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2008/10/14

標準治療アップデート 治療 手術と放射線療法が中心、抗がん剤を組み合わせることも

 
 子宮頸がん監修:京都大学婦人科学産科学講座教授 小西 郁生  
 
 子宮頸がんの治療は手術療法と放射線療法の2つが中心となりますが、最近では抗がん剤を使う化学療法も行われるようになってきました。手術の方法はがんの進行期によって異なり、子宮を温存する子宮頸部円錐切除術、子宮のみを摘出する単純子宮全摘出術、そして子宮の周辺組織を含めて切除する広汎子宮全摘出術などがあります。放射線療法では外から骨盤全体を照射する外照射と腟内に小線源を挿入する腔内照射を併用して行います。また化学療法としては主としてシスプラチンを手術療法や放射線療法に組み入れて投与しています。

 治療法の選択は、がんの進行状況(進行期)、年齢、全身状態、将来の出産の希望の有無などを考慮して決定します。進行期別の標準的治療は次のとおりです。なお、2007年に日本婦人科腫瘍学会から「子宮頸癌治療ガイドライン」が発刊されていますので是非ご参照ください。

0期の治療
 高度異形成や上皮内がん(0期)は病変が子宮頸部表層の粘膜内にとどまっている状態ですので、これらに対する標準的治療として子宮頸部円錐切除術が行われます。円錐切除術はメスやレーザーあるいはリープといった特殊な器具を使って子宮の入り口を円錐形に切り取る手術です。ほとんどの場合、2〜3日の入院で済みます。近年、若い女性の異形成や上皮内がんが増加しており、この手術は非常に多く行われています。円錐切除術では子宮は温存されますので妊娠可能ですが、早産のリスクはやや増加することが知られており、円錐切除術後に妊娠した場合には注意が必要です。

 また円錐切除術は局所治療ですので、一度にすべての病変を切除することができないこともあります。また、いったんすべての病変が切除されても数年後に再発することもあります。これらの場合には治療後に細胞診が陽性となることで発見され、再度の円錐切除術が必要となります。

 なお、妊娠や出産を希望しない女性や閉経後の女性に対しては子宮の摘出も考慮されます。その場合、単純子宮全摘出術という子宮だけを摘出する手術が行われます。円錐切除術に比べて、取り残しや再発がほとんどないというメリットがあります。卵巣も温存することができますので、ホルモン状態も術前と変わりません。

Ia期の治療
 がん細胞が粘膜直下の基底膜を破って浸潤を始めるとI期以上の浸潤がんと診断されます。そのうちI期はがんが子宮頸部にとどまっている状態です。がんの深さと広がりの程度によってIa期とIb期に分けられますが、Ia期(浸潤が深さ5mm以内、広がり7mm以内)という診断は、円錐切除術を行って始めて確定しますので、診断そのものに時間がかかることをご理解ください。

 ?a期には、深さが3mm以内は?a1期と、深さが3mmを超えるが5mm以内の?a2期の2種類に細分類されています。?a1期であれば上皮内がんとほぼ同じ治療方針となり、通常、単純子宮全摘出術が行われますが、将来の妊娠を希望する場合は円錐切除術だけで経過観察となります。しかし、?a2期ではリンパ節転移の可能性が出てきますので、通常、子宮摘出術とリンパ節郭清術を必要とします。子宮摘出の方法は、広汎子宮全摘出術あるいは準広汎子宮摘出術が行われています。準広汎子宮摘出術は、膀胱と子宮の間にある靱帯の前の部分だけ切断して、後ろの部分は切断せずに子宮を摘出する方式で、広汎子宮全摘出術に比べて術後の排尿障害が少ないという特徴があります。

