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2008/5/13

標準治療アップデート 治療 治療の中心は手術 早期なら部分切除も可能

 
 腎がん監修:京都大学医学部泌尿器科学教室教授 小川 修  
 
 腎がん(腎細胞がん)の治療は手術が中心です。1期であれば腎の部分切除も選択肢に入ります。また、2期までであれば、腹腔鏡下手術も選択肢となります。抗がん剤は利用されず、薬物療法は、インターフェロンやインターロイキン2を用いた免疫療法に限られていました。この4月から、腎がんの治療に新しい分子標的薬が加わり、今後、腎がんの治療が大きく変わってくると考えられています。

【治療】
 腎がんの治療の主体は、外科手術です。病期にかかわらず、患者さんの全身状態を診て手術ができるようであれば、腎臓の全摘出(根治的腎摘除術)、あるいは部分切除(温存手術)を行うのが一般的です。

 日本泌尿器科学会の腎癌診療ガイドラインでは病期1でがんの大きさが4cm未満なら「腎部分切除術」を推奨しています。腎部分切除術は、病巣部を含めた部分だけを切除して腎臓を温存する手術です。

 がんが4cm未満の場合、腎臓を全部摘出しても部分切除(温存)しても、再発率や生存率に大差がないというデータが示されており、がんの大きさや部位を見極めた上で腎部分切除術が積極的に行われるようになりました。

 しかし、がんが4cm以上の大きさになると、部分切除では再発の危険性が高まるため、「根治的腎摘除術」を行うのが一般的です。根治的腎摘除術とは、副腎や周囲の脂肪組織も含めて、腎臓や副腎を包んでいるゲロータ筋膜ごと腎を摘出する手術です。腎臓の場合、左右に2つあるので、片方を全摘出しても反対側の腎臓が正常であれば、腎不全に陥って透析治療が必要となったり、生活上の制限を受けることもほとんどありません。

 腎臓のがんを切除する手術には、開腹手術と腹腔鏡を用いた手術(腹腔鏡下手術)があります。腹腔鏡下手術は、お腹の壁に小さな穴を開け、内視鏡や超音波メスなどを挿入して腎臓の手術をする方法です。

 ガイドラインでは、特に1期の患者さんの根治的腎摘除術の手術方法として、腹腔鏡下手術を推奨しています。この病期であれば、開腹手術と比較して手術時間はやや長くかかるものの、出血量が少なく、手術後の痛みが軽く、退院、社会復帰までの時間を短くできるというメリットがあります。また、長期間のがんの非再発率や患者生存率などの手術成績は開腹手術に比べて遜色ないというデータもあります。

 ただし、一般に腹腔鏡下手術はテレビモニターを見ながら行うため、急な出血に対応しにくいなどの面がありますから、腹腔鏡下手術の経験を十分に積んだ術者や手術チームで行うことが重要とされています。

 また、腫瘍の直径が10?を越えるような大きな腫瘍を摘出する場合の腹腔鏡下手術については、まだ十分な検討がなされておらず、現在のところは開腹手術が主流です。腎臓部分切除術(温存手術)についても、腹腔鏡下手術で行うには技術的に難しく、合併症が多いという問題があるため、慎重に考える必要があります。

 病期1であっても、高齢の患者さんや内科的疾患があって外科手術が難しい場合には、「動脈塞栓術」が検討されます。これは、カテーテル(細いチューブ)で、特殊なゼラチンスポンジの小片を腎臓へ流入する血管内に注入して、腎臓への血流を遮断し、がんに栄養や酸素が届かないようにしてがんを死滅させる方法です。大きな腫瘍を摘出する際に、手術に先立って行う場合もあります。

 「動脈塞栓術」の副作用として、発熱、腎部痛、吐き気などがみられますが、1週間程度でよくなることがほとんどです。

 がんが7cm以上の大きさで、腎臓だけに限局している2期では、根治的腎摘除術が標準治療です。この段階での部分切除術(温存手術)は、再発のリスクが高いため、ほとんど行いません。手術ができない場合は、1期と同様、動脈塞栓術によって症状を緩和する治療を行います。

 3期では、リンパ節転移がある場合とない場合で治療法が分かれます。リンパ節に転移がなく、下大静脈にがんが入り込んで血栓を作り出している場合は、根治的腎摘除術を行った上で、さらに下大静脈に広がったがんを摘出する手術が推奨されます。その際、血管壁も一緒に取ることもあります。

 一方、リンパ節に転移がある場合は、根治的腎摘除術に加えてリンパ節の郭清を行います。これらの手術は、全身の状態や他の疾患の有無などを考慮した上で、慎重に決められます。

 がんが、腎臓に隣接する肝臓や十二指腸、膵臓などに広がっていたり、肺や骨などに遠隔転移している病期4では、インターフェロンやインターロイキン2という薬を注射や点滴で投与する「免疫療法」が中心になります。インターフェロンやインターロイキン2は、単独あるいは併用で用いられ、一部の例外を除いて抗がん剤などとの併用をしないのが一般的です。

 ただし、これらの治療では、薬の副作用が問題になることがあります。発熱をはじめ、倦怠感、頭痛、筋肉痛、うつ、甲状腺機能低下、肝障害、骨髄抑制、内分泌異常、眼底出血などが現れることがあります。

 がんが転移している場合でも、全身状態が良好であり、術後にインターフェロンなどの免疫療法が可能な患者さんに対しては、腫瘍がある腎臓を摘出する手術を行うことがあります。腎臓の摘出手術はそれほど身体にダメージを与えないことに加え、腎臓を摘出した後、転移したがんに対して免疫療法を施すことでがんの進行が抑えられたり、転移の数が少ない場合には、転移巣を外科手術で取ることで治癒する可能性も稀ながらあるためです。また、がんをそのままにしておくと、出血や腹痛、発熱、貧血などが発生し、QOL(生活の質)が低下するおそれがあるといった理由もあります。患者さんの全身状態などが大きく影響しますので、手術をするかどうかは慎重に決める必要があります。

 腎がんは、抗がん剤に対する感受性が低く、抗がん剤による治療の有効性は低いといわれています。そのため、抗がん剤による治療はあまり行われません。また、放射線療法についても、腎がんそのものを放射線照射のみで根治させることは困難です。しかし、骨転移巣に対しては放射線照射を行って痛みの軽減を図ることがあります。

 最近、腎がんに対してインターフェロンを上回る効果が認められる分子標的薬が注目されています。分子標的薬とは、がん細胞が増えたり転移するために必要な特定の分子を働かなくするように作られた薬のことです。腎がんに対する分子標的薬は、すでに欧米で使われており、日本でも今年の4月に販売が開始されました。

 今後、分子標的薬剤が普及することで、腎がんの治療は大きく変わってくると考えられています。

(まとめ:坂井 恵)

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