このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

2008/10/7

標準治療アップデート 診断と予防 検診とワクチンで予防できるがん

 
 子宮頸がん監修:京都大学婦人科学産科学講座教授 小西 郁生  
 
 子宮がんは子宮の内側を覆っている細胞から発生するがんで、わが国では年間約18,000人の女性が子宮がんに罹っています。正常の子宮は妊娠を司る「子宮体部」と入り口の「子宮頸部」の2つの部分からなっていて、それぞれから別の種類のがん、つまり子宮体がんと子宮頸がんが発生します。わが国では、近年、閉経前後の女性に多く発生する子宮体がんが急速に増えてきていますが、従来は子宮頸がんが子宮がんの大部分を占めており、ふつう「子宮がん検診」というと子宮頸がんの検診のことを意味していました。そこで、まず子宮頸がんの診断と治療について紹介します。

 子宮がんは子宮の内側を覆っている細胞から発生するがんで、わが国では年間約18,000人の女性が子宮がんに罹っています。正常の子宮は妊娠を司る「子宮体部」と入り口の「子宮頸部」の2つの部分からなっていて、それぞれから別の種類のがん、つまり子宮体がんと子宮頸がんが発生します。わが国では、近年、閉経前後の女性に多く発生する子宮体がんが急速に増えてきていますが、従来は子宮頸がんが子宮がんの大部分を占めており、ふつう「子宮がん検診」というと子宮頸がんの検診のことを意味していました。そこで、まず子宮頸がんの診断と治療について紹介します。

 わが国では1960年代から子宮がん検診が全国的に普及したことにより、子宮頸がんの罹患数、死亡数は急速に減少したのですが、この数年間は残念ながら再び増加する傾向がみられています。この原因は、近年、子宮がん検診の受診者数が頭打ちとなっていること、さらに若い年代の女性に子宮頸がんが増加していることであり、その結果、わが国では、20歳代および30歳代の女性が発症するがんの中で子宮がんが第1位となっています。

 子宮頸がんには、扁平上皮がん (80%)、腺がん(15%)、その他の種類のがん(5%)があります。このうち扁平上皮がんではがん細胞が発生する過程がよくわかっていますが、腺がんやその他のがんではまだよくわかっていません。したがって、子宮がん検診による早期発見の対象は主に扁平上皮がんということになります。扁平上皮がんは、まず子宮頸部の粘膜に形の異常な細胞が出現することで始まります。これが「異形成」と呼ばれる病変で、その程度により軽度、中等度、高度に分けられ、放っておくと軽度異形成から高度異形成へと徐々に進んできます。高度異形成の最終段階が「上皮内がん」と呼ばれる病変であり、粘膜上皮がすべてがん細胞で占められています。

 しかし、上皮内がん(=0期がん)であっても、まだその下の基底膜という膜を破って浸潤していませんので、本当の子宮頸がん(「浸潤がん」)とはいえない状況です。浸潤がんとなる前に、このような異形成および上皮内がんといった初期段階がふつう数年間は続くといわれていますので、この状態のうちに見つけることが大切な訳です。

子宮頸がんのスクリーニング=細胞診
 一般の女性を広くスクリーニングして、子宮頸がんをその初期段階で発見する有効な方法が子宮がん検診です。近年の子宮頸がんの若年化に対応してどの市町村でも20歳から検診を受けることができるようになっています。若い女性にとって非常に重要なことは、がん検診を受けて子宮頸がんをその初期段階(異形成や上皮内がん)で見つけることにより、子宮を残す妊孕能温存治療ができることです。

 一方、閉経後の女性も注意が必要です。「わたしは月経がなくなったのでもう子宮がん検診を受ける必要がない」と誤解されている方が多く、がん検診を受けなくなり進行がんが見つかる方が多いのです。異形成や上皮内がんでは不正出血などの症状がありませんので、たとえ症状がなくとも、年に一度は子宮がん検診を受けることが大切です。なお、明らかな浸潤がんへと進行すると不正出血がみられるようになります。つまり月経時以外に出血したり、セックスの後に出血したり、閉経後に出血するようになります。また、ふだんと違うおりものが増えたりすることもあります。もちろん、このような場合は産婦人科を受診する必要があります。

