することもあります。 また、骨転移や脳転移などの遠隔転移による症状や苦痛を和らげたり、縦隔リンパ節転移による顔・首のはれ(むくみ)を和らげる目的で、放射線療法を行うことがあります。

 がんが肺やほかの臓器に再発した場合は、最初の治療のときに効果があった抗がん剤による再治療を行います。ほかの有効な抗がん剤による化学療法を選択することもあります。また、再発部位に対する放射線療法を行います。さらに、痛みなどの症状を緩和させることを目的とした緩和療法を行います。

(まとめ:坂井 恵)

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