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2008/7/1

標準治療アップデート 診断と予後 早期発見で高い治癒率、乳がん検診の受診が重要

 
 乳がん監修:京都大学乳腺外科学教授 戸井 雅和氏  
 
 日本では、乳がんの患者数は増え続けており、現在、約20人に1人の女性が乳がんを経験するといわれています。ただし、定期的な自己検診と乳がん検診で、乳がんは早期発見できます。早期発見できれば乳がんの治癒率は非常に高く、また、乳房を温存することも可能です。

 乳がんが社会問題化している米国では約8人に1人の女性が乳がんに罹っているといわれています。日本人女性の乳がん罹患率は、現在のところ米国よりも低い水準ですが、食生活の欧米化などの環境変化を受けて、近い将来、米国並みの罹患率になるという専門家もいます。実際、日系アメリカ人の乳がん罹患率は、米国女性の平均値とほとんど同じ水準です。

 増加を続ける乳がんですが、早期発見できれば高い治癒率が期待できます。早期発見のためには乳がん検診がなによりも重要です。

 乳がんの検診には、自分で行う「自己検診」と医療機関で受ける「乳がん検診」の2つがあります。自己検診は、毎月1回は行うことが勧められており、自己検診により、以前と異なる乳房の変化を感じた場合は、すぐに乳腺専門の医療機関で精密検査を受けることが推奨されています。また、自己検診で異常がなくても、40歳以上の方は1〜2年に1回は定期的に乳がん検診を受診することが推奨されています。

 現在、国内で推奨されている乳がん検診は、視触診とマンモグラフィの併用です。また超音波検査も、マンモグラフィでは見つけられない乳がんを検出できることが明らかになっており、特に、マンモグラフィによる乳がんの検出に限界がある50歳以下の女性には利用が推奨されています。

【検 査】
 乳がんが疑われた場合、病院では、問診、視触診、マンモグラフィ、超音波検査、細胞診、組織診などの検査を行い、病気を診断します。医師の診察を受けるタイミングとしては、月経のある人の場合は月経後が最適です。月経直前や月経中では乳腺組織が腫れているためです。

 一方の乳房に乳がんが認められた場合、反対側の乳房にも乳がんがある確率は、3〜5%です。病院で検査を受ける際は、異常が見られた乳房だけでなく、反対側の乳房もきちんと検査してもらう必要があります。

●問診
 月経の周期でしこりの大きさや堅さに変化があるかないかは診断を受ける前によく観察しておき、医師に報告しましょう。良性の乳房疾患である乳腺症では、月経の周期と連動して症状が変動します。

●視触診
 乳房を観察し、乳房やリンパ節の状態を触って検査するものです。乳房の変形や乳頭からの分泌物がないか、リンパ節が腫れていないかなどを観察します。乳がんによるしこりは、一般的に硬く境目がはっきりしないことが多く、よく動くしこりは良性の可能性が高いと考えられています。

●マンモグラフィ
 マンモグラフィとは、乳房専用のX線装置です。放射線の被曝量は、自然界の放射線レベルと同程度の低さなので、被爆の心配はいりません。ただし、妊娠初期の場合は念のため撮影対象から除外されています。

 マンモグラフィは、乳がん検診にも用いられているように、乳がんによる病変の検出に有用な診断装置です。マンモグラフィのみで、乳がんと確信できる場合もありますが、100%正確に乳がんを検出できません。そのため、超音波検査や細胞診・組織診と組み合わせたうえで、確定診断が行われます。

●超音波検査
 超音波を乳房にあてて反射波(エコー)を画像として描いて診断する方法です。しこりの形なども検査することができます。

 超音波検査では、マンモグラフィで写しだせないしこりを見つけることができます。また、放射線を用いない検査法であるため、妊娠中でも胎児への影響を心配することなく検査が可能です。しかし、逆に、超音波検査では、マンモグラフィで検出できる微細な石灰化がほとんど検出できません。すなわち、超音波検査とマンモグラフィの併用が重要です。

 視触診による診察の結果、マンモグラフィと超音波検査による画像診断の結果から、異常が見られない、何らかの変化があっても明らかに良性病変と診断できる場合は、これ以上の画像検査は一般的に行われません。

 もしも、これらの検査から乳がんが疑われるような所見が得られた場合は、乳房に針を刺して、乳房内の細胞や組織を採取し顕微鏡で観察する病理診断が必要になります。

●病理診断
 乳がんの最終的な診断に病理診断は不可欠です。細胞の採取の仕方はいくつかの方法があります。最もよく行われているのは、細い針を病変部分に刺して、注射器で細胞を吸い出す方法です(細胞診)。穿刺吸引細胞診と呼ばれています。

 穿刺吸引細胞診は10分程度で終了する簡単な検査方法で、この検査で用いる針は細いため、一般に麻酔は使われません。穿刺吸引細胞診の欠点としては、十分に細胞が採取されなかった場合に良性・悪性の鑑別ができないという問題があります。明らかなしこりが存在しないような場合には、この検査では病理診断が難しいのです。

