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親ががんにかかったら

2011/8/23

【自宅療養編】第6回

退院後の「元患者」への接し方

はにわきみこ

 治療が一段落し、父の立場は「がん患者」から「がん体験者」へとステージが変わりました。これからは、リハビリを通して、生活の質を向上させていく時期に入ります。体力と筋力がつけば、元の仕事に戻ることも夢ではありません。

 そうはいっても、過酷な治療を体験した「元患者」にとっては、それが大きな壁に感じられるのだな、と私は知りました。

上から目線で命令してもダメ

 がん専門病院の担当医から「手術は成功したのにリハビリが失敗」と一喝された父ですが、どうしても散歩に積極的になれません。

 父は「それをすることで何になるのか」が明確な作業は好きです。例えば「草を刈って代金をもらう(仕事)」とか「畑に種を蒔いて作物を実らせる(実益)」ようなこと。しかし、報酬を得ることに直結しない「歩いて景色を楽しむ」とか「トレーニングをして鍛える」ことには意欲が持てないのです。

 元気だったころの父の暮らしは、外で目いっぱい働いて、晩酌をしてバタンと寝る、でした。ところが、がんの治療が終わってからは、外に出ることもなく毎日家で寝ているだけ。そんな父を見て、母は「せっかく助かった命なのに。元の暮らしに戻れるよう努力すればいいのに」と、イライラしていました。

 「毎日30分、家から公園まで歩きなさい!」。しびれを切らした母は、父にそんな課題を与えました。家から公園までの片道約1kmは、ホームドクターも推薦する距離。公園に限らず、駅まで歩いて本屋で買い物をして戻るのも同じ距離なのですが、「駅の方へ行くとスーパーで食べたいもの(もちろん禁止されているもの)を買ってくるから、行かせたくない」と母は言うのです。

 このときの、母の父に対する態度は、妻というより監督のようでした。母が鬼監督、父が問題選手、というイメージです。しかし、もし自分が「毎日30分歩きなさい」と言われたら、素直に実践できるでしょうか。しかもその意味が納得できていない時に。そこで私は気が付きました。「私や母が、上から目線で命令してもダメなんだ」と。

 「北風と太陽」の寓話のように、強い態度で禁止を強調するよりも、本人が自発的に行動するように説得できないものでしょうか。例えば散歩でも、伴走してくれる人がいれば、少しは気分が違います。自分にとって面白くなくつらいことでも、一緒にやる人がいれば取り組めるのでは?

 そう思った私は、「私もダイエット記事のために毎朝ウォーキングしなくちゃいけないの。お父さん、一緒に歩こう」と提案してみました。父と母が私の家に滞在するときは、一緒に散歩に出ます。離れて暮らしているときも、朝、同じ時間帯に私もウォーキングをするのです。歩き始めるときに電話、終わってからまた電話、というように、こまめに連絡を入れることにしたのでした。

 結果、父は、天気のいいときや機嫌のいいときは、散歩に出るようになりました。“勝率”は、1週間のうち2〜3回。多くは望まず、怒らず、励ましていこうと思います。

ポイント

・押し付けは逆効果。本人のやる気を引き出す言葉を選んで
・監督と選手ではなく、同じチームの一員として付き合おう

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