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2008/4/30

先輩患者からのアドバイス 医師まかせにしないで“選択力”を身につけて

 
 ひげの父さんこと、武内務さん  
 
 4年前の2004年、手術での完治は難しく、5年生存率2割の前立腺がんと診断される。インターネットを駆使して、納得できる治療法、信頼できる医者を探し、4件目の病院で強度変調放射線治療(IMRT)を受けた。自身の経験と情報収集の結果を元に、ひげの父さんの <前立腺がん治療ガイドブック>「もしもあなたが”前立腺がん”を告げられたら・・・」 を作成・公開している。

 私の場合、病期はT3で、PSA値3桁、グリーソンスコア9とハイリスクの前立腺がんでした。診断を下した医師は、手術では治りきらないだろうというのです。でも、それ以上先のことは言ってくれない。

 何とか助けてくれという思いで、セカンドオピニオンとして2件目の医療機関を受診しました。しかし、そこでは、さらに落ち込むようなことを聞かされました。PSA値が3桁もあれば転移を疑うのが医者の常識のようで、PSAの数値が示す意味は大きく、重たいというのです。画像上では転移が無く浸潤のみでも、どこか画像に出ていない転移があるはずと信じているようでした。そのため、5年生存率は2割と宣言されました。最初の診断に加えて、見込みのないことを駄目押しされて帰ってきました。

 このときが、ショックのどん底でしたね。

 しかし、インターネットはありがたい武器です。調べる気になれば大抵のことが載っていますから。インターネットで情報を調べられない時代に生まれていたら、ここであきらめるしかなかったと思います。でも、インターネットを使って、いろいろ調べた結果、通常の放射線では副作用の問題があるけれど、病巣に集中して高線量の放射線を当てられる強度変調放射線治療(IMRT)もしくは粒子線治療であれば、治癒の可能性がありそうということが分かりました。

セカンドオピニオンの選び方のコツ
 後で気がついたのですが、1件目と2件目の病院は、同じ大学の系列病院だったのです。この大学は、前立腺がんに対する治療法として、IMRTのような高精度の外部照射による治療法をまだ積極的に取り入れていない大学でした。同じ系列だと、治療の決め方も似ているので、セカンドオピニオンを得ても同じようなことをいわれるものなのですよ。後で気がつきました。普通、どの病院がどの大学系列かはまず考えないですよね。でも、その気になれば、どの系列かはだいたい分かりますから、これからセカンドオピニオンを得ようと考えている方は、大学の系列、学閥も考慮してセカンドオピニオンを受けられるといいと思います。

 また、放射線科の先生の意見も一度は聞かれるといいと思います。ただし、前立腺がんのセカンドオピニオンとして放射線科の先生の意見を聞ける医療機関は少ないんです。ですので、あらかじめ、放射線科の先生も前立腺がん治療に携わっていて、意見が聞ける体制がある病院を調べたうえでセカンドオピニオンを受けるといいのではないでしょうか。

 ただ、まず、自宅の近所にはそんな医療機関はないでしょうから、自宅からの距離はあまり考えず、遠くても、いい医療機関を探して欲しいです。

治療法を選択する時は後遺症まで考えて
 また、治療法を選択するときは、後遺症のことまでよく考えて決めるといいと思います。前立腺がんの治療としては、まだ、手術が中心となっているでしょう。後遺症としての勃起障害や尿漏れは少なくなったともいわれています。でも、手術を受けられた患者さんのなかの話では、これらの後遺症の話は頻繁にみられます。一方、放射線でも、血尿や血便、まれには直腸が破れるという話もありますが、精度の高い放射線治療では、後遺症の確率は極めて少ないはずです。

 治療法を選択するときには、今、なんとか助かりたいという気持ちが強いでしょうから、後遺症まで考えがいかないかもしれません。でも、生活の質(QOL)を損なう後遺症については、きちんと考えることが大切だと思います。

