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2008/10/28

先輩患者からのアドバイス 後遺症について十分知っておきましょう

 
 女性特有のガンのサポートグループ「オレンジティ」 河村 裕美さん  
 
 1999年、子宮頸がんを発病。手術で子宮と卵巣を摘出しがんを取り除いた。ただし、術後は様々な後遺症に苦しめられる。地元、静岡県に子宮がんの患者会がなかったことから、NPO法人女性特有のガンのサポートグループ「オレンジティ」を立ち上げ、子宮がん、卵巣がん、乳がんを中心とした女性がん患者の療養サポートを行っている。近年は、自身のがん経験を存分に生かし、子宮がん検診の啓発活動にも熱心に取り組んでいる。

 子宮頸がんを告知されたのは、忘れもしない1999年7月11日のことです。それは、新婚生活をスタートさせた1週間後のことでした。

 結婚の少し前から、ときどき下着に血が付着するようになり、「変だな」と思っていたのですが、若い女性なら不正出血はよくあることだし、寝込んでしまうほど生理がひどかった私は、さほど気に止めていませんでした。しかし、結婚を機に夫の勧めもあり、婦人科を受診したのです。

 「これは、がんだね――」。

 内診台のカーテン越しに、医師からたった一言、そう告げられました。診察室で医師の説明を聞きながら、最初に頭の中をかけめぐったのは仕事のことです。気持ちが焦っていたのでしょうね。思わず「何日、休まなければいけないのですか」と聞いたら、医師から「何日っていう問題じゃないよ」と言われ、ようやく自分の置かれた厳しい状況に気づいた感じです。

 実はその夜、私たちの結婚を祝う会が開かれることになっていました。がんを告知されたといっても、昨日と何も変わらないし、私は出席することにしました。こうした日常に戻ることで、動揺していた気持ちが少しずつ落ち着いてきたけれど、さすがに夫と2人きりになると泣きましたね。「今は死ねない」って。

 告知から1週間後、細胞診と組織診の結果が出て、腺がんの?b期と診断されました。そのとき、医師から「手術では、子宮と卵巣を摘出し、リンパ節も郭清することになるだろう」と説明を受けました。ああ、子どもが産めなくなる。夫と離婚しなくちゃいけないなって思いました。自分の親にも相談しましたが、「そうしなさい」という返事でした。

 それで、夫に手術の内容を打ち明け、離婚を切り出したところ「そんな必要はない」と――。夫の家族からも「一緒に闘いましょう」と言ってもらい、とても心強かったし、有り難かったです。そして、夫の親族である保健師さんの勧めで、セカンドオピニオンを受けることにしました。

 診断してもらった医師に相談すると、「東京の国立がんセンターで、先輩医師が働いているから」と、セカンドオピニオンを紹介してもらえることに。結局、手術は「発症年齢が若いうえに腺がんなので、専門病院で治療したほうがよいだろう」というセカンドオピニオンの意見に従い、国立がんセンターで受けました。最初の医師が予測したとおり、子宮と卵巣(両側)を摘出し、リンパ節も郭清、約1カ月の入院生活を経て、静岡に戻ってきました。

 精神的に一番辛かったのは術後です。夫が仕事に出かけた後、一人きりになると、傍にあるものといえば、インターネットかテレビか本。一日中、がんに関する情報を追っていました。その頃は、何を見ても「がん」という文字に目が止まり、アニメの「ガンダム」という言葉にさえ反応していましたから。

 やがて、のぼせやほてり、イライラ、めまいといった更年期のような症状(卵巣欠落症)、足のむくみ(リンパ浮腫)などにも悩まされるようになりました。これらの症状は手術の後遺症によるものですが、当時はインターネットを検索しても、そういった情報がほとんどなくて、再発したのかもしれないと苦しみました。

 この先、自分の身体がどうなっていくのかわからない――。

 このことが一番不安でした。同じような症状の患者が10人いれば、自分に起こっている症状を普遍化できるため、それが安心感につながりますが、自分一人だと普遍化できないので、余計につらくなったり不安になったりするんです。

 取り残されたような気持ちになり、「本当に必要とされている人間なのか」と、自分の存在感さえも危うくなりました。こんな日常に耐えられなくなって、休養期間を早々に繰り上げて仕事に復帰しました。とにかく、がんのことを考えなくてもすむ環境に逃げたかったのです。

いざというとき必要な情報がどこにあるのか確認して欲しい
 誰でもこんな時期ってあると思うのです。治療がひとまず落ち着くと、「がん」という言葉を聞くのも嫌になる。

 でも、患者会などで再発治療の相談を受けていて、つくづく考えさせられるのは、治療が終わったということで、がんに関する情報からまったく離れてしまうと、数年後に自分の身体に何か起こったときに、必要な情報がどこにあるのか分からなくなってしまうということです。そうなると、がんの告知を受けたとき同様、ゼロベースから情報を集めなければならなくなります。これは大きな痛手です。

 特に再発の治療は、診療ガイドラインに則った方法ではなくなってくるので、皆が知らない“新しい情報”が勝負の決め手となります。めまぐるしく変わる情報をいちいち知っておく必要はないけれど、いざというとき、自分が必要とする情報がどこにあるのかを確認しておくことが大事。これは、新米患者さんにお勧めしている私の持論です。

