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2008/9/2

先輩患者からのアドバイス がん=死ぬ病気ではない!

 
 ブーゲンビリア、安田洋一さん  
 
 42歳のときにステージ3の大腸がん(上行結腸がん)が発見される。がん=死ぬ病気という社会にあるイメージを変えたいとの思いから、実名で大腸がんの経験を語っている。"なかなか素直になれない男性患者"を支えるため、現役仕事中の男性を中心とする患者会を設立したいと準備中だ。乳がんを中心とした患者会であるブーゲンビリアに入っているのは、がんになってもこんな元気な人達がいると感銘を受けたことがキッカケであり、また、同会に所属しながら患者会の在り方や運営方法を勉強している。

 私の大腸がんが発見されたのは、2004年の9月のことです。実は、その年の2月頃から、嘔吐と腹痛、寒気に襲われ、病院を何度か受診していました。ただその際は、胃の具合が悪いと訴えたため、胃の検査のみ受けていました。

 実は、私の父が胃がんを経験しており、症状として『胃に針が刺すような、チクチクという痛みがある』と訴えていたのを覚えていました。私も、針でチクチク刺されるような、ときには剣山でえぐられるような痛みがあったため、「もしかしたら、胃がん?」という思いがあったのです。

 最初のうちは医師も胃だけを診察して、それ以外の部位を調べてくれませんでした。5月には、胃カメラも飲みましたが胃酸過多という診断で、薬を処方されただけ。ただ、2度目の胃カメラのとき、これまで大腸の検査を受けていなかったということで、大腸内視鏡を勧められました。医師の診察を受けるときは、“ココが痛い”というと、その場所しか診てもらえないことがありますので、“全体的に具合が悪い”と言った方がいいいかもしれませんね(苦笑)。

 さて、内視鏡検査で、ポリープが見つかりました。医師は、「細胞を検査して悪い結果が出れば手術が必要」と検査後に説明してくれました。ただ、私は検査時の対応から、大腸がんと察していたため、「がんであることは間違いないですよね?」と尋ねました。すると、「間違いない。ただし、念のため細胞を検査するので、後日、結果を聞きに来てください」との答えでした。

 病理の正式な結果が出るまでは、とても不安でしたね。病気の正体を知るために、情報収集にも励みました。関連する書籍は12〜13冊買い、インターネットでもいろいろ調べました。ただ、情報はたくさんありますが、どれを信じたらいいのか分からず、混乱もしました。

 ただ混乱しつつも、大腸がんの場合、どこで手術を受けても技術的に大きな差はないということは理解できました。また、私は、自営業のため、入院中も極力仕事を続けたいという思いがあり、自宅に近いことを第一条件として病院を決めました。

 がんの診断を受けた方は、国立がんセンターで治療を受けたいと考える方が多いですよね。なんだかシンボリックな名前ですし。ただ、もし、がん以外の病気を抱えている場合、がんの専門病院では、その合併症は診てもらえないのです。その点も、理解しておくといいと思いますよ。

 その年の11月に入院しました。病室は4人部屋で、他の3人ともがん患者でした。既に手術を4回受けている患者さんもおられて、その方は、自分のお腹の傷跡を私に見せながら、「大丈夫だよ」と励ましてくれました。ベテランの域に達した患者さんでしたねぇ。同室の患者さん達に、励まされ、また、いろいろ教えてもらったことは、精神的に大きな支えとなりました。

入院してからも仕事を継続
 私の場合、入院後、直ぐには手術の日程が決まりませんでした。手術までは動けますので、入院しつつも、病室にパソコンを持ち込み、また、外出許可を取って仕事を続けていました。そのため、仕事上のお客さん達にも、入院しているということは、ほとんど知られませんでした。ただ、手術後ある程度の期間は仕事ができませんので、手術の日程が決まったときに、伝えておくべきお客さんに対して、「腸閉塞の疑いで1週間ぐらい入院する」とだけ伝えました。

 『入院すると仕事はできなくなる』と考える方もいるかもしれませんが、大腸がんの場合、手術前までは食事制限があるくらいで比較的自由です。他のがんに比べても外出しやすいと思います。

医療者との信頼関係、医療者を育てるという気持ちも大切
 医療者との信頼関係はとても重要だと思います。私自身は、医療者とよいコミュニケーションを取ったうえで、手術を迎えることができたと思っています。また、医療者を育てるという気持ちも必要だと思いますね。

 手術の前日、研修医も含めて、担当医が説明に来てくれました。そのとき、私は、研修医の先生に、「切ったり、ぬったりしてもらってかまわないよ」と言いました。担当医も驚いて、「いいのですか?」と聞いてきました。私は「ただ、1つだけ条件がある」と、「傷口はどうでも良いが、がん細胞の見落としだけはしないで欲しい」とね(笑)。

