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2009/1/13

標準治療アップデート 確定診断には生検が必須

 
 肺がん監修:
京都大学医学部附属病院呼吸器外科教授 伊達 洋至
  
 
 肺がんになる人は40歳代後半ごろから増加し、肺がん患者さんの率は高齢になるほど高くなります。肺がんは、「小細胞肺がん」と「非小細胞肺がん」の二つに大きく分類され、さらに非小細胞肺がんは「腺がん」「扁平上皮がん」「大細胞がん」「腺扁平上皮がん」などに分けられます。

 肺は、心臓や気管、食道などからなる縦隔(じゅうかく)という部分を挟んで、左右2つあります。右肺は上葉、中葉、下葉の三つに、左肺は上葉と下葉の二つに分かれています。肺は身体の中に酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出するための器官です。口や鼻から入った空気は、咽頭や喉頭を経て気管を通り、左右の管に分かれ、肺に入ります。その部分が「気管支」です。気管支は肺の中で細気管支と呼ばれるより細い管に枝分かれして肺内に広がっています。さらに末端は、酸素と二酸化炭素を交換する「肺胞」と呼ばれる部屋となっています。肺がんは、気管、気管支、肺胞に発生します。

 肺がんは、「小細胞肺がん」と「非小細胞肺がん」の二つに大きく分類されます。さらに非小細胞肺がんは「腺がん」「扁平上皮がん」「大細胞がん」「腺扁平上皮がん」などに分けられます。小細胞がんと扁平上皮がんは肺の入口(肺門)に多く、腺がんと大細胞がんは肺の辺縁(末梢)にできることが多いのが特徴です。

 小細胞がんは、高齢者、男性、喫煙者に多く、肺がんの約15〜20%を占めます。また、肺がんのなかで最も進行が速く、脳やリンパ節、肝臓、副腎、骨などに転移しやすい悪性度の高いがんとして知られています。ただし、非小細胞肺がんと違って、抗がん剤や放射線治療が比較的効きやすいのも特徴です。

 非小細胞肺がんのうち、腺がんはわが国で最も発生頻度が高く、特に女性の肺がんには腺がんが多く、非喫煙者にも多いことで知られています。次に多いのは扁平上皮がんです。扁平上皮がんも小細胞がんと同様に喫煙者に多くみられます。大細胞がんは、一般に増殖が速く、肺がんと診断された時には大きながんであることが多くみられます。

 肺がんになる人は40歳代後半ごろから増加し、肺がん患者さんの率は高齢になるほど高くなります。男性のほうが女性より多く、女性の3倍から4倍にのぼります。肺がんのもっとも高いリスク要因は、喫煙です。非喫煙者に対する喫煙者の肺がんリスクは、欧米では20倍以上とされていますが、日本では男性で4.4倍、女性で2.8倍という研究結果が出ています。また、ほかの人が吸っているタバコの煙を吸い込む受動喫煙は、肺がんのリスクが高くなるという科学的根拠が十分あるとされています。そのほか、アスベスト、シリカ、ヒ素、クロム、コールタール、放射線、ディーゼル排ガスなどを吸い込みやすい環境にいると、肺がんのリスクが高まるとされています。

肺がんの症状
 肺がんは、特有の症状が出にくく、早期には発見されにくいがんです。必ずしもこれらの症状が出るとは言えませんが、長期にわたる咳や胸痛、呼吸時の喘鳴(ゼーゼーした音)、息切れ、血痰、声のかれ、顔や首のむくみなどが生じることがあります。

 症状は、肺がんの組織型やがんができる場所によって違います。扁平上皮がんや小細胞がんに多い肺門型(肺の入り口にできる)の肺がんは、比較的早い時期から咳や痰、血痰などの症状が発現しやすいようです。

 脳に転移して頭痛が起こったり、骨への転移による腰痛などの骨の痛みなどから、がんが発見されることもあります。また、肺がんが胸壁を侵したり胸水がたまるなどして、息苦しさや胸痛が起こることもあります。また、まれに腕や肩のしびれなどが起こることもあります。

診断
 肺がんが疑われた場合、最初に胸部エックス線検査を行います。続いて胸部CT検査を行い病変の場所を詳しく調べます。また参考のために、血液検査を行い、腫瘍マーカーを調べます。

 腫瘍マーカーは、がん細胞によって産生される物質を調べる検査です。一般的には、CEAや、小細胞がんではNSEやProGRPと呼ばれるマーカーの数値が上がっていないかを調べます。血液中の腫瘍マーカーが正常である肺がんも多数みられますし、逆に喫煙者では肺がんでなくてもCEAが高値になることもありますので、腫瘍マーカー検査だけで肺がんだと確定することはできません。

 確定診断するには、肺から細胞を採取して、顕微鏡でがん細胞の有無を確認する必要があります。そのための検査で、もっとも患者さんの負担が少ないのは「喀痰細胞診」で、これは痰の中の細胞を調べる検査です。

 痰で診断ができない場合、「気管支鏡検査」を行います。これは、気管支鏡(ファイバースコープ)と呼ばれる特殊な内視鏡を鼻または口から入れて、気管支の中を観察する検査です。さらに組織や細胞の一部を採取し、顕微鏡でがんがあるかを調べることもあります。これを「生検」と呼びます。