 自分のリスクをきちんと管理できることが賢い患者の条件ではないかと思うからです。

セックスに関する後遺症の説明は「夫婦で受ける」ことが大事
 告知を受けたとき、「がんを取れば助かる」と思っていました。確かに子宮がんは手術がうまくいけば、治る確率の高いがんです。でも、助かった代償も大きい。そのことを痛感したのも術後です。

 子宮がんの手術では、骨盤内の神経もさわるため、神経が傷ついて術後に排尿障害や排便障害が起こることが多くあります。私の場合も、尿意をまったく感じなくなってしまい、現在は排尿する時間を決めて定期的にトイレに行く生活で、パットも手放せません。

 それから大きな問題になるのがセックスです。このことが原因で離婚する夫婦も、実は少なくないのです。妻だけが医師の説明を聞いて、それを夫に伝えてもピンと来ない。実際の生活に戻り、あらためてセックスしたときに以前と同じではないことが、そこで初めてわかるのです。でも、多くの夫は、その現実をうまく受け止められなくて、夫婦の関係も壊れてしまう。

 私は、後遺症の説明のとき、担当医から「ダンナさんも呼んできなさい」と言われ、2人で説明を受けました。手術によって子宮や膣の状態がどうなるのか、そのことによってセックスにどんな影響が出るのか、でもセックスの不便さを解消できる方法(ゼリーの使用や体位の工夫など)があるということも教えてもらいました。

 ひと通りの説明が終わると、担当医は2人が話し合う時間を1時間も設けてくれました。それは、私達夫婦にとって、とても貴重なものでした。あの時間がなければ、今頃2人の関係はどうなっていたのかと思い返すんですよね。

 セックスのことを真正面から向き合って話をするのはつらいけれど、これから手術を予定している方には、パートナーと一緒に2人で医師の話を聞いてほしいと思います。そして、本人だけでなく、パートナーも次にやってくる自分達の状況を思い描けるようにしておく必要があります。パートナーが勉強する機会を奪ってはいけません。

 医療機関の中には、セックスに関する後遺症の説明をしてくれないところが、まだまだあります。そういう場合は患者から「話をしてください」と、担当医にきちんと頼んだほうがよいでしょう。これは、決して恥ずかしがることではないので、勇気を持ちましょう。

 ただ、患者の本音を打ち明ければ、正常な性能力を持つ若い看護師さんから「あなたはセックスができなくなります」と言われるのは、ものすごく抵抗がある。私は、同じ喪失感を味わった患者の話を聞きたいと思いましたし、今、運営している患者会「オレンジティ」では、求められればセックスに関する相談にも乗っています。

 セックスに関する相談はピアカウンセリング(共通点の経験を持つ人が対等な立場で、同じ仲間として行われるカウンセリングのこと)のほうがよいと感じているからです。ピアカウンセリングでは、実際の性生活にもとづいた具体的なアドバイスができますし、何よりもセックスの問題は、夫婦で乗り越えられることだと自信を持って伝えられる。

若いうちから後遺症のケアを怠らず悪化を少しでも遅らせる
 また、子宮がんは、20〜30代で発病することが多いので、患者は命は助かっても、様々な後遺症を抱えたまま、50〜60年も生きていくことになります。加齢とともに後遺症は悪化し、よくなることはありません。

 ですから、今だけを見つめるのではなく、20〜30年後の自分の状態を想像しながら、後遺症の悪化を少しでも防ぐため、若いうちからリンパ浮腫対策や筋力アップの運動に取り組むことも大切です。これからは「オレンジティ」の活動の一つとして後遺症のケアもサポートしていきたいと考えています。

「サバイバーを作りたくない」と子宮がん検診の啓発活動に取り組む

オレンジティのミーティング風景
オレンジティのミーティング風景

 もう一つ、患者会の活動として今、私が力を入れて取り組んでいるのが「子宮がん検診」の啓発です。命は助かったものの、後遺症などのつらさが残るのが、子宮頸がんです。この活動を始めたのは、子宮がん患者のサバイバーとして、これ以上、同じ状況に置かれる女性を作りたくないという気持ちがだんだん強くなっていったからです。

 子宮頸がんは、原因が明らかになっているし、検診の精度の高いものです。だからこそ、一人でも多くの女性に受けてほしいと願っています。現在、静岡県の女性がんの検診率は30%ですが、それを平成22年度までに50%に引き上げたいと目標を掲げています。

 そして、具体的な行動として、日本対がん協会とタイアップして県内の市町村の健康まつりで、子宮頸がんの啓発のシンボルである「White&Teaリボン」を配布したり、地元の企業研修に出かけて講演活動したりしています。

 講演の中で、子宮頸がんの治療後はどんな生活になるのか、50年くらいの長い期間を具体的にシミュレーションしていくと、20歳の若い女性も「子宮がん検診に行きます」と必ず言ってくれるんですよ。こういう切実な話ができるのがサバイバーの強みですね。

(まとめ:渡辺 千鶴)

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