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2008/4/1

標準治療アップデート 診断と予後 PSA検査の普及で早期発見が可能に

 
 前立腺がん監修:京都大学医学部泌尿器科学教室教授 小川 修  
 
 PSA検査の普及により前立腺がんの早期発見が可能になりました。ただし、PSA検査は万能ではないことも知っておきましょう。前立腺がんは進行が遅く、ある程度進行している場合でも、予後は非常に良くなっています。

 前立腺がんは、早期には特有の症状がほとんどないため、発見されずに進行してしまうことが少なくありません。進行すると骨に転移しやすく、腰痛などの痛みを引き起こし、それがきっかけで発見される場合もあります。

 最近では、前立腺の腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)を用いたがん検診が一般化し、前立腺がんの早期診断に貢献しています。PSA検査は、前立腺の分泌液に含まれる特殊なたんぱく質を測定することにより、前立腺がんを見つけ出す血液検査です。

 ただし、PSA検査は万能ではなく、PSA値が上がらない前立腺がんも存在すること(偽陰性)、また逆にPSA値が高い場合でも前立腺がんでない場合があること(偽陽性)、また、非常に増殖が遅く生命を脅かさないがん(ラテントがん)を発見し、不必要な治療が行われる可能性があることなど、PSA検査を受けるうえで知っておくべき点がいくつかあります。

【検査】 前立腺がんが疑われた場合、前立腺の腫瘍マーカーであるPSA検査を行います。PSA値は、前立腺がんがあると数値が高くなりますが、炎症や前立腺肥大症でも高くなる可能性があり、高値だからといって必ずしも前立腺がんであるとは限りません。

 日本泌尿器科学会の前立腺癌診療ガイドライン2006年版では、50歳以上の男性におけるPSA検査実施後の治療の流れを示しています。


 PSA値4ng/mL以上であれば前立腺がんである可能性があるため、泌尿器科を専門とする医師による精密検査を受けることを推奨しています。

 精密検査はPSAの再検査に加え、「直腸診」「経直腸超音波検査」などを行います。

 直腸診は、肛門から直腸に指を入れて、前立腺の状態を調べる検査です。超音波検査は、肛門から棒状の超音波探子(プローブ)を直腸に挿入し、前立腺の内部を画像で観察します。

 それらの所見を総合して、前立腺がんの疑いがあると判断された場合は、細い針で前立腺組織を採取する「生検」を実施し、がんがあるかどうか、また、がんがあった場合は悪性度を確認します。

 生検で前立腺組織を採取する方法には、直腸から針を刺入する方法と、会陰部(肛門と陰嚢の間の皮膚)から針を刺入する方法があります。前者は、以前は麻酔なしで行うことが多かったのですが、最近では局所麻酔を行うのが一般的になりつつあります。そのため、より痛みが少なく済むようになっていますが、まれに出血や発熱が起こることがあります。後者は、発熱することはほとんどありませんが、腰椎麻酔などが必要となるため、一般的には2〜3日の入院が必要になります。

 前立腺がんと診断された後には、コンピューター断層撮影(CT)や磁気共鳴画像法(MRI)などの画像診断で前立腺内と周囲への進展やリンパ節転移を調べます。前立腺がんは、骨に転移することが多いため、骨シンチグラフィで骨への転移の状況も確認します。単純エックス線写真撮影を行う場合もあります。

【診断】 前立腺がんの治療方針を決めるには、がん細胞の悪性度や転移なども含めたがんの進行度が重要です。がんの悪性度を判断するのには「グリーソン分類(グリーソンスコア)」、がんの進行の程度を判断するのには国際的な基準である「病期分類(TNM分類)」を用いることが一般的です。

 グリーソン分類は、がん細胞の悪性度を1から5段階(グリーソン1〜5)に評価し、どの段階のがん細胞が多いかで全体の悪性度を測るものです。最も多い細胞の段階と、次に多い細胞の段階を足した値をスコアとして表現します。例えば、グリーソン3の細胞が最も多く、次にグリーソン4の細胞が多い場合には、グリーソンスコアは7となります。スコアが高いほど悪性度が高くなります。

 がんの進行状況を表すTNM分類は、がんの前立腺内における進行状態(T)、リンパ節転移の有無(N)、遠隔転移の有無(M)を示します。限局、浸潤、転移によって治療方法が異なるため、できるだけ正確に進行状態を判断する必要があります。

 TNM分類では、前立腺がんを疑わず、前立腺肥大症などの治療過程で偶然、前立腺がんが発見された場合にはT1aもしくはT1bと分類され、前立腺がんを疑って検査を受けた場合には、T1c以上の病期に分類されます。

 PSA値の異常のみで生検を実施し、がんが検出された場合はT1cと分類されます。触診、あるいは画像で異常があった場合はT2以上の分類です。

【予後】 前立腺がんは、進行が遅いがんで、前立腺内に限局している場合は手術療法で10年生存率が90%以上と、比較的予後がよいがんとして知られています。がんが前立腺周囲に拡がっている場合でも、適切な治療を受けることで、10年生存率は90%程度となっています。また、これらのデータは10年以上前の治療による結果であり、近年の治療技術の進歩に伴い治療成績は更に向上していると期待できます。

 前立腺がん治療後のフォローアップ検査では、定期的にPSA値を測定します。PSA値の上昇は再発の目安となるためです。

(まとめ:坂井 恵)

◆参考資料
○前立腺癌診療ガイドライン2006年(日本泌尿器科学会/編)

○国立がんセンター がん情報サービス 前立腺がん

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