 手術の結果、私の大腸がんは、ステージ3、リンパ節への転移が3つありました。再発予防のため、術後に抗がん剤治療を受けました。

 看護師で注射が下手な人がいますよね。内心、もう少し勉強してから来て欲しいと思いながらも、何度でも針を刺されています。だって、りっぱな医療者になるために、誰かが腕を貸さないといけないと思うからです。

“男のやせ我慢”はなかなか止められない、でも、素直になって欲しい!
 男は、どうしても我慢してしまうものです。私も、がんの診断を受ける前、自覚症状があってもなかなか受診しませんでした。また、入院中にイレウス(腸閉塞)になってしまった際も、なかなか助けを呼ぶことができませんでした。

 イレウスは、死んでもいいと思うほどの痛みでした。告知の精神的辛さに匹敵する、肉体的な辛さです。

 イレウスが起こったとき、私はなんとかトイレに行くことができました。しかし、その後、全く動けなくなってしまったのです。身動きが取りにくい状態でトイレに行ったため、浴衣もパンツも脱ぎ、真っ裸の状態でした。この状態で、夜中のトイレで一人ぼっち。

 そのとき、まず思ったことは、“パンツをはかなければ!”ということでした。真っ裸で看護師さんや医師を呼べないと思ったのです。イレウスで非常に苦しい状態ですので、パンツをはくのに4時間ぐらい要してしまいました。明け方まで、パンツをはくためにトイレで孤軍奮闘していたのです。

 その前に手術も検査もいろいろ受けている訳で、裸にこだわるのも変ですよね。ただ、まあ、男というのは、そうゆうところがあるのですよ。大丈夫ではなくても大丈夫と言ってしまう。

 ただ、皆さんには、「命を守るために、素直になって欲しい」と言いたいです。こんな私がいうのも変な話ですがね(苦笑)。でも、自分の体の信号に対して素直になり、自分の体をマネージメントすることはとても重要なことです。今は、私自身、少しでも体に違和感があるときは、迷わず、診察を受けています。

がん=死ぬ病気ではない!
 テレビの番組でも、がんで亡くなるというケースが多いですよね。診断を受けたとき、私の子供は6歳と4歳だったのですが、子供達は、“がんは死ぬ”というイメージを強くもっていました。「お父さんはがんなの?がんだから死ぬの?」とよく質問されました。

 『がん=死ではない』ことを伝えていかなければいけないと、強く感じました。がんになることで、確かに死ぬ可能性はあります。しかし、生きられる可能性も十分ある訳です。生きて頑張っている人達がたくさんいる。

実名で自分のがんを公表しているのは、がんであっても普通の日常生活を送っている人間がいることを伝えたいためです。ただ、こうして自分の病気を公表し、他の人にがん検診を勧めることは、他人のためだけでもないのです。人にがん検診の重要性を説くこと自体が、私自身のストレス解消、精神的安定剤になっているようです。

 男性では、がんになったことを公表する人が少ないように思いますが、公表することで、得られることがあることも知ってもらえればと思います。隠していると、我慢してしまう部分が出てくるものですから。また、自分のがんを公表すると、「実は私もよ」という方がたくさん出てきてびっくりもします。

現役男性患者の患者会を作りたい
 私は、現役で仕事をしている男性達を対象とする患者会を作りたいと思い、仲間を募っています。がんと仕事の両立をどうするかは、大きなテーマだと思うのです。

 男性のなかには、『この仕事を終えてから治療に行く』などとおっしゃる方がいます。多くの男性が、仕事に穴を開けることを恐れて、治療を先送りしがちなのではないでしょうか。しかし、この病気は進んでしまったらダメですが、早いうちに対応できればちゃんと治るのです。

 優先順位を考え、環境を整えていくのは自分自身です。死ぬことよりも生きることが大切なのだから、生きるために何をすべきかを個人が考え、それを周囲がサポートできるようになればいいと思うのです。

 また、がんの治療と男性の性機能に関して、まだまだあまり語られていないと思います。例えば、大腸がんの後遺症としての勃起障害など。

 私自身は、治療後、第3子に恵まれました。手術後の抗がん剤治療中に、「子供をもうけたい」と医師に相談したのですが、医師は、男性の場合に抗がん剤治療がどう影響するか知りませんでした。実際、抗がん剤の添付文書には女性患者の場合の注意事項は書いてあっても、男性患者に関しては記載がないようですね。こうゆうことも変えていかないといけないと思っています。

(まとめ:小板橋 律子)

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