このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

新着一覧へ

今話題の新しいがん免疫療法ってどんなもの?

2016/3/10

第3回

がん治療における免疫チェックポイント阻害薬の位置づけは?

国立がん研究センター東病院呼吸器内科長/サポーティブケアセンター長/LC-SCRUM Japan研究代表者の後藤功一氏に聞く

加藤 勇治

 本連載の第1回、第2回では、新たに登場した免疫チェックポイント阻害薬とその標的である免疫チェックポイント分子を解説した。この免疫チェックポイント阻害薬は、新しい免疫療法と話題になっているが、医薬品としては抗体医薬の一種であり、免疫系を標的とした分子標的薬の一種だ。
 一方、近年、数多くの分子標的薬が治療現場で利用可能となり、また細胞障害性抗がん剤を含めて、高い効果と低い副作用を達成するためにその使い方の工夫が進んでいる。新たに登場した免疫チェックポイント阻害薬は、今あるがん治療でどう位置づけられるのだろうか。国立がん研究センター東病院呼吸器内科長で、がんの遺伝子変異に基づく最適な治療法の開発などにも尽力する後藤功一氏に聞いた。


──これまでに数多くの抗がん剤が使用可能になり、多くの臨床医によってその最適な使用法の模索が進んできました。どう組み合わせたら効果が高くなるのか、どういうスケジュールで抗がん剤を投与(服用)したら効果が高くなる一方で副作用が減らせられるかといった試みです。そして、進行再発癌に対し、まずどんな治療をすべきか、次にどんな治療かといった治療体系が組み上がってきています。こうした状況で、新たに免疫チェックポイント阻害薬が使用可能になりました。今までの抗がん剤はがん細胞が増殖するために必要な因子に作用するものが多い傾向にありましたが、免疫チェックポイント阻害薬は免疫系に作用するこれまでにない新しいタイプの薬剤です。2015年12月には、免疫チェックポイント阻害薬の1つであるニボルマブが「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌の二次治療」でも使用可能になりました。
 非小細胞肺がんでは、EGFR遺伝子変異を持つ患者に対するチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI、ゲフィチニブやエルロチニブ、アファチニブなど)やALK融合遺伝子変異を持つ患者に対するクリゾチニブやアレクチニブなどが登場し、高い効果を示しています。このように様々な抗がん剤の開発が進んでいる肺がんで免疫チェックポイント阻害薬が登場したことをどうお考えですか。

後藤 新しい薬剤が登場したことは何より良いニュースだと思います。治療の選択肢が増えるわけですから。その上で、「新しい抗がん剤が使えるようになって、効くらしいんですけれど」と聞かれる機会が増えてきました。私の答えは、現時点では、「非小細胞肺がんであれば全員にチャンスがあります」というものです。

 今、非小細胞肺がんの治療では、まず遺伝子変異の有無と種類を診断して、その結果を加味して適切な治療を推奨するという治療体系になっています。しかし、現時点では免疫チェックポイント阻害薬はどういった患者さんに効くのか、どんな遺伝子変異があれば効きやすいのか、といったことが分かっていません。

 ただ、全く分かっていないわけではなくて、少し効きやすいだろうと言われているのが、非小細胞肺がんの中でも扁平上皮がんと呼ばれる組織型の患者さん、喫煙歴がある患者さん、あるいはEGFR遺伝子変異が認められない患者さんなどです。しかし、これらはまだ確定したものではありません。そのため、全員にチャンスがあります、というのが答えですし、効果があるかどうかは投与してみなければ分からないという段階だと思います。

 ただし、抗がん剤にはどうしても副作用という面がありますので、むやみやたらと選ぶ薬ではないと思います。また、免疫チェックポイント阻害薬は高額な薬剤です。この点からもやたらと使うものではないという視点があります。そのため、現在、できるだけ免疫チェックポイント阻害薬の効果が得られる可能性が高い患者さんを選び出す方法、いわゆるバイオマーカーと言いますが、これを探すために専門医の間で研究が進められています。

――これまで非小細胞肺がん治療では、プラチナ製剤+抗がん剤というプラチナ併用療法が確立され、さらにゲフィチニブをはじめとする、がんの増殖にかかわる因子を標的とした分子標的薬が登場し、生存期間を延長してきています。しかし、体内の免疫機能を回復させて抗腫瘍効果を得るという免疫チェックポイント阻害薬に対する注目や期待は高まっています。そうすると、今まで開発されてきた肺がんの治療体系はがらりと変わることはあるのでしょうか?

後藤 それは難しい質問ですね。まだまだ様々な研究が進められており、免疫チェックポイント阻害薬そのものの開発も数多く進められていますので、将来的には分かりません。

 ただし、現時点では、免疫チェックポイント阻害薬には独特の副作用があります。この副作用の中には重篤なものもあります。ですから、やたらと使うものではありません。

 副作用の点から考えると、やはり効果が得られるだろうと予測される患者さんに限って使うことが良いと思います。しかし、現時点では予測は難しいので、投与してみないと分からないということしか言えません。将来的には必ず効きやすい患者さんを選ぶ方法が明らかになると思います。副作用が全くなければやたらと使ってもいいですが、当然そんなことはなく、重篤な副作用が出てしまった患者さんがいるわけですし、そのことはしっかりと理解しておくべきだと思います。

──非小細胞肺がんでは、EGFR-TKIがあります。最初に登場したゲフィチニブやエルロチニブをはじめとして、さらに次世代のEGFR-TKIも続々と登場しています。ゲフィチニブを投与していて、残念ながら耐性変異が出てしまった場合でも、次の選択肢が出てきたという状況です。EGFR-TKIはEGFR遺伝子変異がある場合、非常に高い効果が期待できますが、こうした治療ではなく免疫チェックポイント阻害薬を使いたいという希望が患者さんにあった場合、先生はどうお考えになりますか?

後藤 私の考え方は、確実に有効性が高い治療を絶対優先すべき、というものです。現状で免疫チェックポイント阻害薬単独の奏効率はおよそ20〜30%程度と言われています。一方、EGFR遺伝子変異とかALK融合遺伝子変異などの遺伝子変異が陽性の場合に、それに対するチロシンキナーゼ阻害薬を投与すると60〜80%の方に効果が期待できます。確実に効果を得るという点からEGFR阻害薬、ALK阻害薬を選びたいと思います。現在開発中の、EGFRやALK以外の遺伝子変異に対する分子標的薬も同様です。その遺伝子変異があるならば、その変異を標的とする分子標的薬を選ぶべきです。

 だから、何より治療前の遺伝子検査を優先するべきだと思います。患者さんのがんにある遺伝子変異を評価することで最適な治療を選ぶことができるわけですから。

 免疫チェックポイント阻害薬でも、最初に日本で使用可能になったニボルマブは非小細胞肺がん患者全員に利用可能ではありますが、今後登場してくる免疫チェックポイント阻害薬は、ある程度効果が期待できる患者さんに絞って利用するように、一定の適応条件が付くとみられています。EGFR-TKIが、EGFR遺伝子変異がある患者さんに投与することとなっていることと同様です。ただし、免疫チェックポイント阻害薬のバイオマーカーはまだ研究途上です。そう考えると、遺伝子検査は必須で、遺伝子変異があってそれに対して高い効果が期待できる治療薬があるならばそれを優先すべきだと思います。効果の高いもの、確実性の高いものをまず選ぶという考え方が大切ではないでしょうか。

第4回では、免疫チェックポイント阻害薬の副作用について聞きます。

この記事を友達に伝える印刷用ページ