 この検査は、局所麻酔をして苦痛を抑えて行います。外来で行われることが多く、検査時間は20分程度で通常は検査後数時間で帰宅できます。

 病巣まで気管支鏡が届かなかったり、診断に十分な検体が採取できない場合は、「穿刺吸引細胞診」を行います。これは、局所麻酔をした上で、レントゲンで透視しながら肋骨の間から細い針を肺の病巣に突き刺して、細胞を採取する方法です。また、CTで見ながら病巣に針を刺し組織をとる「CTガイド下肺針生検」を行うこともあります。いずれも採取した細胞を顕微鏡で調べて、がんの有無を調べます。

 肺の表面を覆っている膜(胸膜)を一部採取し、がん細胞の有無を調べる「胸膜生検」を行うこともあります。これは、局所麻酔を施して特殊な器具を用いて肋骨の間から採取します。胸水が溜まっている場合は、同様の手法で、注射針を使って胸水を抜き取る検査をします。首のリンパ節が腫れている場合、リンパ節に針を刺して細胞を採取して、顕微鏡でがん細胞がないかを調べる「リンパ節生検」を行うこともあります。

 これらの方法を用いてもはっきりと診断できない場合は、外科的に組織を採取し、顕微鏡で調べる必要があります。外科的な方法には、「縦隔鏡検査」「胸腔鏡検査」「手術で胸を開く(開胸)」の3つの方法があります。いずれも全身麻酔が必要です。

 縦隔鏡検査は、首の下部分の皮膚を小さく切り開き、そこから「縦隔鏡」と呼ばれる器具を挿入して気管周囲のリンパ節や近くにある、がんと疑われる細胞を採取する方法です。

 胸腔鏡検査は、胸の皮膚を小さく切り開き、そこから「胸腔鏡」と呼ばれる内視鏡を挿入し、肋骨の間から胸腔(肺の外側)まで入れて、肺や胸膜やリンパ節の一部を採取する方法です。

 がんの拡がり具合などを調べる検査には、胸や脳のCTやMRI検査、腹部のCTや超音波検査、骨シンチグラフィ(ラジオアイソトープを使った全身の骨のレントゲン検査)などがあります。CT検査は、造影剤を用いることもあります。さらに最近は、PETによる検査を行うことも多くなっています。

 小細胞肺がんでは、胸骨や腸骨から骨髄液採取を行い骨髄中のがん細胞の有無を調べる検査を行うこともあります。

病期
 肺がんの進行度合いは、がんの拡がり具合によって潜伏がん、0〜IV期に分類します。潜伏がんは、痰の中にがん細胞が見つかっているが、どこに病巣があるかわからない非常に早期の段階です。

 0期は、がんが気管支を覆う細胞の細胞層の一部のみにある早期の段階です。IA期は、がんが最初に発生した場所(原発巣)にとどまっていて大きさは3cm以下、リンパ節やほかの臓器に転移は認めない段階です。 IB期は、がんが原発巣にとどまっているが大きさは3cmを超えている状態で、リンパ節やほかの臓器に転移は認めない段階です。

 IIA期は、原発巣のがんの大きさは3cm以下だが、原発巣と同じ側の肺門のリンパ節にがんの転移がある、ほかの臓器には転移を認めない状態です。IIB期は、原発巣のがんの大きさは3cmを超え、原発巣と同じ側の肺門のリンパ節にがんの転移を認めますが、ほかの臓器には転移を認めない段階です。あるいは原発巣のがんが、肺を覆っている胸膜や胸壁におよんでいますが、リンパ節やほかの臓器に転移を認めない段階です。

 IIIA期は、原発巣のがんが胸膜や胸壁に拡がっており、転移は原発巣と同じ側の肺門リンパ節か、または縦隔と呼ばれる心臓や食道のある部分のリンパ節に認められる状態です。ほかの臓器には転移を認めません。IIIB期は、原発巣のがんが縦隔に拡がっていたり、胸膜へ転移をしたり(胸膜播種といいます)、胸水がたまっていたり、原発巣と反対側の縦隔、首のつけ根のリンパ節に転移していますが、ほかの臓器に転移を認めない段階です。

 IV期は、原発巣とは離れた位置にがんが認められる状態(遠隔転移)です。肺がんで遠隔転移を起こしやすい臓器は、脳、肝臓、骨、副腎などです。

 小細胞肺がんは、上記のような潜伏がん、0〜IV期の分類以外に、大きく「限局型」と「進展型」に分類する方法も用います。限局型は、がんが片側の肺と近くのリンパ節(縦隔のリンパ節、がんのある肺と同側の首のつけ根にある鎖骨上リンパ節も含む)に認められる段階です。

 一方の進展型は、がんは肺の外に拡がりほかの臓器にもみつかる状態、すなわち遠隔転移がある場合です。

予後
 肺がんは、残念ながらあまり予後の良いがんとはいえません。

 非小細胞肺がんは、ほかのがんと同様、早期に発見できて手術でがんを切除できるかが大きなカギを握ることになります。小細胞肺がんは、進行が早く、あまり良い治療成績が望めないのが現状です。ただし、化学療法が効く場合がよくありますので、治療成績の向上を目指して、多くの臨床試験が進められています。

(まとめ:坂井 恵)

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