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2008/8/19

標準治療アップデート 治療と予後 ステージ別で異なる標準治療 5年生存率の数字は参考程度に

 
 大腸がん監修:京都大学消化管外科教授 坂井 義治  
 
 大腸がんの治療の基本は手術です。ただし、病気の進行度によって、標準的な手術の方法が異なってきます。例えば、非常に早期であれば、内視鏡など体への負担の少ない方法で治療することができます。

 大腸がんの進み具合は、「ステージ」(=「病期」ともいいます)で表わされます。大腸がんの場合、(1)大腸の粘膜から腸の壁にどれだけ入り込んだか、(2)リンパ節転移があるか、(3)他の臓器への転移があるか――の3つを総合して、ステージが分けられています。

表1 大腸がんのステージ分類
ステージ0 がんが大腸の粘膜の中にとどまっている。
ステージI がんが大腸の壁の筋肉の層にとどまっている。リンパ節転移はない。
ステージII がんが大腸の壁の筋肉の層の外にまで浸潤している。リンパ節転移はない。
ステージIII リンパ節転移がある。
ステージIV 血行性転移(肝臓や肺への転移)や腹膜播種がある。
注)ステージ0から順に、進行したがんとなっていきます。

【ステージ別の標準的な治療法】
 大腸がんの治療では、ステージに応じて標準的な治療が設定されています。

●ステージ0の大腸がん
 ステージ0の大腸がんでは、がんは粘膜の中にとどまっているので、内視鏡によって大腸がんを切り取る治療をします。内視鏡治療は、肛門から大腸内視鏡を挿入して、内視鏡の先端に開いている穴から専用の器具を出し、がん組織を切り取ります。

 内視鏡治療は、通常、入院せずに行いますが、がんが大きい場合やその他に病気を合併している場合は、入院して行うことになります。入院する場合でも、その期間は2〜3日です。また、大腸の粘膜には痛みを感じる神経がないため、この治療では、がんの切除によって痛みを感じることはありません。

 大腸がんは、がんが粘膜の中にとどまっている、または粘膜下層の浅い部分までにとどまっていれば、リンパ節転移の危険性がほとんどありません。そのため、内視鏡治療によってがんの部分を完全に切除できれば、治癒するとされています。

 ただし、リンパ節転移があるかどうかは、事前に確実に判断することはできません。内視鏡治療で切り取ったがん組織を顕微鏡でよく調べた結果、リンパ節転移をおこす危険性があるとわかった場合には、追加で手術を行う必要があります。

●ステージIの大腸がん
 ステージIの大腸がんの中で、腸管の壁への浸潤が浅いと診断されたものに対しては、ステージ0と同様に、内視鏡でがんを切り取る治療をすることがあります。一方、腸管の壁への浸潤が深いものに対しては、内視鏡の治療ではがんを取り残してしまう可能性や、リンパ節転移を起こしている可能性もあるため、手術によって病変部分を含む腸管と、転移の可能性のある範囲のリンパ節を切除します。

 大きさが直径2センチメートルを超えるがんでは、腸管の壁への浸潤が深いことが多いので、一般に、内視鏡で取るか手術をするかの境目は、直径2センチメートルまでとされています。ただし、治療法の選択は、いろいろな検査の結果を総合的に判断して決められます。

●ステージII、IIIの大腸がん
 ステージII、IIIの大腸がんでは、手術によって、病変部分を含む腸管と、転移の可能性のある範囲のリンパ節を切除します。切除したリンパ節にがんの転移があることがわかると、再発予防のための化学療法(抗がん剤治療)が勧められます。

 手術では、がんの近くにあるリンパ節も切除します。これを「リンパ節郭清(かくせい)」といいます。大腸がんが発生した場所と手術前の検査から予想されるステージに応じて、どれくらいの範囲のリンパ節を切除するかを決定します。大腸がんの手術では、標準的なリンパ節郭清を行った場合、手術後に障害が生じることはほとんどありません。

 最近では、皮膚に小さな穴を幾つか開けて、そこから腹腔鏡という特殊なカメラや手術器具を入れてがんを切除する、腹腔鏡手術という方法も広まってきています。

●ステージIVの大腸がん
 ステージIVの大腸がんの場合は、大腸の病変を取っただけでは、他の臓器に転移したがんがまだ残っている状態なので、すべてのがんが取りきれたことにはなりません。一般に大腸がんでは、肝臓や肺に転移したがんも、それらを手術で切除することが可能であれば、積極的に手術を行います。何回かに分けて手術を行うこともしばしばあります。ただし、転移のある場所・数や、その時点での体の症状などに応じて、手術以外の治療法(抗がん剤を使った化学療法や放射線療法)が勧められる場合もあります。

 大腸がんにおいて、これまで化学療法単独による治療の効果はそれほど期待できるものではありませんでした。しかし、ここ数年で大腸がんに対する化学療法は急速に進歩しています。従来からあるフルオロウラシル(5-FU)という薬剤に加えて、オキサリプラチン、イリノテカンなど大腸がんに効果のある新規抗がん剤が次々に登場し、生存期間が改善されてきています。さらに、ベバシツマブやセツキシマブなどの分子標的治療薬が用いられるようになり、治療成績の向上はめざましく進歩しています。

 ただし、ステージIVの大腸がんの治療は、病状によりさまざまです。担当医からよく説明を受け、患者さん、そして信頼できる周りの人またはご家族の皆さんで、よく相談して治療を受けましょう。

【ステージ別の予後】
 「5年生存率」とは、がんの治療を始めた人のうち、治療開始から5年後に生存している人の割合のことです。大腸がんに限らず、がんの分野では、治療効果の目安としてこの「5年生存率」をよく使います。

 大腸がんの場合、再発の95%以上が、完全にがんを取り除く手術を受けてから5年以内に見つかります。したがって、大腸がん治療の効果の目安の一つとして「5年生存率」を用います。

 大腸癌研究会のデータによれば、大腸がんのステージ別の5年生存率は、ステージ0では約95%、ステージIでは約90%、ステージIIでは約80%、ステージIIIでは約65%、ステージIVでは13%です。

 ただし、5年生存率はあくまでも5年後に生存している人の割合です。この中には、5年の間にがんが再発したため、化学療法や放射線療法などを続けている人も含まれます。また逆に、5年の間に死亡した人の中には、がん以外の病気で死亡した人も含まれます。

 したがって、5年生存率は"そのがんが完治する可能性"と完全に一致するわけではありません。見つかったときの大腸がんの進み具合や選択した治療法に加え、手術したときの年齢や元々の体力など、患者さんを取り巻くさまざまな要因によって、変化するものなのです。

 5年生存率は多くの数の患者さんのデータを平均して求めた数字なので、そのまま個人に当てはめることはできません。例えば、5年生存率が50%だとしても、10年以上生きる人もいます。患者さん個人の5年後の状態を正確に予言することはできません。医師から告げられたステージの5年生存率が低い数値であっても、希望を失うことなく、大腸がんと向き合っていきましょう。

(まとめ:小又 理恵子、小板橋 律子)

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