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2008/5/7

標準治療アップデート 診断と予後 新規分子標的薬の登場で治療成績向上を期待

 
 腎がん監修:京都大学医学部泌尿器科学教室教授 小川 修  
 
 腎がんは、腫瘤が4cm未満であれば治癒率は9割以上です。一方、腫瘤が10cm以上の場合、残念ながら、この20年間治癒率の向上はありませんでした。しかし、新しい分子標的薬が利用できるようになり、今後、治療成績が高まっていくことが期待されています。

 腎がん(腎細胞がん)の発生する原因は、はっきりとわかっていませんが、喫煙や肥満、高血圧などが複合的に作用して発がんリスクを高めていると考えられています。また、野菜や果物の摂取は、発症率を下げるという報告もあります。ほかにも、石油関連の化学物質やカドミウムなどの金属類などへの暴露がリスクを高めることが知られています。

 腎がんの代表的な症状として、1)血尿、2)腹部のしこり、3)わき腹の痛み――が知られていますが、ほかに食欲減退、原因不明の体重減少、高血圧、貧血といった症状が現れることもあります。しかし、腎がんは、腫瘍が大きくなるまで症状が現れにくいのが特徴で、これら症状が現れたときは、がんがかなり大きくなっていると考えられます。

【診 断】 腎がんは腹部超音波検査で発見されやすいがんです。腎がんを見つけ出すために特別な検診が行われることはありませんが、腹部超音波検査は人間ドッグやほかの疾患でも広く行われる検査ですので、たまたま受けた腹部超音波検査によって偶然、腎がんが見つかることも少なくありません。このように無症状で偶然発見された場合には、根治出来る可能性が高まります。また、超音波検査は、腎嚢胞や腎血管筋脂肪腫といった良性の疾患との鑑別にも威力を発揮します。超音波検査は、痛みがなく簡単に受けられる検査です。

 腹部超音波検査で異常が見つかれば、CT検査をします。この検査によって、腎がんの状態や大きさがわかります。腎臓のがんは、静脈内に進展しやすく、それによって静脈内がつまる(腫瘍塞栓)ことがありますが、CT検査では静脈内の腫瘍塞栓の有無も診断できます。また、リンパ節への転移の有無もわかります。

 下の図(腎がん診断のアルゴリズム)は、日本泌尿器科学会による腎がん診療の流れです。

腎がん診断のアルゴリズム"

 CT検査には、造影剤を使用しない単純CT (plain CT)と、造影剤を使う造影CT(contrast enhanced CT)がありますが、腎がんの診断には造影CTを使うことが推奨されています。これは、X線吸収率の高いヨード造影剤を血管内に注射してから撮影を行う方法で、注入された造影剤は、血流に沿って全身の血管に移動し、さらに毛細血管からしみだします。そして、血管や血流が豊富な組織を濃く映し出します。腎臓のがんは、通常、周囲の正常組織より血流が豊富なので、観察しやすくなります。

 さらに腎がんは、肺や骨に転移しやすいため、胸部レントゲンや肺CT検査で肺への転移の有無を調べます。また、骨転移の有無を調べるために、骨シンチグラフィによる検査を行うこともあります。

 血液検査も行います。腎がんに特有の腫瘍マーカはないので、血液検査によってがんの有無を調べることはできませんが、赤沈(赤血球沈降速度:赤血球が沈む速度を測る検査。炎症を伴う病気の有無や程度がわかる)やCRP(C反応性たんぱく:炎症や組織細胞の破壊が起こると血清中に増加するたんぱく質のこと)の値で、悪性度や進行度をある程度予測することができます。赤沈やCRP値が高い場合は、がんの発育速度が速く、予後が悪いと考えられています。

 以前はよく行われていた血管造影検査は、最近ではあまり実施しません。血管造影検査とは、足の付け根の動脈からカテーテル(細いチューブ)を入れて、腎臓に行く血管に造影剤を入れながらレントゲン撮影をする検査です。患者さんへの身体的な負担(侵襲)が大きいことや、最近では前述のCTの性能が高まってきたことで、血管造影検査とほぼ同様の情報が得られるようになったためです。

 また、他のがんの診断でよく行う針生検も、腎がんではほとんど行われません。針生検とは、超音波で見ながら細い針を腫瘍部分に刺し、少量の腫瘍組織を採取し顕微鏡で調べる検査です。腎がんの場合、針生検では小さな組織しか取れないため診断が不確定になり、しかも出血を起こしたり、腫瘍に針を刺すことでがんを拡げてしまう危険性も生じますので、行わないほうがよいという考えが主流です。ただし、最近では小さな腫瘍で良性悪性の鑑別が難しい場合には、針生検を勧めるという考え方も出てきています。

 腎がんの病期は、下表のように分類されています。 腎臓は、被膜で覆われており、さらに周囲の脂肪とその上にある副腎とあわせて、全体がゲロータ筋膜と呼ばれる膜に包まれています。病期1は、がんが腎臓にとどまっていて、腎臓に一番近い被膜を越えていない状態です。

腎がんの病期分類"

 病期2は、がんが7cm以上の大きさで、腎臓が覆われている被膜を越えて副腎や周囲の脂肪組織に浸潤していますが、一番外側のゲロータ筋膜までは越えていない場合です。

 がんが進行して、腎臓に通じた静脈や下大静脈の中にまで広がるか、もしくはがんが大きくなくても、隣接するリンパ節に転移している場合は、病期3に分類されます。

 病期4は、がんが腎臓を包んでいるゲロータ筋膜を越えて、隣接する肝臓や十二指腸、膵臓などにがんが広がっていたり、肺や骨などの臓器に遠隔転移している場合です。腎がんでは、肺や骨に転移しやすいことが知られています。

【予 後】 予後は患者さんの年齢や合併症(糖尿病などがん以外の病気)の有無などにも影響をうけますが、診断時の進行度(病期)と悪性度によって大きく変わります。

 最近、腎がんは非常に小さいうちに早期で発見されるようになり、4?未満のがんの場合、90%以上治癒すると言われています。しかし、10 cm以上の大きな腫瘍や、転移のある腫瘍の治癒率は依然として低く、この20年間大きな改善はみられていませんでした。これまで、腎がんでは外科治療以外に治癒を期待できる治療法がありませんでしたが、新しい分子標的薬が利用できるようになることで、今後、治療成績が高まっていくことが期待されます。


(まとめ:坂井 恵)

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