Ib期〜II期の治療
 Ia期まではがんの存在が肉眼的に確認できませんが、?b期以上は目でみてもただちにがんとわかる状況です。?b期のうち、がんの大きさが4cm以内であれば?b1期、4cmを超えていれば?b2期に分類されます。?b1期に比べると、?b2期は再発のリスクが高いといえます。またII期はがんが子宮頸部を越えて周辺へ浸潤した状態で、縦に伝って腟壁に広がったのがIIa期、横に広がって子宮傍組織に浸潤しているのがIIb期です。

 この?b期〜II期に対してまず行う治療として、手術療法か放射線療法かの選択があります。わが国では従来から手術療法が行われることが多く、一方、北欧などではほとんどが放射線療法となっています。治療成績はほとんど変わらないとされていますので、両者のメリット・デメリットを詳しく聞いてから選択することが大切です。また手術療法、放射線療法に化学療法を組み合わせることも多くなってきています。

 さらに最近では、よりよい治療法を新たに開発するための臨床試験も多く行われており、この試験に参加することを促される場合もあると思います。試験の説明をよくお聞きになり、十分に納得できるようでしたら、是非、臨床試験に参加していただきたいと思います。

?b期〜II期の手術療法
 標準的治療として、広汎子宮全摘出術が推奨されています。これは、がんが広がって行く道筋である子宮周囲の子宮傍組織を十分に切除し、腟も2〜3cm切除し、同時に骨盤内のリンパ節郭清も行う手術です。広汎子宮全摘出術を行うことは、がんを根治的に取り除くことができる上に、摘出臓器の病理組織学的な検索により、がんが実際にどこまで広がっているかを正確に知ることができるという大きなメリットがあります。また若い女性では卵巣機能の温存が可能であるという長所もあります。

 一方、広汎子宮全摘出術では子宮周囲の子宮傍組織を切除する際に、その中に存在する膀胱神経や直腸神経も切断せざるを得ないことが多く、術後に膀胱麻痺や直腸麻痺などが起こるというデメリットがあります。このため、排尿障害や便秘が後遺症として後々まで残る場合もあります。これを改善するための工夫として、最近、?b期〜IIa期では根治性を損なわない範囲で骨盤神経を温存する手術が行われています。

 またリンパ節郭清を行ってからしばらくした後に、下肢が腫れてくることがあり、リンパ浮腫と呼ばれています。最近ではがん治療施設に「リンパ浮腫外来」が設けられ、よりよいケアが受けられるようになってきています。

 手術の前に抗がん剤治療を行う術前化学療法(ネオアジュバント化学療法)が行われることもあります。これは再発リスクの高い?b2期〜IIb期がんに対して、化学療法でまずがんを縮小させた上で手術を行い、根治性を高めようという治療法です。治療成績の向上が期待されていますが、その有効性は現時点では証明されておりません。今後もこの術前化学療法の有効性を確かめるための臨床試験が行われる予定です。

 手術の結果、リンパ節転移がみつかった場合や子宮傍組織への浸潤が明らかとなった場合などは再発のリスクが高いと判断され、術後補助治療が奨められます。これには通常、骨盤全体への放射線療法(外照射)が行われています。放射線療法の代わりに化学療法が行われることもありますが、その有効性はいまだ不明です。

 妊孕能温存の手術療法としてトラケレクトミーが注目されています。?a2期〜?b期(径2cm以下)のがんに対して、子宮頸部と腟を広汎子宮全摘出術と同様に十分に切除し、子宮体部を残しておくもので、広汎性子宮頸部摘出術(トラケレクトミー)と呼ばれています。わが国ではいまだ限られた施設のみで行われており、術後の妊娠・分娩の経験は未だ十分とはいえません。

?b期〜II期の放射線療法
 わが国では70歳以上や合併症のある患者さんに対して放射線療法が選択されることが多いのですが、北欧などではほとんどの患者さんが放射線療法を受けています。また米国では主に?b期〜IIa期は手術療法、IIb期以上は放射線療法となっています。手術療法と放射線療法の治療成績を正確に比較した臨床研究は少ないのですが、生存率には明らかな差異がないと考えられています。

