このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

2008/9/9

標準治療アップデート 診断と予後 初期症状が乏しいため検診が重要 早期であれば完治も

 
 食道がん監修:京都大学医学部消化器内科准教授 武藤 学  
 
 食道は、胸の中心に首のあたりからお腹にかけてある、長さ25センチほどで太さが2〜3センチほどの筒状の臓器です。食道の周りには血管やリンパ管が多くあり、また、すぐ前には肺につながる気管や気管支があり、後ろ側には全身に血液を送るための大動脈があります。食道がんはリンパ節への転移が起こりやすく、周囲の臓器にがんが広がりやすいという特徴を持ちます。

 食道がんは、高齢者に多く、女性に比べて男性に多いがんです。食道がんの原因として飲酒と喫煙が大きなリスク因子です。特に、日本人の約半数はお酒に弱いタイプの遺伝子を持ち、そのような遺伝子を持つにもかかわらず、習慣的な飲酒を継続すると、食道がんリスクが高くなることが知られています。

 食道がんの初期症状として、胸部や腹部の違和感や嚥下困難などを自覚する方もいますが、ほとんどの方は、初期には自覚症状を持たず、検診やほかの疾患のための検査などで発見されることが少なくありません。少し進んだ状態では、食べ物などが飲み込みづらくなったり、声がかすれるといった症状が出ることもあります。また、がんが周りの気管や気管支に広がると、胸や背中に痛みが出たり、咳や痰が出るといった症状があらわれることもあります。

【検査】
 食道がんが疑われたら、さまざまな画像診断によって、がんが食道の壁にどの程度食い込んでいるか(壁深達度)や、リンパ節転移の有無とその程度、離れた臓器への転移(遠隔転移)を診て進行度の診断を行います。

 画像診断ではまず、内視鏡検査を行います。内視鏡検査は、先端に小型CCDがついた内視鏡を口から食道に通して、食道の粘膜の状態を観る検査です。その際、ルゴールというヨウ素液で食道粘膜を染色することがあります。ルゴール液を塗ると、正常な粘膜であれば茶色に染まりますが、がん細胞は染まらずにそのままピンク色に残るので、小さながんでも見付けやすくなるからです。ただし、ヨウ素液は刺激性が強く、検査後に胸焼けや違和感を訴えることが少なくなく、時にはヨードによるアレルギー反応(発疹・気分不快・血圧低下など)を引き起こすこともあります。

 そのため、近年、体に負担無く高精度で診断できる新しい技術として、NBI(Narrow Band Imaging)を利用した内視鏡も実用化されています。NBIとは、癌部を見つけ出すのに効果的な波長の光を当て、病変を検出する装置です。

 また、造影剤(バリウム)を飲んでX線で食道を撮影する食道造影検査が画像診断として行われることもあります。

 さらに超音波内視鏡検査、超音波検査、CT、MRIなどの画像検査を行い、食道の壁への深達度(壁深達度)や隣接する臓器への浸潤、リンパ節への転移、遠隔転移の診断を行い、進行度を見極めます。超音波内視鏡検査は、内視鏡の先端に超音波発信装置が付いた機械を口から食道に通し内側から行う超音波検査で、がんの壁深達度やリンパ節への転移が調べられます。

 画像診断で気管や気管支への浸潤が疑われるときには、気管支内視鏡検査も行います。また、PET検査や骨シンチグラフィが行われることもあります。

 食道がんの場合、患者さんが高齢であることが多く、高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病を有している頻度が高いことから、がんの状態だけでなく、全身の状態をしっかり診て治療方針を決める必要があります。そのため、心機能検査、肝機能検査、腎機能検査、耐糖能検査などの全身状態、重要な臓器の機能の検査を行うことが推奨されています。

 心機能検査では、安静時、運動負荷心電図を行い、何らかの異常が認められた場合、ホルター心電図、心エコー、心臓カテーテル、運動負荷心筋シンチグラフィを行うこともあります。また、血液検査や尿検査を行い、肝炎の有無や肝機能、腎機能、血糖値などさまざまな検査を行います。

【病期】
食道の壁は、内腔面(壁の内側、食物が触れる側)から、上皮→粘膜固有層→粘膜筋板→粘膜下層→固有筋層→外膜と、層になっています。

 病期を決める因子として、がんの食道壁への深達度(壁深達度)を示すTと、リンパ節への転移の有無を示すN、ほかの臓器への転移を示すMの3つがあります。

 がんが粘膜層〜粘膜筋板にとどまっている場合はT1a、粘膜下層までとどいている場合はT1b、固有筋層にとどいている場合はT2、外膜まで出ている場合はT3、周辺の臓器に浸潤している場合は T4になります。壁深達度とリンパ節や多臓器への転移による病期は、図の通りです。下記は、それらをまとめたものです。

0期:がんが粘膜にとどまっており、リンパ節、他の臓器、胸膜、腹膜(体腔の内面をおおう膜)にがんが認められないものです。いわゆる早期がん、初期がんと呼ばれているがんです。

I期:がんが粘膜にとどまっているけれど近くのリンパ節に転移がある、粘膜下層まで浸潤しているけれどリンパ節や他の臓器や胸膜・腹膜にがんが認められない状態。

II期:がんが筋層を越えて食道の壁の外にわずかに出ている、あるいは食道のがんのごく近くにあるリンパ節にがんがあるが他の臓器や胸膜・腹膜にがんが認められない状態。

III期:がんが食道の外に明らかに出ている、食道壁にそっているリンパ節か、あるいは食道のがんから少し離れたリンパ節にがんがある、他の臓器や胸膜・腹膜にがんが認められない状態。

IV期:がんが食道周囲の臓器に及んでいる状態は?a期、ほかの臓器や胸膜・腹膜にがんが認められた状態はIVb期に分類されます。

【予後】
 食道がんは、転移しやすいことなどから、消化器がんの中でも予後がきびしいがんとして知られています。しかし、早期のがんの治療成績は良好で、0期のがんで内視鏡的粘膜切除術で切除できた場合は完治できます。粘膜にとどまるがんで、手術で完全に切除できた患者さんの予後も決して悪くありません。

食道がんの進行度

(まとめ:坂井 恵)

この記事を友達に伝える印刷用ページ