がんの基本的知識や治療法についての情報を手に入れたら、次に検討しなければならないのは「どの病院へ行くか」です。一部の病院でしか行っていない治療方法や、医師独自の治療方針などもあるので、病院や医師についてしっかり調べた上で決めなくてはなりません。
実際に治療を受ける病院を決めるのは、検査によって病状がはっきり分かってからですが、事前に調べておけば、慌てずにすみます。後になって「こんなはずではなかった」と悔やむことのないよう、患者本人はどういう治療を希望しているのか、そのためにふさわしい病院はどこか、を考えておきましょう。
どんな治療方針に賛同するか
上部内視鏡検査で父の食道がんが発見されたとき、ホームドクターの意見は「外科手術が有効だと思われる」でした。それを聞いて私が心配したのは、「72歳という年齢は、手術に耐えられるのだろうか?」ということでした。
解説書には、食道がんで最も重篤な場合は、喉・胸・腹の3カ所を大きく切る、8〜10時間の手術になると書いてありました。父はこれまで病気知らず、年齢の割に丈夫な体です。だから術後の回復が早いかもしれません。でも、いきなりの大手術だなんて、精神的に耐えられるのでしょうか。
私自身は、28歳と39歳のとき、子宮内膜症の卵巣チョコレート嚢胞という病気で開腹手術を経験しています。最初に見付かったときはチョコレート嚢胞が大きかったので、選択の余地なく手術になりました。後になって、東洋医学の専門家が「できれば身体にはメスを入れない方がいい」と語っていることを知りました。
悪いところを切るのは根本的な解決ではないのかもしれません。病気の原因を取り除くのが1番です。そこで、「2度と手術をしないですむように、切らないで直せる方法を探そう!」と漢方薬や鍼灸をはじめ、様々な養生法を試しました。結局は、再発して39歳で再手術になってしまったのですが。
そんな経験から、「もし父が『そんなに大きく体にメスを入れるのは嫌だ』と言ったら、どうしよう。私が一目置いている、漢方薬や鍼灸、養生法も可能な病院に行ってみるという選択肢もあるのではないか」と考えたりしました。
「切る」「切らない」。どちらの方針を選ぶかで、その後の人生は大きく変わります。切った場合、手術の後に元通りの体に戻るとは限りません。かといって、切らない治療を選んだ場合、がんの病巣は身体にそのまま残ります。メリット、デメリットをよく見極めつつ、患者の希望を確認する必要があります。