 放射線療法のメリットは、日常生活が比較的保たれた状態のままで治療を受けることができ、また手術療法のような神経障害による膀胱麻痺や直腸麻痺をきたさないことです。一方で、放射線に抵抗性を示すがんではがん細胞が消えない場合もあり、また照射して長期間経た後に直腸や膀胱から出血するといった晩期障害がおこる場合があることです。また若い女性では卵巣機能低下、性交障害なども起こり得ます。したがって、治療法の選択では担当医師とよく話し合った上で決めていただきたいと思います。

 放射線療法としては、体外から放射線を照射する外照射と、子宮および腟内に小線源を入れて照射する腔内照射を組み合わせて行います。腔内照射では腟および子宮内にあらかじめプラスチックチューブを挿入し、そこに小線源をリモートコントロールで入れる特殊な施設(RALS)が必要です。まず外照射を週5回、数週間かけて行った後に、後半に入ってから腔内照射も約3回行い、全体として3カ月以内に終了する治療です。

 最近、この放射線療法に化学療法を組み合わせる治療が多く行われるようになってきています。多数の臨床試験の結果から、先に化学療法を行ってから放射線療法を行ってもあまり有効でないことが明らかとなりました。一方、放射線療法と同時に化学療法を行いますと、従来の放射線療法単独よりも患者さんの生存率が高いという結果が多く出てきました。これが「同時化学放射線療法」と呼ばれる治療法で、抗がん剤としては主にシスプラチンが用いられています。わが国の女性に最も適したシスプラチンの投与方法やタイミング、他の抗がん剤とのよりよい組み合わせをみつける目的で、現在、様々な臨床試験が行われているところです。

III期〜IV期の治療
 III期以上のがんに対する標準的治療としては放射線療法が奨められます。一般的に手術療法は用いられません。骨盤の壁までがんが浸潤してしまうと手術では取り切れなくなるためです。この場合の放射線療法でも、抗がん剤を同時に投与する「同時化学放射線療法」が推奨されています。

 III期以上で手術ができないと説明されますと「もう治らない」とがっかりされる患者さんが多いと思われますが、そうではありません。根治的放射線療法で治癒に至る方も多いことをよく知っていただくことが重要です。その上、最近では同時化学放射線療法を行うことで治癒率も向上していますので、是非、希望をもっていただきたいと思います。

 IVb期で遠隔部位に転移がある場合は完全治癒の可能性は確かに低くなってきます。緩和医療として、放射線療法あるいは化学療法を行います。しかし、場合によっては、治癒を目指した全身化学療法や肺転移に対する手術療法などを提案する場合もあります。担当医師と十分に話し合って、QOLを考慮した治療法を選択してください。

予後と再発
 治癒の見込み(予後)はがんの進行期や全身状態によって異なります。0期であれば100%治癒します。浸潤がんの5年生存率は?期で80〜90%、II期60〜70%、III期40〜50%、IV期10〜20%です。

 再発とは、治療でがんがいったん完全に消えたようにみえても、わずかに残っていたがん細胞が増殖し大きくなることです。再発の状況は患者さんによって全く異なりますので、全身状態、再発の部位、前回の治療法などを考慮しながら、一人一人に適切な治療を行います。

 骨盤内におこる局所再発で前回の治療で放射線療法が行われていなければ、まず放射線療法が第一選択となります。そうでなければ化学療法、ときに手術療法が行われます。とくに放射線療法後に子宮頸部に再発してきた場合は骨盤内臓全摘出術(除臓術)が考慮されます。原発病巣(子宮頸部)から離れた肺や肝臓のような遠隔臓器に転移している場合も化学療法が中心となりますが、遠隔転移の病巣が孤立性であれば外科手術も行われます。担当医師とよく相談してQOL向上を目指した治療法を選択してください。

(まとめ:坂井 恵)

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