 触診・超音波ではわからず、マンモグラフィのみで検出されるような病変の検査では、マンモトーム検査が有効です。マンモトーム検査とは、細胞診よりも太めの針を刺し、細胞の固まりである組織を採取する方法です(組織診)。マンモグラフィで乳房内の病変を確認しながら針を刺し、病変部を吸いだします。針が太いため局所麻酔を用います。マンモトームは、マンモグラフィだけでなく、超音波と併用して利用することもあります。

 細胞診・組織診とも、乳房に針を刺します。その刺激により、がん細胞が周辺に広がり勢いを増す、転移を促進するのではと心配する方もいるかもしれませんが、日本乳癌学会によると、適切な対応がなされている限りは、そのような心配は不要ということです。

●病理学的悪性度分類
 病理診断では、採取した細胞を顕微鏡で観察しがん細胞であるかどうか、がん細胞の場合は悪性度(「顔つき」という表現も使われます)を評価します。

 がん細胞の悪性度はグレードとも呼ばれます。グレード1は低悪性度、グレード2は中等度悪性度、グレード3は高悪性度と分類されます。ただし、グレード3のがん細胞は増殖が早いため抗がん剤がよく効きます。加えて、分子標的薬のトラスツズマブの標的分子(HER2)が発現していることが多く、トラスツズマブが良く効きます。そのため、トラスツズマブが広く使われるようになった現在、グレード3であるから予後が悪いとは一概に判断できなくなっています。

●MRI検査、CT検査
 マンモグラフィや超音波検査などだけでは診断が難しい場合、MRI(核磁気共鳴法)検査やCT(コンピューター断層撮影)検査も行われます。MRI検査、CT検査とも、病巣の広がりやリンパ節への転移の診断にも有用です。

 MRIとは、強い磁石と高周波で人体内を撮影する方法です。放射線を用いた検査法ではないため、被爆の心配はありません。MRIは、乳がんが疑われた場合の精密検査や、乳がん手術前にがん細胞の広がりの確認のためなどに用いられています。

 CT検査は、X線を用いた画像診断の一種です。360度からX線を照射し、X線がどの方向でどの程度吸収されたというデータをコンピューターで画像化します。CTの利用も、MRIと同様、術前に、乳がん病変の広がりを確認し、適切な手術範囲を決めるために主に用いられています。

●乳頭の異常分泌の精密検査
 乳頭から異常分泌がある場合には分泌物の検査を行います。分泌物の検査としては、顕微鏡で細胞の状態を調べる細胞診、がんに特異的な分子(腫瘍マーカー)が細胞に発現していないかを調べる検査などが行われます。加えて、一部の医療機関では、乳管の中の状態を内視鏡を用いて調べる乳管内視鏡検査も行われています。

【診 断】
 乳がんは、腫瘍の大きさや、乳房を飛び出たがん細胞の最初の通り道であるわきの下のリンパ節にどれだけがん細胞が存在するか(リンパ節転移の程度)などの状態によって、ステージ(病期)分類されます。

 ステージの決定は、がん組織の大きさ(Tumor)、リンパ節への転移状況(Node)、遠隔転移の有無(Metastasis)を元に行われます。

T0:原発巣を認めないもの
T1:しこりの大きさが2cm以下
T2:しこりの大きさが2cmより大きく5cm以下
T3:しこりの大きさが5cmより大きい
T4:しこりの大きさに関わらず、胸壁が固定されたり、皮膚の浮腫や潰瘍、衛星皮膚結節を生じているような場合。炎症性乳がんも含む
N0:リンパ節転移が無い
N1:乳がんが見つかった乳房と同じ側(同側)のわきの下のリンパ節に転移を認めるが、可動性良好
N2:わきの下のリンパ節に転移があり、かつリンパ節ががっちりと互いに癒着したり、周辺の組織に固定している状態
N3:わきの下のリンパ節に転移があり、また/もしくは胸骨の近くのリンパ節に転移がある
M0:遠隔転移がない
M1:遠隔転移がある

【予 後】
 乳がんが、乳房の中にある乳汁を分泌する器官(乳管や小葉)の中にとどまっている場合、ステージ0の「非浸潤がん(DCIS)」もしくは「乳管内がん」と呼ばれます。この段階で発見できれば、ほぼ100%治癒します。

 ただし非浸潤がんの段階では、乳房を触ってもしこりを感じることはまずありません。この段階の乳がんを発見するためには、マンモグラフィや超音波装置を用いた乳がん検診が必要です。乳がんにおいて検診の重要性、早期発見・早期治療が叫ばれている理由はここにあります。

 一方、がん細胞が乳管や小葉からはみ出ているものを「浸潤がん」といいます。がんの増殖が進み浸潤がんとなると、がん細胞はリンパや血液の流れに乗って、乳房から出て、全身に広がっていく可能性があります。乳がんがしばしば全身病と呼ばれるのはこのためです。全身に広がったがん細胞を退治するためには、治療の効果が全身に及ぶ薬物を用いた治療が有用です。そのため、浸潤がんの治療では、手術、放射線に加えて薬物療法がたいへん重要な位置を占めてきます。

 同じ浸潤がんでも、ステージが小さいほど一般的に予後は良くなります(下表「乳がんの病期」参照)。ただし、乳がん治療技術の進歩は近年、目覚ましいものがあり、予後に関するデータは参考程度にしかなりません。

乳がんの病期

(まとめ:小板橋 律子)

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