 子宮がん検診で行う検査が子宮頸部細胞診です。子宮頸がんが発生しやすい子宮の入り口から細胞を採取して顕微鏡で観察し、がん細胞や前がん状態の細胞の有無をスクリーニングします。このような診断法を一般に細胞診と呼んでおり、子宮がん以外にも乳がんや肺がんなどにも使われている非常に重要な検査です。子宮がん検診の細胞診はとりわけ簡単であり、痛みもほとんどなく、短い時間で大勢の人にも行えますので、地域や職場によっては集団検診という方法も行われています。細胞診の結果は次の5段階で評価されてその結果が報告されてきますので、ご自分の細胞診クラス分類を知っておかれるのがよいと思います。

クラス?:正常の細胞だけがみとめられ、異常なしと思われる
クラスII:少し異常な細胞もまじっていて、炎症があると思われる
クラスIII:形の異常な細胞があり、前がん状態(異形成)の可能性がある
  IIIa(軽度異形成を疑う)とIIIb(高度異形成を疑う)に分けることもある
クラス?:形の異常な細胞があり、初期がん(上皮内がん)の可能性がある
クラス?:がん細胞が認められ、浸潤がんが存在していると考えられる

 以上のうち、クラス?とクラスIIは次回の検診まで何もする必要がありませんが、クラスIII以上は、必ず、精密検査(コルポスコピーと組織診)に進む必要があります。なお、この細胞診のクラス分類を子宮頸がんの病期と誤解され、すごく心配されて来院される方がおられますのでご注意ください。

子宮頸がんとその前がん病変の診断=組織診
 細胞診でクラスIII以上の場合は、コルポスコピーと組織診を行います。まずコルコスコープと呼ばれる器具を用いて子宮頸部を拡大して観察します。異形成や上皮内がんでは婦人科の内診の際に目で見ても何も異常がみつからないのですが、このコルポスコピーではくっきりと病変がみつかってきます。そこを狙って、パンチ生検器具を用いて組織を2〜4カ所採取します。痛みはあまりなく、出血があってもまもなく止まりますので、外来での検査が可能です。

 この組織診によって、異形成、上皮内がん、浸潤がんのいずれかという最終的な診断が下されます。異形成のうち、軽度異形成とわかれば外来での経過観察となり、普通は3カ月ごとに細胞診を行い、病変が消えていくか、あるいは進行していくかをみていくことになります。中等度異形成は経過観察の場合と治療する場合があります。しかし、高度異形成や上皮内がんは必ず治療を行い、病変を切除する必要があります。

 病変が子宮の入り口よりもずっと奥にあってコルポスコピーで見えない場合、組織診の結果で微小浸潤がん(?a期)が疑われる場合、腺がんの初期がんがみつかった場合には、「診断的円錐切除術」と呼ばれる方法で組織診を行います。これは子宮頸部を円錐状に切り取って詳しく組織診を行うもので、治療を兼ねている場合もあります。この検査は一種の手術ですので、通常は入院して行われます。

 なお、最初から明らかな浸潤がんの場合、その多くは、内診の際に目で見るだけで「がんである」ことがわかります。この場合はただちに組織診を行います。

子宮頸がんの広がりの診断=内診と画像診断
 明らかな浸潤がある子宮頸がんと診断されますと、今度は治療方針を決定するために、がんの広がりの診断が必要となってきます。まず、内診により、腟に浸潤していないかを目で確かめ、さらに直腸診(触診)で子宮頸部の横に広がる子宮傍組織への浸潤を診断します。既に述べた円錐切除術も検査の一つといえます。

 排泄性尿路造影検査(IVP)という検査で子宮の横を通る尿管の状態をみます。また、膀胱鏡や直腸鏡などで、膀胱や直腸への浸潤がないことを確かめます。肺転移がないかどうか胸部X線検査を行います。このような検査を行って、子宮頸がんの臨床進行期(病期)を決定します。さらに最近では、MRI、CT、PETなどの画像診断が発達してきましたので、これらも駆使することで可能な限り正確にがんの広がりを評価していきます。MRIではがんが局所でどれくらい広がっているか、がんの大きさ(直径)、傍組織浸潤、膀胱や直腸への浸潤をかなり詳しく知ることができます。CTでは主にリンパ節転移の有無を詳しく検討します。