IMRTの話
 さて、私が実際に治療を受けたのは、4件目です。IMRTによる治療を受けました。粒子線治療については、話を聞きにはいかなかったのですが、IMRTと比較して必ずしも粒子線の結果がいい訳ではないという話を伺い、また、同じ効果なら、金銭的に安い方がいいという思いもありました。

 米国では、ハイリスクの前立腺がんにおいては、IMRTが主流の治療法になっているようです。日本でももっと、IMRTが広まって欲しいですね。でも、IMRTを使いこなせる医師が足りないようで、IMRTによる治療をきちんと行える医療機関はすごく限られるのが現状でしょう。

 一方、最近、粒子線治療が流行のようで、あちこちで新しい施設を作ろうという話がありますね。放射線治療に携われる人材がこれだけ不足しているなかで、器ばっかりつくってどうするつもりなのかと思いますよ。

PSA値が全てではない、神経質になりすぎると損
 治療は順調だったのですが、その後の経過観察ではかなり冷や冷やしました(苦笑)。実は、PSA値が検査のたびに数回連続して上がり、4を超えてしまったのです。

 泌尿器の先生には、4を超えたということはあぶないかもしれないといわれました。自分でも非常にどきどきして、やばいやばいと思いました。しかし、同日に診察を受けた放射線科の先生は、PSA値は個人差が大きく、そもそも元が3桁と高かった私の場合、まだ大丈夫だと思うと言ってくれました。幸いにも、放射線科の先生の言葉通り、次の検査のときにPSA値は頭打ちになり、その後は順調に下がりました。

 放射線治療は、手術と異なり、効果が出るまで少し時間がかかるんです。また効果が出てくるまでの期間は、個人差が大きく、すぐに効果がでる人もいれば1年ぐらいしてから効果が出る人もいるということです。私が世話になった病院では放射線治療が始まるとホルモン療法を止めてしまいます。そのため、ホルモン療法の効果が消えてくると、PSA値が一度、高まることがあるんです。放射線治療を受けた方は、この山を越えないといけないんですね。ストレスを溜めないためにも、こうゆう予備知識を持っておくといいですよ。

 今も、私のPSA値は少し高めです。0.7前後で、0.1ぐらいは上がったり下がったりします。他の患者さんのなかには、0.01のレベルで、上がった、下がったと気にされている方もいるようですが、心配しすぎるとキリがないわけで、あまり神経質にならない方がいいと思います。PSA値は、がん細胞だけに反応する数値ではない訳ですからね。

患者会もない前立腺がん、患者はもっと頑張らないと
 女性は元気ですよね。ホルモン系の病気ということで、乳がんと前立腺がんでは、同じ薬が使われるなど、共通点も多いのです。でも、乳がんで使われた薬を前立腺がんにも応用してみようという話は、ずーと遅れてやってくる。乳がんは、海外の情報をどんどん取り入れて治療法も進歩していて、うらやましいですよ。

 しかも、前立腺がんは、いかにも暗いし、きっちりした患者会もない。最近やっと、前立腺がん関連の情報が充実してきていますが、自分が診断を受けた頃は、国内の情報は貧相なものでしたよ。

 例えば、リスクに応じた治療法を解説しているところがどこにもなかったんです。日本語のサイトとして、きちんとした前立腺がんの情報サイトが無かったので、自分でウェブサイト、ひげの父さんの <前立腺がん治療ガイドブック>「もしもあなたが“前立腺がん”を告げられたら・・・」 を立ち上げてしまいました。私のサイトの元データは、米国のNCCNから持ってきました。英文は自動翻訳ソフトを使いながら、パズル感覚で読み解きました。主治医の先生も見てくれて、「泌尿器科の先生にもみせたい」と言ってもらったこともあります。

 前立腺がんの治療法の選択肢は沢山あります。日本で広く行われている治療法が必ずしも世界のスタンダードとは限りません。医師の言うことを鵜呑みにしないで、セカンドオピニオンを求めたり、情報収集もし、治療法を自分自身で決定できる力を身につけてほしいのです。

(まとめ:小板橋 律子)

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