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2008/11/4

標準治療アップデート 診断と予後 膵がんリスク因子を複数持つ場合は 定期的な検診受診を

 
 膵がん監修:
京都大学肝胆膵・移植外科准教授 土井 隆一郎
  
 
 膵臓は胃の裏側にある長さ20cmほどの臓器で、洋なしを横にしたような形をしています。右側は十二指腸に囲まれており、左の端は脾臓に接しています。右側のふくらんだ形の部分を「頭部」、左端の細長くなった部分を「尾部」、頭部と尾部との間の1/3ぐらいの大きさの部分を「体部」と呼びます。膵臓にできるがんのうち大部分は、膵液を運ぶ膵管の細胞から発生し、これを「膵管がん」と呼びます。通常「膵がん」と言えば、この「膵管がん」のことを指します。ここでは、膵菅がんを膵がんと呼び、解説します。

 膵がんは、高齢になるほど患者数が増えます。また、膵がんのリスク要因として、喫煙が上げられます。喫煙は、膵がんの危険率を2〜3倍に増加させるという報告があります。また、他のリスク要因として1)家族に膵がんの人がいる、2)糖尿病、3)肥満、4)慢性膵炎、5)遺伝性膵炎――などがあります。

 膵がんには、胃がんや大腸がんのような、一般集団を対象とした検診はありませんが、これらの危険因子のうち複数に当てはまる人は、定期的に膵がんを対象とした検査を受けるように心掛け、早期発見につとめることが大切です。

※膵臓の主な働き 1)膵液と呼ばれる消化液をつくること(外分泌)、2)血糖を調節するホルモンをつくること(内分泌)――です。

 膵液は、膵臓の中を網の目のように走る膵管という細い管の中に分泌されます。細かい膵管は膵臓の中で主膵管という一本の管に集まり、肝臓から膵頭部の中へ入ってくる総胆管と合流した後、十二指腸乳頭というところへ開いています。肝臓でつくられた胆汁と膵臓でつくられた膵液はこうして一緒に十二指腸の中へ流れ込みます。

 一方、膵臓でつくられるホルモンは、血糖を下げるインスリンや逆に血糖を上げるグルカゴンなどで、これらは血液の中に分泌されます。

特徴的な症状が少ない膵がん
 膵がんには、あまり特徴的な症状がありません。胃のあたりや背中が重苦しいとか、なんとなくお腹の調子がよくない、食欲がないなど漠然とした症状がほとんどです。腰や背中の痛み、体重の減少、消化不良などが起こることもあります。

 身体や白目が黄色くなる黄疸が起こることもあります。黄疸が出るときには、身体がかゆくなったり、尿の色が濃くなったりもします。

 そのほか、膵がんができると、糖尿病を発症したり血糖のコントロールが急に悪くなったりすることがあります。そのため「膵癌診療ガイドライン」では、急激な糖尿病の発症や悪化がみられた場合は膵がんを疑い検査を行うことを推奨しています。

検査
 膵がんが疑われたら、血液検査によって血中膵酵素測定と腫瘍マーカー測定を行います。血中膵酵素(アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼ1、トリプシンなど)の数値が異常であれば、膵臓疾患が疑われます。ただし、これらは膵がん特有のものではありませんので、この検査で膵がんが確定できるわけではありません。

 膵がん検出のための腫瘍マーカーには、CA19-9、Span-1、CA50、CA242、Dupan-2、TAG72などがありますが、偽陽性となることも多いので、これらの検査で数値が高かった場合でも、すぐに膵がんだとは断定しません。

 画像診断では、まず腹部超音波検査を行います。この検査は、比較的簡単で患者さんの身体的な苦痛もほとんどない検査なので外来診療で行えます。ただし、初期の小さな腫瘍や膵尾側のがんは見付けにくく、これによって何も見付からなかったからといって膵がんを否定できるものではありません。

 そのため、腹部超音波検査に加えて、X線CTやMRIなどの画像検査も行います。ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影:Endoscopic Retrograde Cholangiopancreatography)という検査を行う場合もあります。この検査は、胃カメラのような内視鏡を十二指腸まで入れて、膵管と胆管の出口(十二指腸乳頭)に細い管を差し込んで造影剤を注入し、膵管や胆管の形を調べるものです。この時に、膵液を採取して細胞の検査やがん遺伝子の検査を行うこともあります。

 最近では、MRIを利用したMRCPという技術でも、ERCPと類似した情報を得ることができるようになりました。患者さんの負担が小さいという利点があるため、MRCPを行う施設も多くなっています。

 また、PETを行うこともあります。PET検査は、がん細胞が正常細胞に比べてブドウ糖を多く取り込むという性質を利用した検査です。目印を付けたブドウ糖に似た物質(FDG)を体内に注射し、全身をPETで撮影すると、FDGが多く取り込まれた部分がわかり、がんを発見する手がかりとなります。

 必要に応じて、膵臓に針を刺して組織を採取し、がん細胞の存在を調べる膵生検や、内視鏡を使って膵管にカテーテルを挿入して膵液を採取して、がん細胞の有無を調べるなどの「病理学的検査」が行われることもあります。

病期
 膵がんは、がんの大きさやリンパ節転移の有無、遠隔臓器への転移などによって、進行度が分類されています。膵がんがどの程度進んでいるかを表すのに、病期(ステージ)が使われます。病期は、日本膵臓学会が定めた膵癌取扱い規約によるものと、米国やEU諸国を中心に国際的に使われているUICC分類があります。日本の病院では、日本膵臓学会の「膵癌取扱い規約」による病期が使われています。

 「膵癌取扱い規約」の病期分類では、がんの大きさが2cm以下で膵臓の内部に限局していてリンパ節への転移がない場合はI期。

 II期は、がんの大きさが2�以下で膵臓の内部に限局しているが、近くのリンパ節(第1群リンパ節)に転移がある場合、または大きさが2cm以上だががんは膵臓の内部にとどまっていてリンパ節転移がない場合。

 III期は、がんの大きさが2cm以下で膵臓の内部に限局しているが少し遠いリンパ節(第2群リンパ節)への転移がある場合、またはがんの大きさが2cm以上だが膵臓の内部にとどまっている第1群までのリンパ節に転移がある場合、またはがんは膵臓の外へ少し出ているがリンパ節転移はないか、第1群までの転移に限られている場合です。

 がんが、膵臓の外へ少し出ていて、第2群のリンパ節への転移がある場合、もしくはがんが膵臓周囲の血管におよんでいるがリンパ節転移はないか、第1群までに限られている場合はIVa期です。

 さらに、がんが膵臓周囲の血管におよんでおり、少し遠いリンパ節への転移があるか、または離れた臓器に転移がある場合はIVb期に分類されます。

予後
 膵がんは、とりわけ治療が困難で予後が良くないがんとして知られています。化学療法や放射線療法も行いますが、手術でがんを取り切ることが唯一の完治の道です。したがって、早期の段階で発見されることが重要です。

 しかし膵がんの早期発見は難しく、がんが早期に湿潤、転移しやすいこともあり、発見されたときには既に肝臓や腹膜などに遠隔転移を起こしている場合が多いのも事実です。現在、早期発見のための検診の方法などが検討されていますが、一般市民を対象に有効性が証明されたものはありません。膵がん発症のリスクとなる膵がん家族歴や、膵炎、喫煙などのリスク因子を持つ場合には、膵がんの定期的な検診が推奨されています。

(まとめ:坂井 恵)

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