子宮頸がんの臨床進行期(病期)
 0期は、上皮内がんの段階であり、浸潤がんではありません。

?期は、浸潤がんが子宮頸部にとどまっている状態です。がんの浸潤の深さと広がりの程度によって、?a期と?b期に分けられています。
?a期:浸潤が深さ5 mm以内、広がり7 mm以内の病変で「微小浸潤がん」と呼ばれています。浸潤がんの中でも予後の良好ながんといえます。さらに、深さが3 mm以内は?a1期、深さが3 mmを超えるが5 mm以内は?a2期に細分類されています。?a1期であれば上皮内がんとほぼ同じ治療方針となりますが、?a2期ではリンパ節転移の可能性が出てきます。
?b期:上の?a期以外はすべて?b期となりますが、がんの大きさが4 cm以内であれば?b1期、4 cmを超えていれば?b2期に分類されています。?b1期に比べると、?b2期は再発のリスクが高いといえます。

II期は、がんが子宮頸部を越えて、縦方向にあるいは横方向に浸潤した状態です。縦に伝って腟壁に広がり、腟の下3分の1には達していない、つまり腟の上3分の2にとどまるのがIIa期です。横に広がっていき、子宮を骨盤壁から支えている組織(子宮傍組織)に浸潤しているのがIIb期です。しかし、浸潤はまだ骨盤壁までは達していない状態です。

III期は、がんが骨盤内でかなり進行した状態をいいます。つまり、IIIa期は、がんの腟壁への拡がりが下の1/3を越えていて、腟の入り口付近まで達しているものです。また、IIIb期は、がんの子宮傍組織への拡がりが骨盤壁にまで達しているものです。また、腎臓と膀胱をつなぐ尿管もこの子宮傍組織の中を通っていますが、がんの浸潤によって尿が通りにくくなっていることが排泄性尿路造影検査(IVP)で確認された場合もこのIIIb期となります。

IV期は、がんがさらに広がっている場合で、膀胱や直腸の粘膜にも達していればIVa期、小骨盤腔を越えて、肺などの遠隔臓器にがんの転移があればIVb期となります。

子宮頸がんの予防=がん検診とワクチン
 子宮頸がんを予防する上で最も大切なことは、子宮がん検診を受けることです。米国などではこの細胞診検査を定期的に受けることが国民の常識となっており、80%以上の女性が検診を受けています。ところが、わが国では、多数の女性が検診のことをご存じであるにも関わらず、実際に受けている方は約20%という状況です。これに加えて、若い女性の子宮頸がんが増加してきています。20歳以上の女性は子宮がん検診を定期的に受けることを強くお奨めいたします。

 子宮頸がんの発生は従来からセックスと関連があるのではないかと推察されてきましたが、1983年に子宮頸がんからヒトパピローマウイルス(HPV)が発見され、その後急速に研究が進み、このHPVがセックスによって感染することが子宮頸がんの原因となることがわかってきました。さらに、最近の研究によって、HPVはとてもありふれたウイルスであることもわかってきました。

 セックスを経験し始めますと、ほとんどの女性が一度はHPVに感染しますが、ふつうは自然の免疫力でHPVを排除しています。ところが、まれに、なんらかの原因でこのHPVを排除することができず、HPVに持続的に感染した状態となる場合があり、そのような女性に子宮頸部の異形成や上皮内がんが発症してくるのです。ですから、セックスを経験するようになれば、子宮がん検診を受ける必要が出てくる訳です。

 さらに、研究が進められた結果、このHPVに対する予防ワクチンが開発され、すでに欧米において使用され始めました。わが国でも2年後くらいに承認される見込みです。子宮頸がんを発症させるHPVのうち大部分を占める16型と18型のHPVに対するワクチンであり、これをあらかじめ接種しておくと、異形成や上皮内がんの発生を予防することができます。ただし、他の型のHPVには有効でない可能性があり、ワクチンを使用しても子宮がん検診はあいかわらず必要です。しかしながら、このHPVワクチンが国民の間に広く使用される状態になれば、わが国で子宮頸がんの患者さんが劇的に減少することが期待できるのです。したがって、今後、このワクチン接種に対して公的援助が得られるよう政府に働きかけていかねばなりません。

(まとめ:坂井 恵)

この記事を友達に伝える印刷用ページ