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2008/12/9

標準治療アップデート 原因と検査 主に慢性的な肝炎ウイルスの感染で発症

 
 肝がん監修:
京都大学医学部附属病院 胆管膵・移植外科准教授 猪飼 伊和夫
  
 
 肝臓は、お腹の右上部であばら骨に囲まれた、体内で最も大きな臓器です。重さは成人で約1kgあります。肝細胞がんが日本でみられる肝がんの大半を占め、一般的に「肝がん」という場合には、肝細胞がんのことを指します。そのため、ここでは肝細胞がんを中心に解説します。

 肝がんは欧米に比べてアジアやアフリカに多く、また女性に比べて男性に多くみられるがんです。特に、高齢男性ではさらにリスクが高くなります。日本肝癌研究会が継続調査を行っている「第17回全国原発性肝癌追跡調査報告」(2002-2003)によれば、原発性肝がんと診断された年齢は男性65.5 歳、女性69.4歳となっています。

 「がんの統計‘08」に掲載された、わが国の2006年の部位別がん死亡数をみると、男性では肺がん、胃がんに次いで第3位が肝がんとなっています。女性では、胃がん、肺がん、結腸がん、乳がんに次いで第5位が肝がんです。毎年約4万人が新たに肝がんと診断され、年間約3万4000人が死亡しています。

 肝がんの多くは、肝炎ウイルスへの感染がきっかけで起こります。肝炎ウイルスに感染するとまず、肝臓が炎症を起こします。肝炎ウイルスの活動が活発で、ウイルスが完全に排除されずに炎症が慢性化すると、長い時間をかけて肝臓の障害が進み、細胞が次々と壊れていって症状が徐々に進行し、肝硬変、さらには肝がんへと至ります。

 わが国で肝炎を引き起こすウイルスとしては、B型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスが挙げられます。中でも、C型肝炎ウイルスの感染によって起こる肝がんが、全体の約7〜8割を占めています。

 肝硬変とは、肝炎が持続することによって肝細胞の破壊が進み、肝臓が硬く変わってしまう「線維化」という状態まで進行した段階を指します。肝臓全体が破壊と再生を繰り返すうちに線維化し、線維化した組織に囲まれた肝細胞のかたまりができて、本来多角形である肝小葉構造が破壊され、肝機能も障害されていきます。肝硬変の原因としては、C型慢性肝炎が最も多く、次いでB型慢性肝炎、さらにアルコール性肝障害、非アルコール性脂肪肝炎などが続きます。

 肝硬変に至ったC型慢性肝炎からは約7割、肝硬変に至ったB型慢性肝炎からは約3割が10年以内にがんを発症するとされています。すなわち、ウイルス性肝炎の進行した肝硬変は、肝がんの超高危険群です。肝がんの危険因子としてはこのほか、アルコール摂取や脂肪肝、肥満なども知られており、これらの因子を持つ場合にも、肝がんの危険群となります。

検査
 肝炎や肝硬変の経過観察のために行う検査には、血液検査と超音波検査、CT検査、MRI検査といった各画像診断検査が挙げられます。以下に、検査の詳細を紹介しましょう。厚生労働省「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドラインに関する研究班」がまとめた「肝癌診療ガイドライン」では、超高危険群に対し、肝細胞がんを早期発見するために、3〜4 カ月ごとの超音波検査と血液検査を行うよう勧めています。

 また、がんの大きさが1cm以下のときには、超音波検査だけで見つけることは困難です。そのため、超高危険群にあてはまる場合には、半年から1年に1回はCT検査、あるいはMRI検査を同時に受けるよう勧められます。

 血液検査では、血液を採取し、肝がんがあると数値が上昇してくる特定の物質(腫瘍マーカー)を測定します。わが国では、肝がんの腫瘍マーカーとして、AFP(アルファ・フェト・プロテイン)、AFP-L3分画、PIVKA-II(ピブカ・トゥー)の3種類が保険診療で使用が認められています。2種類のマーカーを測定するといった工夫によって感度が向上してきましたが、小さな肝細胞がんでは数値が上昇しない場合や、またほかの肝障害によって数値が上昇し偽陽性になってしまうこともあります。このため、通常は以下の画像診断と組み合わせて検査を行います。

 超音波検査は、肌の上から超音波を当てて肝臓から返ってくる反射の様子を画像化し、肝臓の状態を非侵襲的に調べる検査です。がんの直径が1cm以上ある場合、高率に異常な陰影として捉えることができます。身体にかかる負担が少ないため、広く行われる検査法ですが、見えにくい部位があることも知られています。

 最近、超音波検査で、新しい造影剤(商品名「ソナゾイド」)が使用できるようになりました。ソナゾイドは、正常な肝臓組織にだけ取り込まれる性質があるため、がんを見つけやすくなりました。非常に小さな気泡状の造影剤で、超音波を当てると、ソナゾイドを含む領域がより鮮やかに造影されます。

 ただし、この造影剤を使った超音波検査は、従来の超音波検査装置では行うことができません。造影に対応した専用の装置を使う必要があります。

 なお、肝がんの治療法の1つであるラジオ波焼灼療法では、がんを凝固させるために針を差し込みます。この際、がんのある部位を正確に把握するために、ソナゾイドを使った超音波検査を行いながら、ラジオ波焼灼療法を行う医療機関も出てきています。

 X線を用いるCT(コンピューター断層撮影)検査は、確定診断のために最も多く用いられている検査法です。CT検査でも、病変部をより詳しく見るためには、造影剤を使うことがあります。

 CT検査は、検査時間が5〜10分で済むというメリットがありますが、X線を使うため、子供や妊娠の可能性がある女性などには不向きです。また、ヨード系造影剤を使用する方法は、アレルギーがある場合には使えません。CT検査で肝細胞がんの確定診断はほぼ可能ですが、鑑別が難しい場合には、MRI検査や入院した上での血管造影検査が必要となる場合があります。

 MRI検査は、画像の精度が高いことや放射線被曝がないことなどのメリットがありますが、検査時間が30分ほどかかることと、磁力を使うために心臓ペースメーカーを装着している方は使えないなどというデメリットがあります。また、造影MRI(磁気共鳴画像)検査では、磁場に反応する造影剤を静脈内に注射し、MRI装置で測定します。そのため、ガドリニウム系造影剤に対するアレルギーがある方は受けられません。

ステージ分類
 肝がん自体の進行度は、ステージ分類(病期、進行度分類ともいいます)で評価します。肝がんの進行度は、ステージ1からステージ4まで、4つの段階に分かれています。ステージを決める要因は、以下の(1)から(3)を満たすかどうかで決まります(下:表1)。

表1 肝がんのステージ分類

 リンパ節への転移があるとステージ4-A、肝臓以外の臓器に転移がある場合(遠隔転移がある場合)はステージ4-Bと診断されます。

 肝臓の機能は、日本肝癌研究会が「原発性肝癌取扱い規約」でまとめた肝障害度分類で評価します。AからCの3段階で、肝障害の強さを示します(下:表2)。各項目ごとの重症度を求め、2項目以上があてはまる肝障害度に分類します。また、2項目以上があてはまる肝障害度が複数あった場合には、より高い肝障害度に分類することになります。

表2 肝障害度(Liver damage)

(まとめ:小又 理恵子、小板橋 律子)

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